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歌うクジラ
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歌うクジラの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.60pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全72件 21~40 2/4ページ
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『生まれてからこれまで何度も自分を憎んだ。だが自分を憎んだまま生きるのはむずかしい。だから人間は、自分を憎むのを中断するための方法や手段を考える。きっと人間は無自覚のうちに、そのことだけをずっと考えているのだ。』(歌うクジラ、下巻、354−355ページ) 村上龍ほど偏見の目で見られ、評価されている作家はあまりいないだろう。彼は極端に肥大したエゴと自分が学んできた知識、思想を骨子に、常に「物語」という媒体の可能性に挑んでいる。 この「歌うクジラ」は遺伝子工学的に「不死」が成立しえた近未来を描いている。 「社会的なディストピアを描いた小説」と一言で述べることは簡単だ。しかしそれは誤りだろう。彼が得意とするのは今の延長線上の未来に、「If」の分岐路を設けることだ。「半島を出よ」において設定されたのは「隣国の特殊部隊によるテロ」であり、そして本作における「もしも」は不死で、それがもたらす可能性を――そう、不死という特権がもたらしうる・波及しうる可能性というものを――社会的かつ醒めた目線でたっぷりと描いている。経済的・社会的にも満たされていて、かつ「不老不死」となった存在が次に何を求めるのか? 「理想は求めるもので、叶えるものでない」、その通りだ。指向性を失った才能が、熱意が、行き過ぎたユートピア思想へ辿り着いたり、残虐性を帯びた管理思想と手を結ぶ――十二分にあり得る「IF」だろう。 「想像せよ」、随所随所でリフレインされる通り、敬語と想像力、言葉を武器に立ち回る主人公・タナカアキラは、しかし残念ながらこの世界を救うヒーローではない。だが、彼はこの世界を満たしている諦念、ひいてはこの権力社会の代表ともいえる怨霊と戦い、生き延びる。限りない受動と放浪の旅の末、見出されたその哲学のシンプルさ、美しさといったらどうだろうか。ラスト・シーンの宇宙の描写は凄まじい。老いてなお冴える村上龍の想像力に慄く作品だ。 | ||||
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視線が文章につまづくことがない。反り返った刀身が適切な鞘におさまっていくようにスルスル読める。これほどストレスを感じさせずに読ませる日本人作家を他に知らない。このような(瑠璃の勾玉のような)(その曲線と曲線の合致のような)文体を読み慣れてしまうと、他の作家の小説を(戦時中の割り箸のように句読点が毛羽立ったその文章を)読む際に、文章そのものにストレスを感じるようになるという副作用もあるので、良し悪しだ。 貧困層の少年少女が富裕層の暮らす最高級老人施設を目指して命がけの旅をするという冗談みたいな話。日本人や日本社会に対する鋭い嫌悪感がたいへん好ましい。随所で神の視座から届く主人公へのメッセージが感銘を打った。つまるところそれは著者のエセーのテーマでもあった〔死ぬな、楽しめ、世界を知れ〕ということに尽きるが、これは、中東の諺を脚色したものだったか知らん? 忘れた。なんにせよアルゼンチンの空気のように素晴らしく素晴らしい言葉だし、こどもたちへのメッセージとしても、今だ、まちがいのない言葉であるように思う。 | ||||
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西暦2117。国中に移民があふれ不老長寿が実現し、テクノロジーの進歩によって貧富の棲み分けが完璧に成立した未来の日本国。性犯罪者を隔離した九州北部の離島「新出島」が造られて92年が過ぎた。島で育った二人の少年アキラとサブロウは本土にあるという最高級老人施設を目指してディアスポラ、二度と戻らない旅に出た。出島、桟橋、ショッピングモール、スタジアム、繁華街、貧民窟、宇宙... あらゆる騒音と雑踏と悲鳴と暴力と興奮と殺戮と汚辱のなかで言葉と魂だけは失わずふたりは辿り着かなくてはならない。サブロウは本当の父を探すため、アキラは国家転覆を完遂するため…! ...なんちゃって(^_^;) 途中斜め読みになってしまったが、終盤で語られる、社会システムと禁忌のメカニズムや、社会階層の完璧な住み分けが実現した社会の帰結は興味深い。 もはや国家は転覆させる価値もなく、民族は撃ち破る壁ではなくなり、父親は乗り越えて踏み台にして高く跳ぶための固い大地ではなくなったとき、属国も血縁も地面も重力も失った、ただ中空を漂う魂みたいになった私が、勝利の後で、旅の最後で、死を前にして、心から「生きていたい」「他者に会いたい」と祈るラストシーンのメッセージは力強かった。 サイボーグジジイとの格闘にはちょっと笑いました。 | ||||
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数年前に購入したものの、序盤の淡々とした展開と独特の文体に挫折しておりましたが、気を取り直して読み直し、上下巻共に読了致しました。 22世紀の日本を描くディストピアものSFなのですが、タイトルである「歌うクジラ」は現代社会から小説内で描かれる未来社会へのパラダイムシフトの契機となった遺伝子の発見エピソード(と、それによって名付けられたとされる遺伝子名)にちなんだものであり、「歌うクジラ」なる牧歌的なキャラクターは登場しません。 上巻は、意図的に助詞を崩して会話する登場人物たちの会話を執拗なまでに記述している部分が長く、文章では理解しづらい架空のスポーツを観戦するシーンなど、正直に申しまして読むのに忍耐が必要になる方が多いかと思われます。また暴力的なシーンの描写に置いては残酷さが非常に強く、嫌悪感を示される方にとっては苦しい読書になることも考えられます。 以上、ネガティブな意見ばかりに思われるかもしれませんが、上下巻を通して読了した上での評価は私が感じた読みにくさを差し引きしても星4つ。過去に著者が「小説家なのだから言いたい事があれば小説で表現する」という意味の発言をしておられたのを読みましたが、その言に恥じる事の無い小説だった、との感想を持ちました。 | ||||
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上巻では淡々とした展開、助詞を意図的に崩した会話の執拗な描写、文章では理解しづらい架空のスポーツ観戦場面、暴力的で残酷なシーンなど、読む事に忍耐が必要な部分も多くありましたが、上下巻共に読了し、読んで良かったと思えました。 主人公の旅(移動)は最終到達地点に達し、ディストピアと化した未来社会の最下層から最上層までを縦断した末に物語の重要人物から「世界と歴史の真実」みたいなものを語られる終盤まで、話が進むごとに読み易くなって行き、物語にもいっそう引き込まれました。 過去に著者が「小説家なのだから言いたい事があれば小説で表現する」という意味の発言をしておられたのを読みましたが、その言に恥じる事の無い小説だった、と感じます。 | ||||
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文庫は100パーセント購入しています。カンブリア宮殿も見てます。私には難解すぎます。 | ||||
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上巻で挫折しました。だからこの巻は読んでません。これからも読みません。 | ||||
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はじめ、近未来SFファンタジーで少年が大冒険する血湧き肉躍るワクワク物語りなんだろうなー楽しみ☆、見たいな感覚で本を開きました。……それが間違いだった。正直なめてました。多分そういった体で読み始めるとガッカリします。だってこれ、楽しむ趣向の物語ではないですもん。エンターテイメントと言うよりは教養?物語を通したエッセイ?といった感じではないでしょうか。 結末というのはあまり重要ではないような気がします。結末ではなく、過程。主人公のアキラが新しい世界、新しい人間にふれあい、初めて人生が始まる、そんな長大な成長物語なんですよね。 たしか「21世紀の神曲を書きたかった」見たいなことが帯に書いてありました。なるほど!っと思いました。地獄→煉獄→天界は、本書でいう下層→中層→上層で、移動しながら何かを受け取っていくというのは、まさしくプロットとして酷似しています。 下巻に関してはもはや岩波の赤版を読んでいるような感覚を覚えました。 百数十年後の世界、ありえないようなディストピア、ファンタジー、ということで現実と乖離しているように感じるかもしれませんが、これって完全に現代の風刺ですよね?まさしく現代に蘇ったガリバー旅行記ですよ。 少年が最後にたどり着いた『答』。分かってはいるんですがいざ文字で明言されると心に来るものがあります。是非少年と一緒にその答えにありついてください。 いやー久しぶりに物凄い本だった。 | ||||
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日本語がめちゃくちゃで読んでいて疲れます。 途中で本を叩き付けたくなりました。 | ||||
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なかなか展開が読めず、いまひとつ言いたいことが伝わってこない。 文章は力強く描写力も抜群で、展開される情景をはっきりとイメージできるのですが、いまひとつ物語に引き込まれないのです。 氏の著書はほぼすべて読んでいますが、ページをめくる手がなかなか進まなかったのは本書がはじめてです。 | ||||
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「上」と同様、悪夢のような未来世界の、それなりにリアルな描写が延々と続く。しかし、キーワードの一つとでもいうべき「メモリアック」というのがややこしくてうまくイメージできず、さらにおしまい近くの「35号棟F」(その1〜その4)はどこかのSF映画で観たような展開で、拍子抜け。というか、期待したほどではなかった(どんでん返しはあってなきがごとし)。娯楽系(?)SFとしてはさすがによくできている、とは思うものの、物語内で交わされる思弁の部分に歯止めがかかっていない印象が残る。歯止めをかけないのがSFと言われればそれまでだが。ともあれ、結局、☆五つとはいかなかった。 思えば、やはり『半島を出よ』の方が読み応えがあったような気がする。それと、文庫本の「下」のおしまいには吉本ばななさんの「なんのためにでもなく」というタイトルの「解説」が付いている。評者は2回繰り返してこれを読んだが、何を書いておられるのか、ほとんど分らなかった。 | ||||
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約110年後の日本をアナーキーに、そして「絶望的」に描いたSF。流刑地から脱出したタナカアキラなる少年が、悪夢のような苦難の旅を続けるという、手っ取り早くいえばそんなストーリーで、何よりその緻密で迫真の「未来世界」の描写に圧倒された。他のレビューにもあるように、確かに読みにくい箇所、グロ過ぎる場面もなくはないものの、ドライブ感あふれるプロットの連続展開はさすが。ラストにはどんでん返しがあるらしく、下巻への突入が楽しみになってきた。(ラストが「すべて夢だった」なんてことにならないように) | ||||
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とにかく文字がぎっしり!内容もぎっしり!本の初心者にはオススメできないかも。。。 | ||||
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つるんとした表装がグッド!本棚に飾っておくだけでも価値ありです。 | ||||
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村上龍の小説を読んでいると、 何となく、宮崎駿の作品を思い出すことがある。 本作も、 『未来少年コナン』や『風の谷のナウシカ』(映画ではなく漫画の、特に5巻以降) を思い起こした。 お二人のイメージは全く違うような気もするが、案外、世界観が近いのではないかと想像する。 特に本作の最終章。 僕の中ではナウシカが「賢人の思惑」を否定する場面と、強く重なった。 興味がある方は、『ナウシカ』7巻だけでも読んでみて欲しい。 さて本作であるが、 「歌うクジラ」などという美しいタイトルからは かけ離れた、エログロワールドが延々、展開する。 そういう類が嫌いな方は、まず避けられた方がよろしいかと。 物語自体、読みやすい・追いかけやすいものではないので、忍耐力のある人向け? もしくは、エログロに物怖じしない、私みたいな変態さんとか(やれやれ)。 この本を人前で、澄ました顔で読み続けるのも、なかなかスリリングというか、変態チックであるような気がしました。 まじめに考えれば、『AKIRA』とか『ターミネーター』とか、「ダークな近未来SF」的な社会派作品が好きな人なのかな? 繰り返しになるが、 「タイトルに釣られて、安易に手を出さない方がいいですよ」 ということは、言っておいた方が良い小説だと思います。 現実の会話で、この『歌うクジラ』という小説を話題にすることも、村上龍が好きな作家の一人であることを公言するのも、 はばかられる。 が、個人的には、かなり好きです。 物語のラスト。 主人公と読者は宙に放り出されますが、そこでの充実感が、並の作家ではないことを証明している。私はそう思います。 | ||||
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『歌うクジラ』村上龍(著) つい最近,村上龍の『55歳のハローライフ』をAmazonで購入した時に,偶然発見。 『えっ?2010年初版?えっ?知らないんですけど!』 と慌てて上下巻セットで購入しました。 検索したら,中古の美品が,送料込み1250円! しかも初版本! Amazon最高!! そこで問題(ジャジャン) 『コインロッカー・ベイビーズ』『愛と幻想のファシズム』『五分後の世界』『希望の国のエクソダス』『半島を出よ』 これらの村上龍作品に共通するのは何? (チッチッチッチッチッ・・・・・) これで,直ぐ答えが分かる人。 あなたは,相当コアな村上龍フリークです。 (ジャジャン)答えは・・・ ・ ・ ・ ・ ・ 『全て,日本の近未来,(あるいは,異次元の日本『五分後の世界』)が舞台になっている』 ということです。 他にも, 『日本が破滅に向かう過程を描いている』 とか 『破壊と創造が主題になっている』 とか 『主人公が結構カッコいい』(ボクの息子の名前は,『愛と幻想のファシズム』の主人公から頂きました) とかでも,正解としましょう。 村上龍の近未来を扱った小説は,執筆されたその時代ごとの世相や,その時代で認知されている事象,技術を題材に,緻密な取材に基いて舞台設定やストーリーが創られてます。 だから,まだ実現していない一見突飛な世界でも 『このまま進んでいけば,ひょっとしたら,本当に将来こんなことができるのではないか。』 とか 『今の政治家たちが,このまま権力を持ち続けたら,こんな時代が来るのではないか』 といった錯覚に陥るほどの圧倒的なリアリティーを持った作品ばかりです。 この『歌うくじら』 舞台は2122年,今から120年後の日本が舞台です。 2022年,ハワイの海底で,グレゴリオ聖歌を正確に繰り返し歌うザトウクジラが発見され,その遺伝子を培養し人間に注入すれば,不老不死になるということがわかった。 その遺伝子を誰に注入するのか? 世界中の時の権力者たちは,『将来人類が永遠に繁栄する道筋を造るため』という大義を掲げ,傲慢にも,人類に『最上流層・上流層・中流層・下流層・最下流層』などと階級をつけ,『上流層』から上の人間にその遺伝子を注入し,不老不死の生命を得ることによって,中流層以下の人類を支配していく。 そして,100年後の日本で,その遺伝子の巡り,ある少年の冒険が始まる。(すみません,これは,帯のコピーです) 未来の日本の風景や社会情勢,登場人物のキャラクタの解説などに,村上龍的な緻密な表現を用いた長いセンテンスが多く,わざと助詞を間違えた会話が出てきたりするので,読み進めるのに時間がかかります。 でも,冒険が始まってから,終わるまで,多分1日か2日の物語なので,全体のストーリーにスピード感があり,最後まであっとい言う間に読み進んでしまいました。 最後に, 『ええええ!!!!!』 というどんでん返しがあって,終わるのですが,これは,多分賛否が別れる結末だと思います。 まあ,村上龍の作品は,大体そうですけどね。 村上龍作品を読んだことがない人。 ちょっと,とっつきにくいかもしれませんが,SFが好きなら,お勧めです。 すでに『歌うクジラ』を読み終えた方。 ぜひ,感想を聴かせてください。 長い感想文でしたが,最後まで読んでいただいた方。 お付き合いいただき有難うございました。 | ||||
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「歌うクジラ」は、坂本龍一の音楽をページの中に織り込みiPad向けに先行発売された。内容は「2022年のクリスマスイブ、ハワイの海底で、グレゴリオ聖歌を正確に繰り返し歌うザトウクジラが発見された。そして100年後の日本、不老不死の遺伝子を巡り、ある少年の冒険の旅が始まる。」というなんとも神秘的で、それだけでも想像を掻き立てられるような説明が頭の片隅に残っていて、本屋で手にとった瞬間に買おうと思った。しかも村上龍ならいつもながら面白い展開にしてくれるだろう、という期待も込めて。 が、ある意味裏切られた。 ザトウクジラなんてほとんど出てこなく、物語は少子化による移民受け入れによって混沌とし、文化経済効率化運動と最適生体理念に基づき、上・中・下階層の居住地区に分かれ、社会的階層によって話し方や生活レベル、治安も異なる今から110年後の日本。歌うクジラから発見されたという不老不死の分子、SW遺伝子によって永遠の命を手に入れた上層階の裕福な人々、そのSW遺伝子の研究によって寿命を急激に縮め数日で死に至ることが可能とされ、犯罪者を処罰するために使用されているテロメア切断。 15歳のアキラは九州北西部の新出島の最下層社会に住む少年。父はデータベース管理の仕事を通して入手したSW遺伝子の秘密を知ったためにテロメア切断により処刑される。父の死の直前に、アキラはSW遺伝子の秘密が入ったデータを足に埋め込こまれ、父の遺言であるそのマイクロチップをある人物に届けるために新出島を出て旅をする。 最下層の新出島から中階層の本土に行くだけでも、厳重に管理された社会階層間を行き来するのは至難の業。クチチュと呼ばれる突然変異で耳の後ろの穴から神経毒を垂らすサブロウさん、反乱移民メンバーの子孫のアンと旅を続ける。 理想郷(ユートピア)を築くことによって崩壊するデストピアの世界。階層間を移動しながらアキラが目にする残酷で絶望的な社会。ある意味ジョージ・オーウェルの「1984」にも似た全体主義国家によって分割統治された社会に対する焦慮が描かれているのかと思いきや、「出会い」の素晴らしさと「生きる」ことが主題の物語だ。そんな青春小説に出てきそうなテーマに辿り着くまでに、いつもながら過激な暴力シーンや性描写があるのはやはり村上龍らしい。 | ||||
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移動と出会いが大事なのはわかるが、それ自体は他の誰かも言いそうなことである。 多くの人がなんとなく気づいてはいるけど言葉にできていないことをえぐりだす という私にとっての村上龍の一番の魅力が損なわれているような気がする。 その一文にたどりつくまでの物語がそこに生きているようなかんじもしなかった。 ストーリーとしては決してつまらないわけではないし、移民の話言葉も非常に面白いのだけど、 「歌うクジラ」という題名を見たときの、さすが村上龍!という期待感には遠いと感じた。 | ||||
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読み始めは上巻の密度ある内容に比べてだいぶ退屈だなと感じました。 途中まではかなり停滞してたのですが、終盤に近づくにつれておもしろくなりました。 とくにラストはすごいよかったです。 村上龍にしては珍しいほどわかりやすいラストでした。 それだけにすごい強く響きました。 | ||||
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龍氏の「22世紀の『オイディプス王』『神曲』『夜の果てへの旅』を書きたかった。」という帯のコメントを見れば、この壮大なロードムービーのような構成は当然だし、この意図的に破壊された口語の記述も、わずかな希望と圧倒的な絶望を抱えることになるこの結末も当然だろう。 上巻の帯に答は書かれていたということだ。 小道具や背景として描かれる技術は、実際に実用化できるかどうかは別にして、根拠はあるものなのだろう。 「ヒト」という種にとって宗教的倫理観や人権意識と、生物としての生存欲求はどちらが強いのか。 経済的な繁栄にしたがって、DNAの保存という生物種としての本能を捨てているとしか思えない個体の比率が高まっている「ヒト」は、既に絶滅危惧種なのだろう。 では、絶滅を回避するために、既に明らかになっている「皆が一緒には幸せになれない社会」を突き詰めて考えて、「効率化」のための「階層化」を、生物種の個体としての生存期間(寿命)の面からも、アクセスできる情報の面からも、厳密にするという方法は有効な解決策の一つなのか。 村上龍氏の世界観構築系作品の中では、現在と遠すぎてイメージがわかない。 ただ、階層化が一概に「悪」であると嫌悪しきれない何かがこの作品にはあった。 | ||||
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