大正箱娘 見習い記者と謎解き姫
- 大正 (6)
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帯に謳われた『大正ロマンミステリー』の言葉通り,確かに『箱』に絡めた謎はあり, 普通の箱はもちろん,建物や妊婦のお腹までも箱に見立てる様子は興味を引くのですが, 実際には背後に隠された女性の物語となっており,『謎解き姫』もあまり謎は解きません. さらには,男尊女卑の時代に抗う語り部も描かれ,ミステリーと呼ぶには少し違うような. そのため,『あとがき』にもあるように,袴にブーツ姿の女の子が大活躍!はせず, 文明開化後の賑やかな洋風文化という,パッと思い浮かぶわかりやすい雰囲気もなく, どちらかと言えば,鮮やかに映るカバー絵とは裏腹の重苦しい話が多めという印象です. ただ,語り部の思いが強すぎるというのか,何かにつけて「女が」へと運びがちで, 確かに女性には辛く,厳しい時代だったのでしょうが,いささかしんどく感じることも. 加えて,『読点』の打ち方に独特のクセがあり,読んでいてたびたび躓いてしまいました. | ||||
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今月二冊目となる紅玉いづき女史の作品。先日拝読させて頂いた「現代詩人探偵」が非常に印象深い作品であった事から若干期待値が高めで拝読 物語は主人公にして帝京新聞の駆け出し記者・英田紺がとある人物を尋ねて神楽坂に足を運ぶ場面から始まる。紹介してくれた上司の小布施から受けた 「番地も分からん。行けば分かる時には分かる」という大層不親切なアドバイスを元に紺が辿りついたのはまるで箱の様な形をした屋敷であった。挨拶を しても誰も出て来ない事から庭に回った紺は縁側の向こうに文机に肘を付いている着物姿の娘を見つける。相手が小布施が紹介した「箱入り娘」なのか 尋ねた紺に対し、娘は自分が「箱娘」の回向院うららであると名乗り「箱の事でお困りですか」と逆に尋ねてくる。紺が箱娘に持ちかけたのは少し前に取材で 訪れたN野に住む甲野スミという女性から持ち掛けられた呪いの箱に纏わる話であった。地元の訛りではなく、帝京出身である事が伺えるスミが言うには この地方には「刀が出たならば、男を近づけるな。箱が出たならば、女を近付けるな」という古い風習があるらしく、実際にスミの夫は蔵から出てきた刀で 死んでしまったという。そして肝心の箱について尋ねる紺に甲野家の当主名代である老婆が「蔵で見れば分かるし、あとは煮るなり焼くなり勝手にしろ」と 一方的に言い放つ。霊媒でも何でも無いのにそんな物は引き取れないという抗弁にも構わず、スミは蔵へと紺を案内し血のこびり付いた箱を見せた上で 夫は腹を刀で突いて死んだ事を告げる。代々短命な甲野家の男の例にもれず、スミの夫も病で不自由が多く、離れに閉じ込められる様にして育ったらしい 紺は淡々と語るスミにそんな相手と結婚する事に抵抗が無かったのかと尋ねるが、スミは子供を作れなかった事だけが心残りだと言うばかりで 最初にちょっとばかりネタばらしを 本作の主人公・英田紺は「女性」である。大正の、平塚らいてう達が女性解放に向けて運動を始めたばかりの時代にあって、髪を切り洋装をして生家と 縁を切る様な形で家を飛び出し、新聞記者という身分に付いている、そんな女性である 一読して感じたのは作者がデビューして間もない頃、電撃文庫で発表した「雪蟷螂」に通じる作品だな、という印象。「雪蟷螂」が雪深い部族社会で因習に 縛られた立場にありながら、人間の誇りを貫き通し自分の愛を守り抜いた女性の物語だとするならば、本作は文明開化を迎えながらも実際には社会の あちこちに旧習が残り、特に弱い立場である女性は「家」に縛られ自分の人生というものを諦め、全てを「仕方の無い事」として受け入れなければならない、 そんな生き方を強いられている時代に一人抗う女性の物語という事になるかと 話自体は短編連作形式を取っており、全四編から構成されている。ただし、各話が完全に独立しているというわけではなく、前後の話が微妙に繋がって いたりもする。特に第一話と第四話はN野という土地に帝京から嫁いだ甲野スミという寡婦がメインキャラとなっている。それ以外にも紺が新聞記者として 出逢う女性は「今際女優」と呼ばれ、描き上げた脚本が行方不明のまま自殺した言われる脚本家との密接な関係が知られていながら「私が殺した」と 嘯く女優であったり、あるいは「怪人カシオペイヤ」と名乗る怪人物に不正を暴かれた鉱山主の父によって華族の放蕩息子に嫁に行かされそうになっている 令嬢であったりと、何れも「女」である事に縛られているのが大きな特徴。そして紺自身にも「家」や「女」あるいは「時代」という箱に閉じ込められる様にして 失った大切な人物がいる事が明かされ、その傷が紺に女を捨てさせ時代に抗うような生き方を強いている事が描かれている この「箱」に閉じ込められ、あるいは自ら望んで箱の中に収まっていると訴える女性たちの生き方に憤る紺は何とか彼女たちを解放できないのかと思い、 「箱娘」である回向院うららに相談するのだけれども、自らもまた「箱から出る事が出来ない」と言ううららが「箱を開ける事が必ずしも幸せとは言えない」と 言う様に、紺が「箱」を開けようとした結果が彼女たちの幸福に繋がる訳ではなく、結構苦い結末に終わる事も多いのでハッピーエンドやカタルシスを 求める方にはちょっとばかり難しい本かもしれない また、女性なりの物の考え方、という部分において男性読者にとっては理解が難しい部分があるのも事実かと。特に二話の「今際女優」のメインキャラ 女優の出水エチカが脚本家である扶桑牧ヲに向けた感情は理屈の上では分からないでは無いけど、実際に男である小生が腹の底から納得できたかと 言われれば、どうしても「一番肝心な所は理解できない」と言わざるを得ない部分が残った それでもなお、この薄暗い、女性が箱に閉じ込められる様な時代を背景に必死でもがく様に生きる紺と、紺が手を差しのべながら最後は当人自身の意志 というものが運命を左右する女たち、そして紺が彼女たちに手を差し伸べる手助けをしてくれる回向院うらら自身が引き受けなければならない生き方は 興味深い物があった。特にうららに関して陸軍や警察が絡み背景に国家がちらつく事情に関しては今回は匂わす程度で終わった為、次巻以降で 明かされるであろう真相に興味は募る 次巻は三話で名前だけが出てきた「怪人カシオペイヤ」に纏わる話との事。史実において平塚らいてう達の運動が実を結んだのが大正どころか、昭和の 大戦争が終結してからであった事を考えれば紺の孤独な戦いがそう簡単に状況の変化に結び付くとは考えにくいが、逆に時代に縛られた、どんな女の 姿が描かれるのか、それはそれで楽しみであると言える。女が何もかも諦めねばならない時代に誇りを持って生きる事を求める、ある意味「和風・雪蟷螂」 とでも言うべき一冊であった | ||||
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見習い記者と謎とき姫(=箱娘)が、いろんな事件を解決していくお話。短編みたいになってます。 華やかな表紙ですが、内容は穏やかな感じです。 率直に言いますと、話の内容がよく分かりませんでした。 最後まで読んだのですが、何と言うか、半分眠りながら、学校の授業を聞いている時のような気分でした。 ミステリー要素も入っているのですが、この作家さんは、ミステリー向きじゃないような気がします。どっちかと言うと、心理描写をメインにしたお話が向いてるんじゃないかな。 文章が幻想的だったり詩的だったりして、比喩表現も上手なんだけど、それをミステリーに持ってこられると、何だかぴんとこない。 事件の概要がよく分からないうちに話が進んで行って、よく分からないうちに解決されている。そんな印象を受けました。 呪いとか出てくるけど、結局人の仕業だったのかやっぱり呪いだったのか、よく分からないままです。 ただ、読者に訴えかけているものがあるのは、分かりました。 大正の辺りの、男尊女卑の社会をテーマに、押さえつけられた女性の心を読者に伝えようとしている作品です。 一応言っておきますと、記者と箱娘の恋愛は、期待しない方が良いです。 私も、あらすじを読んだ時は、そういう要素も入ってくるのかなと思ったのですが、あとでそれが不可能だということが分かりました。 結論としては、あまりおすすめできません。 続きが出るようですが、買うかどうかは悩むところです。 | ||||
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