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(短編集)

これはペンです



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【この小説が収録されている参考書籍】
これはペンです
これはペンです (新潮文庫)

これはペンですの評価: 3.43/5点 レビュー 21件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.43pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全21件 1~20 1/2ページ
12>>
No.21:
(5pt)

姪との関係性の中で、「輪郭」を形成しつつある叔父の話

気になってはいたが、読めてなかった本で、最近読みました。
非常に面白いが、他社の反応を調べたところ、評価が二分していることに興味をそそられたので、レビューします。

芥川賞選評会のなかでも意見が分かれたことが有名らしく、それだけ評価が難しい本なのだろうと思います。
村上龍さんがDNAの記述に誤りがあると言っておられたらしいですが、これは誤解ではなかろうかと推察します。
DNAだけでできたウィルスは考えられない、みたいな文章が小説内でみられるが、これは、文字通りDNAのみで構成されたウィルスは存在しないと言っているのであって、細胞に侵入するためのタンパク質等でできたインターフェイスの存在を欠いたウィルスは存在しないだろうということを言っていると思われます。村上氏は、これを曲解したのではないかと愚考します。
ただ、いずれにせよ、そのような些末な事象を取り上げて、全体の評価を決定づけるというのは短絡的なようにも思えます。
※この芥川賞周辺の議論を読んでみましたが、芥川賞選評委員会の構成員にもっと多様性を持たせた方が良いかもしれないですね。所謂、老害みたいに言われている石原氏みたいな人もいる一方で、がちがちの理系作家や、フェミニスト女性作家、10代の若い作家、ホームレス読書家など、カオス空間にしちゃえばいいのにと勝手に思っています。

また、難解だと言われているようですが、恐らく以下のポイントが要因のように思います。

・複雑系や情報科学(プログラミング言語だけでなく、より広義の意味で、例えばDNAや自然言語、身体言語を含む)、脳科学あたりの知識を知らないと分かりにくいかもしれない。
・物事をフラットにみる視点が不足していると読みにくいかもしれない。つまり、相対化できる能力。これはどの純文学にも共通して問われる能力のように思います。
・sf小説やsfアニメなど、sf作品を触れていないと読みづらいかもしれない。ネタバレになるので詳しく言えないが、攻殻機動隊sacシリーズが問題としているテーマと、少し関連があるように思える。また、円城さんとも縁が深い伊藤計劃さんの本なども読んでおくと、入り込みやすいように思える。

ただし、以上のポイントが不明瞭でも、問題としているテーマは音楽や詩歌のように響いてくると思われます。あるいはその不明瞭さそのものが味わいであり、テーマであると言って差し支えないように思われます。だから、そのまま、ありのままに読めばよいのではないかと愚考します。また、関係やネットワークというキーワードを念頭に置きながら読むとより楽しみやすいと思います。

僕は、タイトルのように、叔父が姪との関係性の中で「輪郭」を獲得しつつある物語であると認識していますが、他にもいろいろな見方ができそうなところがこの小説の魅力の一つではなかろうかと思います。
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No.20:
(4pt)

読み易いがやっぱり理解不能な安定の円城塔

作者にしては読み易いと思うが、でもやっぱりわからないところは安定の円城塔。表題作の文章自動作成装置と言うのは極めて今日的で、大学生がこぞってwebからのコピペで論文をでっちあげてしまう近年ほとんど社会問題化している問題を先取りしているかのように読めた。しかしそこを避けていたら、文学に未来はない、と受け取ったけれど、やっぱり根本的なところで理解不能ではあった。「良い夜を待っている」の方もわからない点では同じだが、私にはより理解し易い話で、人間離れした記憶力を持つ「父」が、それ由に現実に適応出来ない悲哀は、普通の文学のように胸をうつものがあった。これもアスペルガー症候群の人が特定の分野では天才的能力を発揮するが、と言う現実の問題とリンクして、実に興味深く読むことが出来た。こちらの方が傑作のように、私には思える。
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No.19:
(2pt)

「体の方をつくり変えねば決して読めない本もある。」

SF、伊藤計劃との共著、芥川賞、という著者に関するキーワード、および文書自動生成というキーワードから試しに手に取ってみた。
 「良い夜を待っている」内の主人公の言葉、「体を変えれば本の読み方だって変化していく。体の方をつくり変えねば消して読めない本もある。」というのがそのままこの本の感想に当てはまる感じ。私がこの本を真に読もうとするには、色々とまだ足りていないのだろう。今の私の読後の感想としては★2つだが、10年前、10年後に読んでいれば、また印象も、評価も、変わっているだろう一冊。
 手に取ったのが単行本のため中身が文字だけだが、例えばタイプボール等もうあまり一般的ではないものに関してもう少し図とかでの説明があると少しは分かりやすくなるのかもしれない。(だから単行本の表紙に描かれているのかもしれない。)まぁ、途中にそういうのがあると文章のリズム、魅力が失われるのかもしれないが。
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No.18:
(2pt)

kindle版は買ってはいけない

内容のレビューではないんですが、
kindle版だと『良い夜を持っている』の最終部に出てくる重要な文章が、
kindleのフォーマットでは再現できておらず、数行の文章を一枚の画像にして無理やり表示させています。
PCでもスマホでもkindleでもその部分になると急に画面いっぱいに拡大された画像が出てきて、
めちゃくちゃ興を削がれます。
そもそも文庫本が出てるのに、kindle版が単行本準拠で値段が高いままなのが意味不明。

私はこの小説が大好きで新潮文庫の紙のカバーでは読んでいるとすぐにボロボロになるため、
すでに何冊も買いなおしていたのだが、意を決してkindle版を買ってみたらこの有様だった。
出版社はもうちょっとまともな対応をしてほしい。

もしこの小説が気になっている方はkindle版ではなく紙の本を読んでいただきたいです。
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No.17:
(2pt)

今さらですが科学的な誤り

どうにも弱った作品です。一文読んでは意味を考えるため読み直す。そして十分理解しないまま先へ読み進める。その繰り返しが続くのですが、かといって文章がへたなわけもなく、また読みごたえもあるのでなかなかやめられない。結局理解できたのは、これはただ物理用語を並べただけの中身のない作品ではないのかということでした。
 さて、この作品はかつて村上龍さんが科学的な誤りと指摘し物議をかもしました。いまさら蒸し返すのも野暮な話ですが、その箇所は作品中准教授が言った「100パーセントDNAだけでできたウィルスはというのはちょっと聞かないかな。……」という記述ではないでしょうか。ウィルスは核酸(DNAおよびRNA)とタンパク質の殻とで構成されており、実際DNAだけのウィルスが存在しております。よって科学的誤りがあるという村上氏の指摘はあながちまちがいではないと思います。(ただし殻の存在をどう取り扱うかによって意見はわかれそうです)
 さらに、冒頭に磁石を中華鍋で炒めて磁力をなくするという行為があります。たしかに熱を加えれば磁力は低下しますが、鍋で炒める程度(200〜300度)では磁力がなくなるはずもなく、よって砂鉄が取り除けるとは到底思えません。また、加熱によって磁力が急速に失われる、水と氷のように変転途中の中間状態は存在しないといった記述がありますが、これは明らかに科学的な誤りです。磁力は加熱により徐々に低下していきますので。たしかに磁力が一気に消失する温度はあります。しかしその温度に達した磁石は常温に戻しても磁力は消失したままとなります。作品中には炒め終わった磁石に対して「磁力が少し弱まっており」との記載があるため、よってこの消失温度には達していなかったことになります。つまり矛盾です。そもそも玄関で磁石を落っことしただけで大量の砂鉄がくっつくことはないと思うのですが……。
 とはいえ、叔父と姪と語り手との関係が明らかになっていく構成はすばらしいですし、さらに現代における論文や思想書の悪文ぶりを皮肉っている点は痛快です。また冒頭で私はこの作品には中身がないと申しましたが、それはおそらく著者がこの作品の特殊性を考慮し意図しておこなったことなのだろうと読後に納得させられました。その無謀ともいえる挑戦には感心しましたが、いかんせん中身がないのは事実なので、この評価にとどまりました
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No.16:
(5pt)

芥川賞選考の裏側を勝手に推測すると

「これはペンです」は、芥川賞候補になりつつも、最終的には村上龍が「科学的な要素に重点を置いているのに、科学的記述に誤りがある」「私はこの分野を勉強したから、誤りが分かるんですけどね」などと言ったのが決め手となって落選した作品である。

さて、それは何が問題だったのかを、推測してみよう。

それはおそらく、タイプライターに関する記述である。
タイプライターでシーザー暗号(シーザー暗号とは、アルファベットの並びを一定数ずらすことで、平文を暗号文に変換する方式だ)の記述があり、そこで変換の例として、AとかCとかTとか出てくるのである。
そして、その直前に、DNAを構成する塩基であるATCGの名前が出てくる。
おそらく村上龍は、シーザー暗号の例で出てきたAとかTとかいう文字と、DNAのATGCを混同したのではないだろうか。
そして、シーザー暗号の例がAとTとCとGでないので「科学的に誤っている」という結論を導き出したのだろう。

まあ、本当のところは、知らないけどね。

個人的に問題だと思うのが、シーザー暗号とかATCGとか、ちょっと気の利いた高校生なら知っているようなことを、「自分はこの分野について執筆するために勉強したから知っているんだけどね」とか言っちゃう、ブンガクのオジサンの痛々しさと、この誤認識をその場の審査員の誰も指摘できなかったという、ブンガクのセンセイたちの理系度の低さである。

ちなみに、この次の回で円城塔は「道化師の蝶」で芥川賞を受賞しているのだが、村上龍は選考会をドタキャンしたそうである。

-------
後半の「よい夜を持っている」だが、これはよいラブラブ小説。
愛妻家で知られる円城氏の、奥さんラブラブっぷりが溢れている。
読んでいて恥ずかしくなる。
素敵。
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No.15:
(4pt)

物理系のSF奇特なファンタジー

女性より男性のファンが、ただし男性の言葉が多い知識でしょう。
老先生や学生の骨格も筋肉もないが、何しろ巨大前頭葉が他人が、
男のおかしい内容もあります、、
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No.14:
(5pt)

文章

文章というのがどういうものなのかに興味を持つようになった。自分も文章を書きたくなる。
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No.13:
(3pt)

詩として読めばいいのではないだろうか

「これはペンです」は、とても読みやすくきれいな文章なのだが油断すると
字面を追うだけになりなかなか頭に入ってこない妙な感触があった。
なぜか、と考えたがそもそもあまり深い意味の無い文章が多いこと、
はっきりしたストーリーが無い(あるにはあるが起承転結という形式ではない)こと、
このあたりに由来しているようだ。なかなか新しい読書体験だったが、定食屋で
カツ定食や生姜焼き定食をうめえうめえと言って食っている自分が懐石料理を
食った時のような感覚があった。

少し視点を変え、これは小説の体裁を取った詩なのだと思えば良作だと思う。
ストーリーを楽しむのではなく文章そのものを味わえばいいのだろう。

「良い夜を」は若干叙情的な部分もありそれなりに定食的視点で楽しめた。
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No.12:
(1pt)

万人向けでは無いデス。

SF?ファンタジー?
期待していたお話しでは無かったです。
素人には理解出来ない文体でした。
誰かに感情移入したり出来るお話しでは無いデス。ハラハラもしません。
泣ける事も笑う事も怒る事も無いデス。
ただ、文字です。
「これはペンです」
では無く
「これは文字です」
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No.11:
(4pt)

野心的作品

「これはペンです」と「良い夜を持っている」 の2編が収録されている。
「これはペンです」は芥川賞候補作ながら、審査員にだいぶ酷評された作品とのこと。
使い古された言い方だと、前衛的、ということなんじゃないか、と思う。理系以外にはつらい内容かも知れない。理系のネタを楽しみつつ、しかし、文章が自動生成できるなら物書きってのはいったい存在価値があるのかと読み手に突きつけるような気がする。
仕掛け満載の手紙を送ってくる叔父の正体を探るうちに、自分の内面も見つめ直し、、、という内容で、最後にはっとさせられる。
最後に残る家族愛のような暖かさは何なんでしょうか。

「良い夜を持っている」は、実は「これはペンです」とつながっていたというオチなのだが、薄れない記憶を持つ人物の苦悩を描き、大量記憶を持つ変人(?)のような父の人生を追ううちに自分の人生も交錯していく不思議な物語だ。
これも最後に家族愛がじんわりと浮かんでくる。「これはペンです」よりもはっきりと心に届く物語だった。
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No.10:
(5pt)

思考実験に近い作品

自分にとっては初円城塔作品です。
「これはペンです」、「良い夜を持っている」の2作品が収録されていますが、どちらも非常にミニマム。
起点を用意し、そこから論理展開を繰り返すことで新たな発見が生まれ、物語は進んでいきます。
度肝を抜くような壮大な設定や大きな感動を呼ぶダイナミックさといった外への広がりは皆無ですが、まるで思考実験を行なっているかのように内への広がりを無限に感じられる作品です。
言語、記憶といった人間の根幹に関わる部分を、フィクションではあるけれどもロジカルに描く筆力は圧倒的です。
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No.9:
(1pt)

これが噂の、

有名なので買ってみました。
なんだか分かりません。
途中で読むのを諦めました。
時間を置いて再度チャレンジしたいと思います。
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No.8:
(4pt)

テキストからもらう自分の反応を楽しむ読書

五感が重なる共感覚のようなあるいは多重の意識をコントロールするような、常人と異なる言葉の感覚を、をあえてテキストだけで伝えようとしているようです。安易にナンセンスだと断じるよりも、これが腑に落ちるごく僅かな人たちのために小説を書いているのかな、と感じました。

屍者の帝国、の他人のテキストをイタコしている円城塔よりも(全く否定の意図はなくむしろ感謝した口ですが)、こちらがやはり本領ですね。テキストからもらう意識の反応が素敵な読書時間でした。
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No.7:
(5pt)

非常に興味深い作風

著者の作品に接するのは、「オブ・ザ・ベースボール」に続き、2冊目。
「オブ・ザ・ベースボール」収録の【つぎの著者につづく】を読んだ時、著者は理系出身であり、テーマを数学的な論理思考で解明しようとしているのではないか、という感想を抱きましたが、本書収録の2つの作品を読んで、その印象をますます強めました。

【これはペンです】
第145回芥川賞候補作となりながらも、出席選考委員の9人中、4人が「積極的な反対」をしたとされる本作品、どんな作品かと興味津々でしたが、個人的には、よく出来た作品と評価しています。
「論文の自動生成プログラム」と「自動生成された論文かどうかを判定するプログラム」を作った叔父の真の姿を追い求める姪の一人称で書かれた本作品は、【つぎの著者につづく】と同様、「言葉」がテーマ。
数学的思考で、次々と繰り出されるアプローチには、大いに感心させられました。

【良い夜を持っている】
最初、【良い夜を「待っている」】かと思ってしまいました。
【良い夜を「持っている」】のですね。
これは、「記憶」をテーマにしたお話。
見たこと、読んだことを決して忘れない「超記憶力」を持っていた父が亡くなり、その記憶のシステムを解明しようとする「わたし」。
最後から5ページ目に記された「記憶のシステム」には、目眩がしてしまいます…。

「オブ・ザ・ベースボール」のレビューにも記載しましたが、著者の作品は、しばしば「文学作品」を評する時に言われる「人間描写の巧みさ」「人間の魂の叫び」などとは無縁の作品。
でも、テーマである「言葉」も「記憶」も掘り下げていくことで、「人間の本質」に迫っていくものではないでしょうか。
その意味で、「人間を描いた」小説になっていると、私は思っています。
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No.6:
(5pt)

小説におけるオリジナリティ、小説を構成する断片間の"関係"性を追求した快作

作者の作品としては、「Boy's Surface」、「Self-Reference ENGINE」、「道化師の蝶」、「オブ・ザ・ベースボール」に続いて本作を手に採った。我ながら物好きとも言えるが、理数系人間のための小説を書き続ける作者には好感を抱いている。本作には表題作と「良い夜を持っている」の2つの中編が収録されている。作者の作品の一番の特徴は「読んでも理解出来ない」点にあると思う。その上で、「作品を産み出すチューリング・マシンは作者ではなく、読者の想像力の方」という独創的哲学の下で執筆している姿勢が伝わって来る。表題作はその独自の小説作法の一部を解体して見せた(チューリング・マシンが登場人物側にやや移った)感がある。

表題作は、「論文を自動生成するプログラム」及び「ある論文が自動生成された物か否かを判定するプログラム」を開発した幻の「叔父」の姿を追い続ける「姪」の手記という体裁で綴られる。ソフトウェアの世界では昔から"機械翻訳"という分野があり、R.ダールの短編には「小説の自動生成機械」を扱った話が出て来るが、その辺は充分承知の上で、小説におけるオリジナリティ、小説を構成する断片間の"関係"性を追求した快作だと思った。相変わらず、輪廻(に代表される位相幾何)の構造が埋め込まれている(「「叔父」=「姪」」あるいは「「叔父」=「読者」」であっても構わない)。この手記自身が「小説の自動生成プログラム」によって作られていると仄めかしている辺り可笑しい。更に、「姪」の母が「誰にもわからないことを言い続けて何の得があるものかね」と呟く箇所では爆笑した。従来の、位相幾何学、物理学、計算(機)理論に加え脳科学(意識)にまで作者の守備範囲が拡がっている。「良い夜を持っている」は、絶対記憶力を持っていた亡き父(サヴァン症候群 ?)の思い出を"夢"を中心に綴った情緒的作品とも取れるが、表題作のモチーフの繰り返しとも取れる。即ち、AIの限界を小説風に論述した物という意味である。しかし、APLやアイバーソンの名前が出て来るとは驚いた(この文脈では普通はPrologだろう、APL専用キーボードのためか)。私事で恐縮だが、APLは私が最初に習得したプログラミング言語なのである。

数理をもって小説を構成する稀有な作家との認識を益々強く抱いた。今後も期待したい。
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No.5:
(1pt)

よくわかりませんでした

何が何だか理解出来ない、というのが正直な感想です。

この本をスラスラ読める人は頭が良いんだろうなぁ、とだけは何となく感じました。
大学の難しい英字論文を日本語に翻訳した感じです。

途中からは意味を理解するよりも
ただ惰性で字面を辿るだけになってしまいました…。
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No.4:
(4pt)

この本のジャンルは・・・、ペン?

この本は2作品で構成された作品で、1つめは「よく読むと意味の無い文章を自動で生成する装置」を開発した叔父とその姪との文通の話。2つめは無限の記憶力を持つ父と子の話。1つめは「よく読むと意味の無い文章を自動で生成する装置」を使って書かれたんじゃない?とも思わせる作品で、白い世界に閉じこめられた様な不思議な感覚を味わえた。2つめは、ふむふむなるほどという感想と、1つめと違い彩りある現実の舞台へ降りている感覚があった。疑問なのは、この話って装置を作った叔父とその父親の話なの?ってこと。だって2つの話を1冊にまとめてる訳だし。どうなんだろう。全体的な感想は、2つの話が合わさって、なんか鼻が通る感じを味わえて、素直な小説ではないけど、登場している人達が純粋で好感が持てる作品でしたよ。という感想です。星4つなのは、1つめの作品がスッキリしない点。でもそのスッキリしないのは、やっぱり装置で書かれた作品って設定だから?いや、でも・・・という堂々巡りをさせられて、そんな思考から抜け出せない。そんな風になりたい人にはお勧めかな〜。あと、この感想文は、驚くことにその装置を使って書かれていません!あしからず。
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No.3:
(4pt)

表題作より「良い夜を持っている」のほうがいいな!

名前は前から知っていたし、本も気になっていた著者の、
僕にとって初めての読書でした。
SFはそんなに読み込んでないけど、読みなれてないわけでもなく、
物理や数理は不案内でも小説として楽しむにはマストではないはず
とおもって買いました。

基本的にはすっごく頭のよい小説で、書いてあることを理解するのにも
それなりの苦労がいる感じの、嫌いじゃないタイプですが、
文章の自動生成を発明した叔父とのやり取りをめぐる「これはペンです」
はちょっと面白味がわからなかった(不明を恥じるべきなのかどうか
わかりませんが。)

でも、二つ目の「良い夜を持っている」は写真記憶をする父を描いて、
文章もやわらかくはないけれど、よくとがったシャーペンみたいな、
気持ち良さがあって大好きでした。
中身的にもこっちのほうが温かみがあって、テーマや筋がわかりやすい感じ。

読み終わってみると、どっちもどうしてかわからないけど、程よい距離感の
肉親の情みたいなものが残響的に残ってすごくいいんですけど、
表題作がもうちょっと読み物として面白いとよかったな、と思って
★4つです。
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No.2:
(5pt)

豊かな時間

円城塔氏の作品は、大部分が物理学と数学によって構成される。この著作も同じ。その分野に疎い私には、述語の意味が全く分からない。それでも世界観は、何となく楽しめる。では、あらすじを説明しろといわれて、はたと困る。残ったものが表現できない。では、読書の意味はなかったのか?そうではないと思う。「なにも読まないこと」と「なにも無いことを書くことを読むこと」(スタニスタフ・レム)は全く違う。円城氏の作品は、後者である。そのような時間を生活から割けることが、豊かさなのだろう。
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