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消えない月



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【この小説が収録されている参考書籍】
消えない月

消えない月の評価: 3.91/5点 レビュー 33件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.91pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全23件 21~23 2/2ページ
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No.3:
(4pt)

どんなホラーよりも怖いストーカー小説

畑野智美さんの最新長編はストーカーがテーマ
怖すぎでした。

被害者の女性、さくらと、ストーカーである加害者、松原
それぞれの観点から物語は進行して行きます。

女性である私の立場から考えて、一度別れた松原と、周りに迷惑を掛けない為に
自分さえ我慢すれば良いと思い再び交際を決意するさくらに違和感
「いやいや、それをする事で周りにも迷惑が降りかかるでしょ」と突っ込まずにはいられませんでした。

昔と違いストーカー規制も厳しくなっている昨今でありながら
さくらの毅然としない態度や優柔不断な行動には終始歯がゆい気持ちになりましたが
実際同じ立場になった時、あの松原と言うとんでもないモンスター男にどう対処出来るのか
そこにはやはり自信が持てないかも知れない。

人とのコミニュケーションが上手く取れず、家庭環境も決して良いとは言えず
しかしながら常軌を逸する思い込みと妄想、自己中な松原と言う人物は本当にどんなホラーよりも怖かったです。

読んでいる途中、ずっと息苦しく、読み終わった後もどんよりとする後味の悪い読後感となりましたが
インパクトは大で、語弊はあるけれど面白いと思える作品でした。
消えない月Amazon書評・レビュー:消えない月より
410339482X
No.2:
(4pt)

女性作家によるストーカー分析小説

まずは意欲的なテーマに果敢に取り組んだ作者に敬意を表したい。
ストーリーは加害男性と被害女性それぞれによる一人称語りで交互に進行していく。
力点はどちらかというと追いかける男性側の心理描写に置かれている。作者は女性ゆえ、増大する一方に見えるこの種の事件について、当初はモンスター級の男たちのなんとも理解に苦しむすさまじい執着に驚き、着目し、好奇心を持って調べ始めたのだろう。作者のインタレストはまさにその点にある・・・何故?すでに嫌われているのになんでさらに助長するような行為をするの?もっと嫌われるだけじゃない?という作者の素朴な疑問が聞こえてきそうではある。(なお、おそらく相当数の参考文献があるはずだから、これは末尾に一覧を掲載するのがマナーであろう)

さて、作品としての評価はこの恐らく徹底的に調べ上げ想像の限りを尽くして描き出す男性ストーカーの独白に説得力、リアリティがあるかどうかにかかっている。男性主人公は裕福だが愛情に乏しい家庭で育ち、他人への共感性に乏しく、エゴイスティックだが臆病でもあるため人間関係をうまく築けないという性格的欠点を抱えている。長じて東大は無理だったが有名私大を卒業し、なんの意欲も持てないしがない中堅出版社に勤務という設定。
こうした背景を受け、さてドラマツルギー上告白に作りものめいた点はないか、読者(特に男性)をしてストーカー男性の家庭観、恋愛と結婚観、友人関係、職業観、ひとつひとつの心理的反応、いびつな感受性、異様な感性、そういったもろもろの描写を通じて、確かに今の世の中、こんなモンスターもいるのかもしらんなあと納得させられるかどうか、作品の成否はその点にかかっている。読者が(不承不承ながらも)納得すれば作者の勝ちである。

結論を言うと、この男性ストーカーの胸の内を暴き出すことにかなり成功したのではないかと私は感じた。モンスターの造形にまずまず成功しているのではないか。私は男性だが読んでいて、説得力を持つと思った。
一方、被害者女性の描き方は少々平板であると感じた。女主人公は意思が弱く、自己主張の少ない女性として描かれ、常に波風を立てないようにしようと考え行動する。とんでもストーカー男に対する反発が弱いように感じられ、感情移入をして小説世界に入り込もうとするとなんとも歯がゆいキャラである。しかし、これもまたリアルかもしれない。実際の日本女性にもこの手の温和しくて意志が弱く、何かと言うと周囲に迷惑をかけていないかどうか気にしてばかりいる人々が多い、というのも偽らざる実感(これが米国女性なら話はまた別展開になろうが)。同性の作者はこの国に住む人々の同調圧力の強さを常日頃意識していて、むしろ意図的にこうしたキャラを設定したのかな。それにしても一旦別れた後、相手を嫌悪しているくせに周囲に迷惑をかけたくない、私だけが我慢すれば万事うまく収まる、といったネガティブな理由から再びつきあい始め身を任せてしまう、という展開はどーよ。女性達の意見を聞きたいものだわ。こんなもんですか?

この小説では、折々の場面でしばしば「月」が登場する。多くはみかづきであったりする。タイトルにあるとおり、全体を通じて強く印象づけたいと願っているイメージのメタファーであろうが、この程度の量の描写では作者の意図が奏功しているとは言い難い。ストーキングと月の関連性を印象づけたいのであれば、不気味なつながりを想起させるようなエピソード、悪夢的な幻想、人智ではどうにもならぬ哀切、そうした断片をもっと豊富に挿入すべき。

最後になるが、文章が全体的にやや稚拙。シンプルでわかりやすく平易な文体は褒めるべき点だろう。しかし、たとえば豊富な語彙でもって錯綜した文章の絡み合いで小説世界を構築できるベテラン作家が平易な文体を選んだ場合と、貧弱なボキャブラリしか持たず知的好奇心の範囲も狭い若手作家が単純な文章で表現する世界では、同じ対象を描いたとしても自ずと切れ味、奥行き、味わい、風味、余韻などが異なるものだ。
小説家としての感性は端倪すべからざるものがある。なお一層文章修行に励まれたい。
消えない月Amazon書評・レビュー:消えない月より
410339482X
No.1:
(5pt)

怖いのだけれど、これが人間の本質かと思うとついつい読んでしまいます!

お化けの怖さ、ジェットコースターの怖さ、怖さにもいろいろありますが、このどうしようもない気持ちのねじれは、何とも言えません。
人の心は、本当にわからない。信じていたものが、反転する時の恐ろしさ、どうしていいのかわからない、逃げ場のないところまで、追い詰められていく恐怖。
誰にでも、心のよりどころや、誰かに思いっきり寄りかかりたい気持ちは、多かれ少なかれあると思いますが、
それがうまくいかなくなった時に、人はどうしたらいいのだろう。
そんなこと考えながら、ついつい一気に読んでしまいます。
しかし、畑野智美はやはり上手いな。
消えない月Amazon書評・レビュー:消えない月より
410339482X

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