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オシリスの眼
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オシリスの眼の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.42pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全11件 1~11 1/1ページ
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本の背表紙の紹介文に、緻密な論証を積み重ねて云々とあるものの、現代の感覚からいえばさほどでもないと感じたが、1911年という発表年を考えれば、その志向性は評価できる。 ただ、真相が明かされてみると、犯人のおっちょこちょいというか短絡さ加減に呆れてしまった。 費用対効果の面からみれば、明らかに費用が大幅に上回っており、犯行を完遂するための手間暇や行動を想像すると、犯人の涙ぐましい努力には苦笑を禁じえない。 その意味で、バカミス風味を感じた。 また、地味な展開を補うためかロマンス描写に多めにページを割いているが、かえって冗長になっているように思える。 以上より、本来なら☆3つだが、発表年を考慮し敬意を表して、甘めの☆4つです。 | ||||
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Austin Freemanの『The Eyes of Osiris』(1911年)の翻訳。なお、1951年に早川書房から二宮佳景(=鮎川信夫)訳で出たものは抄訳だったので、今回が初めての全訳となる。 ソーンダイクものの長編ミステリで、大英博物館やエジプト学者がテーマとなっている。こうした道具立てが実に魅力的。しかも、たんなる彩りではなく、物語の核心に結びついているところが秀逸。 論理・構成という点でも非常に緻密に組みあげられた物語で、ソーンダイクの透徹した視線にうならされる。 びっくりするようなトリック/真実もきちんと入っており、読後の満足感はかなり高い。 訳文は隅々まで気が遣われている印象。とても読みやすく、行き届いた解説もありがたい。 | ||||
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犯人捜しよりも、提供されるあらゆる事象を丹念に一緒に検討していく過程が何とも楽しく面白い。他の作品も是非読みたいと思います。 | ||||
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このところ、フリーマンの長編が次々と翻訳されているのですが、作品ごとに本格推理、倒叙ものというようにバラエティに富んでいて、どれも読みごたえがあります。探偵のソーンダイク博士は、科学的知見に基づいた推理を行うということで、本作も1世紀以上前に書かれたものですから、最新の法医学から見ると、明らかに時代遅れなのですが、そのことが本作の面白さを半減させるものではないと思います。改めて、フリーマンは再評価されてもいいのではないか。 | ||||
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フリーマンのソーンダイク博士の推理小説というと、科学的知識による捜査手法を駆使して事件を解決するイメージが強い。 科学的手法と言っても100年前のものであり、科学捜査という自分だけの眼鏡を覗く古ぼけた探偵が活躍する小説だと思い込み、短編すらまともに読んでいない有様だった。 しかし本書により、そのようなイメージは一変した。とにかく面白い。 エジプト学者の謎の失踪と不可解な遺言書めぐる人間関係を中心に、派手さはないが読者の興味を惹きつける展開と語り口は絶品だ。 また巻末の解説のとおり、解決の意外性や鮮やかさを重視する後年の多くの作家と違う、解決までの道筋を理論的かつ堅実に明らかにすることを重視した内容は、独自の魅力を放っている。 読後、解説で触れられていたヴァン・ダインの推理小説論を読み返したところ、ソーンダイク博士について「いかにも独創的で解決ぶりが明快」、「ソーンダイク物語は近代推理小説中最高の部類」との激賞ぶり。 まさにそれが的外れでも時代遅れの評価でもないことを、この作品は証明している。さらに同作家の続巻を期待したい。 | ||||
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読後感想を読んで期待していましたが、期待にたがわず満足しました。 若い男女のロマンスも邪魔になることはなく、筋にふくらみを持たせているようで結構でした。古典かも知れませんが新しいものに負けない 魅力があります。楽しませてもらいました。 | ||||
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本作が古典ミステリの傑作であるのは当然として、百年前のイギリスが実に生き生きと描かれており、まるでタイムトラベルしてるかのように楽しめました。 例えば検死法廷。素人の陪審員が変死体の検分をさせられるとか、現代人からするとまるでイミフですが、庶民なオッサンのべらんめえが楽しいです。 そして博物館の恋物語。大英博物館でおべんきょデートとか、どんだけリア充かと(笑)。で、いちばん盛り上がったデートの場所は、墓場!墓碑銘読んで往時に思いを馳せるのは歴史オタ冥利につきますが、普通女性には理解してもらいにくい趣味ですよ、バークリーくん?羨ましすぎです。 大英博物館デートのクライマックスのアルテミドロスのミイラ棺は、現在も大英博物館で展示中のようです。ネット検索するとアルテミドロスさんの肖像を見ることができます。 達意の訳文と詳細な訳注で、百年前のイギリスを見事に再現してくださった訳者に感謝!面白かった〜。 | ||||
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大時代的なロマンスをからめたゆったりとしたストーリー展開も、平明で読みやすい訳文のおかげで、退屈せずにノスタルジックな興趣をもって読むことができた。中核にあるトリックは、奇抜なトリックによく精通している現代の読者なら、直感的に見当がつけられるのではないかと思う。それでも、当時の法医学的な知見をベースにした、緻密な検証と推論にもとづいたソーンダイク博士の謎解きは圧巻で、充分楽しめる古典本格となっている。欲をいえば、紳士的すぎるソーンダイク博士よりも、嫌みったらしく博識を披瀝するフィロ・ヴァンスのような探偵や、フィルポッツの描く利己的知性の権化のような犯人といった、クセの強いキャラに出会えていたら、個人的にはさらに楽しめたのではとも思った。 | ||||
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高名ではあるけれど今ではその著作に親しむ機会が皆無に近いと思われる英国の名探偵ソーンダイク博士の長編代表作を完訳で復刊させた誠に画期的な好企画です。実は私が本書を読み始めてから片時も頭を離れなかった最大の疑問点は、本書の題名は何故に「オシリスの眼」なのか?という謎でした。まず誰もが思い浮かべるだろう推測としてはあの怪奇と密室の巨匠カーの十八番の名人芸を想起させる「エジプトのミイラの呪い」といった怪奇色ではないかと真っ先に考えたのですが、どんどん読み進めても全くそんな気配はなく怪訝に思いつつ謎の答を得られぬままで気づけば既に終盤を迎えていたのですが、第十八章を読んで漸く著者の意図と真意に気づいた時には「そうか、そうだったのか!」と呆気に取られて暫くは茫然自失の状態でしたね。怪奇の味わいを一切抜きにした上でのこの意表を突くトリックは私にとっては長い読書人生の中でも滅多にない体験で、「素朴だけど古典ミステリーは凄いな!」と改めて感じさせてくれた貴重な読書の喜びでしたね。 エジプト学者ベリンガムが謎めいた失踪を遂げてから二年が経った頃に彼の所有地からバラバラになった人骨が発見される。本書の語り手のバークリー医師は失踪者の弟ゴドフリーとその娘ルースと知り合いになり彼らの極貧の窮状に同情していた所へ俄かに相続問題が浮上した事もあって、当初から深い関心を持っていた尊敬する教師ソーンダイク博士と共に事件の調査に乗り出して行くのだった。 私は正直言いまして著者に対して前時代の作家・歴史的な功労者というイメージしか抱いておりませんでしたが、今回の読書で改めてその確固たる実力に触れて考え方を大きく一変させられましたね。本書を最初に読んで驚いたのは400頁を超える大長編小説で冒頭に魅力的な謎を堂々と呈示しながら、読み手に犯罪動機や大まかな見当さえも全くつけさせずに不可思議な謎に対する興味を最後まで持続させ読ませる著者の圧巻の筆力ですね。例えば「どうしてバラバラ死体なのか?」「どうして死体(人骨)の身元の確認がこんなにモタモタするのか?」といった疑問に明確な解答や大雑把な予想も出来ずに(要するにミステリーの常識をことごとく裏切る不可解さに翻弄させられて)さっぱり五里霧中状態のままでとことん悩ませられましたね。まあ結果として最後に得られた真相は必ずしも緻密な計算に基づいた論理的な物ではありませんでしたが、でも読者に易々と先の展開を読ませない構成の妙は大いに評価して良いと思いましたね。またこれに関連して犯罪の実態が曖昧模糊であった為に警察が容疑者を絞り込んで取調べを行うに至らなかった事も焦点をぼやけさせる意味で効果的だったと言えるでしょうね。結論として私は本書の犯罪の全貌を、計画的ではなく多分に行き当たりばったりの気味があるにせよ(犯人の意図を掴むのが困難な)意表を突くトリックの素晴らしさと犯罪動機を巧く隠して怪しい人物を疑わせないテクニックと併せて心ゆくまで楽しめたと声を大にして言いたいですね。さて、本書は百年以上前の作とあって忙しない現代とは全く違い時の流れがとても緩やかである事を覚悟して読む必要がありますね。最初こそ多少じれったさも覚える物の段々と慣れて来るにつれてバークリー医師の語りによる人物や風景の描写、それから審問場面に登場する偏屈な陪審員の男の険のある意見の開陳といった思わぬブラックな味も楽しめましたし、やはり何よりもバークリー医師と知的な女性ルースとの古風な慎みや清楚さや奥床しさといった表現が似つかわしい純愛小説の描写には今の我々がとうの昔に失ってしまった繊細な感性・情緒が漂っていて新鮮な味わいで心が満たされましたし著者の文学的な面にも秀でた達者な才能を垣間見せてくれましたね。次に登場人物については、バークリー医師と彼が思慕を寄せる女性ルースは少々堅苦しさを感じさせる物の共に善良で誠にお似合いのカップルと言って良く途中では随分とヤキモキし心配もしましたが、でも遂に迎えたこの恋愛の結末にはホッと胸を撫で下ろし心から安堵しましたね。それからソーンダイク博士の助手ポルトンは不言実行仕事一筋の男としか言えないですが、片やジュニア・パートナーのジャーヴィスは毎度の如く減らず口を叩くユーモラスな性格に好感を持ちましたね。そしてこの真犯人についてですが正直それ程に利巧だとは思えず軽率で警察をなめていて考え方が甘いなあとは思いますが、臨機応変に行動する度胸の据わった勝負根性だけは認めざるを得ませんね。最後に伝説の名探偵ソーンダイク博士は何よりも論理を重んじ過剰な程に念には念を入れて慎重に行動する頑固一徹な信念の持ち主であり、厳しさと優しさを併せ持ち変人の気味など一切ない謹厳実直な生真面目その物の何があろうとも絶対に信頼のおける筋金入りの好人物であると言えるでしょうね。今回はスケルトン探偵ギデオン博士の先駆的な活躍を見せてくれましたし、強いて欠点を挙げるとするなら名探偵にはお馴染みの終盤まで胸の内を決して明かさないもったいぶった情報の出し渋りの態度ぐらいでしょうね。 本当に最後にしようと思いますが、私は巻末の著作リストを含めて30頁にも及ぶ訳者あとがきに書かれた詳細な解説を読んで大変に参考になりまして、これまでの認識を改めてまた新たな気持ちで(先達のご苦労にも想いを馳せながら)著者の作品を読み返したいなと強く感じましたね。唯一点だけ異論があるのは、著者の作品の価値を擁護するに当たってクリスティーやクイーンの作品が意外性を狙った荒唐無稽な物だと主張したチャンドラーの説に言及しておられた点で、私が思うに本書の推理も理論武装はしていても結局は偶然の積み重ねによる殆ど有り得ない物語なのであって、要するにミステリーというのは多かれ少なかれそういった虚構の文学であるのは避けられない点で皆おあいこなのでありますから、その時代にあって個々の作家がそれぞれに切磋琢磨しいろんな技法でもって努力しながら真剣勝負しているのだという事だけはぜひ言っておきたいと思います。またも長々としかも最後に書きました部分については多々お叱りのご意見を頂戴するかも知れませんが、気分を害された方にはどうかお許し願いたいと深くお詫び致します。 | ||||
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本書はミステリーの古典中の古典の新訳にして、初完訳である。旧訳は鮎川信夫訳である。 本書の特色と私的感想 ●本書は「物の隠し方トリック」の古典である。→これは大変見事なトリックで、この一点において、本書は間違いなく、名作である。 ●本書は「失踪者遺産相続ミステリー」の古典である。→ユニークな遺言状をからめて、魅力的な難問を設定しており、大変面白い。 ●本書は「論理貫通ミステリー」の古典である。→たしかにそうなのだろうが・・大丈夫です。 ●本書は「安楽椅子探偵」の古典である→たしかにそうなのだろうが・・大丈夫です。 ●本書は「歯と骨による死体鑑別ミステリー」の古典である。・・その通りであり、面白い。 ●本書は「探偵が恋愛するミステリー」の古典である。この恋愛小説的部分は、旧訳ではほとんどカットされ、今回はじめて、日本訳された部分である。→女性が良家のお嬢さんで、プラトニックラブ(あたりまえだが)で、大したすれ違いもなく成就してしまう点で、物足りないが、男の恋愛感情の激しさは、なかなかのものではある。 私的結論 ●やはり、本書の最重要点は「物の隠し方トリック」である。 | ||||
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1911年発表、シャーロック・ホームズ最大のライヴァルであるソーンダイク博士物の代表作。 乱歩が第一次大戦前のベストテンの一つとして選んだ作品だが、なるほど『赤い拇指紋』(1907年)や『証拠は眠る』(1928年)などを凌ぐ出来栄えで、読者を惹きつける謎めいた発端、堅牢な論理構成の妙、驚きの結末に至るまでの悠然たる筆致はオールタイム級の傑作と呼ぶに相応しい。 検視法廷のくだりなど中盤はやや物語が停滞するが、訳文の読みやすさも加わり、古色を感じさせない展開はむしろモダンに感じられる。また証拠に基づく丹念な推論の積み重ね方は現代のリアルな警察小説や犯罪小説の元祖のような趣きがあり、レイモンド・チャンドラーがフリーマンを愛読していたという事実と重ね合わせると興味深い。 従来、時代遅れで退屈と批判の対象となってきたロマンス的要素も(ハヤカワミステリの旧訳は恋愛描写を大幅に割愛しているらしいが)機械的でない登場人物たちの血の通った証として微笑ましく愉しめ、ユーモアのある語り口も併せて読後の後味も良い。また重要な舞台となる大英博物館など当時のロンドンの雰囲気を活き活きと描いているのも魅力的だ。 そしてクリスティに代表される結末の意外性を第一義としたミステリの主流に対し、論理展開の興味を重んじたフリーマンの作風との比較を論じた訳者解説は示唆に富み、詳細な書誌を含め非常に有益。 | ||||
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