(短編集)
甲賀三郎探偵小説選III
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本巻『3』は王道を踏まえた収録内容。初めて本叢書の甲賀の巻を読むならまずこれを。 指揮杖を携え西洋妖婆のような異様の風貌を持ち、事件解決後になにがしかのお宝をネコババする怪弁護士・手塚龍太シリーズを9作網羅。 うち3作がベスト短篇集『緑色の犯罪』(国書刊行会)と重複している事からも、このシリーズの評価の高さが窺えよう。 ノン・シリーズものは「日の射さない家」「水晶の角玉」「郵便車の惨劇 (*)」「幽霊屋敷 (*)」「木内家殺人事件」。(*)はおそらく単行本に初めて収められる。 本巻の主役は、雑誌『ぷろふいる』に一年間連載されたまま纏めて読むことができず、その名だけが先行するばかりだった評論「探偵小説講話」。 ここでの甲賀の提案を端的にいうなら、要するに「本格を探偵小説と呼ぶべきであって変格はショート・ストーリィと呼んで区別した方がいい」と。 この提案の行末は今誰もが知るところであるが、甲賀は度々「自分は決して変格を認めないと言っている訳ではない、ただ区別をすべき。」と諭す。 ひとつ何か変わった事をいうとすぐ感情的になってキレる幼児的な探偵小説読者が存在するのは昔も今も変わらないらしくて。 ただ甲賀の物言いは他人の怒りを誘発させそうな部分もあって、森下雨村に疎まれてしまったりとかそこで損したことも多いのは否定できない。 もうひとつの本巻の目玉である甲賀三郎著作リストをじっくり眺めて感じるのは、 探偵小説好きならムラムラ読みたくなるような彼の魅力的な作品名のセンスは実に優れているなあ、と。 こういう例は好きじゃないが、東野圭吾が「ガリレオ」でやったことをはるか昔に手を付けたのは甲賀だ。誰も言わないのであえて言う。 惜しむらくは、気短な性格からくるものなのか文章やその構成が性急だったり、はたまた代表作「琥珀のパイプ」等にも見られる傾向で、 せっかく良い物理トリック・理化学トリックを生んでいながらも同じ作中に雑多な要素を詰め込みすぎて印象を薄めてしまう弱点あり。 それも個性といえばそれまでだが、乱歩ほど寡作にとは言わないが、もっと執筆数を絞り一作一作に重みを持たせられていれば・・・。 それでも私が甲賀三郎を好きな理由は、この人には戦前人気探偵作家としての〝華〟があるから。長篇をはじめ通俗っぽさが強くても、 それが甲賀らしさなのだから、強引に目をそむけるのもおかしい。実話ものの「支倉事件」を甲賀の長篇ベストとするのを私は心からは肯けない。 本巻解題を担当した稲富一毅氏の甲賀研究の尊さが報いられるためにも、中身を吟味した良い甲賀本の続刊を待つ。 獅子内俊次シリーズ長篇「犯罪発明者」「姿なき怪盗」「乳のない女」「死頭蛾の恐怖」「印度の奇術師」「雪原の謀略」はいまだに土中で眠っている。 | ||||
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