(短編集)
姦の毒
※タグの編集はログイン後行えます
【この小説が収録されている参考書籍】 |
■報告関係 ※気になる点がありましたらお知らせください。 |
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点0.00pt |
姦の毒の総合評価:
■スポンサードリンク
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
現在レビューがありません
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
人間を巡る様々な事象が結び付いた時、それが事件となる。こうした話を集めた森村ワールドの初期の傑作選である。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本書は1976年1月に講談社文庫から出版されたものです。収録作は、すでに発表されている短編集「レジャーランド殺人事件」「殺意の逆流」「情熱の断罪」から選ばれ再編集されたものです。 「姦の毒」 姦=みだらと読む。男が淋菌による性病を患ってしまう。梅毒菌スピロヘータを扱った話は、結構多いけど、淋菌の話は珍しい。性交によって感染する病気だが、仁科には、全く身に覚えが無かった。一般的に妻を疑うことはせず、外の女と交渉を持った時の事を考える。だが、仁科には、それが無かった。この病気は、自然に発生する病ではない。仁科には、妻と来年高校を受験する中学生の娘がいる。少女の受験のために、大学生の家庭教師を付けていた。仁科は、妻を問い質すと、初めは認めなかったが、他の男から感染させられたと認めた。しかし、その男も、他の女から感染しているのだ。その感染源を遡っていく。父親としては、最悪なパターンだ。 「黒い合併」 ある一つの企業と合併する事に対して、賛成派と反対派が激しく争っていた。反対派の主張は、相手企業の財務諸表を詳細に調べたところ、莫大な隠れ負債があるということだった。この日の会議で、その事実を発表する事になっていた。ところが、その事実を発表する仙波の順番が回ってきたところ、会議の真最中に、あろうことか大鼾をかいて寝込んでいたのだ。会議は流会になり、賛成派が勝利した。仙波は、閑職に飛ばされ、その事を苦にして自殺してしまう。湯川は、何か謀略があったのではないかと疑った。当然考えられるのは、意図的に眠らされたという事だ。そして、それが可能なのは、元、仙波の秘書だった、自分の新妻なのだ。女性秘書を利用してまで、会社の趨勢を変えてしまう悪魔のような幹部がいた。そして、湯川に新妻を紹介したのも、その幹部だったのだ。 「殺意の逆流」 東西銀行は、常に全国預金高上位四行に入る、ビッグフォーと呼ばれる銀行である。吉住征男は、本店業務部検査課のメンバーだった。検査課は、全国支店の監督機関になっている。吉住は、現在、本店内部で手掛けている大きな仕事があった。調査と監査を繰り返し、もう少しで大きな偽りの骨格を解明できるところまできていた。ところが、本店業務部長の平島武彦から、突然、N県K支店への調査を命じられた。調査の半ばであるが、部長の命令には、逆らえない。N県K支店には、かつて調査課から二人の調査員が行ったが、一人は、交通事故で、一人は、川底に転落して憤死していた。K支店に乗り込んだ吉住は、支店長の郡山が、地元の実業家でもあり暴力団でもある、藤木建設に多額の不正な融資をしていることを突き止めた。その調査結果を、喜び勇んで部長の平島のところへ持ち込んだ。ところが、悪の枢軸は、平島だったのだ。優秀な部下を使い、自分の悪行を糊塗する上司の狡猾さには、憎悪を覚える。K支店の不審死は、三名になってしまった。だが、地元の警察は、この不審死の源流は、東京にあると気が付く。 「暗号殺人事件」 井沢信平は、その男が車内に入って来た時、岸和田課長かと思った。岸和田は、井沢の大嫌いな上司だ。サラリーマンの厭らしさを一身に集めた男で、旺盛な出世欲と汲々たる保身欲で、上司にペコペコする代わり、部下には厳しい。瓜二つの男だが、岸和田にあるはずの唇の脇のホクロが無かった。その男が井沢の一つ隣に座った。それでも岸和田がいるようで気分が悪い。次の駅で、目つきの鋭い男が生後半年くらいの乳児を抱いた女と乗り込んで来た。男は、東京I地区に勢力を張る“竹葉組”の若者頭、須藤敏夫でスーツの胸には、金バッチが付いている。須藤は、ずば抜けた度胸と腕っ節が強く、カッとなると何をするか分からない激情型の性格なので、組の幹部も一目おいていた。女は、妻の圭子で幼児は、一人息子だった。圭子と息子は、井沢と岸和田似の男の間に座った。入れ替わりに岸和田に似た男が座を立った。列車から降りる為か、網棚のバックを取った。その時、バックの肩紐に引っかかって、隣の荷物が落下した。それが、運悪く圭子が抱っこしている幼児を直撃してしまったのだ。幼児の柔らかい頭蓋骨は、ひとたまりもなく割れてしまう。父親は、ヤクザの本性を剥き出しにして、あの野郎、叩き殺してやる!と追いかけるが、その瞬間、ドアーは閉まり、列車は、走り出した。落ちて来た荷物は、井沢の物だった。結婚披露宴の引き出物で、かなり重さのある装飾皿だった。会社のロッカーに入れたままになっていたものを、たまたま、家に持ち帰るつもりだった。その荷物を拾おうとした時、怒りのやり場の無い須藤は、その荷物に激しい憎悪の目を向けた。そして、そんな物を網棚の上に置いたのが責任だと、血走った目で井沢を睨んだ。井沢は、荷物を置いただけで責任は無いと言い訳するが、元々、激情型性格の須藤の興奮を鎮める事は出来ない。荷物を落とした犯人が見つからない限り、井沢に全て責任を取れと恫喝する。息子は、手当の甲斐も無く死んだ。それから須藤は、毎日、井沢の会社に面会に来る様になった。毎日来る須藤が、社内で問題になった。目の鋭い、頬に傷痕のある暴力団員が、毎日来るのだから、会社は、イメージを損なう。受付の女の子も怯えている。上司の岸和田も、それを咎めた。暴力団員と毎日関わり合いになっているのは問題だ。すぐに来るのを止めさせなさい。出来なければ、左遷か最悪、馘首も覚悟しておけと、どっちが暴力団員か分からないような恫喝をした。その時、井沢は閃いた。荷物を落とした男と岸和田が瓜二つだという事を。こんな偶然を利用しないのは勿体ないと。 「ステレオ殺人事件」 団地住まいの吉崎勢津子は、隣人の片野郁子には辟易していた。都心から一時間ほどの所にある中規模な団地である。この当時は、団地にエレベーターを設置する様な時代では、無かった。縦割りの階段に、左右に部屋がある。一階の右が101号、左が102号で、そのまま上に行って五階の右が501号、左が502号になっていた。五階の502号に住む、吉崎勢津子は、扉、通路を挟んだ隣家に住む、片野家の騒音に悩まされていた。勢津子は、夫を会社へ送り出し、家事を済ませて、一休みしたいと思う頃になると、その騒音がする。その騒音とは、最新のコンポーネントステレオから鳴り響く、フランスのムードオーケストラのミュージックだった。勢津子は、どちらかと言えば、国内の歌手による音楽は、好きだったが、洋楽には、全く興味は無い。ただの雑音でしかなかった。音量を下げる様に言っても、その時一時的に下げても、また二~三日すると元の大音量に戻ってしまう。だが、勢津子も何度も聞いているうちに、ある一つのメロディーが頭の中に記憶されるようになった。そして、そのメロディー(曲)が、奏でられた時に、同棟の二階から郁子の部屋に入る男の存在に気が付く。郁子は、大音量を鳴らし、不倫相手に夫が出かけたと言う、メッセージを送っていたのだ。だが、それを知った勢津子は、騒音以上に悩みの種が増え苦悶する。 「情熱の断罪」 癌に侵され自暴自棄になった、老サラリーマンが、バーで安酒を血が出るまで飲んで倒れた。たまたま、同じバーに居た若い女に、老サラリーマン江崎は、介抱される。それが切掛けとなり、二人は意気投合する。しかし、女が話した何気ないウソを信じてしまった。そして、女の話の中に出て来た男を、女の代わりに復讐しようと情熱を燃やす。男の結婚式場に乗り込み刺殺してしまう。すぐ、逮捕され、拘置所で江崎は、自殺する。囲いの中で生きる老サラリーマンが、大きく抱いた情熱だったのだ。だが、そもそも、本当に癌だったのか?という疑問が沸いてくる。このウソと、女のウソによる殺人だとすれば、余りにも無情過ぎた。 | ||||
| ||||
|
その他、Amazon書評・レビューが 2件あります。
Amazon書評・レビューを見る
■スポンサードリンク
|
|