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紅玉いづき作品も「雪蟷螂」から読み始めて随分経つが暫くご無沙汰していた気も。 そんな付かず離れずの距離で追ってきた作家が新作を出すと聞き拝読した次第……いや、新作と言うか正確には過去に同じメディアワークス文庫のアンソロジーで発表した作品や非商業誌に発表した作品も含まれているから完全新作とは言えないかもしれないが、それは大した問題じゃない。 短編5作を収録しているが、個人的には「2Bの黒髪」「戦場にも朝が来る」「この列車は楽園ゆき」の3篇が気に入った。「2B」はメディアワークス文庫から12年前に刊行されたアンソロジー「19」に収録(読んだ筈だが忘れてた)。「戦場」は非商業の合同誌「少女文学 第四号」に発表。「列車」は書下ろしと発表した場はまちまちなのだけど、通底するテーマがある様に感じられた次第。 「居場所」が、それも思春期の女の子にとって自分の存在を肯定できる「居場所」がテーマなんだろうか?元々が無力な未成年には自分を肯定してくれる場所が得られるかどうかが切実な問題ではあるのだけど、未成年な上に女の子となればいよいよもって居場所の獲得は至難を極める。 凡庸なラブコメで良ければ「自分をステキと言ってくれる素敵な男性の横」に辿り着くまでの惚れたの晴れたの別れたのを描けば良いんだろうけど、「雪蟷螂」みたいな作品を発表した作家がそんな平凡な代物を書く筈も無い訳でどれもこれも中々に一筋縄ではいかないヒロイン像が描かれている。 ブログで下手っぴな漫画を発表してはそのコメント欄に返って来る閲覧者の声をまるで成績も振るわず冴えない予備校生活の寄る辺とする「2Bの黒髪」はまだ分かりやすい方かもしれない。 これがスマホゲームに課金してはトップ争いをする事に執着する同棲相手の同性を金銭的に支える役割に自分の存在価値を見出そうとする「戦場にも朝は来る」になるとヒネった感があって良い。スマホゲーといういかにも現代的な小道具と共依存的関係という王道の関係性を巧い事組み合わせてあって中々に読ませてくれる。 これが女子高生の付き合いの中で得られない充足感をやたらと感激屋で激情家なクラスメイトの妙な男子の中に見付ける「この列車は楽園ゆき」となるといよいよヒネってある。上で「ステキな男性と巡り合うまでの紆余曲折を描いただけの作品なんて」と腐すような言い方をしたが本作はオチではステキな男性に巡り合う作品なんである。でもその過程が特徴的。他人から肯定して貰う「居場所」を得る前に自分で自分を大切にしろ、ただその当たり前の事をこの短編は読者に伝えている。 でも、その「当たり前のこと」が出来ない人が多いから本作は鋭く現代を穿つ鋭さを持ち得ている。「自分を大切に」。口にしてみれば誠に簡単なのだけど、実践するとなると恐ろしく難しい。他人との関係の中で自分がどうしたいか、自分に何が必要なのかを正確に捉える事は本当に難しい。でも他人の正しさの中に自分を放り込むと居場所は全て他人任せになってしまう……本当にそれで良いのかと本作は自己肯定感の低い少女を通じて読者に訴えかけてくる。 少女というのはひどく無力な存在なのかもしれないけれど、大人であっても世間の狭間に「自分を本当に肯定できる場所や関係」を見つけ出す事は難しい。無力で他人の正しさに身を委ねる楽さに溺れそうな時にふっと読みたくなり、読めば確実に「自分は何をしているのか?」と自問したくなる、そんな短編集。 | ||||
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