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星夜航行



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【この小説が収録されている参考書籍】
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星夜航行 下巻

星夜航行の評価: 3.94/5点 レビュー 18件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.94pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全18件 1~18 1/1ページ
No.18:
(5pt)

民草

飯嶋和一の「星夜航行」を読み終えました。
ハードカバーの本をベッドで読むのは難しいですね。
でも、読み進めるうち、そんなこと言ってられないくらいひきづりこまれました。
会話部分も極端に少なく、硬い文章で森鷗外の読んでいるような気がしました。

舞台は戦国、徳川家康の長男・信康の小姓として側そばに仕えた沢瀬甚五郎は
罪無くして故郷を追われ、堺、薩摩、博多、呂宋の地を転々とする。
海商人として一家を成した頃、秀吉の朝鮮・明国への無謀な侵略に否応なく巻き込まれる。

この本ではかなりの部分をさいて小西行長、加藤清正ら秀吉軍の
傍若無人な侵略も様子が丁寧に描かれている。
『この戦乱で最も苦しんでいるのは、衆生、下々の民である。この朝鮮でも、日本でも、
恐らく明国でも、最も厄災をこうむるのは、いずこによらず民草なのだ。
この秀吉が起こした戦乱によって、親兄弟を殺され、夫や妻や子をうしない、
疫病は蔓延して皆飢餓に瀕している。』

九年の歳月を費やして書かれたこの小説は飯嶋和一の代表作になったことに間違いない。
近年の作家の中では出色の作家だと思う。
星夜航行 上巻Amazon書評・レビュー:星夜航行 上巻より
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No.17:
(3pt)

ディテール

ディテールの描写が濃密でした。が、そのせいでほとんど歴史研究所か論文書のようになっており、読み進めるのに難儀しました。
小説的でおもしろかったのは、主人公周辺の物語でした。
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No.16:
(5pt)

飯島和一の最高傑作!

これまで飯島和一の本をほぼ全て愛読してきました。

確かに他のレビューで言われるように、主人公の記述が少ない、戦争描写がくどい等あるかもしれませんが、それも含めて著者が表現したかった事であり、そのお陰でその時代に立ち会っているかの臨場感を堪能する事が出来ます。

どのような場面で、どのように決断するかという事を描くのが小説であるとするならば、本書は読書の悦びを味あわせて頂きました。

長編ですが、是非!おすすめです。
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No.15:
(5pt)

100年残る名作

帯に書いてある通り、一生に一度、出逢えるか、出逢えないかの作品。
飯嶋和一さんは、小説家というよりは、もはや、思想家です。
彼の、眼差しは冴えている。
この、眼差しこそが、この作品の重層低音である。
一度は読んでみる作品だと思います。
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No.14:
(2pt)

長いだけで史観が誤っている上に、小説として良く練れていない駄作

上巻に続いて下巻を読んだが、まだ朝鮮出兵に関して筆を費やしているのには呆れた。何でもかんでも子細に書けば良いというものではない。甚五郎が物資を運ぶために種子島船で朝鮮半島に行くが、戦況に見切りを付けて、マニラを目指したという事だけで充分である。ただでさえ、大長編小説なのだから、焦点を絞らないと物語が発散してしまう。一方、甚五郎がマニラ(呂宋)→長崎→伊豆下田の航路を思い付いたという発想は良い。伊豆下田からなら浜松・岡崎を奇襲出来るから、家康への甚五郎の復讐譚という本作のテーマと合致している。と思ったら、またしても朝鮮出兵の話でウンザリするし、秀吉の愚を強調している点にも違和感がある。検地、交易独占や宗教弾圧は(良くも悪くも)天下人の特権であり(結局、家康も秀吉の施策を踏襲した)、例えば、エジプト王がピラミッドを建設させたので民衆の怨嗟を生んだ、という事が果たして小説のテーマになり得るだろうか ? この他、ポルトガルとスペインの布教(実は侵略)合戦など、当時の時代模様を映すだけでは求心力を持った小説にはなるまい。

スペイン人宣教師の追放後、またしても朝鮮出兵である。これが史実(文禄・慶長の役)だとしても、ワザワザ本作で子細に採り上げる必要があるのだろうか ? 甚五郎が主人公ではなく、作者の代弁者になっている点も奇異な印象を受ける。肝心の家康が暫く登場しない点も奇異。加藤清正(秀吉の子飼いであると同時に正室"ねね"の養子)が秀吉の利権を犯す筈はないのに、それを匂わせている点も奇異。行長・三成への憎悪は分かるが。時代は遡るが、足利義満が流行り病で死去した、という記述があるが、これが朝廷による毒殺である事は常識。権力者の誇大妄想が民衆の苦しみを生む、というテーマなら本作は完全な失敗作である。真田幸村ではないが、「甚五郎が家康に一太刀浴びせる」、位の結末でないと本作は小説として練れていないという事になり、子細な記述は全て徒労である。「出星前夜」や「狗賓童子の島」レベルの作品を期待すると裏切られる駄作だと思った。
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No.13:
(3pt)

作者としては集大成の積りかも知れないが、舞台・内容が発散しているために求心力が乏しい上巻

上巻を読んだ時点での感想。私は「出星前夜」や「狗賓童子の島」等の作者の時代小説のファンなのだが、本作の冒頭には驚いた。貧困や死病に苦しむ民衆、それに立ち向かう医師や篤志家の情熱と正義といったテーマを扱って来たこれまでとは異なり、いきなり"お家騒動"とは。主人公の甚五郎は、家康の嫡男でありながら廃嫡・切腹させられた信康(築山御前の実子)の小姓(元々は馬飼い)。信長、家康、勝頼、築山御前、本願寺を中心とする一向衆といった著名人が登場し、陰謀が繰り広げられるが、これでは通常の戦国小説と大差ない。信康が勝頼・本願寺と結託して、信長・家康連合軍に歯向かうという構想は雄大ではあるが、惹かれるものがない。家康と築山御前との関係、信長と勝頼・本願寺との関係を考えれば結末は目に見えているからである。見所は、この間の事由を家康の家臣団の思惑を中心に非常に子細に描いた作者の筆力と信康を守るために刺客を何人も斬った甚五郎が味わう「無限地獄」であろう。

仏教臭くなった所で、第二部は舞台を堺へと移す。堺という土地柄と題名から甚五郎が世界へと航海で雄飛する展開を予感させる。その序章として、「本能寺の変」から九州征伐までの秀吉の天下統一の過程が描かれる。特に、九州征伐が詳しく、これは船乗りとしての甚五郎の門出であるが、何だか「黄金旋風」を想わせ、既視感が強かった。益々作者の意匠が不明。次いで、「唐入り」である。作者はこれを秀吉の蒙昧としている(定説)が、実は、西郷「征韓論」の300年近く先を行った政策(天下統一後は武士が余る)で、元々は信長の構想の真似である。それはさておき、島津領の山川港→博多港→対馬→朝鮮半島が当面の航路らしい。一方、「唐入り」の方は定説通りに非常に子細に語られる(小西行長の評価が高い)が、天草で甚五郎が大砲を打つとは驚きで、「出星前夜」の焼き直しじゃない。作者としては本作を集大成と考えているのかも知れないが、舞台・内容が発散しているために求心力が乏しい。家康への甚五郎の復讐は何処へ行ったのか ? 下巻に期待したい。
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No.12:
(5pt)

読み応え、重厚感

気に入ったこと:主人公を始め、確実で誠実、信念と共に生きるという生き方を実行できる人間(integrityに富む)こそどの世界でもどの時代でも尊敬されるという当然のことを再認識し、感動した。
普通の老人(私、65歳)が読んでもしょうがない、社会に影響力のある人々に読ませたい。
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No.11:
(1pt)

やっと読了しました。

飯嶋さんの新作ということで飛びつきました。上下巻、約半年かかりました。他の方も書いていますが、登場人物をもう少し整理した方が読みやすかったと思います。とにかく膨大な量の日本人名、朝鮮人名、明国人名が出てきます。本筋にあまり関係のない細かい描写にも閉口しました。朝鮮侵略の戦闘、戦術場面が詳細を極め、この本に飛びついた自分を恨みました。
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No.10:
(3pt)

「はずれ」ではないかも知れないが・・・

確かに力作には違いないと思いますが、内容が歴史小説ではなく歴史書になっちゃってますね。主人公と思われる沢瀬甚五郎の描写部分があまりにも少なく、読んでいてどうにも人物が立ってこない。歴史の記述も同じことの繰り返しが多く、しつこいです。「はずれ」ではないかも知れないが、「当たり」でもないと思います。
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No.9:
(4pt)

星空はほぼ出てこないけど、星空の美しさを感じられる物語

豊臣秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)で、日本と朝鮮、明国(中国)の三国が朝鮮半島周辺で繰り広げる戦闘を中心に描かれる。三国のパワーバランスや取っている戦術が生々しい。

歴史は様々な解釈がなされるものの、秀吉の悪人ぶりが目に余る。海戦の描写は、緊張感はあるがのどかに感じるものもあり、美しいと感じた。夜のシーンはあまり出てこないが、読んでいるうちに、船の上から見る夜空を想像することがあり、当時の夜空は満天の星で、天の川なんかもきれいに見えたのだろうなと感じた。小説としては長い(上下巻で約1100ページ)し登場人物も多いが、読みにくくはなかった。長い期間を描く大河ドラマではないが、秀吉の朝鮮出兵前後の出来事を深く楽しめたと思う。
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No.8:
(4pt)

大きな歴史の動きの中で民の心情を主人公の目を通して伝わってくる

戦国時代の末期、織田信長が本能寺の変で斃れ、豊臣秀吉が天下統一を果たし、朝鮮出兵で厳しい戦いをしている時代の歴史小説。岡崎三郎信康が徳川家康の嫡男だったころに仕えていた小姓の沢瀬甚五郎を軸としている。

三郎信康は父家康から切腹を命ぜられ、甚五郎は主を失う。それから様々なことがあり海商人として活躍をする。ところが、朝鮮出兵に巻き込まれ、日本と朝鮮の民や兵士を苦しむ現実に直面する。

時代が大きく動く中で、有名武将ではなく、少し離れた視点での歴史を語られる。そのため、民の苦しみや心情が甚五郎を通じて浮かび上がってくる。非常に長い物語であり、読むのに少し時間がかかった。しかし、これでもまだ半分。下巻ではどのような物語が待っているのだろうか。期待しながら下巻に進む。
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No.7:
(5pt)

配送の不始末をもって星一つを付与することは見当違い。

三国士氏の“レビュー”は本の誤配に関することなので、星夜航行、下巻のレビューから削除されるべきだ。配送の不始末をもって本書に星一つを付与することは、見当違いも甚だしく、また、星夜航行の作者及び愛読者に対して失礼でもある。
今月、上下巻を読み終えたが、「一生に一度出会えるかどうかの傑作」という謳い文句に偽りはない、と実感した。
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No.6:
(1pt)

過ちへの対応

送られてきた書籍は表紙が下巻で中身は上巻でした。
その旨を伝えると、謝罪の言葉もなく返送せよとのこと。
結果、返金手続きはスムースに行われたが、それっきり。
機械的なシステムでは、当方の気持ちなどお構いなし。
結局、近所の書店に注文して入手しました。
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No.5:
(5pt)

敗色濃厚な朝鮮の天地を、航行する如く生き抜く、われらの英雄・沢瀬甚五郎。

下巻は朝鮮の歴史的英雄、李舜水の活躍で補給路を断たれた清正隊の侵攻、そして釜山や更なる内陸部へ兵糧を運搬する博多商人・甚五郎の活躍で幕を開ける。甚五郎は奥地に届ける兵糧の半分を倭寇崩れのジャンク船に分散させ二艘で航行するが、正規の船は朝鮮水軍の餌食になり、甚五郎とジャンク船のみが活路が開きルソンの地へ逃亡する。ここで甚五郎は残りの兵糧ともども海の藻屑に消えたことになる。
 天は大事を託す人には試練を与え、命の危機には手を差し伸べるという。この世で甚五郎のなすべき大事とは何なんだろう。朝鮮水軍の包囲網を打ち破り大挙内地帰還を果たした、島津水軍の指揮をしたのだろうか・・。色々な空想と期待を抱きながら読み進んだ。でもそんな気配は少しも漂って来なかった。倭軍の強さと残虐さ、農民部隊の粘り強い反撃、舜水の失脚と病気、諸悪の根源たる秀吉の愚かさ加減や悲惨さ等が、読者を引き付けながら、延々と語られる。そしてこの流れはやがて降倭という反秀吉軍に身を投じた甚五郎が、天命というべき敗戦処理を成し遂げるクライマックスにつながっていく。
 上巻で著者が作った仕掛けは、序文の二十数ページである。この仕掛けにとらわれ、読者は甚五郎の人生周辺の物語にのめりこんで行った。そして下巻の仕掛けは最後の「終」のわずか8ページである。大垣市で2年以上暮らし、朝鮮通信使の祭りも楽しんだ評者にとって、なんとも意外な終章だった。甚五郎の登場が遠のいた下巻の途中で「星一つ減・・」と妄想した己が恥ずかしい。甚五郎、アッパレ甚五郎だ。
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No.4:
(5pt)

星夜を航行する如く、天与の人生を生き抜く甚五郎の前半生。

二十ページそこそこの「序文」で主人公「甚五郎」の先の見えぬ船出を暗示し、その船出に至ったなぞ解きをするのが第一部である。時代小説好きの多くの読者は徳川三郎信康の切腹の経緯は、己の後継信忠を凌駕する信康の才と器を恐れた織田信長が、信康とその母が武田勝頼に通じたという罪で切腹に追い込んだ為と思っている。
 こんな徳川にとっては綺麗ごとの筋書きに真っ向から違うストーリーを上巻の半分を占める第一部で著者は展開していく。序文のイントロが効いていて、この詳細な記述と甚五郎の魅力にハラハラドキドキし、寸分の冗長さも感じさせずこの筋書きに引っ張っていかれた。お見事!
 上巻の後半・第二部は「序」の縛りから離れ、甚五郎が堺・薩摩・博多・対馬を駆け巡りながら、船戦や商いの実践を学び有力商人等の知己を得ていく、ある面では雌伏と成長の時代が描かれている。主人公が家庭的にも小康を得た時代と思う。ただ九州・四国の平定や北条氏の滅亡・欧州平定等と時を同じくし、秀吉の妄想に端を発した朝鮮出兵、文禄・慶長の役に時代はなだれ込んで行く。新兵器鉄砲の威力で破竹の進撃をしていく第一軍小西行長第二群加藤清正軍の描写、そして李舜臣率いる亀甲船団による日本水軍の大敗と朝鮮義兵の活躍で補給路が絶たれだしたところで上巻はおわる。
 一つ意外に感じたのは豊臣政権の文知派の一方の雄小西行長に対する好意的な筋書きである。歴史は勝者の記録なので、関ヶ原敗者で京の河原に首が晒された行長は加藤清正を差し置いて朝鮮出兵の最大戦犯的扱いになっている。でも著者は非戦論にこだわり続ける行長にスポットをいつも当てている。知勇の将・李舜臣が星夜に登場したが、われらの甚五郎の航行は「今だし」だ。下巻を読んでいくのが楽しみだ。
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No.3:
(5pt)

貪るように読む

秀吉による朝鮮出兵をここまで仔細に描いた作品を知らない。
朝鮮側、明側、秀吉軍側からの視点で描かれていきます。その激流の中で翻弄される主人公の数奇な運命を描く下巻になります。
正直言って地名、人名など頭に入りにくいのですが、そのあたりは割と力ずくで進んでいっても十分に物語は頭に入ります。面白い作品より凄い作品を読みたい方に読んでいただきたい作品です。

この作品を調べてる貴兄は歴史小説のベテランで飯島作品初心者でもないのでしょう。もう手に取るしかないんだから読んじゃいなさいw
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No.2:
(5pt)

貪るように読む

待ちに待った新作。貪るように上下巻読了。
いつもの飯島節は健在で時代に翻弄される主人公の生きざまを描いています。
しかし、まさかこんな展開になっていくとは全く想像できませんでした。
これから読む方のために詳細は書けませんが、時間の掛かる小説だと思います。価格も高価なので気軽な気持ちで読み始めてはいけません。気合を入れて取り掛かるように。

次回作は何年後になるかわかりません。それまでに3周はすると思いますw
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No.1:
(5pt)

著者の作品を読むのは、いつもながら楽しくてたまらない

まだ上巻しか読んでいない。
『狗賓童子の島』から3年余、待望の新作である。戦国時代末の日本や朝鮮を舞台にした、上下巻併せて1000ページ以上の大作だ。
作品世界の濃密さ、物語のスケールの大きさ、魅力的な主人公などは本作でも十分に味わえる。

徳川家康の嫡男・三郎信康の自害後、「追い腹」で死んだ小姓・石川修理亮を殺したという濡れ衣を着せられた沢瀬甚五郎が寺に駆け込むところから幕は開く。甚五郎が修理亮と出会ったのは4年前のことだった。修理亮が甚五郎を馬に関することで訪ねてきたのだ。逆臣の遺児であったため、沢瀬という名字を捨て、暮らしに追われていた甚五郎だが、馬を扱う能力とその人品・人格に一目で修理亮は魅せられる。修理亮は甚五郎に再び沢瀬を名乗らせ、石川家に迎え入れる…

35ページまで読んだだけでも、権力や権威よりも自分の眼で見て、感じた世界を大切にする甚五郎という人物の器量の一端がうかがえる。検地に関する部分や朝鮮出兵下の状況などでは、著者がこれまでの作品で描き続けてきた権力者への厳しい視点も健在だ。
著者の特徴ともいえるディテールに拘った描写を煩わしく思う人もいるかもしれないが、例えば、馬に関する部分など、馬に接したこともなく、乗馬もしない私が読んでも、臨場感が感じられる。これこそ小説を読む醍醐味と言えよう。また、他の作品同様、主人公の甚五郎が爽やかで清々しすぎるように思えなくもないが、逆臣の遺児というハンデ、次々にやってくる苦難、権力欲にかられ彼を苛む人たちの心無い仕打ちなどを読むと、ついつい肩入れしてしまう。
なお、インターネットの記事で知ったが甚五郎は実在の人物だということ。

内容紹介にある「人が一生に一度出会えるかどうかの大傑作」という文言はさすがに微妙だが、数年に一度の傑作であることは間違いない。
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