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ペテロの葬列
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ペテロの葬列の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.29pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全111件 101~111 6/6ページ
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「誰か」「名もなき毒」と続いてようやく杉村が探偵稼業へ踏み出すところへ辿りつきました。このシリーズは人が持つ「悪意」を活写して容赦がありませんが本作もほのぼのとした描写から一転、読者を憂鬱へ落としてくれます。ラストに怒りを覚えているレビュアーの方が多いようですが伏線は見えていたのでそんなでもないかな?杉村をしがらみから解き放つにはこの手しかないでしょう(自分の我儘を通すキャラじゃないし)。「名もなき毒」では家族が弱点となっていたし、今多の肩書や宮仕えも足枷になっていたといえます。杉村三郎を解き放つための作品で「マスオ探偵」「退屈社員探偵」から毛色が変わってくるのは確実で次作が楽しみです。 | ||||
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最初にこの作品を読んだときは、力作だと思うのとともに多くの方も書かれている読後感のために何とも言えない気持ちにもなりましたが、これを読んだ後にもう一度名もなき毒を読み返すと、非常に優れた連作であることがわかります。ペテロの葬列の読後感も違ってきました。 | ||||
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これだけの長編、これだけのプロット、これだけの人物像。参りました。宮部みゆきのキャパシティの大きさに。 ただし、力一杯読み通すのを覚悟せずして、いい加減に取りかかっては、その壮大なドラマが読み取れないと思う。 じっくり読み込んでいくと、重厚、良質な英米文学にも劣らない物語世界が広がってくる。 宮部みゆきの著書はほぼすべて持っているが、上位にランクする作品である。 この作品に先行する「誰か」と「名もない毒」を引っ張り出して、読みかえそうと思っている。 | ||||
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1作目から読んでいて感じた違和感が氷解した作品です。 いわゆる探偵物はいきなり名うての探偵として登場するものです 得てしてほろ苦い過去があり作中に少しずつ明かされていくという手法を取るものなんですが 本シリーズではなんと、そのほろ苦い過去から物語が始まって おそらく様々な苦悩や葛藤失敗を経て 一人前の名のしれた探偵となったところで完結する物語とみました。 主人公がこれからどういった探偵となっていくのか 楽しみたいと思います。 | ||||
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「火車」で衝撃を受けて以来ずっとファンです。レビューをみると他の方の評価があまり高くないので迷いましたが、やはり買ってよかったと思います。さすが宮部みゆき!という感じで、ぐいぐい物語の中に引き込んでくれました。たしかにラスト近くであのような展開が用意されているとは思わず、「うっそー!」と言ってしまいましたが。たまたまですが、これが発売される前に、私にとって人生の大きな節目となる出来事があり、精神的にキツイ日々を送っていました。現実逃避のようにこの本を読んでいたのですが、縁について主人公が語る部分で、ガチガチになっていた私の気持ちがまるで魔法のように溶けたことが自分でも衝撃でした。わずか2行の文章なのですが。やはり宮部みゆきは天才だと思います。 | ||||
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この『ペテロの葬列』の評判があまりよろしくない!のは、最後の最後で挿入された主人公の杉村三郎とその妻菜穂子のやりとりに大きな理由がある!と思います。 ボク個人は、『誰か』『名もなき毒』と読んできて、菜穂子のキャラがあまり好きではない感性の持ち主なので、本書の読後感は非常に後味の悪い!ものでした。それで、当初は、この杉村夫妻のやりとりの挿入は蛇足ではないか?と考えていました。 しかし、本書402頁の「真実はけっして美しくはない。この世でもっとも美しいものは、真実ではない。終わらない嘘の方だ。」という記述が、本書の中で宮部先生がいちばん言いたい事ではないか?と仮説してみて、もう一度杉村夫妻のやりとりの挿入の理由を考えてみました。ただし、自信は全然ありません! ひとつは、この杉村三郎シリーズを続けていくには、主人公の杉村を今多グループから引き離す!ほうが、宮部先生にとって都合がよかった!のではないか?と思います。 もうひとつは、こっちの理由の方が重要なのですが、杉村の人質仲間である坂本君が「この世からマルチ商法や霊感商法をはじめとするすべての悪徳商法を無くしてしまうんや!」と考えて、アホな行動にうって出ますが、宮部先生が杉村夫妻のやりとりを挿入した理由は、この坂本君のアホな行動と関係している!ような気がします。 つまり、もしも、坂本君の意図した通りに悪意に満ちた嘘が存在しない真実だけの社会になった!としたら、なるほど悪徳商法はこの世から無くなる!かもしれない。しかし、そうなったらそうなったで必ず悪徳商法に代わる何らかの不都合が社会に生じる!のではないか? こう考えて、杉村夫妻のやりとりや森閣下の心中事件を挿入した!のではないか?と思います。ただし、自信は全然ありません! ただ、宮部先生自身は、真実をベースにした社会のほうが良い!と考えていると思います。主人公の杉村を今多グループから引き離しましたから、、、、、。 また、ボク個人も、基本的に真実をベースにするが、例外的に健全なというか健康的な嘘が機能する社会のほうがうまくいく!のではないか?と考えています。 | ||||
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私も男ですが、男の目線から見ると納得しがたいラストであろうと思います。厳しい感想を書いておられる方も男性が多いかも知れません。以下、ネタバレを含みます。 バスジャックに遭遇する前半から犯人の素性を探るところまではぐいぐいと引き込まれ、いつもながら上手いなぁと感じました。問題はこの物語のラストです。「誰か」、「名もなき毒」と続くうちに杉村と義父である今多嘉親の関係に微妙な変化が生じますが、今作ではさらに親密なというか、お互いの理解が進んだ関係になっていきます。そうした関係性の変化や前半部分の描写から、杉村が本格的に探偵業にたずさわるのではないかと推測していたのですが、そうすると杉村は今多グループからは離れなければなりません。杉村の境遇から考えて、今多グループから離れると言うことは菜穂子や桃子との離別を意味します。杉村が自らそのような選択をするとは思えませんでした。しかし、作者は思いがけない形で杉村を今多グループから引き離します。 私自身はこの離別(の理由)に納得いきませんし、多くの男性もそう感じるでしょう。しかし、女性としてはごく自然な成り行きなのかも知れません。男性から見た場合、菜穂子が語る理由は自分勝手でわがままで、それにもかかわらず相手(杉村)のためを思っているというような言い訳をしている点で受け入れがたいものなのですが、このあたりが男と女の考え方の違いなのでしょう。こうした女性心理は男性作家には書けないものだと思います。 しかし、菜穂子の告白を受けたときの杉村の反応が、男としてはどうにも納得できません。こんな理由で別れを切り出されて、あんなに素直に受け入れる男はまずいないでしょう。この点では作者が女性であるということがマイナスに作用しているのではないかと思います。かわいさ余って憎さ百倍という言葉がありますが、自分の全てを犠牲(親兄弟ともほとんど没交渉になっているのですからそう言っても過言ではないと思います)にして妻と家族を愛してきた男が、妻に裏切られたと知ったときにあのような態度を取るなど不自然すぎます。いくらフィクションだとしても、同じ男としてみた場合にリアリティがないと思いました。このために、この作品は(どんなひどい理由であっても)綺麗に別れてくれる女性にとって理想の男性を描いたファンタジーになってしまったように思います。 作者は、「杉村はそういう男ではない」とおっしゃるかも知れませんが、あのような状況でいつもと同じような反応になるはずがない。最愛の妻であるからこそ怒りや憎しみが爆発するであろうし、最愛の娘と離れないために最後まであがくと思います。それが人間ではないでしょうか。そこまで書いてくれたなら5点を付けたかも知れません。 ところで、通常このようなケースでは妻側が慰謝料を支払ってしかるべきだと思いますが、どうなったんでしょうね?作者が描く杉村なら、かっこよく慰謝料は辞退しそうですが、そうするとますます浮き世離れしてきますね。菜穂子の非道さも強調されそうですし。 杉村と今多嘉親の関係はディック・フランシスのシッド・ハレーものにおける、主人公シッドと義父(後に元義父)のロランド卿のそれに似通ってきたように思います。ただ、シッドとロランド卿以上に杉村と今多嘉親の立場の差が大きすぎるので、仮に続編があったとしてもこちらの元義父の登場はそれほど多くならないでしょうね。今多氏が一線を引けば話は別でしょうけど。 被害者と加害者の境界にいるものについては、作者が率直に感じたことなのだろうと思います。ただ、羽田が改心した理由は少し弱い気がしましたが。 最後に、このシリーズは是非とも続けて欲しいと思います。作者が杉村をどうするのか見てみたい。このままでは、いささか問題があるせよ愚直に妻と子供を愛してきた杉村だけがバカを見る話になってしまいますから。 評価ですが、中盤までは素直に楽しめたものの、最後の最後で納得いかない点が多々あるので1点マイナスして、4点とします。 | ||||
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『誰か』『名も無き毒』に続く、杉村三郎シリーズの第三弾。 小説としての完成度も高く、ドラマ化等によって知名度もぐっと上がった 前作『名もなき毒』に続く一編であるだけに、ハードルの高いところから 読まれる作品だと思います。 序盤、バスジャック事件の鬼気迫る描写は、さすがの宮部節。 強く引き込まれ、ひたすら読まされました。犯人の造形は、作者初期の傑作 『魔術はささやく』を彷彿とさせます。犯人の生業がひとつのキー・ポイント ですが、ここに目をつけたのは非常に宮部氏らしく、ミステリ作家として の嗅覚は未だ健在といった感があり。さすがの読み応えでした。 そして、読後の「後味の悪さ」について。たしかに初読時においては それは否めず、このシリーズのファンであれば、それはより顕著かも しれません。絶句、というのがぴったりかも。 しかし、この杉村シリーズが、今後も確実に続くことを念頭に置くとすれば この展開は避けては通れない、必要不可欠なものであるようにも思えます。 作中に『指輪物語』が出てきますが、この長編にたとえるならば、 おそらく杉村シリーズはこの『ペテロの葬列』によって、 ようやく前日譚である『ホビットの冒険』が終わったあたりではないかと。 (杉村さんはビルボ・バギンスに相似してる点がありますしね) これから続く長い旅への、重く苦い布石ではないかと思います。 (というか、そうでなければつらすぎる展開です…) あと一つ、辛口に書かせていただくならば、菜穂子さんの心理については もう少し繊細で丁寧な描写が欲しかったです。物語を前へ進めることを 優先した、強引な書き方が後半目立ってしまいました。そこが特に残念。 続編への期待を込めて、☆4つで。 | ||||
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逆タマ探偵杉村三郎シリーズ第3弾。 前作『名もなき毒』からずいぶんと間が開いたけど、待った価値はあった。 700ページ弱の分量を一気に読ませる筆力はさすが。 冒頭のバスジャック事件を起点に、三郎が身の回りで起こる細々とした 事件に対処していく展開はこれまでと同じながら、全体的なトーンは 重くシリアスで、話の広げ方なども前2作よりむしろ『楽園』に近い印象。 さらに今回、もともとは「逆タマお婿探偵」というキャラを成立させるための設定であった 今多嘉親や妻の菜穂子の人物像が掘り下げられ、さらには三郎本人の内面にも踏み込んでいく。 事件の解決後、三郎と菜穂子が下す決断がずしりと重い。 そこで初めて、宮部作品の中ではそれほど重要視していなかったこのシリーズに、 自分がそれなりに愛着を持っていたことに気がついた。さびしくなるなあ。 何かを決断するかのように、何かに耐えるかのように、 ぐっと拳を握りしめて独りたたずむ杉村三郎の表紙イラスト。 彼は、そしてこのシリーズはこの先どこに向かうのか。 | ||||
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発売日を指折り数えて待ってました。 このシリーズ、主人公の杉村三郎の妻、今多コンチェルンのお嬢様がどうしても好きになれず、 最初からイライラしてました。 本題のミステリーより前2作ともこの夫婦が気になって。 私の言いたいことを妻本人が言ってくれてます。宮部さんは優しいな、 何も分かってないわがままだけのお嬢さんにはしなかった。私から見ればどうしようもない我儘ですが。 ミステリー自体は怖かったですね。お金の恐ろしさ、そして知らず知らず相手の術中に嵌ってしまう恐ろしさ・・・ 人間は弱いです。 杉村さんシリーズ楽しみです。もう少しだけ強くなって。「睡蓮」のマスターも引っ越すらしいから次回からも出てほしいです。 | ||||
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「誰か」「名もなき毒」に続く、杉村三郎シリーズの第3弾。杉村が乗ったバスがハイジャックされ、杉村は人質に取られる。その事件は警察の突入により数時間で解決するのだが、そのあとに多くの謎が残され、杉村は人質仲間とともにその謎を調べ始めることになる。そしてたどり着いた真相は、この国の社会の闇につながる苦いものだった。宮部みゆきらしい、社会の悪に市井の人の目で切り込んでいく力作だ。 この作品では、人の心に潜む「悪意」とそれが人に伝播してゆく恐ろしさを取り上げている。題名の「ペテロ」は、キリストの12使徒の1人で、キリストが迫害される中、キリストへの忠誠を誓った人物だ。しかし、ペテロは迫害者の厳しい追及に負け、ついに「キリストを知らない」と嘘をつく。その嘘を後悔したペテロは真実を述べて逆十字架にかけられ殉職する。 この国の社会の闇の中には、自分の利益だけを考えて平気で嘘をついて他人を貶める「ペテロたち」がたくさんいる。本物のペテロには、心の中に嘘を見抜くキリストが住んでいたから、嘘をついたことを悔いることができた。けれど、現代の日本社会の「ペテロたち」は悔いることなく嘘をつき続ける。 この本で描かれる事件は、そんな「ペテロたち」の一人が嘘をつき続けたことを悔いて行動を起こすところから始まっている。人質事件にかかわった人々も、自分の利益と、正義との間で揺れ動きながら、どうすることが自分にとって、そして周りにとってもいいことなのかを考えていく。 現代の闇は利己的な「ペテロたち」をこれからも生み続けていくだろう。しかし、この書で書かれているように、それを悔いるものが現実の社会にもいてほしい、他者の気持ちを考える心を少しでも持っていてほしいと願わずにはいられない。そして、自分も、匿名のネット社会に引きずられて気づかぬうちに「ペテロたち」の一人にならないように気を引き締めなければならないと思う。 また、この作品では、おなじみの登場人物も今までどおりにはしていられない。事件を巡るさまざまな葛藤を経て、それぞれに変化していく。このシリーズの次の作品は、きっとまた違ったものになるであろう。そんな予感がもてる余韻あるラストシーンだった。 | ||||
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