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一九三四年冬─乱歩
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一九三四年冬─乱歩の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.64pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全25件 1~20 1/2ページ
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昭和九年一月。麻布(あざぶ)の〈張(ちょう)ホテル〉を舞台に、江戸川乱歩が体験する不思議で妖しい四日間の物語。 乱歩その人がそこにいる、あれこれ悩み、妙な体験をし、原稿を書いている。その臨場感が半端なくて、「久世(くぜ)さんの幻視力てば、すげぇわ」思いました。 虚実のあわいが融け合っていく作品のたたずまい、文章の風趣も素晴らしい。とりわけ、乱歩が筆を走らせていく『梔子姫(くちなしひめ)』の幻想奇譚の美しさには、くらくらっと来ましたねぇ。夢見心地で酔わされましたわ。 中国の美青年、翁華栄(オウ ファーロン)。栗毛の美しい人妻、ミセス・リー。この二人のキャラも良かったですね。 殊に、「バーナビー・ロスとエラリー・クイーンとは、もしや同一人物ではないか」なんて推理するミセス・リーは、実に魅力的な女性でした。 それと、本書でも触れている乱歩の中絶作品『悪霊』騒動については、奈落一騎『江戸川乱歩語辞典』(誠文堂新光社)のコラムに、その記述があります。何としても乱歩に書いてほしい「新青年」編集部の広告文が、なかなかに凄まじいっす。当事の乱歩の懊悩(おうのう)は、かなりのものだったんじゃないでしょうか。 私が読んだ創元推理文庫本では、表紙カバーが素敵ですね。山田緑の装画、中島かほるの装幀、ともにセンスがあって良かったです。 | ||||
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良い本をありがとうございました。 | ||||
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満足です。しっかりとカヴァーが付いていて、集める人はまず気になるところです。 | ||||
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舞台は昭和初期の東京麻布界隈の洋風ホテルです。江戸川乱歩がくちなし姫なる小説をを書き上げるまでの滞在中の数日間の出来事とくちなし姫の二本立てです。登場人物は乱歩、美少年のボーイ、宿泊中のミセスリー婦人です。非日常の夢の話です。なぜか散歩中の永井荷風がちょっと出てきます。 | ||||
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少々尺が長過ぎるきらいはあるものの、乱歩の時代と文壇仲間の事情もうかがえ、幻想耽美盛りだくさんの内容。若干エロに傾き過ぎの面もあるが、まぁ乱歩ほんらいのグロは少なく上品。 | ||||
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雑誌「新青年」への連載開始が遅れたうえ、誤魔化し誤魔化し書いてきた「悪霊」 物語の先を思いつけずついに休載 1934年1月、書けない苦しさから逃れんと家出をした江戸川乱歩・40歳が腰を落ち着けたのは 溜池にある主に外国人向け長期滞在用の<張ホテル> そこで天啓を受けたかのように書き始めた「梔子姫」 江戸川乱歩がホテルに滞在した4日間を描いています 客の世話をする中国人美青年や滞在中のアメリカ人夫妻から受ける刺激 乱歩の隣室に関わる恐ろしい話 現実世界と「梔子姫」の世界、乱歩の夢の奇妙な符合 乱歩の日常をよくよく調べあげたものらしく、無理なく一人の作家の人間像を描き出しています さらに、乱歩が書いたとしか思えない作中作「梔子姫」 「百先生 月を踏む」の作中作も百先生そのものでしたが、深く深く読み込んでいなければ出来ない技ですね 井上ひさしさんによる解説がユニークです 本書をテキストに創作講座を行う、という設定で本書の素晴らしさを『力説』されています 久世光彦という作家は、言葉を使って、物語の時代、場所へ読者を導き、イメージを読者へ送り届けることが出来る このような作業が出来ない人にはろくなものは書けない、とまで仰っています ある程度、乱歩作品を読んでいるほうが、楽しめる作品かと思います 本書をきっかけに乱歩を読むのも良いでしょう そして本書を再読 さすれば、猶更本書の面白さを堪能できることでしょう | ||||
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芳醇で連想を刺激する詩的散文の世界。 昭和9年の乱歩失踪事件中の目くるめく性的体験に読者を引き込む。鏡の向こうの仮想世界の蠱惑と妖美。実際の乱歩の禿頭と眼鏡姿をこの小説の中で動かせてみる。ピタッとはまる。久世さんは余程乱歩を読み愛してきたのだなと思う。 冬の一日。柔らかく快適な温度の風呂に半日浸かっていたような充実感、爽快感を得ることができる。名作だと思います。 | ||||
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久世さんの作品を読んだのは、この本がはじめてです。 乱歩がスランプ脱出のために泊まった怪しげなホテル、謎多き宿泊客と美青年のボーイ、 乱歩を取りまく謎の真相が知りたくて、どんどん読み進めてしまいました。 私は江戸川乱歩がどんな人物であったかほとんど知らなかったのですが、そのためか 食事は一品ずつ食べる、理性を保つために仁丹を三粒噛む、など 乱歩の性格、癖、人物像が作品を通して次々と露わになっていく様が興味深かったです。 そして、小物、道具、素材など細部の描写にこだわった文章により、 昭和初期を生きたことのない私にも、その雰囲気を存分に味あわせてくれる一冊でした。 たとえば「櫺子の格子」という言葉。この言葉のように、昭和初期という舞台にふさわしく、 旧字体や馴染みのない言葉が出てくるのですが、それらを調べて知ることの楽しみもありました。 作中作の「梔子姫」も妖艶かつ魅惑的な内容で、一冊で二度おいしい、そんな小説です。 私は一度読んだ小説を再読したいとはあまり思わない方なのですが、 この本はまた読みたいと思わせてくれる何かがありました。 しばらく時間を置いてまた読みたいと思います。 | ||||
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「江戸川乱歩は、いかにして怪奇と幻想の語り手から、こけ脅かしの見世物の口上士になり果てたのか? 」 「そしてその語ることのできなかった物語とは?」 この作品は、著者がそれに想いを巡らせた時に生まれたのだと思います。 作中の乱歩は、その俗人・変人ぶりを詳細に描写され、創造の苦しみに葛藤する人物として描かれています。 そしてこの乱歩により、架空の作中作『梔子姫』は、エログロでありながらも悲しく美しい物語として語られます。 『梔子姫』での「この世に一人ぐらい、幻を現世に持ち帰った者がいても、神様はお許しになるのではないか」 「心弱く、怯懦に生きることしか知らない者は、せめて儚い幻ぐらい手に入れてもいいではないか」 という登場人物の言葉は、まさに当時の乱歩の心情を代弁しているかのようです。 この小説が、あらためて創元推理文庫から出版されるというのは、すごく得心が行きます。 作中に登場するポオの諸作品、クイーンの国名シリーズとレイン4部作をはじめとして、 マッケン、ユイスマンス、ブラックウッド、ラヴクラフト、浜尾四郎、小栗虫太郎等々がひととおり読めるのも、 乱歩の作品に寄せられた、竹中英太郎、岩田専太郎の挿絵を見れるのも、この出版社しかありません。 できればこの小説に出てくる作品の紹介が、巻末に並んでいればというのは、わがままな要望なのでしょうか。 | ||||
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この作者の作品は初めて読みましたが、文体も読みやすく話も面白いです。 何より、作中で乱歩が書いているという設定の「梔子姫」が乱歩以上に乱歩らしいと言いますか、本当にこんな短編がひょっこり発掘されてもおかしくはないと思わせる出来栄え、一読の価値ありだと思います。あと禿ちゃんのくだりは笑わせていただきました。 ただ、作者が熱心に乱歩をリサーチした弊害なのか、海外の作家や国内作家の比較論・引用がくど過ぎるように思います。 また乱歩自身の謎、と銘打つのであれば乱歩自身に降りかかる謎の方をもう少し掘り下げてほしかったです。 とはいえ、よくできた江戸川乱歩論にもなっている上に話も面白いので、読んで損はないと思います。 | ||||
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久世さんの作品はこれが初めてです。 流れるような旋律の文体、現実と空想の狭間が徐々に無くなり、読んでいる読者さえも不思議なデジャブに囚われる感覚。。 梔子姫もまるで乱歩が実際に書いた作品のようで、読むうちに不思議な気分になる作品です。 | ||||
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読み進むうちに甘い毒に痺れていくような迷宮的作品。 乱歩その人を主人公とした趣向は筒井ともみや斉藤栄にもあったと記憶するが怪奇幻想文学に造詣の深かった著者らしく群を抜いた出来ばえ。 高名な演出家であった著者が文芸でのみ表現できる対象として乱歩を選んだことが、乱歩の映像化が往々にしてその原作の魅力に遠く及ばぬことを傍証している。 作中作の短編小説が単純な乱歩のパスティーシュでなく久世光彦の個性を濃厚に感じさせる点も逆に好ましい。 本作の如きこそ創元推理文庫に収録される日本作品に相応しいと思う。 | ||||
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乱歩の真似して作った短編が全然乱歩っぽくない。下品なところが乱歩の持ち味なのに、久世は公家風のその名前どおりに上品すぎる。さらに全体として見ても下手。 | ||||
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魅了されました。乱歩好きが高じて、こちらも読破してしまいましたが、想像以上に乱歩の世界観を再現されていたと思います。梔子姫はいい小説です。 | ||||
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もうこんなペダンティックな文章で書かれた新しい小説は二度と読めないと思うと、残念というより悶え苦しむほど口惜しいのです。 まさしく自らの嗜好と性癖と偏向に呪縛されたイマジネーションの産物以外の何ものでもない、ピーンと張ったひとすじの妖しい耽美的感覚は、至上の喜びであると同時に戦慄の恐怖でもあるのです。 5年前の2006年3月2日、久世光彦は心不全で忽然と逝ってしまいました。享年70歳。 実際にひどいスランプになったことがある江戸川乱歩ですが、はるか80年を経た後年、自分が主人公にされて、環境の変化を求めて麻布の張ホテルで缶詰になり、そこで探偵小説狂いの人妻や謎の中国青年に悩まされつつも幻惑味たっぷりの新しい短編小説『梔子姫』を書く・・・・・などというまことしやかな物語をでっち上げられるとは、まさか夢にも思わなかったことでしょう。 二度目に読んだ時には久世光彦の息遣いが聞こえてきて、三度目には煙草の匂いがしてきました。そういうふうにして、著者というものは本の世界の中に永遠に生きるものなんだなあ、というより、私って他意識過剰なのかもしれません。 記述日 : 2011年07月19日 15:16:22 | ||||
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美しい文章で語られる、ホテルに滞在した江戸川乱歩の数日間。しかし、取っつきづらさはない。どこかユーモラスで、江戸川乱歩の人間臭さが伝わってくる。人間として共感したり、作家として、やはり凄いなと思ったり、乱歩の人となりに魅了されて読み進めると、作中作のおもしろさとともに(かなりのエロスだが、女性でも抵抗ないかも)、隣の部屋に関するちょっとした謎が提示され、楽しく読み進められた。 あえて文句を付けるなら、このタイトルも、雑誌掲載中に付けてあったというタイトルも、この作品の奥行きの深さやユーモアやエロスなどがまったく伝わってこない。もうちょっといいタイトルはなかったのかなあ。 | ||||
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乱歩を1冊も読んだ事がないにもかかわらず、勧められて読んでみた。 文句なくおもしろい! 読みながら映像化され、あとで映画を見たような錯覚に陥るタイプの小説。 戦前の麻布に建つこじんまりしたアールヌヴォー様式ホテルの描写、美青年ボーイや 可憐なアメリカ人人妻等、取り巻く面々も楽しいが、なんと言っても、スランプに 陥ってる主人公・乱歩がすばらしくキュート。 自分は血みどろの怪奇小説を書いてるくせに、人の鼻血を見ただけで気が遠くなる ような頭の薄い40男。 ちなみに私の脳内映像では温水洋一氏が演じてくれた(笑)。 久世が乱歩になりきって書いた小説内小説「梔子姫」が大変妖しくエロティックなので、 後に実際の乱歩作品を読んでみたら、久世の贋作の方が艶かしさでは上だった。 他の乱歩作品や往年の海外ミステリー、当時の作家の名前もたくさん出てくるので、 それらに詳しい人が読めば、さらに楽しめるだろう。 | ||||
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当時の雰囲気が漂っていてストーリーも展開のテンポもよく、ドンドン読み進めることが出来ました。 いつの間にか引き込まれて主人公である乱歩の立場から読むことができ楽しむ事が出来ました。乱歩 の作品と比較すると若干上品な印象を受けますがマイナスとなるほどのものではありません。作品中で 乱歩と同年代の作家と作品を引用している部分が多々ありますのでそれらの作家の知識があると更に楽 しめると思います。また、引用されている作家の作品も良書が多いので、それらもチェックしてみると 良いと思います。おススメします。 | ||||
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久世さんの作品の中では一番好きです。 どれも独特の雰囲気がありますが、中でもこれはイイです。 懐古趣味的で、乱歩の世界の濃密なエロティシズムと差し色のようなグロテスク。 美青年に気を引かれる中年男、という部分は少し「ベニスに死す」を彷彿とさせ、 またあるときは美女に目移りし、ホテルの隣の部屋に怪奇的妄想を抱いたりする、 スランプで情緒不安定になっている乱歩の、外人向けホテルに逃避中の数日間(?)を描いています。 また、そんな生活から生み出される妄想を昇華したような小説が、 作中作で全部読めるんですが、これは乱歩っぽいといえば乱歩っぽいんですが、 何かもっとこう・・・熟れた桃の中にどっぷり入ってめくるめく陶酔に酔っ払ったような感じです。 アクがあってくせになるタイプの本です。私はめったに読み返しはしないのですが、 これはときどき読み返してしまいます。雰囲気にひたりたい時に。 | ||||
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1934年、乱歩は新聞に連載していた小説「悪霊」を突然自分の都合で打ち切るという醜態を世間に晒し、数ヶ月間姿を隠していた。打ち切りの理由は「構想の未熟」であったと言う(乱歩の構想は「アクロイド」だったらしい)。本作はその空白の期間を作者があり余る想像力で補い、乱歩のそして時代の様子を描いたもの。乱歩に対する作者の愛情がヒシヒシと伝わる。 乱歩は友人に紹介されたホテルに泊まり新作を書こうとする。ところが、このホテルが怪しいのだ。ホテルの雰囲気自身が怪しいし、美青年のボーイ、謎の麗人、その他の怪しい宿泊客等、いかにも乱歩好みの状況だ。この状況に押されるように、乱歩は新作(勿論作者の作中作)を書き始める。その名は「梔子姫」。 物語は、乱歩が数々の謎に満ちた出来事に刺激を受けながら、この「梔子姫」を書き上げるまでを描く。この作中作は素晴らしい出来で、エロティシズムに溢れた怪異譚の傑作。乱歩自身の作品に優るとも劣らない幻想的作品だ。そして、最後に仕掛けが用意してある全体の構想も見事の一言に尽きる。 戦前の東京の様子・雰囲気も見事に描かれ、作者の研究ぶりが窺がえる。乱歩への愛情が産んだ乱歩ファンへの最高のプレゼントであり、構成も確かな耽美小説の傑作。 | ||||
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