(短編集)
甲賀三郎探偵小説選II
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論創ミステリ叢書1~2冊で全キャリアをカバーできるマイナー作家とは違って、生前(戦前)の甲賀三郎は多作を物した売れっ子だった。 時を経るにつれ再評価のポイントがなかなか見つからず、手軽に甲賀を読める現行本はほんのわずか。 本人が自信を持っていた代表作「姿なき怪盗」が通俗だと見下され、もう30年以上単書再発されていないってのに言葉もない。 決して十全とはいえない、没後に出された湊書房版全集の複写製図書館本があるにはあるが、高額価といい読み難い文字といいお薦めはできない。 当時の人気と現代の扱いにかなりの隔たりがあるという不幸にして難しい状況をまず知って頂いた上で、本巻の吟味に移ろう。 数少ない良かった点。 甲賀の次女で作家でもある深草淑子氏のエッセイ「父・甲賀三郎の思い出」、これが一番グッときた。私達は甲賀について知らない事が多すぎる。 今回はたった4頁だが、深草氏にはお元気なうちに甲賀三郎評伝を出してほしい。聞書きでもかまわないから。 次に甲賀晩年の中篇「朔風」。ようやく読める時が来た昭和18年のこの作は帝都下の敵国スパイ暗躍を描き、棺の中の屍体入れ替えとか探偵趣味も少々。 本巻の解題担当は浜田知明で、『緑色の犯罪』(国書刊行会)同様に解説はツボを押さえている。 欲をいえばこの「朔風」の連載場であった幻の樺太発雑誌『北方日本』についても言及がほしかった。 さあ、収録意図に納得がいかないのはこの後よ。 濫造ともいえる数多いシリーズの中のひとつ、「気早の惣太」7短篇。人情深い夜盗探偵笑説は普通の読者にとって最も読み易いかもしれない。 一方、この手の和製「地下鉄サム」は久山秀子や三木蒐一のスリ師物語も存在しており、特段甲賀らしさが秀でているものでもない。前述の全集に収録。 初期の橋本敏探偵譚2短篇。「真珠塔の秘密」は異稿、「カナリヤの秘密」はお得意の理化学トリックだが、 前者は『「新趣味」傑作選』(光文社文庫)、後者は『琥珀のパイプ(初刊復刻版)』(春陽堂)で容易に読めるし、また突出した完成度でもなし。 中篇『ビルマの九官鳥』は日米開戦前夜の国策少国民教育向け冒険ジュブナイル。私のこれまで古書読後感での甲賀ジュブナイルは、 乱歩はおろか小酒井不木・森下雨村の後塵をも拝していると思う。14年前の『1』に採られた長篇「電話を掛ける女」しかり、 初刊時の一度しか本になっていないレア作なのはよくわかるがなんで今ここで収録? 「暗黒街の紳士」は、〝素人作家・武井勇夫vs私立探偵・春山誠〟のいわゆる「暗黒紳士」シリーズのひとつとみなしたようだが、 それならどうして他の5短篇「毒虫」「夜の闖入者」「黒衣の怪人」「証拠の写真」「救われた犯人」と共に纏めない? この叢書では判明しているシリーズものは短篇なら特に一堂に会するのが常じゃなかったか? 「凶賊を恋した変装の女探偵」にしても怪盗・葛城春雄シリーズのひとつだと類推しているのに、 その割には『1』で漏れた葛城シリーズをすべて収録するでもなく・・・。まあ葛城シリーズは長いものもあるからしょうがないが。 代わりに重要度の思いっきり低そうな未刊小品「銀の煙草入」「都会の一隅で」「池畔の謎」「街にある港」。 犯罪実話風とか戯曲とか。もうこれしか復刻ネタが残っていないならまだしも、もっと良い甲賀作品はいくらもあるぞ。 似たような立場の大下宇陀児/本叢書『1』『2』がまだバランスよくセレクトされていたのに比べると、良心的な作品選択からは遙かに遠い。 解題の中で浜田知明が「作品の選択・構成は論創社編集部による」と書いていたっけ。「俺のセレクトじゃないからね」ってことか。 論創社のtwitterで「もし甲賀続巻を出すなら時代物の〝怪奇連判状〟や〝別尾夫婦+陸津説男ユーモア科学シリーズ〟を収録予定」と見かけたが、 それが世間で需要があるのなら結構だが、大して出来のよろしくないものばかり優先収録してどういうつもりか? 甲賀びいきの私としては久しぶりの甲賀本で大いに楽しみにしていたのに・・・本巻で初めて甲賀を読む方はどうかこれだけで判断しないでほしい。 甲賀の完全版全集刊行など夢のまた夢だし、数少ない機会は大切にしてもらいたいものだ。復刻されれば何でもいい訳ではない。 | ||||
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