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完全犯罪の座標



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    初公開日(参考)1977年11月
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    完全犯罪の座標―傑作短編集7 (講談社文庫 も 1-19 傑作短編集 7)

    1980年01月31日 完全犯罪の座標―傑作短編集7 (講談社文庫 も 1-19 傑作短編集 7)

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    No.5:
    (1pt)

    汚い!!

    商品状態が「良い」となっていたので購入しましたが、届いた本はカバーが汚れており、天地小口もポツポツと茶色いシミがあり、全てにおいて汚い本でした。
    個人的には「可」の本だと思いました。
    ランク付けや検品はもっとシッカリして頂きたいです。
    完全犯罪の座標―傑作短編集7 (講談社文庫 も 1-19 傑作短編集 7)Amazon書評・レビュー:完全犯罪の座標―傑作短編集7 (講談社文庫 も 1-19 傑作短編集 7)より
    4061361570
    No.4:
    (5pt)

    表題作を含む9編の短編集。「妖獣の債務」は秀逸です!

    本書は1976年6月に講談社から初出版されました。1980年2月に文庫化されています。「完全犯罪の座標」と「盗まれた密室」は、完全犯罪を扱った小説です。「盗まれた~」は、ユーモア小説です。また、「妖獣の債務」は秀逸でした!
    「完全犯罪の座標」
    戸沢は、妻のスクラップブックを弄んでいた時、奇妙な切り抜きに気が付いた。新聞や雑誌の切り抜きで、殆どは、和洋裁関係の物だった。だが、それは、本間詩朗が現代推理に寄せた完全犯罪考という文章だった。戸沢は、スクラップブックを妻に悟られぬように、元の位置に戻した。その時、秘かに妻の過去を洗ってみようと決心したのだ。すると、彼女は、過去に完全犯罪を実行していたのである。この手の話は、そんなことをして、知らなくても良い事を知って後悔することになる。
    「妖獣の債務」
    英吉は、自分の命を借り物だと思い、それに苦しんでいた。木登りをして高く登り過ぎ、身動きとれなくなった時、通称、ゴンちゃんに助けられたからだ。助けに来たゴンちゃんと一緒に枝から落ちた。英吉は、ゴンちゃんがクッション代わりになり、キズひとつ無く助かった。だが、ゴンちゃんは、耳や口から血を噴いて倒れていた。その凄惨な姿を見て、恐怖のあまり家へ逃げ帰った。通りかかった人に、ゴンちゃんの死体が発見されたと知ったのは、二日後だった。ゴンちゃんは、いつも奇妙なことばかりしていたので、野良犬が死んだようにしか扱われなかった。自分の命を投げ出し、他人の命を救った美しい死を遂げながら、英吉が、口を閉ざしていたため顕彰されなかった。俺の命は、ゴンちゃんからの借り物だと思い始める。しかし、その債務を返すことは出来ない。それどころか、利子を加えて増々、債務の重さが大きくなって苦しむ事になる。
    「魔犬」
    美保は、デカと共に、死に場所を探しに旅へ出た。美保はホステスだが、デカは人間ではない。土佐犬の大型な犬だ。デカは、薬殺される事になっていた。それは、子供を噛み殺してしまったからだ。いつも可愛がってくれる、チイちゃんが、ガキ大将に虐められているのを助けるため、飛び掛かり、めちゃめちゃに噛みつたのだ。子供は、病院に運ばれたが、出血多量で死亡してしまった。それで、薬殺される事になったのだ。美保にとって、デカのいない孤独な人生など考えられなかった。人間以上の存在になっていたのだ。デカを車に乗せ、死の旅に出た二人?は、岬の先端に丁度良い死に場所を見つけた。覚悟は、決まった。ところが、その場所に、もう一台の車があった。それは、新婚ホヤホヤの夫婦を、車ごと崖下へ墜落させようと巧まれた車だった。
    「風媒の死」
    敏也は、その車が大嫌いだった。彼は、東大を目指して二浪中である。本番になると、実力を発揮出来ず、試験に落ちてしまう。父も東大出で、父の期待を一身に担っていた。敏也の受験勉強が悲愴味を帯びてきた。その矢先、敏也の部屋の前に駐車場が出来たのである。朝夕は、凄まじい騒音と排ガスの坩堝となった。そればかりか、夜になると深夜まで、若いカップルが来ては、奇声を上げながら男女の饗宴を繰り返した。ラストスパートをかけなければならない時に、勉強が手に付かなくなった。敏也は、ノラと言う名の犬を飼っていた。野良犬だったからノラと言う名にした。ところが、大切に可愛がっていたノラが、駐車場の車によって轢き殺された。敏也は、もう怒りを抑えることが出来なかった。ノラを轢き殺した車は知っている。深夜、部屋を抜け出した敏也は、その車のガソリンキャップを外して火を点けた。勢い良く燃え盛った猛火は、その夜の強風に煽られ、次々と隣の車に伝染していった。数台の消防車が来て、火を消し止めた時には、駐車場の車、三十台が全て焼け焦げていた。また、慌てて消火している姿が見られて敏也の犯行も露見してしまった。だが。ここで困った問題が起きた。それは、その焼け焦げた車の一台の中から、中年男性の撲殺死体が発見されたからだ。
    「盗めなかった“切り札”」
    石川と熊坂と香坂という三人は、新鉢を得意とする日本一の忍び師(泥棒)と自負していた。新鉢とは、まだ、盗難被害をうけたことが無い家や蔵ばかりを専門に狙う泥棒である。だが、三雄並び立たず、と言うくらいだから、日本一は、一人でなければならない。そこで、三人が寄り集まり、互いの技を競い合い、日本一を決める事になった。日本泥棒協会の会長が審判人になった。泥棒業界が、この競技を面白がり、そればかりか、スリや泥棒の腕利きまでが、このコンクールに協力した。狙われたのは、十一(十日で一割の利子をとる)で金貸しをしている金原ためだった。ためは、銀行は信用できないと言って、有り金を部屋の何処かに隠しているはずだった。その事は、以前から評判で、空き巣の類が何度か侵入したが、金のある場所を発見出来なかった。その場所を発見した者が、日本一の泥棒となる。方法は、一人のオブザーバーを付け、部屋に侵入して金を捜す。発見したら、金は取らずに場所をオブザーバーに報告する。そして、二人目、三人目もそれを繰り返す。もし、二人の発見者がいたら、再び、二人で決勝戦をやるというルールだった。こうして、泥棒日本一を賭けた戦いが始まる。
    「致死鳥」
    杉並区のアパートで若い女性の撲殺死体が発見された。彼女の名は、梅本美津子(二十五才)で動物専門の美容師(トリマー)である。現場を調べた刑事によって、明らかに、他の場所で殺され、運び込まれたものと分かった。また、部屋には鳥かごがあって、中で、オウムが死んでいた。オウムは、彼女の顧客で国際客船の船長からプレゼントされた、タイハクオウムという種だった。おそらく、飼い主が亡くなって、餌が欠乏したため餓死したものと思われた。死体が、彼女の部屋へ戻されているのだから、彼女と面識がある人物が犯人と疑われた。そこで一斉に、彼女の交友関係と顧客たちが洗われた。犬猫の床屋を専門のトリマーに依頼するくらいだから、顧客たちは、皆、金にゆとりがあった。だが、分かったのは、それだけで、犯人と目星を付けられる容疑者は現れなかった。迷宮入り濃厚な状況であった。夏江は、最近、たちの悪い風邪をひいていた。心配になって病院に行くと、オウム病と診断された。病鳥からの糞や飛沫の吸入、または、鳥かごや羽毛との接触によって感染するらしい。潜伏期間は、二週間。日本で発症したのは、一例しか無いと言う。それを聞いた時、夏江は、感染源を辿られ、自分の殺人が露見してしまう事を悟った。
    「断罪喫茶店」
    常原は、喫茶店“タウン”のソファーに座った時、やっと安心した。常原は、生命保険の外務員である。先ほどまで、団地で飛び込みのセールスをしていた。インターホンを押すと、扉が開いた。応対してくれると思い中へ入った。ところが、外へ出ようとした主婦が、たまたま扉を開けただけだった。主婦は、驚き、強盗!と叫んだ。咄嗟の事で、動転した常原は、主婦の口を押さえようとして、力が余り過ぎた。気が付いた時、主婦は、白目を開けて意識が無かった。幸い、常原と主婦を結ぶ接点は何も無い。そうして、団地を抜け出し、逃げて来たのだ。もう大丈夫だろうと思って入ったのが“タウン”だった。コーヒーを飲み、安心した常原は、店を出ようとすると、自分のバッグではないことに気が付いた。さっきまで、隣に座っていた若い女性の物だ。中を調べると、編み物の編み掛けが入っていた。でも、良く見ると、厚めの封筒が入っている。開けると、一万円札が十五枚も入っていた。自分のバッグに入っているのは、生命保険のパンフレットだけである。返そうかと思ったが、十五万円の誘惑に負けた。だが、これが失敗だった。主婦が殺された時、生命保険のセールスマンが団地にいたことは知られている。若い女性は、間違えたバッグを持って、警察に行った。間違えたバッグの男の顔も覚えていたのだ。
    「飼い主のない孤独」
    高台に建つコーポフジの一室でキャバレーのホステス、矢沢久枝(二十四才)が殺された。無断で欠勤しているのを不審に思ったキャバレーの店長が連絡して、合い鍵を使って部屋へ入った管理人が発見した。死体の傍に、血の付いた大型のラジオが落ちていたので、それによる撲殺と判断された。死後経過は、五日ほどと推定された。部屋を調べた刑事は、可愛い子猫がいるのに気が付いた。飼い主が亡くなって、一緒に部屋に閉じ込められていたのだ。猫好きの刑事が、抱き上げると違和感があった。飼い主が亡くなって、五日も経つのに、子猫は、痩せてもいなければ、栄養状態も良さそうだった。そうなると、何処かで餌を食べていた事になる。しかし、部屋の中には、餌らしい物は無い。部屋は、鍵が掛かっていて、外へは出られないはずだ。猫のトイレもあって、排泄物も新しい。さらに、何を食べていたか気になった刑事は、その排泄物を調べてもらった。すると、被害者の物では無い、指輪の欠片が混ざっていたのだ。このアパートの近くに、欠けた指輪をしている女がいることが分かった。
    「盗まれた密室」
    ここに登場する男は、探偵小説に毒されている。読んでいるだけでは、飽き足らず、実際に完全犯罪を実行してみたくなった。彼の仕事は、ホストである。ホストの読書好きというのも珍しい。相手は誰でも良い。だが、普段、接点の無い女が適している。それも一回限りの相手なら、尚良い。場所は、今はやりのモーテルにした。本来、閉鎖的な建物なので密室を構成しやすい。彼の特殊能力を知らなければ密室を破れない。計画が整った時、いい相手が見つかった。初めての客で、彼を見染めて、いきなりセックスを求めた。そこで、彼は、作戦を実行する事にした。かねてより、目ぼしを付けていたモーテルへ連れ込んだ。彼の特殊能力は、全身の関節を外して、自分の身体を軟体動物の様に出来るのである。その為、普通の大人では、とうてい出入り不可能な僅かな間隙でも、通り抜けられるのだった。だが、彼は、初めから大きなミスをしていたのだ。
    完全犯罪の座標―傑作短編集7 (講談社文庫 も 1-19 傑作短編集 7)Amazon書評・レビュー:完全犯罪の座標―傑作短編集7 (講談社文庫 も 1-19 傑作短編集 7)より
    4061361570
    No.3:
    (5pt)

    表題作を含む9編の短編集。「妖獣の債務」は秀逸です!

    本書は1976年6月に講談社から初出版されました。1980年2月に文庫化されています。「完全犯罪の座標」と「盗まれた密室」は、完全犯罪を扱った小説です。「盗まれた~」は、ユーモア小説です。また、「妖獣の債務」は秀逸でした!
    「完全犯罪の座標」
    戸沢は、妻のスクラップブックを弄んでいた時、奇妙な切り抜きに気が付いた。新聞や雑誌の切り抜きで、殆どは、和洋裁関係の物だった。だが、それは、本間詩朗が現代推理に寄せた完全犯罪考という文章だった。戸沢は、スクラップブックを妻に悟られぬように、元の位置に戻した。その時、秘かに妻の過去を洗ってみようと決心したのだ。すると、彼女は、過去に完全犯罪を実行していたのである。この手の話は、そんなことをして、知らなくても良い事を知って後悔することになる。
    「妖獣の債務」
    英吉は、自分の命を借り物だと思い、それに苦しんでいた。木登りをして高く登り過ぎ、身動きとれなくなった時、通称、ゴンちゃんに助けられたからだ。助けに来たゴンちゃんと一緒に枝から落ちた。英吉は、ゴンちゃんがクッション代わりになり、キズひとつ無く助かった。だが、ゴンちゃんは、耳や口から血を噴いて倒れていた。その凄惨な姿を見て、恐怖のあまり家へ逃げ帰った。通りかかった人に、ゴンちゃんの死体が発見されたと知ったのは、二日後だった。ゴンちゃんは、いつも奇妙なことばかりしていたので、野良犬が死んだようにしか扱われなかった。自分の命を投げ出し、他人の命を救った美しい死を遂げながら、英吉が、口を閉ざしていたため顕彰されなかった。俺の命は、ゴンちゃんからの借り物だと思い始める。しかし、その債務を返すことは出来ない。それどころか、利子を加えて増々、債務の重さが大きくなって苦しむ事になる。
    「魔犬」
    美保は、デカと共に、死に場所を探しに旅へ出た。美保はホステスだが、デカは人間ではない。土佐犬の大型な犬だ。デカは、薬殺される事になっていた。それは、子供を噛み殺してしまったからだ。いつも可愛がってくれる、チイちゃんが、ガキ大将に虐められているのを助けるため、飛び掛かり、めちゃめちゃに噛みつたのだ。子供は、病院に運ばれたが、出血多量で死亡してしまった。それで、薬殺される事になったのだ。美保にとって、デカのいない孤独な人生など考えられなかった。人間以上の存在になっていたのだ。デカを車に乗せ、死の旅に出た二人?は、岬の先端に丁度良い死に場所を見つけた。覚悟は、決まった。ところが、その場所に、もう一台の車があった。それは、新婚ホヤホヤの夫婦を、車ごと崖下へ墜落させようと巧まれた車だった。
    「風媒の死」
    敏也は、その車が大嫌いだった。彼は、東大を目指して二浪中である。本番になると、実力を発揮出来ず、試験に落ちてしまう。父も東大出で、父の期待を一身に担っていた。敏也の受験勉強が悲愴味を帯びてきた。その矢先、敏也の部屋の前に駐車場が出来たのである。朝夕は、凄まじい騒音と排ガスの坩堝となった。そればかりか、夜になると深夜まで、若いカップルが来ては、奇声を上げながら男女の饗宴を繰り返した。ラストスパートをかけなければならない時に、勉強が手に付かなくなった。敏也は、ノラと言う名の犬を飼っていた。野良犬だったからノラと言う名にした。ところが、大切に可愛がっていたノラが、駐車場の車によって轢き殺された。敏也は、もう怒りを抑えることが出来なかった。ノラを轢き殺した車は知っている。深夜、部屋を抜け出した敏也は、その車のガソリンキャップを外して火を点けた。勢い良く燃え盛った猛火は、その夜の強風に煽られ、次々と隣の車に伝染していった。数台の消防車が来て、火を消し止めた時には、駐車場の車、三十台が全て焼け焦げていた。また、慌てて消火している姿が見られて敏也の犯行も露見してしまった。だが。ここで困った問題が起きた。それは、その焼け焦げた車の一台の中から、中年男性の撲殺死体が発見されたからだ。
    「盗めなかった“切り札”」
    石川と熊坂と香坂という三人は、新鉢を得意とする日本一の忍び師(泥棒)と自負していた。新鉢とは、まだ、盗難被害をうけたことが無い家や蔵ばかりを専門に狙う泥棒である。だが、三雄並び立たず、と言うくらいだから、日本一は、一人でなければならない。そこで、三人が寄り集まり、互いの技を競い合い、日本一を決める事になった。日本泥棒協会の会長が審判人になった。泥棒業界が、この競技を面白がり、そればかりか、スリや泥棒の腕利きまでが、このコンクールに協力した。狙われたのは、十一(十日で一割の利子をとる)で金貸しをしている金原ためだった。ためは、銀行は信用できないと言って、有り金を部屋の何処かに隠しているはずだった。その事は、以前から評判で、空き巣の類が何度か侵入したが、金のある場所を発見出来なかった。その場所を発見した者が、日本一の泥棒となる。方法は、一人のオブザーバーを付け、部屋に侵入して金を捜す。発見したら、金は取らずに場所をオブザーバーに報告する。そして、二人目、三人目もそれを繰り返す。もし、二人の発見者がいたら、再び、二人で決勝戦をやるというルールだった。こうして、泥棒日本一を賭けた戦いが始まる。
    「致死鳥」
    杉並区のアパートで若い女性の撲殺死体が発見された。彼女の名は、梅本美津子(二十五才)で動物専門の美容師(トリマー)である。現場を調べた刑事によって、明らかに、他の場所で殺され、運び込まれたものと分かった。また、部屋には鳥かごがあって、中で、オウムが死んでいた。オウムは、彼女の顧客で国際客船の船長からプレゼントされた、タイハクオウムという種だった。おそらく、飼い主が亡くなって、餌が欠乏したため餓死したものと思われた。死体が、彼女の部屋へ戻されているのだから、彼女と面識がある人物が犯人と疑われた。そこで一斉に、彼女の交友関係と顧客たちが洗われた。犬猫の床屋を専門のトリマーに依頼するくらいだから、顧客たちは、皆、金にゆとりがあった。だが、分かったのは、それだけで、犯人と目星を付けられる容疑者は現れなかった。迷宮入り濃厚な状況であった。夏江は、最近、たちの悪い風邪をひいていた。心配になって病院に行くと、オウム病と診断された。病鳥からの糞や飛沫の吸入、または、鳥かごや羽毛との接触によって感染するらしい。潜伏期間は、二週間。日本で発症したのは、一例しか無いと言う。それを聞いた時、夏江は、感染源を辿られ、自分の殺人が露見してしまう事を悟った。
    「断罪喫茶店」
    常原は、喫茶店“タウン”のソファーに座った時、やっと安心した。常原は、生命保険の外務員である。先ほどまで、団地で飛び込みのセールスをしていた。インターホンを押すと、扉が開いた。応対してくれると思い中へ入った。ところが、外へ出ようとした主婦が、たまたま扉を開けただけだった。主婦は、驚き、強盗!と叫んだ。咄嗟の事で、動転した常原は、主婦の口を押さえようとして、力が余り過ぎた。気が付いた時、主婦は、白目を開けて意識が無かった。幸い、常原と主婦を結ぶ接点は何も無い。そうして、団地を抜け出し、逃げて来たのだ。もう大丈夫だろうと思って入ったのが“タウン”だった。コーヒーを飲み、安心した常原は、店を出ようとすると、自分のバッグではないことに気が付いた。さっきまで、隣に座っていた若い女性の物だ。中を調べると、編み物の編み掛けが入っていた。でも、良く見ると、厚めの封筒が入っている。開けると、一万円札が十五枚も入っていた。自分のバッグに入っているのは、生命保険のパンフレットだけである。返そうかと思ったが、十五万円の誘惑に負けた。だが、これが失敗だった。主婦が殺された時、生命保険のセールスマンが団地にいたことは知られている。若い女性は、間違えたバッグを持って、警察に行った。間違えたバッグの男の顔も覚えていたのだ。
    「飼い主のない孤独」
    高台に建つコーポフジの一室でキャバレーのホステス、矢沢久枝(二十四才)が殺された。無断で欠勤しているのを不審に思ったキャバレーの店長が連絡して、合い鍵を使って部屋へ入った管理人が発見した。死体の傍に、血の付いた大型のラジオが落ちていたので、それによる撲殺と判断された。死後経過は、五日ほどと推定された。部屋を調べた刑事は、可愛い子猫がいるのに気が付いた。飼い主が亡くなって、一緒に部屋に閉じ込められていたのだ。猫好きの刑事が、抱き上げると違和感があった。飼い主が亡くなって、五日も経つのに、子猫は、痩せてもいなければ、栄養状態も良さそうだった。そうなると、何処かで餌を食べていた事になる。しかし、部屋の中には、餌らしい物は無い。部屋は、鍵が掛かっていて、外へは出られないはずだ。猫のトイレもあって、排泄物も新しい。さらに、何を食べていたか気になった刑事は、その排泄物を調べてもらった。すると、被害者の物では無い、指輪の欠片が混ざっていたのだ。このアパートの近くに、欠けた指輪をしている女がいることが分かった。
    「盗まれた密室」
    ここに登場する男は、探偵小説に毒されている。読んでいるだけでは、飽き足らず、実際に完全犯罪を実行してみたくなった。彼の仕事は、ホストである。ホストの読書好きというのも珍しい。相手は誰でも良い。だが、普段、接点の無い女が適している。それも一回限りの相手なら、尚良い。場所は、今はやりのモーテルにした。本来、閉鎖的な建物なので密室を構成しやすい。彼の特殊能力を知らなければ密室を破れない。計画が整った時、いい相手が見つかった。初めての客で、彼を見染めて、いきなりセックスを求めた。そこで、彼は、作戦を実行する事にした。かねてより、目ぼしを付けていたモーテルへ連れ込んだ。彼の特殊能力は、全身の関節を外して、自分の身体を軟体動物の様に出来るのである。その為、普通の大人では、とうてい出入り不可能な僅かな間隙でも、通り抜けられるのだった。だが、彼は、初めから大きなミスをしていたのだ。
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    No.2:
    (5pt)

    表題作を含む9編の短編集。「妖獣の債務」は秀逸です!

    本書は1976年6月に講談社から初出版されました。1980年2月に文庫化されています。「完全犯罪の座標」と「盗まれた密室」は、完全犯罪を扱った小説です。「盗まれた~」は、ユーモア小説です。また、「妖獣の債務」は秀逸でした!
    「完全犯罪の座標」
    戸沢は、妻のスクラップブックを弄んでいた時、奇妙な切り抜きに気が付いた。新聞や雑誌の切り抜きで、殆どは、和洋裁関係の物だった。だが、それは、本間詩朗が現代推理に寄せた完全犯罪考という文章だった。戸沢は、スクラップブックを妻に悟られぬように、元の位置に戻した。その時、秘かに妻の過去を洗ってみようと決心したのだ。すると、彼女は、過去に完全犯罪を実行していたのである。この手の話は、そんなことをして、知らなくても良い事を知って後悔することになる。
    「妖獣の債務」
    英吉は、自分の命を借り物だと思い、それに苦しんでいた。木登りをして高く登り過ぎ、身動きとれなくなった時、通称、ゴンちゃんに助けられたからだ。助けに来たゴンちゃんと一緒に枝から落ちた。英吉は、ゴンちゃんがクッション代わりになり、キズひとつ無く助かった。だが、ゴンちゃんは、耳や口から血を噴いて倒れていた。その凄惨な姿を見て、恐怖のあまり家へ逃げ帰った。通りかかった人に、ゴンちゃんの死体が発見されたと知ったのは、二日後だった。ゴンちゃんは、いつも奇妙なことばかりしていたので、野良犬が死んだようにしか扱われなかった。自分の命を投げ出し、他人の命を救った美しい死を遂げながら、英吉が、口を閉ざしていたため顕彰されなかった。俺の命は、ゴンちゃんからの借り物だと思い始める。しかし、その債務を返すことは出来ない。それどころか、利子を加えて増々、債務の重さが大きくなって苦しむ事になる。
    「魔犬」
    美保は、デカと共に、死に場所を探しに旅へ出た。美保はホステスだが、デカは人間ではない。土佐犬の大型な犬だ。デカは、薬殺される事になっていた。それは、子供を噛み殺してしまったからだ。いつも可愛がってくれる、チイちゃんが、ガキ大将に虐められているのを助けるため、飛び掛かり、めちゃめちゃに噛みつたのだ。子供は、病院に運ばれたが、出血多量で死亡してしまった。それで、薬殺される事になったのだ。美保にとって、デカのいない孤独な人生など考えられなかった。人間以上の存在になっていたのだ。デカを車に乗せ、死の旅に出た二人?は、岬の先端に丁度良い死に場所を見つけた。覚悟は、決まった。ところが、その場所に、もう一台の車があった。それは、新婚ホヤホヤの夫婦を、車ごと崖下へ墜落させようと巧まれた車だった。
    「風媒の死」
    敏也は、その車が大嫌いだった。彼は、東大を目指して二浪中である。本番になると、実力を発揮出来ず、試験に落ちてしまう。父も東大出で、父の期待を一身に担っていた。敏也の受験勉強が悲愴味を帯びてきた。その矢先、敏也の部屋の前に駐車場が出来たのである。朝夕は、凄まじい騒音と排ガスの坩堝となった。そればかりか、夜になると深夜まで、若いカップルが来ては、奇声を上げながら男女の饗宴を繰り返した。ラストスパートをかけなければならない時に、勉強が手に付かなくなった。敏也は、ノラと言う名の犬を飼っていた。野良犬だったからノラと言う名にした。ところが、大切に可愛がっていたノラが、駐車場の車によって轢き殺された。敏也は、もう怒りを抑えることが出来なかった。ノラを轢き殺した車は知っている。深夜、部屋を抜け出した敏也は、その車のガソリンキャップを外して火を点けた。勢い良く燃え盛った猛火は、その夜の強風に煽られ、次々と隣の車に伝染していった。数台の消防車が来て、火を消し止めた時には、駐車場の車、三十台が全て焼け焦げていた。また、慌てて消火している姿が見られて敏也の犯行も露見してしまった。だが。ここで困った問題が起きた。それは、その焼け焦げた車の一台の中から、中年男性の撲殺死体が発見されたからだ。
    「盗めなかった“切り札”」
    石川と熊坂と香坂という三人は、新鉢を得意とする日本一の忍び師(泥棒)と自負していた。新鉢とは、まだ、盗難被害をうけたことが無い家や蔵ばかりを専門に狙う泥棒である。だが、三雄並び立たず、と言うくらいだから、日本一は、一人でなければならない。そこで、三人が寄り集まり、互いの技を競い合い、日本一を決める事になった。日本泥棒協会の会長が審判人になった。泥棒業界が、この競技を面白がり、そればかりか、スリや泥棒の腕利きまでが、このコンクールに協力した。狙われたのは、十一(十日で一割の利子をとる)で金貸しをしている金原ためだった。ためは、銀行は信用できないと言って、有り金を部屋の何処かに隠しているはずだった。その事は、以前から評判で、空き巣の類が何度か侵入したが、金のある場所を発見出来なかった。その場所を発見した者が、日本一の泥棒となる。方法は、一人のオブザーバーを付け、部屋に侵入して金を捜す。発見したら、金は取らずに場所をオブザーバーに報告する。そして、二人目、三人目もそれを繰り返す。もし、二人の発見者がいたら、再び、二人で決勝戦をやるというルールだった。こうして、泥棒日本一を賭けた戦いが始まる。
    「致死鳥」
    杉並区のアパートで若い女性の撲殺死体が発見された。彼女の名は、梅本美津子(二十五才)で動物専門の美容師(トリマー)である。現場を調べた刑事によって、明らかに、他の場所で殺され、運び込まれたものと分かった。また、部屋には鳥かごがあって、中で、オウムが死んでいた。オウムは、彼女の顧客で国際客船の船長からプレゼントされた、タイハクオウムという種だった。おそらく、飼い主が亡くなって、餌が欠乏したため餓死したものと思われた。死体が、彼女の部屋へ戻されているのだから、彼女と面識がある人物が犯人と疑われた。そこで一斉に、彼女の交友関係と顧客たちが洗われた。犬猫の床屋を専門のトリマーに依頼するくらいだから、顧客たちは、皆、金にゆとりがあった。だが、分かったのは、それだけで、犯人と目星を付けられる容疑者は現れなかった。迷宮入り濃厚な状況であった。夏江は、最近、たちの悪い風邪をひいていた。心配になって病院に行くと、オウム病と診断された。病鳥からの糞や飛沫の吸入、または、鳥かごや羽毛との接触によって感染するらしい。潜伏期間は、二週間。日本で発症したのは、一例しか無いと言う。それを聞いた時、夏江は、感染源を辿られ、自分の殺人が露見してしまう事を悟った。
    「断罪喫茶店」
    常原は、喫茶店“タウン”のソファーに座った時、やっと安心した。常原は、生命保険の外務員である。先ほどまで、団地で飛び込みのセールスをしていた。インターホンを押すと、扉が開いた。応対してくれると思い中へ入った。ところが、外へ出ようとした主婦が、たまたま扉を開けただけだった。主婦は、驚き、強盗!と叫んだ。咄嗟の事で、動転した常原は、主婦の口を押さえようとして、力が余り過ぎた。気が付いた時、主婦は、白目を開けて意識が無かった。幸い、常原と主婦を結ぶ接点は何も無い。そうして、団地を抜け出し、逃げて来たのだ。もう大丈夫だろうと思って入ったのが“タウン”だった。コーヒーを飲み、安心した常原は、店を出ようとすると、自分のバッグではないことに気が付いた。さっきまで、隣に座っていた若い女性の物だ。中を調べると、編み物の編み掛けが入っていた。でも、良く見ると、厚めの封筒が入っている。開けると、一万円札が十五枚も入っていた。自分のバッグに入っているのは、生命保険のパンフレットだけである。返そうかと思ったが、十五万円の誘惑に負けた。だが、これが失敗だった。主婦が殺された時、生命保険のセールスマンが団地にいたことは知られている。若い女性は、間違えたバッグを持って、警察に行った。間違えたバッグの男の顔も覚えていたのだ。
    「飼い主のない孤独」
    高台に建つコーポフジの一室でキャバレーのホステス、矢沢久枝(二十四才)が殺された。無断で欠勤しているのを不審に思ったキャバレーの店長が連絡して、合い鍵を使って部屋へ入った管理人が発見した。死体の傍に、血の付いた大型のラジオが落ちていたので、それによる撲殺と判断された。死後経過は、五日ほどと推定された。部屋を調べた刑事は、可愛い子猫がいるのに気が付いた。飼い主が亡くなって、一緒に部屋に閉じ込められていたのだ。猫好きの刑事が、抱き上げると違和感があった。飼い主が亡くなって、五日も経つのに、子猫は、痩せてもいなければ、栄養状態も良さそうだった。そうなると、何処かで餌を食べていた事になる。しかし、部屋の中には、餌らしい物は無い。部屋は、鍵が掛かっていて、外へは出られないはずだ。猫のトイレもあって、排泄物も新しい。さらに、何を食べていたか気になった刑事は、その排泄物を調べてもらった。すると、被害者の物では無い、指輪の欠片が混ざっていたのだ。このアパートの近くに、欠けた指輪をしている女がいることが分かった。
    「盗まれた密室」
    ここに登場する男は、探偵小説に毒されている。読んでいるだけでは、飽き足らず、実際に完全犯罪を実行してみたくなった。彼の仕事は、ホストである。ホストの読書好きというのも珍しい。相手は誰でも良い。だが、普段、接点の無い女が適している。それも一回限りの相手なら、尚良い。場所は、今はやりのモーテルにした。本来、閉鎖的な建物なので密室を構成しやすい。彼の特殊能力を知らなければ密室を破れない。計画が整った時、いい相手が見つかった。初めての客で、彼を見染めて、いきなりセックスを求めた。そこで、彼は、作戦を実行する事にした。かねてより、目ぼしを付けていたモーテルへ連れ込んだ。彼の特殊能力は、全身の関節を外して、自分の身体を軟体動物の様に出来るのである。その為、普通の大人では、とうてい出入り不可能な僅かな間隙でも、通り抜けられるのだった。だが、彼は、初めから大きなミスをしていたのだ。
    完全犯罪の座標 (1977年) (Roman books)Amazon書評・レビュー:完全犯罪の座標 (1977年) (Roman books)より
    B000J8SHT4
    No.1:
    (4pt)

    TVで楽しめました.よくできたドラマでした

    森村誠一サスペンス 飼い主のない孤独(飼い主のいない孤独) 猫が見た密室殺人!淋しい女達の愛と殺意
    地味なOL、時刻子と愛人関係だった会社社長の長谷川が殺害された。
    犯行時間に時刻子が社長宅から出てくるのをマンションの管理人に目撃されていた、
    社長の妻の証言などから疑いがかけられた。時刻子が捨てた血の着いたシャツも発見された。
    容疑は時刻子にかかるが頑に否認していた、同郷の室永刑事が真犯人を逮捕した。
    真犯人は長谷川の妻の愛人だった。
    時刻子は過去に不注意で乳母車を坂道で転がして子供を死なせていた。
    室永刑事は地味なOL被疑者時刻子の過去も含めて愛する気持ちになっていた。
    スタイリストの麻紀子とは血の着いたシャツを指摘されたことで顔見知りになっていた
    麻紀子は実は向いのマンションに住んでいる女で愛人からもらった猫がいた。
    その猫はしばしば時刻子の部屋に尋ねてきて孤独な時刻子の心をなごましているのだった。
    何度か猫を返しに行き友人になっていたが、その後時刻子の知り合いでスタイリストの麻紀子も殺される。果たして室永刑事は・・・・・・
    完全犯罪の座標―傑作短編集7 (講談社文庫 も 1-19 傑作短編集 7)Amazon書評・レビュー:完全犯罪の座標―傑作短編集7 (講談社文庫 も 1-19 傑作短編集 7)より
    4061361570



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