(短編集)
情熱の断罪
- 結婚式 (52)
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本書は1973年8月に講談社から初出版されたもので、2002年7月に講談社文庫から再出版されたものです。 「夢の虐殺」 会社という“釈迦の掌”に拘束され、会社組織の“人間部分品”として扱われる事に限界を感じた男が、その殻を割って飛び出そうと考えた。こんな飼育されている様な生活では、自分がダメになってしまうと思ったからだ。会社を休み、彼が考えたのは、日本有数の名峰K岳鬼面岩を、ハーケンも埋め込みボルトも使わずに登る事だった。素手で鬼面岩Cフェースを登った者は、まだ、誰も居なかったからだ。それが出来れば、飼育小屋から抜け出し、自由に動き周り、自分の才能を十分発揮出来ると思った。しかし、この挑戦は、失敗してしまう。大きなオーバーハングがあるので、出発前、万一のため、バックの中に、ハーケンと埋め込みボルトを入れた時点で失敗していたのだ。自分の夢を自分で虐殺してしまった。 「人間解体」 なんとも狂気に満ちた殺人事件だ。双子の姉妹の妹が、姉に成りすまして、姉の婚約者と結婚してしまうのだ。どちらかと言うと、姉は、優秀で良家の長男と婚約が整っていた。どちらかと言えば、あまり出来の良くない妹が、それを妬んで姉に成りすまし結婚してしまう。この成り代わりの詳細は控えます。結婚後、まるで性格が変わってしまった婚約者に、疑問を抱いた夫が、真実を探り始めて事件が明るみになった。フランスの郊外で、日本人女性のバラバラ死体の頭部が、発見された。あろうことか妹は、姉を殺害し、バラバラにして冷蔵庫で保存していた。そして、交際していた男が海外旅行の添乗員をいていたので、手荷物に収まるように解体した遺体を海外へ持ち出しては遺棄していたのだ。今までで、これほど極悪非道な殺人事件を森村氏は書いたことがあったろうか。 「姦の毒」 姦=みだらと読む。男が淋菌による性病を患ってしまう。梅毒菌スピロヘータを扱った話は、結構多いけど、淋菌の話は珍しい。性交によって感染する病気だが、仁科には、全く身に覚えが無かった。一般的に妻を疑うことはせず、外の女と交渉を持った時の事を考える。だが、仁科には、それが無かった。この病気は、自然に発生する病ではない。仁科には、妻と来年高校を受験する中学生の娘がいる。少女の受験のために、大学生の家庭教師を付けていた。仁科は、妻を問い質すと、初めは認めなかったが、他の男から感染させられたと認めた。しかし、その男も、他の女から感染しているのだ。その感染源を遡っていく。父親としては、最悪なパターンだ。 「黒い合併」 ある一つの企業と合併する事に対して、賛成派と反対派が激しく争っていた。反対派の主張は、相手企業の財務諸表を詳細に調べたところ、莫大な隠れ負債があるということだった。この日の会議で、その事実を発表する事になっていた。ところが、その事実を発表する仙波の順番が回ってきたところ、会議の真最中に、あろうことか大鼾をかいて寝込んでいたのだ。会議は流会になり、賛成派が勝利した。仙波は、閑職に飛ばされ、その事を苦にして自殺してしまう。湯川は、何か謀略があったのではないかと疑った。当然考えられるのは、意図的に眠らされたという事だ。そして、それが可能なのは、元は仙波の秘書だった、自分の新妻なのだ。女性秘書を利用してまで、会社の趨勢を変えてしまう悪魔のような幹部がいた。そして、湯川に新妻を紹介したのも、その幹部だったのだ。 「被殺の錯誤」 母親が、癌で余命一ヶ月と医師から診断が下った時、二人の兄弟が駆け付けた。布団に横たわり、苦痛に苦しむ母親の目の前で兄弟喧嘩が始まった。それは、兄が近くに住んでいるにも関わらず、母の病状の悪化に気が付かなかった兄を詰る言葉が切掛けになっていた。弟は、都心に働きに出ていて頻繁には来られない。そんな不満を兄にぶつけたのだ。兄は、怒りだし、手元にあった魔法瓶を弟に投げつけた。ところが、手元が狂って、こともあろうに母親の顔面に直接当たって、母親は、死亡してしまった。地元署の馬庭は、この事故に疑問を持った。尊属殺人、嘱託殺人を扱った話で、母子愛、兄弟愛を綴った話。最後は、涙がこぼれそうになりながら読みました。 「情熱の断罪」 癌に侵され自暴自棄になった、老サラリーマンが、バーで安酒を血が出るまで飲んで倒れた。たまたま、同じバーに居た若い女に、老サラリーマン江崎は、介抱される。それが切掛けとなり、二人は意気投合する。しかし、女が話した何気ないウソを信じてしまった。そして、女の話の中に出て来た男を、女の代わりに復讐しようと情熱を燃やす。男の結婚式場に乗り込み刺殺してしまう。すぐ、逮捕され、拘置所で江崎は、自殺する。囲いの中で生きる老サラリーマンが、大きく抱いた情熱だったのだ。だが、そもそも、本当に癌だったのか?という疑問が沸いてくる。このウソと、女のウソによる殺人だとすれば、余りにも無情過ぎた。 | ||||
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森村誠一の初期短編集である。表題作の他、5つの短編が収められている。 全作品が暗く、現代社会の闇の部分、人間の心の闇の部分を描いている。現代社会の悪の有り様、人間の心のどうしようもない弱さが描かれている。 しかし、それでも面白い。ポイントは、意外などんでん返し。ある程度予想できるものもあれば、まったく予想外の展開もある。いずれにせよ、作品世界に引き込まれてしまう。その森村の手腕はすばらしい。 本書は、1973年に講談社より単行本として刊行されたものの文庫版である。作品自体は、もう30年も前のものだが、それほど時代を感じさせない。それはある意味、現在にも共通する社会の心、人間の心が描かれている結果であろう。 森村ファンならずとも、お薦めである。 | ||||
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