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黙視論



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【この小説が収録されている参考書籍】
黙視論

黙視論の評価: 4.40/5点 レビュー 5件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.40pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全4件 1~4 1/1ページ
No.4:
(5pt)

ネタバレ注意

面白かったけど、結局わからなかった……
いやなんとなくこういうことかなってのあるんだけれど確信が持てないというか
最後のシーンだけがようわからんというか
検索して他の方々の考えを見てみようとしても
どいつもこいつもネタバレを避けたいのかはわかるが「九童環はあの人でいいのかな?」って書いて終わってる、手前の脳味噌の中なんぞ知らねえよってキレたくなるような糞の役にも立たねえ感想ばかりなんでどうしようもない

とりあえずここからネタバレ全開で書きますので、未読の方は読まない方がいいです

結局、拾ったスマホに届いていた「誰か見つけて」というメールをキッカケにして
未尽ちゃんが封じ込めていた未尽ちゃん自身への黙視が発動
九童環=兄に恋心を抱いてしまった未尽ちゃん
その恋心を告白すること=テロル、ということなんですかねわかんにゃい!!!

そもそもスマホは何だったの?誰のだったの?
単に普通にスマホ落とした誰かが、誰か拾った人いますかーってメールしてたのか
「誰か見つけて」ってワードが少々不自然な感じもするが、まあスマホ落としたらそれくらいある?ない?あるかな
誰か見つけて以降のメールがすべて黙視だった(妄想だった)のは作中で確定させられましたし
「どうして、僕は今、泣いているのだろう」で未尽ちゃんが泣いてることからしても、ほぼ確定だと思うんですが

ですが、最後のシーンだけがよくわからない
普通に読めば未尽ちゃんがまた黙視して、兄へ恋心を抱いている自分自身(九童環)と抱き合って受け入れる妄想をしている姿なんですが
……4章で「これが人生最後の黙視になることを予感しながら」って言いつつ黙視してんですよね
最後やなかったんかいと
いやまあ「予感」だからやっぱ最後じゃなかったって話でも良いんですけどうううううんんん
俺が何か勘違いをしているのか???
いやでもそもそも九童環からのメールが黙視だったことは確定なわけで
その時点でもう人生最後の黙視ってのは否定されてるのか。どうなんだわからにゃい!!!!

未尽ちゃんも含めてみんな九歳の時のことが原因で環っていた九童環だったんだよって話ともとれるか……?
でも最後のシーンは当たり前のように黙視とか言って伝わってる時点で、100%未尽ちゃんの妄想でしょ?黙視でしょ?
あれやっぱそういうことであっているのか
糞!書いてる間にわけがわからなくなってきた!「最後の黙視になる予感」とかいうワードのせいでこんなに混乱すんねん……

あと最後のシーンが俺の考えた通りだとすると、結局お兄ちゃん放置されてね?ってのが気になるのも……
いやまあ親友が人生賭けてまでテロってくれたりはしたけども。でもあそこからもう一段階、未尽ちゃんからなんか無いの?何もせんの?
うおおおおわからあなああいいいいいい
まあその前の二人の人物たちも別に何か解決したわけではないし、それでええんか。でも黙視内の谷崎に「あとは任せた」って任されてたじゃん……そこから先は作中より後の問題ってこと?ことなの?

小説を読むのはとてもむずかしいです。面白かったです
黙視論Amazon書評・レビュー:黙視論より
4041025303
No.3:
(5pt)
【ネタバレあり!?】 (1件の連絡あり)[]  ネタバレを表示する

「ことば」や「対話」に対する希望が失われつつある時代に放たれた、「サイレントマジョリティ論」。語るべき言葉を持たないなら……?

ネットでもテレビでもニュースに触れるたびに思うのが「ことば」や「対話」に対する希望が
ちょっと驚くぐらいに失われているのだなあ、という事。

追い詰められた弱者は「テロ」という強硬に走り、彼らと対話する事で何とか相互の理解を図ろうと訴えれば
「テロリストと対話とかふざけるな」と一喝される。
それじゃ「強者」が対話を重視しているか、といえばあちらこちらで「対話の場」である
議会を軽視して「選挙での勝利は有権者からの白紙委任状」とばかりに強権を振るう政治家が国のトップに立っていたりする。

そんな大きな舞台の話は分からない、という方もいるかもしれないので話を卑近な所に持っていけば、
「痴漢冤罪」の話なんかどうだろうか?
「弁解や説明などしても無駄だから疑われたら語るより逃げるが勝ち」とここでもまた「ことば」の力は
欠片も信用を勝ち得ず、「語りあう」という行為は放棄されている。
視点を逆にして女性の立場に立てば「性被害」の問題、ここでも「ことば」は届かない。
「隙を見せる方が悪い」と対話の可能性すら感じさせないマジョリティの一方的なメッセージに圧し潰されて
受けた屈辱を届かない言葉と共に飲み込み、「泣き寝入り」する彼女たちに「ことば」は何の意味も無いだろう。

かつては「サイレントマジョリティ」といえば「現状にさほどの不満が無いので何も言わない層」を指していたと思うが
今や「言っても理解されないから」、「力が無い者がが口を開いても無駄だから」という
「ことばを口にする事で何かを得る事を諦めた層」…という状況になりつつあるのではないだろうか?
「ことば」や「対話」が希望も力も失っていう状況を「黙って視ているだけ」のままで良いのだろうか?
何かしら残された可能性は無いのだろうか?

前置きが随分と長くなってしまったけれども、一肇の新作である「黙視論」を読むと嫌でもあれこれ考えざるを得なくなる。

ここ十数年でSNSなどの発達により世の中にはかつてとは比べ物にならないほど
「ことば」が溢れかえる様になったけど、一方的な感情をぶちまける様な言葉がネットを埋め尽くすばかりで、
上述した様な「ことば」や「対話」への希望が失われつつある状況が進展していく時代に
「分かり合うための言葉」が見付からない人々が口を閉ざしたまま、悶々としている、
あるいは半ば諦めかけて「サイレントマジョリティ」になってる状況へ
一肇が投げかけた「サイレントマジョリティはどうすればいいのか」と問いかける様な一冊である。

物語はとある事情から小学校の5年生で言葉を発する事をやめてしまった女子高生・幸乃木未尽が
スマートフォンを拾ったことから始まる。
未尽の拾ったスマホに連絡を入れてきた持ち主が「テロリスト・九童環」を名乗り
一か月後に未尽の通う高校で開催される文化祭に仕掛けたテロの起爆装置がそのスマホである事を明かした上で、
九堂環に仮初の「プー」という名前を名乗った未尽を「どちらが先に相手を特定するか」というゲームに
巻き込んでいく…というのが主な流れ。

主人公の未尽がモノを言わないんじゃ、話が成立しないのでは、と懸念される方もおられるかもしれないが、
未尽は決して黙っているわけではない。物語自体は未尽の一人称であり、未尽の内側では平凡な女子高生、
(6年も無言の行を貫いている女子高生を平凡と呼ぶのが妥当かどうかはこの際無視する)
際立って優れた頭脳を有するでもなく、格別の勇気を持つわけでもない、ちょっと泣き虫な女の子が
「テロリスト」という非日常の存在を前にオロオロしながらも「テロリスト」を探す様子が描かれている。

作中で繰り返されるのは「大の虫を生かすために小の虫が黙って殺される事は是とすべきか?」という問答。

学者である父親の功績の裏にある不正義とその犠牲となって大学を去った若い研究者の存在を知りながらも、
「功績のお陰で複数のプロジェクトが動きはじめ、幸福になった人間は大勢いるんだ」という父の言葉に
自分が告発する事が正義なのかと悩む水泳部員の崇橋恭矢。

「名探偵」として未尽が頼った元生徒会長、現役時代の活躍から太陽の様な眩しい存在感を発しつつも
女性が意思を表明する事が許されない男性優位の時代に声を発した女性を描いた小説「ジェーン・エア」に
特別な感情を抱き、時に「世間が自分を受け入れぬだろうと嘆き」不安定になってしまう神輿沢れん。

「ことばを発して誰かに分かって欲しい、誰かに自分の本当の姿を知って欲しい」と渇望する彼らと
関わり合いになり、自分以外にも「口に出せない言葉」を抱える人々がいる事を知らされながら
未尽は「九童環」の正体を知るに至るのだけれども、そこでもまた「口に出せない言葉」を抱えて、
そして「小の虫」である自分を殺し続ける九堂環の姿と、その犠牲の上に生かされる「大の虫」に
未尽自身が含まれている真実を突き付けられてしまい立ち尽くす事になるのである。

未尽はまさしく「ことば」や「対話」が力を失っていく状況を黙って視ているだけしかないのかと、
口を閉ざしたまま戸惑い、しかし「本当に自分が納得しているわけではない」事を知っているがゆえに
何か道は残されていないのか、と絶望的な思いに圧し潰されそうになっている
現代の「サイレントマジョリティ」の代弁者だとも言えよう。

真実を突き付けられて、まさに「小の虫のことば」を奪っていた事を知らされた未尽が出した答えに
全ての読者が納得するかどうかは分からない。
それでもこの場面に至るまでの中で「語り合っても分かり合えない」「ことばを発する事が正しいのか分からない」と
嘆く登場人物の姿に接してあれこれと考えさせられるだけでも本作を読む価値は十分にあると小生自身は考える。

一方的な感情の発露にすぎない「ことば」に覆いつくされ、「対話」が力を失う一方の状況に
絶望し掛けている人が多いからこそ本作は読むべき価値を持つのだろうし、読んで考える事が重要なのである。
まだ貴方が「ことば」や「対話」に希望を捨てていないのであれば間違いなく読むべき一冊。
黙視論Amazon書評・レビュー:黙視論より
4041025303
No.2:
(5pt)

テロリストを探す喋らない少女がもたらす許しと自由と温かい思い 一肇の対テロ処方箋

幸乃木未尽(こうのぎみずく)は高校2年生。故あって小学5年生以来ほとんどしゃべりません。会話でのコミュニケーションの代わりに相手をよく見ることに集中しています。スイッチが入ると「自分が理解した相手像」と「自分」が脳内で会話する【黙視】が始まります。【黙視】は超能力ではなく「妄想」と言ってしまえばその通りですが、日常に隠れた真実や美しさや煌きを見つけ出す手段になっていて、誤解も多く生まれるものの、思わぬ気付きで真実に迫ることも。ユニークで面白い設定です。(妄想を暴走させることで今を突破するのは「少女キネマ」と同じですが、【黙視】はおとなしい感じです。)
彼女が高校の校舎裏で拾ったスマホに落とし主から「そのスマホは文化祭で爆発させる爆弾の起爆スイッチだから返してくれ」とメッセージが届きます。返せるわけがない! 落とし主、つまり爆弾テロリストを突き止めようと動き出すと、未尽は怪しい人物に気づきます。
毎昼休みに学校のプールで妙な泳ぎをしている崇橋恭矢(たかはしきょうや)、「名探偵」と言われる前生徒会長の神輿沢(みこしざわ)れん、自分の兄で同じ学校の生物教師で【千里眼】と言われるほどの洞察力を持つ幸乃木太助。さて未尽の【黙視】はテロリストに迫れるか?! ところで「爆弾」とは大爆発する凶器か、世間の常識を転覆させる虚偽の暴露か、纏ってきた見せかけを取り払って己の真実の姿を示す大告白か? 謎は深いです。
未尽は喋らないけれど、引き籠っているわけではなく、弱い薄幸のヒロインでもなく、それなりに行動派で、喧嘩もします。内心の動きは自然で、「少女キネマ」のサチさん以上に十分感情移入させてくれます。
そんな未尽がいろいろ助けられながら進んだ先にあったのは、大多数の平穏のために少数を押しつぶす多数決論理や、逆に多数の圧力に少数者が暴力で反撃するというテロリズムに、正しい論理と行動で対応しようとする努力。これを語るのが作者の今回の挑戦なのだと思います。その意気や良し! 身震いしてしまいます。一肇は現代の問題と戦っている!
謎は解かれきるか、未尽は自らに課してきた呪縛を解けるか、周りの人たちは秘かに圧殺してきた思いの存在を認めて自由になれるか。最後の55頁で一気に加速し、温かい思いとともに作者の呼びかけが伝わってきます。盛り上がりますね。
世界から悩みや苦しみが無くなるわけではありません。そこでできることが【黙視】である、とはどういうことなのか。これこそ誰もができるテロリズムへの対抗手段。さあ、皆さんもご一緒に!
「少女キネマ」では恋愛感情が前面に出ていましたが、今作では恋愛感情もわずかにあるものの、家族愛とか人間愛という重いものを真っ直ぐ持ち上げることに躊躇していません。「少女キネマ」より読むのが難しかったのですが、その分、得た感動も大きいです。
黙視論Amazon書評・レビュー:黙視論より
4041025303
No.1:
(5pt)

突き詰めれば、喋ることを辞めた女子高生「未尽」の成長物語

文芸カドカワで連載された連載版は読んでいますが、連載版とは設定も話の流れも異なるので完全に別物ですね。
結論から言えば、面白かったです。

喋ることをある時から辞めた少女「未尽」が、放課後・帰り際に学校構内で拾ってしまい、
下校時刻が大幅に過ぎていたため学校の事務員に預ける間もなく、スマホの持ち主を名乗る人物が現れる。
その人物「九童環」は1ヶ月に行われる文化祭に爆弾を仕掛けたということを告げ、自分が未尽を見つけられたらスマホを返し
自分を見つけられたら、テロを諦めるという風に持ちかけてきて…というストーリー。

喋ることを辞めていても、気分が悪いと未尽が単独で九童環を探そうと色々試みるもトラブルに巻き込まれつつ
最終的には自分の兄であり教師でもある「太助」に行き着くが…
まあ太助がかっこいいというか、自己犠牲かなりやっているそんな役回りだけれど聖人かという感じの感想を抱いた。

少女キネマに続く「暴想シリーズ」ということで、
今作では喋らないけれど感情表現はそこそこある未尽の暴想はほぼ最後まで流れている。
折り合いが付いて。暴想がない最後数ページは感動した。

今作では犯人が明示されない「リドルストーリー」形式を取っているけれど、
ヒントは多く散りばめられているので「九童環」の正体をある程度推論や考えることはできるようにはなっていて
面白かったと思う。穿ちせずに素直に考えると、この人かな…ということに落ち着いた。

オリジナルでは少女キネマ以来3年ぶりの新作で期待値が上がっていましたが、
それを乗り越えていくような面白さでした。次回作も楽しみにしております。
黙視論Amazon書評・レビュー:黙視論より
4041025303

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