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(短編集)
遠縁の女
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遠縁の女の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.73pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全15件 1~15 1/1ページ
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作者の何時もながらの上手さに唸りました。 | ||||
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武家の跡取りが学友と美貌の幼馴染を残し自ら剣の武者修行に“出たはず”だった。5年後、帰藩した彼を思いもよらない事態が待っていた。推理小説張りの展開をみせる表題作など珠玉の時代小説3中編。 | ||||
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私には表題作が一番よかった。短いセンテンスでたたみかけるように独白する、そのリズムがここちよい。 論理をもって情緒を描くのが得意な作家だと思う。 実によかった。 青山文平を読んで失望した経験は、いまのところ一度もない。 | ||||
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父と子の真摯な会話場面があるのだがこれは珍しいんじゃないだろうか。極端な話、信長と信忠の会話場面など読んだことないもんね。父と子がきちんと会話をすれば道は拓けるってことだろうか。私の場合は後悔しても遅い。 | ||||
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本作品集が単行本として刊行された頃に、書評などでもほめらられていたり、書店の店頭でもたくさん並べられていたりして多少気になったのだが購読するまでは至らなかった。今回文庫化されて内容紹介の「二十俵二人扶持のまずしい武家一家で、後妻が生活のために機を織る」と文言を読み、ほぼ反射的に手を出した。一読して満足。 本作品集に収められた3作はざっと読むと雰囲気が異なるが、主題としては見事に統一されている。いずれも内容紹介にある通り「閉塞した武家社会」を扱っている。描かれた時代は18世紀の末頃で地球の裏側ではアメリカ独立戦争とかフランス革命が賑やかな頃で、日本は田沼時代から松平定信の寛政の改革のころだ。海の向こうでもまさに資本主義が生まれつつあるわけだが、本邦における同様の状況を本作品集ではすべての作品で綿花・綿糸・木綿の生産流通を具体的に扱いながら、具体的かつ実感的に描いている。「問屋制家内工業」とか「資本の本源的蓄積過程」という言葉が実体化されて、それを手に取ってその感触を味わっているようだ。 さらに作品ごとにあつかう題材を変えながら、既成の社会のしがらみから外れてゆく男女のありようが描かれる。1作目では外れ方は向日的な脱出であり、2作目では苦みに爽快さを加えた自己抑制であり、3作目ではこれこそ「心中物」なのではないかと、ろくに読んだことがないくせにそう思ってしまった。3作目に関しては「才能」が時と場所を得ずしていたずらに消尽してしまったり、情緒的な成り行きに翻弄されてしまうなど、人間的現実の儚さとそれへの無力感を醸し出しつつ、それでもどこか突き抜けてさわやかでもあった。そういうところが「純文学vs娯楽小説」という筆者の偏見的尺度を大いに脅かしてくれて、とても気持ちがよい。 | ||||
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内容全体に長い感じがした。もっとテンポが良ければいいと思う。 | ||||
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おもしろかった。読書欄で褒められるだけの内容だった。筋書きもさることながら、文章のうまさには驚いた。読んでいて大変気持ちがよい。久しぶりに小説の醍醐味を感じた。 内容は、「機織る武家」、「沼尻新田」、「遠縁の女」の三部からなる短編集である。 「機織る武家」は、陰鬱な小禄の家に嫁いできた妻の話である。その筋書きが目新しく、興味深く読んだ。嫁いだ家の当主は入り婿で、その妻に死なれたので主人公が嫁いできた、という設定である。当主も妻もその姑(舅は既に亡くなっている)とは血縁関係は無い、ということになる。疎まれた妻ではあるが、嫁入り前に修行した機織で家計を助け、存在感を示すのだった。妻、主人公は機織に生きがいを見出すようになり、夫も人間性を取り戻し、ぼけ始めた姑の面倒を見るために武士を辞めるのだった(致仕、と言う)。 「沼尻新田」は、その題名の通り、新田開発の話である。新田開発をするために主人公は親戚一同の力を借りることにしたが、そのときに必要としたのが自分の父親である。主人公は父親のことを「~父の芝山十郎はよくもわるくも番方だった。享保よりも前に生まれた武官らしく、書物を遠ざけるのをむしろ誇りとしており、考えるより先に躰が動く、そういう父を少年の私は仰ぎ見て育ったが、十六歳で藩校の窮理館通うようになると、いささか腰が軽いようにも映り、三十二歳で当主になってみれば、短慮のきらいに気が向かわずにはいられなくなった。」と言っておきながら、十分に父親の過ごしてきた人生を理解しており、人を集めるには父親のように、出世には遠かったものの真実一路の人生を歩んできた男には「人気がある」と看破して協力を仰ぐのだった。この辺の描き方に私は著者の人生に対する見方を感じ、信頼できる、という言い方は作家に対して不適切かもしれないが、そう思ったのだった。 「遠縁の女」は、一言で言えば、親がその女の家と係わることを避けるために息子を武者修行に出すが、戻ってきた息子は女と暮らすために脱藩するのだった。この話の中にも、人気、の重要さが出てくる。筋書きは目新しいものだったが、主人公である息子が清々しく描かれているだけに、後味の悪い結末になったのは残念だった(しかし、おもしろかった)。 三部の中では、「沼尻新田」が私にとっては好ましい話しで、気分よく読めた。 | ||||
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江戸時代のとある武家家庭の日常を描いた時代小説。 「機織る武家」、「沼尻新田」、「遠縁の女」の3つの短編集が描かれているが、どれも現状への不満と将来への期待がうまく描かれていて惹きこまれた。 個人的には、「沼尻新田」と「遠縁の女」が好きだった。 「沼尻新田」は、単なる沼となった砂地を土地の開発を割り当てられた男が、一人の女性に恋をしつつもその想いを表に出さずに、女性を守ろうとする話。男が生涯を通して守り続けた一途な想いが好きだった。 「遠縁の女」は、剣の修行に出た男の成長と女の怖さを描いた話。剣の修行が、遠縁にあたる女性にどのような影響をあたえ、その結果どうなっていくのか、最後まで読み応えがあった。 | ||||
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毎回、そんなことがあったのか、という新鮮な情報・知識を、意表をつくストーリーテリングに載せて伝えてくる青山文平の時代小説。3本の中編を集めた本作も、それぞれに「へーッ」と驚かされる、爛熟期(寛政~文化・文政期)の江戸時代の武家社会の仕組みやしきたりが描かれます。 『機織る武家』は、下級武士の妻と、賃機(賃仕事の機織り)。 小録の武家に、後添えとして入った女が、生きるために機織りの技を発揮して一家の柱になっていく物語。武家の内職として機織りがふつうに行われていたこと、優れた織り手が地場産業の振興に寄与していくさまなどが、生きいきと描かれます。 『沼尻新田』では、野方衆という「年貢免除」の農民=郷士の存在。 野方衆=郷士は、昔はれっきとしたお抱え藩士だった。藩に扶持(給与)を与える財力がないので、開墾に従事させるという形で首を切られた者たちだ。だから現役の藩士たちは、郷士を見下している。ところが、開墾に従事した者たちは刻苦奮励して農作物を実らせ、年貢免除の特典を与えられていることもあって、豊かになってくる。そうなると妬みの感情が湧いてきて、野方衆からも年貢を取れといった議論がでてくる。なるほどねえ。 表題作『遠縁の女』は、時代遅れとみられている武者修行にでた剣士の物語。 すでに終わっている剣の時代。しかし、父は敢えて跡継ぎ息子に5年の武者修行に出ることを勧める。たどりついた最後の修行の場は、おとがめを受けた藩が流されてくる転封地にある「野の稽古場」だった。流されてやって来るろくでもない藩に対し、武士より強い百姓たちがいることを誇示するための道場で、命がけの稽古が繰り広げられている。百姓たちの剣は生きるためであり、武士の剣は死ぬためのものであるというみごとな対比。武者修行という、時代小説ではおなじみの事柄が、まるで違った色彩を帯びてきます。 第1話と第3話の結末は、家禄返上です。青山は、爛熟・閉塞した武家社会からスピンアウトするという選択をした者たちを描くことで、ながい停滞期に入っている日本で生きるサラリーマンに、人間生きたいように生きるべしと語りかけているようです。 青山文平の筆が見せてくれる、知らなかった江戸時代のすがたに、乾杯。 | ||||
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武者修行にでる武家の若者の物語なのに、ハードカバーの表紙をフルカラーのヌードで飾る。えっ!と言う感じだが、ちょっとばかりの艶めかしさも期待して小説を読み進んだ。3編の中編小説から成り立つ。第一篇は「機織る武家」。貧困と過去の罪悪感に耐えながらも努力と才能で機織り名人になり、一家を支えた下級武士の妻女の物語。旧友との和睦、無実の過去と決別するラストシーンが一幅の絵画のようだ。第2編の「沼尻新田」は困難と思われる砂地の新田開発に、家禄を返上して、一族を率いて取り組んだ、武家の物語。リーダーとしての決断、努力等を経糸に、偶然にであった美しい武家娘との奇縁を横糸にした清々しい一篇。第3編が書名になっている「遠縁の女」である。23歳で父や叔父の勧めで武者修行にでて、5年後に武芸者になって国に呼び戻される。帰国後、いわくある遠縁の女と再会し、そしてハードカバーの表紙で予告している、危険な関係に発展していく。「武芸者は、己の剣で女郎蜘蛛の色香を断ち切る事が出来るのか?」それは読んでのお楽しみ。 前作「つまをめとらば」は清々しい良い本だった。今回も | ||||
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中篇集『遠縁の女』(青山文平著、文藝春秋)に収められている『遠縁の女』は、ミステリアスな時代小説です。 「私」こと23歳の片倉隆明は、藩の徒士頭を務める父から勧められて武者修行に旅立ちます。 隆明の遠縁に当たる「信江は、御城で右筆を務める市川政孝様の娘で、今年、ちょうど20歳になった。城下ではとびきりの美形で聞こえており、その手の話題ともなれば、嫁取り前の男どもの口に名が上らぬことはない」。「実は、信江の美しさというのは妹と重ねるような和んだものではなく。猛々しいほどに艶いており、時折、ぞっとさえする。求めて手を伸ばせば、すっと掻き消えて、不意に現れた奈落の底に向かって墜ちていきそうな気にさせられる。私が余裕を残した顔で対することができるのはひとえに縁戚だからであり、付け加えるなら、信江が歌を詠むからだ。和歌を詠む限り、信江から溢れ出そうとする女も、歌人という世の中に定まった枠に幾分なりとも塞き止められる」。 「御国の箱の道場に閉じこもっていた私にとって、剣の旅は想いの外のものに満ち溢れていたわけだが、なかでも、なにが最も想いの外だったかと問われれば、それは人に尽きた。当初、若い私は、寛政の御代に武者修行に出る者など、ろくな輩ではあるまいと、己れをさておいて、思い込んでいた。いまどきめずらしく恵まれた門閥の子弟の、物見遊山程度なのだろう、と。しかし、剣の終わった時代に剣の旅に出る者が、半端であるはずもなかった。むろん、すべてとは言えぬ。が、覚悟を持って日々を送る修行者は、想っていたよりも遥かに多い。武威が衰えているからこそ、よけいに武威を究めようとするらしく、一様にのめり込む者たちで、まさに、剣より外のもろもろを忘れ、四六時中、見知らぬ己れを知ろうと努めていた」。 病で父が急逝したとの知らせを受け、武者修行を5年で切り上げて国元に帰ってきた隆明を待ち受けていたのは、思いもかけない事態でした。信江の父と、隆明の武者修行中に信江の婿となっていた隆明の親友・菊池誠二郎が切腹してこの世を去っていたのです。そして、信江は隣国で暮らしているというのです。 何ゆえにこのようなことになったのか、隆明は探ろうとしますが、誰も語ろうとせず、謎は深まるばかりです。しかし、やがて、隆明にも関わりのある恐るべき密謀が明らかにされていきます。 | ||||
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青山文平を初めて読みました。 短編ですが、非常に良いと思いました。 どの作も終わり方が独特で、余韻の残る読了感でした。特に最初に読んだため印象に残った一編目の「機織る武家」はそこで終わるのかという場面が印象的でした。 歴史の考察が深く、薄っぺらい歴史ものではなく、古い日本の情景を通して、人の心を深い部分を描く小説は新しくも感じました。 | ||||
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時代小説は普段あまり好んでは読まないのですが、この作者にはぎゃふんとさせられました。あまりに話が素敵なので、どんどん読んでしまいます。もっとたくさん書いて書いて書き続けてほしいと思う、稀な文才を秘めた方です。それに、江戸時代からやって来たかのような秀逸なストーリーテラーで、そこは司馬遼太郎さんとも似ている説得力を持っている。ものすごい研究家なのでしょうが、鼻につかないから楽しく読める。短編集なのに、長編を読んだかのような充実の読後感も、人物描写が奥深いがゆえでしょう。これは筆力が無いと出来ない技です。 | ||||
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内容はおもしろかったですよ。時代物だけど引き込まれたし、夜中まで読んじゃった。いいとおもいます。でも、、、表紙。あれだと他人の前でよみにくい。それと、結局命のやり取りは? | ||||
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「機織る武家」「沼尻新田」「遠縁の女」の三篇、どれも武家の厳しい経済状態が根底にある。 そして三篇には、強い女性が陰ひなたに存在する。 特に「機織る武家」では、たぐいまれな機織りの腕を持つ女主人公縫が、吹けば飛ぶような後妻の立場から一家の経済を支えるまでに成長する。 ただ強いばかりではなく、姑をふんわり包みたいと布を織る。この時代の糸や機織り機、柄の流行、布の流通など、興味が尽きない。 他の二篇も、江戸時代の厳しい武士の居場所を思いがけない道を探って求めて行く。 青山文平の小説は、単なる時代小説に留まらない新しさに溢れている。 | ||||
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