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(短編集)
残酷な視界
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残酷な視界の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1~3 1/1ページ
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本書は1974年6月に講談社から初出版されたもので、2002年11月に講談社文庫から再出版されたものです。本作に収録されている「魔少年」は、秀逸です。 「雪の絶唱」 フィルムトリックもの。妻子のいる男と、不倫している女が妊娠した。生みたい気持ちはあるが、男からは、堕せと言われる。初め、自分ひとりで育てていく事を考えた。だが、堕すことにした。それは、男の妻も妊娠した事を知ったからだ。青春を犠牲にした愛を、裏切った男の正体を、見破ったのからだ。自分だけと言いながら、妻とも情交していたのが許せなかった。そして、女は、復讐する事にした。堕すのを認める条件として、男を飛騨の高山への旅行に誘い出した。男も美肉を、頬張り過ぎた税金のつもりで同行した。女は、人目を忍ぶため、行きも帰りも別の列車で移動しようと提案する。旅行から帰った男は、女が、まだ帰って来ていないのを不審に思う。そして、女が、飛騨高山の“飛騨の里”の中で、殺害された事を知った。女が所有していたカメラを現像してみると、明らかに男が女を殺害したと思える写真が出てきた。女は、旅行中、男に気付かれぬ様、巧妙に男が犯人であるかのようなスナップを撮っていたのだ。そして、殺された様に装って自殺したのである。列車を別けたのもそのためだ。命を賭けた復讐劇。 「死を運ぶ天敵」 三田は、大学農学部の研究室で、画期的な研究に成功した。リンゴやナシの害虫を駆除する、天敵となる良虫の開発に成功したのだ。大手化学肥料会社が、それを大量に生産する様になると、農薬に頼っていた、果樹園の経営者も、皆、この無害な“生きた農薬”を使い始めた。その事が、時の研究として、もてはやされ、三田は、マスコミの媒体から、たくさんの取材を受ける様になった。しかし、三田の過去には、どす黒い影があった。まだ、学生の頃、失恋したショックを癒すため、酩酊するまで酒を飲み、挙句の果て、たまたま居合わせた知らない男と意気投合し、路上に停めてあった車を盗み、運転して人を轢いてしまったのだ。死亡人身事故のうえ、酒酔い、無免許、盗難車と交通四悪を犯していたのだ。行きずりの犯行だったため、その時は、捕まることは無かった。一緒の男も、誰だか分からない。ところが、マスコミに頻繁に登場する三田の顔を見て、その時の男が思い出してしまったのだ。男は、害虫の様に、三田に纏わりつき脅迫した。三田の研究が、天敵を呼び寄せてしまったのだ。 「異常の太陽」 警視庁の刑事、砂本が、子供の参観日に小学校へ行った時、教室に貼られた絵の中に、奇妙な絵があるのを見つけた。紫色で荒れた海を描き、その上には、大小ふたつの太陽が描かれている。描いた子供の名前を見ると、管内の殺人事件で殺された、男の息子だった。興味を持った砂本は、担任に頼んで、子供が描いた十枚ほどの絵を見せてもらった。すると、古い方から順に、異常な配色だった絵が、最近になると、普通の子供が描く平凡な絵に変わっていくのが分かった。そこで、砂本は、子供の絵に現れる色彩と出現位置によって、精神状態を研究した“アサリ式診断法”を学ぶ。そして、殺された父親に、隠された醜い部分があった事を発見するのだ。この話の悲しいところは、砂本の息子の絵を診断したところ、全く子供や妻の不満を読み取れていなかった事を知って、家族が崩壊するラストになる事だ。 「殺意開発公社」 公共用地取得を目的に設立された、開発公社を巡る不正取引問題を扱った話。二つのストーリーに別れる。この手の公社では、余りにも真面目過ぎて、頑固一点張りの者は、上役からは、嫌われるものである。そんな男、吉沢を懐柔するため、理事長と専務理事が共謀する。吉沢は、若い女が雨の日に傘を差し出してくれたので驚いた。妻しか知らない彼は、美しい女の魂胆を知らない。そして、真面目人間が、悪の仲間に入り込まされてしまう。二つ目。理事長グループは、31万平方メートルの土地を、相場より10倍も高く買い取った。それが、市民の投書によって発覚してしまう。理事長グループは、仲介会社を通して巨額のマージンを受け取るつもりだった。取引を実行した者に、捜査の手が伸びた。自分たちが関与している事が、表沙汰になっては困る。そこで、都合の良いように、殺されるか自殺してくれないかと考える。現実にもありそうな事。 「殺意中毒症」 永立薬品の経理課長、平松は、部下の行った仕事でも、完全に自分がチェックしなければ納得できない完全主義者だった。そのため、早朝出勤、深夜帰宅は、当たり前。休日まで返上して出社し、さらには、布団を持ち込んで、会社に寝泊まりするほどの異常さをみせた。だが、それは、一種の職業病で“働き中毒(ワーカ・ホリック)”である事が分かる。仕事を止めると、猛烈な不安に襲われる。その強迫症状から、逃れるために、仕事を止めることが出来なくなっていたのだ。永立薬品社長の妻、早苗は、夫に宛てられた、大量の私的な贈答品や文書の返礼書きをするため、休日には、社長室でその作業をすることを許されていた。社長室だと、送り主と会社との関係が調べ易かったからだ。だが、あろうことか早苗は、労働組合の書記長と親密な関係になってしまうのだ。大胆にも、社長室のフカフカなソファーの上で、奔放な宴を繰り返していた。平松も当然出社している。しかし、ある日、平松の部下が、平松のバックの中から盗聴器の様な物を発見して、社内は、大パニックになってしまう。 「赤い蜂は帰った」 蜂の帰巣能力を研究している吉木が、実験蜂を放すため山中に向かった。実験蜂は、胸から腹部に赤い目印が付けられていた。今回、放された蜂は、二十匹だったが、そのうち十九匹が巣箱へ戻った。ところが、山中へ向かった吉木が研究室に戻らなかったのだ。警察と大学の混成部隊によって、周辺の捜索を行ったところ、山道から何かが滑り落ちた跡が見つかった。草を薙ぎ倒し、落ちて行ったと思われる所を調べると、そこに吉木の持って行った、蜂の運搬袋が落ちていた。ところが、その周囲をいくら探しても、吉木の姿は、発見されない。この事件は、巣箱へ帰らなかった赤い目印の付いた一匹の実験蜂が解決する。 「魔少年」 大野宗一は、将来大人になったら恐ろしい犯罪者になると言われるほど、子供のいたずらにしては、悪辣ないたずらをした。例えば、横断遊びと称して、他の子供に走って来る自動車の直前ギリギリのところで道路を渡らせる。女の子が飼っていた猫を、生きたまま焼却炉に放り投げ、知らずに点火してしまった人によって焼き殺される。火事の発生しやすい季節に、クラスメート四人の女の子の自宅へ、火事見舞いの葉書を送りつける。送られてきた家では、火を付けられるのではないかと、不安でいっぱいになってしまう。熱帯魚が大好きな男の子に、良い餌が有るからと殺虫剤入りの配合餌を渡し、知らずに水槽に入れた男の子が飼っていた熱帯魚が全滅してしまう。これだから、大人たちも宗一には、とても用心していた。宗一は、父子家庭で、父は、交通事故の後遺症で身体に不自由があった。同じ町に住む、相良が宗一の父親を会社の守衛として拾ってあげた。拾われたと思っている、宗一の父親の働きぶりは、陰ひなた無かった。相良の息子、正男も宗一と同じ学校へ通い同じクラスだった。正男は、成績も優秀で品行も良く、誰からも認められていた。ところが、正男は、宗一を脅迫していた。お父さんに言いつけて、宗一の父親を会社から辞めさせてやると。正男は、ライバルの子供たちに悪戯をすべく、アイデアを考え出し宗一に実行させていたのだ。余りにも悪意に満ちたいたずらなので、捜査に乗り出した刑事によって、近所では優秀だと評判だった正男の本性が暴露される。 「残酷な視界」 志賀邦枝は、寂しさを紛らわすため“裏窓遊び”という遊びを考え付いた。邦枝は、三十二才、大手デパートの電話交換手をしていた。婚期を逃したハイミス。アパートの自室に帰っても、誰も待っている人もいなければ、誰かの為に、してあげなければならない事も無い。そこで、考えついた遊びが、倍率の高い双眼鏡を使い、他人の家の平和そうな生活の内幕を覗くことだった。邦枝のアパートがちょうど良いことに高台にあったことも幸いした。見られた方は気が付かないが、生活の中に土足で踏み込む事に異常に興奮した。この日は、なかなか寝付かれないで、いつもの様に双眼鏡を持って外を覗いた。十一時近かったので、どちらの家もカーテンを閉め、電気を消している部屋が多かった。その中で、まだ、煌々と輝いていたのが、最寄りの私鉄線の駅舎だった。ホームに照準を合わせると、酔っ払いが歩をふらつかせながら歩いている。危ないなぁと思いながら見ていると、横から別の男が飛び出してきて、その酔っ払いをホームの下へ突き落してしまった。そして、時刻通り到着した列車によって引き殺されてしまうのだ。驚いた邦枝だったが、もっと驚いた事があった。それは、突き落した男と、双眼鏡越しに目と目が合ってしまった事だ。相手の男は、突き落した事を、邦枝に見られたのを知った。その男は、窓の位置から、何階の何番目の部屋かを知る事が出来る。と言う事は、その男が邦枝の口を塞ぎに来ることが予想される。だが、邦枝は、その男のことが全く分からなく恐怖に怯える。 「空白の凶相」 井沢は、息子が三才になった頃から夫婦の営みに変調を来すようになった。その理由は、明らかで、襖一枚隔てた隣の部屋にいる息子が、起きているのではないかと感じるからだ。襖を細く開けて覗かれている様な錯覚を起こす。すると、たちまち不能になってしまうのだった。その原因は、過去に井沢が幼少の頃に受けた辛い体験によるものだ。実は、井沢は、幼少の頃に、両親の営みを見てしまったのだ。初めは、プロレスでもしているのかと思った。だが、奇声を発し、醜悪な動物が絡み合った様な図は、子供でも違う事がすぐに分かった。そのシーンが強烈に記憶として焼き付いてしまった。だが、その湧き出てくる記憶には、絡み合っている両親の顔が無いのだ。それがグロテスクな様を倍加させた。だから、今でも妻との交わりの最中に、少しでもその気配があると、顔の無い男女の絡み合いが、瞼の裏に表れ不能に陥ってしまうのだ。狭くて、まったくプライバシーが保証されなかった、古い日本式の住宅で起こる悲劇。 | ||||
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とゆうことで買いました 短編ものなんで気軽に読めるのがいいですね 森村さんの短編物はあまり知らないのですが これから探してみたいです | ||||
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欲望は満たされない 双眼鏡で殺人を目撃してしまったOLに犯人の魔の手 がしのびよる 高層アパートに住むOL・志賀邦枝のひそかな趣味は、双眼鏡で他人の 生活を覗くことだった。ある晩、殺人を目撃した彼女に迫る危機! TVドラマでは双眼鏡は使われなかったし、殺人を目撃したのは元同僚のOLであった。連続殺人犯の間違いでOLが殺される。 | ||||
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