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現代詩人探偵
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現代詩人探偵の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.25pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1~4 1/1ページ
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著者あとがき この物語を書いている間中つらくて苦しいと思い続けました。 なんで書いているんだろう、こんな小説は誰も幸せにしない、書いてる私がこんなに辛いのに、と。 いづきさんの辛労い気持ちに同調してしまうとヤバいなあと感じながら何とか巻き込まれずに読了。無事だとホッとする反面、もうちょっとヒリヒリする崖っぷちまで行くべきだったかな、と少々残念な複雑な気持ち。 今回はSFでもファンタジーでもないミステリ仕立ての文壇風心象遍路です。 とあるSNSのオフ会「現代詩人の会」に集まった9人の男女。 参加資格は詩を書いて生きていく志のあること。主人公はその会で当時最年少の中学生だった。詩の題名は「探偵」。 そして十年後の同日に再会の約束を交わし、詩を捨てきれずされど詩で世に出ることもできない彼が躊躇しながら出席したその会では参加者の半分が自殺や事故で不慮の死を遂げていた。詩と死。何故詩人は死なねばならなかったのか「探偵」は死の理由を求めて故人の痕跡を辿ります。 詩で詩人ですよ。純文学の又吉よりもずっとマイナーな世界です。本読みグループの達人達も詩にはちょっとハードル高いんじゃないかな。 物語はミステリだが素材は詩。そして死の理由探し。 自分も思春期に一瞬このような悩みの中に居たことを思い返させてくれます。 中也や賢治や智恵子に耽溺した昔の記憶の埃を払い、傍らにそっと忍ばせながら読み、あの面倒くさい時分の自分に僕も再会するような懐かしさと気不味さに浸りました。 そんな意味で評価は★★★★マイナス★★です。 詩人の呪縛から逃れて無事オトナの世界に逃げおおせた自分と僕の友人の皆さん。良かったですねえ。 そんな辛労い物語を身を削って書いてくれたいづきさんに ささやかな感謝を捧げます。 | ||||
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詩人になろうとして、なれず、もがいている青年が主人公です。 彼は、かつての仲間が自殺した理由、事故死した原因を探ろうとします。 彼らは死を選ぶことで、詩人たりえようとしたのか。 そんなことを考えながら。 やたらめったら重いです。 主人公の苦悩する様を読んでいると、こっちまで気がめいってきてしまいます。 ラストにどんでん返しも用意され、一応ミステリの形にはなっていますが、これはエンターテインメントではない。 純文学畑で発表するべき作品ではないでしょうか。 気楽にミステリを楽しみたい、という人は、避けたほうが無難です。 | ||||
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著者は恋愛ものですらミステリにしてしまうのでこの分野の素養があるとはおもっていたが、実際にはなかった。 文章が長々としてて冗長だし、テンポが非常に悪い。 また、文体そのものが変わってしまった。言い回しがとてもくさい。 SNSがモチーフということで良作の「青春離婚」のようなものを期待したが、 結果としては薄く延ばしたライトミステリ。 また、詩人、詩がテーマだが、これも、センシティブな文体だった「青春離婚」のような詩的センスもまるでない。 どうしたのいづき?という感じ。 ファンが読むとまあ期待はずれでしょ。 | ||||
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「詩人」という物を「生き方」として捉えたならば、それがどれほど過酷な人生となるのか想像出来ない、いや、想像したくもない この世に生きる上で耳を塞ぎ、目を瞑り、心を閉ざす事は避けられない筈なのに、敢えて全てのチャンネルをオープンにして世界の全てを受け止め 揺さぶられる、下手すれば振り回される様な自分の心を一欠けらの偽りも無しに言葉として紡ぎ出す…正直、人間の生き方とは思えない 紅玉いづきの新作は、そんな「詩人という生き方」を真正面から捉え、その果てに何があるのかを探し求め続ける一人の青年「探偵」の物語 主人公は25歳の青年、大学は出たものの文学部での詩の研究という教職課程でも取らねば学部を卒業した後、即路頭に迷いそうな道を選んだ挙句、 案の定就職活動に挫折してコンビニバイトで糊口を凌ぐフリーターである。三年目となるバイトを終えて帰宅した彼はふと15歳の自分の詩を誉め、共に 詩作の道を歩もうと誘った友人の事を思い出す。それから十年の時が過ぎた事に想い至った彼は古ぼけたノートパソコンを立ち上げ、HDDの中に 眠っていた「探偵」という詩と、それに続く日記を引っ張りだす事に。日記に記されていたのは十年前、「現代詩人卵の会」地方都市オフの為に隣町の ファミレスに出掛けた日の出来事であった。「将来的に、詩を書いて生きて行きたい人」という参加条件を持つそのコミュニティに集ったのは自分を含めて 九人。持ち寄った自作の詩のタイトルから「探偵くん」と呼ばれる事になり、合評を経て現代詩壇について語り合った後、十年後の再会を約束した事までが 記されたその日記を読み終えた彼はやってきた約束の日に再会の場であるファミレスへと足を運ぶ。その場で彼を待っていたのは四人、自分を除く残りの 四人が何故現れないのかと不審に思った彼に告げられたのは彼らが皆、死んでしまったという驚愕の事実だった。戸惑いながらも「なんで、死んだんですか」と 問う彼に帰って来たのは「お前が本当に探偵ならば、調べてくれれば良いのにな」という真相の究明を押し付ける様な声や、更にそれに反論する様な 「調べた所で死者が蘇る訳ではない」という墓場荒らしを窘める様な声。この時代に詩を書いて生きる事が可能なのか、死ぬ以外に詩人になる事は 不可能なのかと自らの内で渦巻く疑問に駆り立てられる様に彼は「でも、僕は知りたいです」と言葉を発し、死んだ四人の真相を見極める事になるが… あとがきで書いている間ずっと辛くて苦しいばかりだった、と語っている様に自分の中で想いや感情が渦巻き、それを何らかの形で紡ぎ出す事に 取り憑かれている様な人間には「なんでこんなに苦しいんだ」と終始自らを追い込むような読書体験になるかと思われる。自らと向き合い、自らの内に ある物をそのままの形で掬い上げる事がどれほど紡ぎ手を追い込むのか…他人に鑑賞させる事を前提に、「受け」など狙う事を考えるならば、まだ楽 他人の存在など放棄し、世俗的な倫理観なども踏み越えた所にある純粋な「自己」を絞り出すなんて自分の身を切り刻むような苦痛でしか無い しかも紡ぎ出した物が他人の理解を得られるとは限らないし、むしろ他人の理解を得られる事など最初から諦めた方がマシ、という世界を描こうとすると こうまで読んでいて苦しい物語が出来るのかと久しぶりにギリギリまで追い込まれる様な読書を経て、実感させられた。本作は日常的に何かを紡ぎ出す 作業に耽っている人間にとって余裕のある時以外に手を出すべき代物じゃない 予め言わせて貰うが、死んだ四人の死を「なんで、死んだんだ」、「何で、死ななければならなかったんだ」と真相を見極めようとする彼の「探偵」ぶりは 誰も救わない。「探偵」は死者を冒涜する物だ、と例えるミステリは多いけれども、本作はその「探偵」の罪深さを嫌になる位に真正面から描いている 死人が何も語ってくれない以上、彼が問い掛けるのは彼らの母親であったり、妻子であったり、元恋人であったりと生前の彼らの身近にいた人間に なるのだけれども、身近な人間の決して穏やかとは言えない死に残された生者として何とか折り合いを付けようとしている人々の前に現れて、その死の 真相を解き明かそうとする行為が誰かを救う筈は無い。むしろ、やっとの想いで癒そうとした傷に無理やり指を突っ込んで押し広げ、血を噴き出させるに 等しい、身勝手極まりない行為として描かれているし、当然拒絶などの形でその報いを受ける事にもなる また、死んだ詩人たちの抱えていた物が解き明かされたからといって、それが彼らを救う訳ではなく、むしろ彼らが墓の下に持って行こうとした物を 暴き立てる事は間違いなく冒涜的な行為であるし、死者に対する辱めに他ならない。農薬を飲んで「イタイ タスケテ」しかノートに書き遺せなかった者、 性的マイノリティである自分を持て余し、恋人は居ながら、その想いを満たす事が出来なかった者、そして他人の言葉を自らの言葉として紡ぐ事になった者、 彼が見せ付けられる死者の姿はどうしようもなく痛々しく、真相を知れば知るほど、詩人として生きようとすればするほど死に向かっていくしかないのではないか、 そんな絶望感ばかりが掻き立てられる 読めば読む程に、なんでこんな想いをしてまで「探偵」として詩人として生きて行く事ができなかった仲間たちの死を暴き立てねばならないのか、何故彼らの 死をワイダニットの点から追求せねばならなかったのか…主人公の行動の理由がどうしても理解できないまま終盤を迎える事になるのだが、最も謎めいた 四人目の死の真相に辿りついた彼には、その答えに辿りつくに至った理由とともに彼が抱え続けてきた秘密が明かされる 今回のレビューにおいて主人公を「彼」として表現させて頂いたのには、まさにそこに関連しているのだが、そこに「詩は誰の物か?」という本作における 究極の問いが繋がり、他人の詩が読んだ人間の血肉となれば、それは一体誰の詩となるのか?というもう一つの問いを生じ、そこにこそ詩人として生きる、 その極めて厳しい生き方を送る上での一つの答えが示されている。同時にそれは不滅の存在に成り得る詩の力の証明ともなっているのである およそ取りとめの無いレビューとも言えない文章になったかもしれない。だが、本作は詩に限らず、何かの形で自らの心の動きを紡ぎ出そうとする人間には 避けて通れない問題を正面から取り上げ、紡ぐ事で何が出来るのか、何者になれるのか、そんな問いを作者なりに極限まで追究した結果である。そこには 他人の理解を得る事はおろか、自分自身の行いの動機すら掴みかねる「創作」の根底に何があるのかを読者に示し、創作に関わり、苦しい思いをしてまで 何故自分がそうせざるを得ないのかに悩む人々にとっての「救い」になる何かがあるのかもしれない。ギリギリの所まで追い詰められる読書となるかも しれないが、「自分の内側から何かを紡ぎ出す事」に取り憑かれていると感じる方に取っては必読の一冊であろう | ||||
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