(短編集)
殺意の逆流
- 山荘 (115)
※タグの編集はログイン後行えます
【この小説が収録されている参考書籍】 |
■報告関係 ※気になる点がありましたらお知らせください。 |
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点0.00pt |
殺意の逆流の総合評価:
■スポンサードリンク
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
現在レビューがありません
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
それぞれ読み応えがあった。犯罪成立と未完が同居した、想像を膨らまさせられたエンド。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本書は、1972年7月講談社から初出版されたもので、2002年1月講談社文庫から再出版されたものです。殺意の盲点、殺意の接点に次ぐ“殺意の~”シリーズ三作目です。 「殺意の逆流」 東西銀行は、常に全国預金高上位四行に入る、ビッグフォーと呼ばれる銀行である。吉住征男は、本店業務部検査課のメンバーだった。検査課は、全国支店の監督機関になっている。吉住は、現在、本店内部で手掛けている大きな仕事があった。調査と監査を繰り返し、もう少しで大きな偽りの骨格を解明できるところまできていた。ところが、本店業務部長の平島武彦から、突然、N県K支店への調査を命じられた。調査の半ばであるが、部長の命令には、逆らえない。N県K支店には、かつて調査課から二人の調査員が行ったが、一人は、交通事故で、一人は、川底に転落して憤死していた。K支店に乗り込んだ吉住は、支店長の郡山が、地元の実業家でもあり暴力団でもある、藤木建設に多額の不正な融資をしていることを突き止めた。その調査結果を、喜び勇んで部長の平島のところへ持ち込んだ。ところが、悪の枢軸は、平島だったのだ。優秀な部下を使い、自分の悪行を糊塗する上司の狡猾さには、憎悪を覚える。K支店の不審死は、三名になってしまった。だが、地元の警察は、この不審死の源流は、東京にあると気が付く。 「派閥抗争殺人事件」 浅香商事は、貿易会社だが、沿岸漁業を主とする野田水産を吸収合併した。在来の貿易会社としての流通部門に、水産部門を併せ持つことになり、急速に基盤を発展させた。それと同時に、それが社内に派閥をつくる下地になった。現社長、里見洋三体制の後を継ぐと見られていたのが、直属の部下の島内で、その下に若山~根岸ラインという確固たる体制が出来ていた。ところが、最近風向きが変わってきた。公害汚染で、沿岸漁業が落ち込んだところへ、北陸沿岸でタンカーが座礁し、流出した重油で沿岸漁業は、壊滅的な被害を受けた。本来、島内は、野田水産の出身であり、いわばよそ者である。これを契機に、島内に押されて萎縮していた里見派が、猛然と巻き返しに出てきた。里見にしても、後継者は、旧浅香貿易の身辺から立てたかった。それに気が付いた島内は、子飼いの若山と根岸とともに里見派の切り崩しにかかる。部下の妻を、里見派の者に提供し、現場に踏み込みスキャンダルを偽造する。さらに、濡れ衣の殺人事件も企てる。いかにも、破廉恥な抗争事件だ。 「ステレオ殺人事件」 団地住まいの吉崎勢津子は、隣人の片野郁子には辟易していた。都心から一時間ほどの所にある中規模な団地である。この当時は、団地にエレベーターを設置する様な時代では、無かった。縦割りの階段に、左右に部屋がある。一階の右が101号、左が102号で、そのまま上に行って五階の右が501号、左が502号になっていた。五階の502号に住む、吉崎勢津子は、扉、通路を挟んだ隣家に住む、片野家の騒音に悩まされていた。勢津子は、夫を会社へ送り出し、家事を済ませて、一休みしたいと思う頃になると、その騒音がする。その騒音とは、最新のコンポーネントステレオから鳴り響く、フランスのムードオーケストラのミュージックだった。勢津子は、どちらかと言えば、国内の歌手による音楽は、好きだったが、洋楽には、全く興味は無い。ただの雑音でしかなかった。音量を下げる様に言っても、その時一時的に下げても、また二~三日すると元の大音量に戻ってしまう。だが、勢津子も何度も聞いているうちに、ある一つのメロディーが頭の中に記憶されるようになった。そして、そのメロディー(曲)が、奏でられた時に、同棟の二階から郁子の部屋に入る男の存在に気が付く。郁子は、大音量を鳴らし、不倫相手に夫が出かけたと言う、メッセージを送っていたのだ。だが、それを知った勢津子は、騒音以上に悩みの種が増え苦悶する。 「北ア山荘失踪事件」 北アルプスの主稜ともいう、立山連峰と後立山連峰と槍穂高連峰が交差するところにM岳があった。そこに、長野県O町に住む、山案内人、有川正作が山小屋を開設した。この事によってM岳への入山が容易になった。登山客が多数訪れるようになり、観光地化した。M岳山荘を手伝う正作の娘、幸子は、都会的で繊細なムードを持ち、山の陽に焼けていたが、衣服に隠された肌は、白く肌理が細かく濃厚な色気を感じさせた。山を目的にやって来た登山者は、速やかに彼女のファンになったのである。そんなファンの中に医大生の竹下和彦がいた。M岳山荘で急病人が出た時、竹下が適切な処置をする姿を見て、幸子が好意を覚えると、二人にプラトニックな恋愛感情が芽生えた。M岳への登行には三日の日程が必要だ。竹下は、休みがあるとM岳へ向かった。学生の身であるから、そんなに頻繁に訪れることは、不可能である。年に数回しか叶わない二人の逢瀬であった。若い男女の儚い心の描写が巧妙に書かれています。だけど、森村氏は、恋愛小説作家ではないので、ここから事件が起こります。三日間の休みでM岳へ来た竹下が、予定の日数を終えて、下山したまま行方不明になってしまうのです。そこには、耐えることの出来ない幸子の気持ちが書かれています。 「祖母 為女の犯罪」 やたらと血縁関係の人物を多数登場させた物語。よくもここまで複雑にしたものだと思う。福原家は、東京の隣県S県北部の田園都市G市の旧い商家であった。その福原家の健介は、祖母の為から奇妙な依頼を受けた。それは、為が死んでお骨になった時、そのお骨の一部を大沼の久山寺の中にある鳴瀬家の墓に埋めてくれ、という事であった。その時が来て、健介は、不思議に思い、何故、為がそのように頼んだのか、祖先のルーツを探る旅にでることにする。ここからが、ややこしい。健介は、為の長男の為吉と鶴との間に生まれた。為吉は、祖母為と祖父福原吉太郎の間に生まれた長男である。次男(つぐお)には次男がいる。為は、吉太郎との結婚前に鳴瀬吉蔵という男と交際していた様子がある。更に、健介の母、鶴は、鳴瀬家の徳松という男と不倫していたことも分かった。健介が、出生の秘密を探る話なのだが、森村氏は、登場人物を意図的に多くして、複雑にして読者を困らせようとしているのだろう。遊び心があって面白い。 「人間溶解」 大日皮革は、日本でトップクラスの皮革メーカーである。八代哲也を主任技師とした、試験研究メンバーが、新製品“メルーサ”を開発した。これは、一種の合成皮革だが、製造工程が簡単で安価に作れる。従来のナイロンレザーと比べて、気温の影響を受けず、柔軟度の調節が容易で、諸特性がナイロンレザーより優れていた。試験研究所には、八代の他に三名の技術者がいた。東京T工大出身の古木正三(31才)、大阪T大出身の堀口弘(29才)、それと紅一点、私立の理科系の名門S大物理学部を首席で卒業した中脇優子(24才)である。その他に、六名のアシスタントがいた。“メルーサ”の開発によって会社の業績は、うなぎ登りとなり、社長も八代の功績を称えた。なかでも石田専務は、八代を寵愛した。本来、実験は、グループで行うもので、八代だけ上層部の評価を受けるのは、一緒に研究をした他の技術者からみれば、面白くない。そんなことから、にわかに不協和音が鳴り始めた。仕事上の権限と責任を付与された八代は、その権限を部下の支配権と勘違いして、横暴な振る舞いをするようになった。とりわけ、中脇優子は、八代の権限の乱用によって、女の大切なものまで奪われてしまった。さらに、口外したら関係を暴露すると脅され、関係を継続させられた。古木と堀口も、八代の横柄な態度に辟易し、三者三様の殺意を八代に対して抱き始めるのだ。そこで、奇妙な殺人計画が相談された。死体が発見されるから、殺人事件なのであって、死体が発見されなければ事件にはならないだろうと言うのである。その発想に基づき、化学者三人は、夜遅くまで残って人間を溶かす奇妙な研究を開始するのだ。 | ||||
| ||||
|
その他、Amazon書評・レビューが 2件あります。
Amazon書評・レビューを見る
■スポンサードリンク
|
|