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蟇屋敷の殺人
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蟇屋敷の殺人の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1件 1~1 1/1ページ
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戦前、本格派の探偵作家として活躍した甲賀三郎の長編だが、結構面白く読了した。ただし傑作とか秀作とかという言葉を冠するのではなく、楽しい異色作とでもいっておきたい。『蟇屋敷の殺人』というタイトルだと、いわゆる「舘もの」とか「クローズドサークルもの」といった、限られた閉鎖空間だけを舞台にした本格ミステリを想像するが、本作はそうではなく、探偵役が捜査の足をあちこちにのばして活動する、動きの多い活劇調の通俗探偵小説である。 長時間の路上駐車を不審に思った警察官が、車のドアを開け、運転者の肩を揺すったところ、その頭部がゴロリと胴体から離れて転がり落ちるという、何ともショッキングな書き出しで始まる。横溝正史の『犬神家の一族』で、菊人形から佐武クンの生首が転がり落ちるシーンを思い出させるこの冒頭をかわきりに、数え切れない蟇を放し飼いにしたな不気味な屋敷、ドッペルゲンガー、夜の蟇屋敷を徘徊するのっぺらぼうの怪人と、猟奇や怪奇がつるべ打ちのストーリーが展開する。そうそう、のっぺらぼうの怪人も、犬神家の佐清クンに通じるような…。 もちろん戦前の作品ゆえに、表現や風俗描写の古くささはあるし、怪しい人物を追いつめた刑事が、いきなり背後からポカリと頭を殴られて気絶し、そのまま生き埋めにされそうになって危機一髪!!…なんて展開も、白黒映像の昭和スリラードラマに、お約束のようによく見かける陳腐な場面ともいえる(そのまま殴り殺した方が早いのにね…)。そうした古さをレトロな味わいとして肯定的に呑みこめば、奇ッ怪な事件な様相とあいまって、なかなか面白く読み通すことができる。 また、奇抜な方向へと謎をとっ散らかすほど、すべてをキレイに回収し解決するのは困難になるのは理の当然。正直、終章の謎解きを読んで多々疑問も湧きだしてきたが、あえて突っこむことはしないでおくことにした。リアリティだの整合性だのと深く切りこまずに、そのまま鷹揚に読み流してしまえば、名品とはいえないが、奇天烈さのなかにレトロな興趣を楽しめる珍品として、記憶にとどめおける作品だと思えた。 | ||||
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