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(短編集)

すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた



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すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えたの評価: 3.88/5点 レビュー 8件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.88pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(3pt)

海洋との交点における幻想

著者自身によって付けられた巻頭のノートによれば、メキシコのキンタナ・ロー州に住む古代マヤ族の末裔は、メキシコの他のインディオ達に比べて精神的な独立性を保っているようだ。
本書は、そんなキンタナ・ローを舞台にした、3つの掌編から成る連作集である。

・「リリオスの浜に流れついたもの」:浜辺のパティオに隠遁した心理学者の元へ、一人のアメリカ人の若者がやってくる。一匙のメープルシロップの引き換えにと、若者が語り出した体験談は実に奇妙なもの。彼が浜辺から見かけた漂流するボートには、折れたマストに女性が縛り付けられていた。必死で救助し浜辺へ戻った彼は気を失うのだが、意識を取り戻してみると、助けた相手は男性に変わっていたのだ・・・

・「水上スキーで永遠を目指した若者」:エビ捕り漁船のマヌエル船長が語る不思議な話。マヌエルは、若い頃に名ダイバーのコーと一つの冒険を行った。水上スキーに乗ったコーをマヌエルがボートで曳いてコスメル島から本土までの横断一番乗りを果たそうとしたのだ。しかし、夜明け近くに二人がトゥルムの遺跡の近くに差し掛かったとき、ボートのエンジンは二つとも停止し、コーは消えてしまった・・・

・「デッド・リーフの彼方」:ベテランのダイバーが語る不気味な話。彼は観光客達によってこれ以上ないぐらいに汚されたサンゴ礁”デッド・リーフ”の先に未踏のダイビング・ポイントを求めて、とあるカップルと共に向かうことになった。そこは期待を超える自然の宝庫だったが、恍惚郷の中でいつしかカップルをを見失った上に潮に流されてしまった彼は、海の底に巨大な女の姿を見出した・・・

体験を語る「話し手」の人となりや背景は当然ながらそれぞれに異なるが、実際には読者が担うことになる「聞き手」については細かい設定の必要性がないにも関わらず、不思議と共通性があり、全ての掌編においてキンタナ・ローに滞在し、現地人から「グリンゴ」なる別称で呼ばれながらもに一定の距離を保って馴染んでいるアメリカ人が登場する。
恐らくはこの「聞き手」達は著者自身の投影なのだろう。
創設期のCIA所属にしていたという、作家として一風変わった略歴を持つ著者が、キンタナ・ローを含む南米地域に関する知識を持っていることに不思議はないが、自ら「マヤ愛好症」を名乗る彼女は、アメリカによってコントロールされた民主化や、それに先立つ大公開時代のヨーロッパによる殖民などに、個人として精神的な引け目を感じているようだ。
カリブ海に面したキタンナ・ローは、多くのアメリカやヨーロッパ人にとってリゾート地でしかないのかも知れないが、著者はそこに息づく古代マヤの息吹と、宇宙開拓が始まろうとする現代にあってさえ、今なお謎を残す海洋との交点に幻想を生み出している。
SFの分野では幾つもの受賞暦がある著者だが、本書も幻想文学大賞に輝いており、ただならぬ視点の鋭さが感じられた。
すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた (ハヤカワ文庫 FT)Amazon書評・レビュー:すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた (ハヤカワ文庫 FT)より
4150203733
No.1:
(3pt)

途方に暮れたくなるフワフワ感。

タイトルは長いけど、ページ数は少なく活字は大きく、さーっと読めます。
メキシコはユカタン半島東海岸のキンタナ・ローを舞台に、
グリンゴと呼ばれ蔑まれても、居座っているアメリカ人の主人公が聞きかじった不思議な話が三つ。

いかにもリゾート地らしい漂うような時間の流れ方に、
海中で幻惑されてもいいような気になってきます。
幽霊ものというよりは、確かに幻想的。

人間は自然に復讐されて呵るべきだという作者の意思が感じられたりして、
少しぞっとします。

でも実は、作者の経歴、死の理由などの方が衝撃的でした・・・。
すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた (ハヤカワ文庫 FT)Amazon書評・レビュー:すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた (ハヤカワ文庫 FT)より
4150203733

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