大正箱娘 怪人カシオペイヤ
- 大正 (6)
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箱娘シリーズ②巻。設定が頭に入ってるせいか①より読みやすく、内容がさらに面白くなってました。 主人公の紺は今回も、あせったり途方に暮れたり、泣きそうになったり恐怖に後ずさったりしながらも、逃げずにがんばってます。 ①でちょろっと出てた燕也が、ここでは3話あるうちの2話に出ていて、やっぱりというか、紺とやりあいます。 この巻でやっと彼の性格や考え方がわかってきて、これからが楽しみになってきました♪ 叉々も、紺に対してはフレンドリーになってきてる気が。 うららと叉々が一緒にいるシーンが少なかったのがちょっとだけ残念。オカンか、とツッコミを入れたい叉々の世話焼きセリフが好きだったので。 悪食警部もレギュラーなんですね。①でも②でもこの人は安定の腹黒さ。見た目を想像してみると渋くていい感じなんだけどなー。 ところで今回、うらら、かっこよすぎ。そっちの趣味はないはずなのに思わずフラフラ行っちゃいそうに。 これは開けなくていい箱、を開けかけてあわてて蓋をする。ギリでした(笑)。 紅玉いづき先生の本で一番好きなのは『ミミズクと夜の王』。次点が『サエズリ図書館のワルツさん』とこの『大正箱娘』なんですが。 好きな男キャラの順位がこの巻で大幅変更。燕也がタンゴ君どころか夜の王まで抜いてトップに。それくらい②の燕也が気に入った!んです。 彼が紺と言い合っていくうちに段々と、本当に少しずつ、変わってくる態度にワクワクさせられる。 あと、人が死んだり殺されたりするのに、この本はミステリでもホラーでもないような。 謎解きはしなくてもいずれわかるから、それより事件の成り行きを最後までじっくりと見届けよう。読んでるうちにそういう気持ちになっている。 紅玉先生の文章だから、でしょうか。独特の雰囲気がそうさせるのかも。 大きな白い箱があって。開けるとネットリした濃い闇が詰まってて。 その中で手を取りあった紺とうららが淡く光ってこの物語の世界を見せてくれている。叉々と燕也はそれに色を添え。 読んだ後、そんなイメージが浮かびました。 ②の続きにすごく期待してます。きっと面白い。 紅玉先生。子育て奮闘中で大変な毎日だと思うのですが、何年先でも構いません。いつまでも気長にお待ちしております♪ | ||||
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大正の世の帝京を舞台に男装の麗人にして新米新聞記者の主人公・英田紺が神楽坂に住まう 「開けられない箱は無い」不思議な箱娘と関わるうちに様々な事件へと巻き込まれる紅玉いづきのミステリ。 第一巻から一年という少々長めのブランクを置いて刊行された第二弾。 物語は秋のある日、英田紺が銀座で「箱薬」と称する薬を売る店に人だかりが出来ているのを見る場面から始まる。 最近帝都で「治せぬ病が無い」と噂で偽薬も出回っている「箱薬」を求める人々の狂騒の中で 異国の血を引くと思しき一人の少年がガキはすっこんでいろと弾き飛ばされるのを見た紺は 口の端を切った少年の血を手拭いで拭ってやる事に。 折悪しく降り始めた雨に難渋する事になった紺だったが、治太と名乗った少年が返礼とばかりに 家に来てくれれば傘を貸すと申し出た事で着いていった一軒の長屋で二人を待っていたのは 治太が「先生」と呼ぶ一人の老人だった。 治太が「兄ちゃん」などと失礼を、と詫びた上で老人は紺が女であることを指摘した事に驚かされる紺。 老人は明らかに視力を失っている様子だったが… 「開けられない箱は無い」という箱娘を中心に据えたファンタジー色の強い作品だと思っていたけど、 この第二巻では随分と生臭いというか、政界・財界絡みの謀略劇みたいな方向に話を振ってきたのが意外。 加えて大正の世に色濃く残っていたであろう、身分的格差みたいな重い部分に触れていた事で 一巻からは随分と様変わりした第二巻となっていた。 話の方は大きく三つの話から構成されており、その三つの話に「万病に効く」と噂になっていながら その作用も原材料も秘された「箱薬」が絡み、主人公の紺や一巻でも登場した時村子爵の三男・燕也が 「箱薬」にまつわる謀略劇に新聞記者として、あるいは貴族社会の一員として巻き込まれていく様が描かれている。 上にも書かせて頂いたが、この巻では「身分」ないしは「社会的階層」というものが 非常に大きなテーマとなっており、燕也やその知己である貴族たちの世界の暗部が描かれる一方で 冒頭に登場した異国の血を引く少年・治太や、第二話の主たる登場人物である降旗伯爵の息子・瑶介に 雇い入れられた行く場のない使用人たちといった権力を牛耳る貴族たちとは対照的に 社会の周縁部にしか居場所の無い人々の悲哀のような物が強調されているのが大きな特徴。 近代的人権思想の無い時代に生じる「命の値段の格差」を背景とした悲劇が展開されるのだけれども、 二話で描かれる病弱な肉体に悩まされながら、居場所の無い人間を雇い入れていた貴族の青年・瑶介の 使用人たちを自分と同じ「人間」とすら見ていない貴族的選民意識が描かれる一方で、 三話の清武製薬の新薬開発の秘密を巡って起きた惨劇にも「それ」は関わっている。 実際に新薬の開発過程においては、「命の値段の格差」が絡むことはよく知られており、 欧米の製薬会社からアジアやアフリカの貧困層が「人の形をしたモルモット」扱いされているのが 現実である事を考えれば、この話を通じて描かれているものは絵空事ではない。 今回登場した「箱薬」を巡る話は最終的には「Yの病」というものが関わっており、 その謀略劇には箱娘・うららも無縁ではない事が語られるなど、ファンタジーな存在として描かれていた 箱娘の存在をかなり現実的な重さを持った存在として作者が描こうとしている事が伝わってきた。 重い話ばかりでは気が滅入る事を意識したのか、この第二巻では燕也と紺の関係の変化が描かれている。 「貴族の出でありながら放蕩者で、女にも凄んで見せる(ただし実際に暴力は振るわない)チョイ悪貴族青年」という 燕也のワルっぽさを強調する一方で背負った「傷」で弱さを匂わせるあたりが実に女性に受けそうである。 その一方で普段は男装している紺をワルの燕也がパーティーの席に引っ張り出すに当たってドレスで 着飾らせるなど「男装ヒロインで支配欲を得る方法は美しく着飾らせる事である」というポイントを押さえてくる辺り 紅玉いづきは女性読者だけでなく、男性読者が喜ぶポイントもよく分かっていらっしゃる。 色々と話を大きく動かし、国家的陰謀に話を繋げて来たのはいいけど、基本的に今回は伏線をばらまく事がメインの 「前振り」みたいな話に終始したな、という印象は避けがたい。「箱薬」の正体はいまだもって不明のままであり、 悪食警部・室町の口から出た「Yの病」や箱娘の絡みみたいな物も触り程度で終わっているので若干食い足りなさが残った。 前巻から一年と少しばかり長めのブランクが空いた事で前巻の内容を思い出すのにいささか苦労したが、 この巻で描こうとしたものは確かに興味深いし、箱娘・うららの正体やその背景にある謀略劇に 紺や燕也がどう絡んでいくかは気にならないといえばウソになる。 なので、どうにかもう少し間を詰めてシリーズを刊行して欲しいと思わずにはいられなくなった第二巻であった。 | ||||
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