■スポンサードリンク
天使のゲーム
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
天使のゲームの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.28pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全18件 1~18 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
作者の四部作の第一作である『風の影』に続く第二部である。 舞台は同じバルセロナ、時期は第一部よりも数十年遡る。 第一部と同じ「センペーレと息子の書店」や「忘れられた本の墓場」が登場する。 大きく違うのは、視点人物が小説家のダニエルであり、依頼された謎の作品を書く。 その過程で、かつて同じ依頼人から同じ依頼を受けた人物に行き当たり、過去と現在の話がシンクロしていくのは、第一部と同じ感覚を呼び起こす。 しかし、第一部がファンタジー的要素を醸していたのに対して、この第二部は血腥くかつ幻想的なゴシックホラーそのものである。 多くの殺人が錯綜し、何が真実かも定かではなくなっていく。 この迷宮的な感覚は読後も解消されず、それがある意味では本書の重厚な読後感をもたらしている。 二十世紀初期という時代のバルセロナという都市の時代性と空気とを描きこんで、次はどんな展開が待っているのかと期待が膨らむ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
作者の四部作の第一作である『風の影』に続く第二部である。 舞台は同じバルセロナ、時期は第一部よりも数十年遡る。 第一部と同じ「センペーレと息子の書店」や「忘れられた本の墓場」が登場する。 大きく違うのは、視点人物が小説家のダニエルであり、依頼された謎の作品を書く。 その過程で、かつて同じ依頼人から同じ依頼を受けた人物に行き当たり、過去と現在の話がシンクロしていくのは、第一部と同じ感覚を呼び起こす。 しかし、第一部がファンタジー的要素を醸していたのに対して、この第二部は血腥くかつ幻想的なゴシックホラーそのものである。 多くの殺人が錯綜し、何が真実かも定かではなくなっていく。 この迷宮的な感覚は読後も解消されず、それがある意味では本書の重厚な読後感をもたらしている。 二十世紀初期という時代のバルセロナという都市の時代性と空気とを描きこんで、次はどんな展開が待っているのかと期待が膨らむ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
上下巻一緒にレビューさせてもらいます。 忘れられた本の墓場シリーズだが、こちらは風の影より時代が遡る。 今作品の【センペーレとその息子書店】のセンペーレは一作目の主人公ダニエルの祖父で、その息子は一作目の書店主だ。 この物語の終わりが風の影のプロローグに繋がるようになっている。 イサックはもちろん、バルセロも登場するが、後者は風の影とは繋がっていない。 風の影では途中で「ああ、この二人は兄妹なんだな」と気がついてしまったが、天使のゲームは塔の館の前主人の現在の姿にそれと書かれているまでわからなかった。サプライズだった。 顔もわからなく火傷した上での溺死というので、実は生きているんだろうなとは思っていたが、まさかその人だとは思ってもいなかった。 その他もこちらの予想を超えた展開で本当に楽しめた。 私はクリスティーナは最初から最後まで好きでは無い。ダビッドが自分に気があるのを知っていてビダルの原稿直しをさせて、恋愛関係を持って骨抜きにした上でビダルと結婚してしまうなんて。全く許せないひどい女だと思う。ビダルの小説(実はダビッド作)が高評価を受けた同じ日にダビッドの小説がこき下ろされるという展開では怒りで一時ページを捲る手が止まってしまった。 が、そんな仕打ちを受けてもダビッドは結局クリスティーナを愛しぬくわけで、物語が進んでゆくのだが。これはクリスティーナが嫌いでもなんでもグイグイ引き込まれてゆくほど魅力たっぷりに仕上がっている。 このシリーズの次作「天国の囚人」も既に手に入れているので早速読み進みたいと思う。 そしてシリーズ完結作かつ遺作となったEl laberinto de los espíritusについてはとても日本語訳が出るまで待ちきれそうもないのでイタリア語版(スペイン語は読めないがイタリア語なら読めるのと、英語よりイタリア語の方が同じラテン語系で翻訳もニュアンスが近いだろうと思うから)を購入しようと思う。 久しくイタリア語の読書からは離れていたが、重い腰をあげるくらいサフォンの忘れられた本の墓場シリーズは魅力的だ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
風の影の次作、少々ファンタジー化しているけれど期待は裏切らない。風の影のファルミンと同じく、イサベッラは愛すべき人物。 3作目、天使の囚人は上下巻ではなく一冊だから大事に取っています。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
「風の影」と同じように『本』が『親子の本屋』が、そして『忘れられた本の墓場』が登場。同じように明るい陽射しはなく、暗く重い空の下でミステリアスな物語が進んでいきます。ここかしこに巧みな表現が散りばめられていて美しく、その美しさに惑わされながら、ゾクッとする暗闇に引きずり込まれていきます。下巻へ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
物語が想像の産物であるように、登場する人々も、おぞましい死も、善も悪も暗闇も時間さえも、主人公ダビッドの中で繰り返される想像なのだろうかと、まるでその頭の中に引きずり込まれているような気になって読んでいました。本の魅力、言葉の力が、人の心をこんなに支配するのかと怖ろしくもありましたが、おもしろかった! 書くことではなく生きることを選んだ女性が、「風の影」のダニエルの母になり、そのダニエルがまた物語の中で生きることになるとは…。抜け出せない本の世界です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
『風の影』を読み、再びバルセロナを舞台にした本作品へ。「忘れられた本の墓場」という共通の場所も登場するとの触れ込みでだが、その関わりは僅かでしかない。しかし、またしても独特の重々しい描写に吸い込まれていく。途中「風の影」にはなかった哲学的な会話がビュンビュンと繰り広げられて、ストーリーの進行に取り残されないように、流さずに読み返さなくてはならないことがしばしばあり、少し疲れつつ、でも心地よい感じで読み終えました。下巻に期待! | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
前作を読んで好きになった自分には、満足の内容でした。残念なのが買った事をうっかり忘れて同じものを買ってしまった事・・・。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ネットで評判が高かったのでとりあえず購入してみましたがまだ未読です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ネットで評判が高かったのでとりあえず購入してみましたがまだ未読です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
前作「風の影」に感銘を受け、読後1日おかずに本書を購入。 大傑作の前作に比べれば☆1つマイナスにはなってしまうけれど 良書にはまちがいない。 前作は読者が主人公であったが、今回は作家が主人公。 謎の編集者に執筆を頼まれ、それを受け入れたことから 現実とも非現実とも言えないミステリーに巻き込まれていく。 ドンデン返しありの、アクションありのエンターテイメントたが やはり、何と言っても重厚な人間ドラマが素晴らしい。 恋愛、友情、家族愛、隣人愛など共感できるストーリーが散りばめられている。 これを読むと、人種や国が違えども心は同じなんだと感じてしまう。 前作が理論だててスッキリ終わらせたのに対し 本書はややファンタジックに、いろいろな解釈が取れるような作品になっている。 また若干、伏線の回収に違和感を感じる部分もある。 そのあたりは少し残念ではある。 それでもやはり、本好きは読んで損はないのではないか。 本筋のストーリーには関係はないのだが 前作を読んでいると、より一層楽しめるのは事実。 まずは「風の影」を読み、気に入れば本書に移行するのが吉。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
1917年のバルセロナで、少年ダビッドは文筆の才能を買われて新聞社で短編小説を書き始める。やがて一人立ちした彼のもとへ、高額の報酬と引き替えに奇妙な本の執筆を依頼する人物アンドレアス・コレッリが現れる。途端にダビッドの人生は怪異な空気に包まれ始める。コレッリとは一体何者なのか…。 今から6年前(2006年)、カルロス・ルイス・サフォンの『風の影』(集英社文庫)に大変な感銘を受け、以来この作家の次回作が翻訳されるのを今か今かと待ち続けていました。ようやく今年日本で出版されたこの『天使のゲーム』はスペイン本国では2008年に出ていたものです。英訳版ペーパーバックで読もうかとも思ったこともありましたが、前作と同じく木村裕美氏の見事な日本語に移し替えられるのを待ったのは正解でした。 サフォンの次回作というだけで手にしたので、これが『風の影』と同じく“忘れられた本の墓場”のシリーズであったことに驚きと喜びを強く感じました。前作の主人公ダニエルが思わぬ形で登場してくるところも、ファン心理をくすぐる仕掛けとして大いに堪能しました。 ダビッドを慕う健気なイサベッラ。ダビッドが思いを募らせる美しきクリスティーナ。二人のヒロインの存在も物語に切ない彩りを加えます。 ただし、『風の影』とは趣が異なり、こちらはゴシック・ミステリーの様相を呈しています。ですから人智の及ばぬ、摩訶不思議な世界が展開していき、理屈の届かぬ形で物語は幕を閉じるのです。 上巻97頁でいみじくもダビッドが感じるように、「こんなひとつかみの紙のなかに、世界中の魔法と光があるように思え」る小説です。 訳者あとがきによればこのシリーズは全4部作になる予定で、第3作は2011年にスペインで発表済みだとか。こちらの翻訳を日本で読める日まで、さらに後4年くらいかかるのでしょうか。 その日がとても待ち遠しく感じています。 *下巻14頁5行目に「夫の頭にをいろいろふきこんで」とありますが、吹き込むのが何であるか、目的語が抜けています。増刷の際に訂正していただければと思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
同著者サフォンの「風の影」は、僕がこれまで読んだミステリーで最も面白かった本の一つだ。 今回、新作が文庫で発売されたと知ってさっそく購入した。 やはり面白く、上巻を2日、下巻を1日で読み終え寝不足になった。 前作に続き、バルセロナという舞台と、幻想的で情熱的なストーリーの相乗効果で作品世界に引き込まれる。 貧困と紛争で死が身近にある主人公に次々に訪れる苦難、本や執筆に関する議論、主人公が恋焦がれる幼馴染や押しかけアシスタントの娘との成り行きなど、ある種定番のキャラクター達が絡まる王道のエンターテイメントであり、幼少期から中年まで主人公の成長描く教養小説として読める。 後半、主人公が物語中で書く本に関連して、宗教や信仰に関する考察が続くところがあり、その点はくどさを感じた。また、大団円についてもファンタジーすぎるように思えたが、読後感は良くたいへん楽しめた。 印象に残ったところ ・アーティストの一生は大小問わず戦争だ。自分で決めたことに到達するには、なにより先に野心がいる。次に才能、知識、最後にチャンスだ。 ・基本的に、本や資料を読みあさって、必要なことを頭につめこんでからテーマの本質、つまり情動的真実にたどりつく。そのあとで、覚えたことをすっかり頭から追い出してゼロからはじめるんだよ。 ・悪役がいないのがさびしいですね。われわれのほとんどは、なにか、あるいは誰かの味方として自分を意識するよりも、反対者として位置づけている。自分から行動をおこすより、なにかに反応するほうがやりやすい。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
謎の編集者・コレッリはダビッドにある雇用契約を持ちかける。脳腫瘍により余命いくばくもないダビッドに再生手術を施し、莫大な前金を払う。その対価として、コレッリの描く世界観でもって、人々を信じ込ませ煽動する力を宿す物語を書くことを求める。新しい宗教の創造といえる。預言の書と考えるのもわたしの自由であり、新しい文化の創造と言い換えることもできる。 常に悪を欲して善をなす力の一部であるメフィストフェレス=コレッリがここにいる。そしてわたしは善悪の間に引きさかれた人間状況のシンボルとしてのファウスト=ダビッドを思い浮かべる。死人同然のダビッドにかすかな光がともるラストは少女グレートヒェンの天上の愛によって救われるファウストを重ね合わせる。 誘惑者・コレッリと魂を売るダビッドの白熱した対話は聖書にある「荒野の誘惑」であり、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』にある「大審問官」を髣髴させる。 イエズス会による異端審問が激しいさなかのスペインにイエス・キリストが現れ、大審問官がこのイエスを糾弾するという恐るべき寓話だ。その一節。 大審問官はイエスをこう弾劾する。 「自由の身になった人間は、ひざまずくべき相手を少しでも早く探し出そうと心労するのだ。それもすべての人間がいっせいに膝を折ることができる文句なしの相手だ。………まさしくこの、一緒にひざまずける相手を求めるということが、有史以来、各個人のみならず、人類全体のもっとも大きな苦しみだった。普遍的にひざまずける相手を探そうとして、彼らはたがいに剣で滅ぼしあってきた」 宗教の起源とは?支配・被支配の起源とは?戦争と平和と文化の根源?コレッリは「大審問官」の論理で、これこそが真実だとダビッドを恫喝する。人々を恐怖させひざまずかせて、一切の迷いを持たせぬ物語、これを疑問視する人々を敵とする教義、そして平和の救世主ではないぞ、戦士の救世主を現出させるベストセラーの執筆をダビッドに依頼したのだ。 魂の自由を求めるダビッドは絶対者の君臨を認めない。バルセロナは自治で生きるべきなのだ。この本心を隠して、延命のためにコレッリと契約を結び、コレッリを欺こうとする。堕天使を内にした天使たち、両極に分かれた究極の真理を実践証明しようとして、命がけのゲームが始った。勝者は?敗者は?そしてバルセロナは? このような思いつきのたわごとを並べたのは読後に残った落ち着きのなさをなんとか宥めたいとの気持ちからなのだが、理屈っぽい作品と誤解されては心外。ゆっくりとした進行で始るが下巻に至れば、真相を探るダビッドの荒業、殺人犯としてダビッドを追う警察、そして予想を超えたハードバイオレンスの連続とページを追ってワクワクする上出来のエンターテインメントに仕上がっている。 それでもどこか合点のいかないところが残るから……… こう解釈しよう。 舞台がバルセロナの「ゴシック地区」だからではなく、この作品は正統のゴシック・ロマンスなのだと。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
2007年に読んだ前作『風の影』のバルセロナは1945年だった。嫉妬、憎悪、不信、裏切り、暴力のなかで、人々の善意、友情、愛の絆のたくましさを、繊細、流麗な文体で高らかに歌い上げていた。特にスペイン文芸文化の光と影を象徴するかのように人知れず浮かび上がる「忘れられた本の墓場」は強烈な印象を残した。「忘れられた本の墓場」シリーズとなるのだろうか、『天使のゲーム』は同じバルセロナを舞台している。 時代は前作の1945年より遡った1917年に始まるのだが、しかし趣は前作とはまるで違う。「第一章 呪われた者たちの都(まち)」の表現は比喩ではない。文字通り悪夢の都としてバルセロナがある。主人公の作家・ダビッド・マルティンが見上げる天空は黒雲に覆われ、赤い光が毛細血管のように網状にひろがっているのだった。 むしろ主役はこの呪われた都そのものだと言って差し支えないだろう。 著者はカタルーニャ地方のバルセロナがたどった歴史を語ることはしないからある程度の予備知識は必要だ。 13世紀には王権に対する自治を確立していたバルセロナは、市民自治の伝統、固有の言語(カタルーニャ語)・文化をもち、スペインの先進地域の中心都市として発展した。だが光と陰は交錯してしかも闇は深かった。繰り返された内乱による血塗られた歴史である。15世紀以降、王権に対する都市反乱。またフランス、ハプスブルグの代理戦ともいえる内戦の主役でも会った。18世紀後半スペイン第一の工業都市となっていったがこれと並行して労働運動が活発になる。19世紀末におこったカタルーニャ自治運動も加わり、20世紀には左翼運動の砦となっていた。1900年生まれのマルティンがつぶやく「悲劇の1週間に炎上するバルセロナ」とは1909年の徴兵反対ゼネストと大規模な教会焼打ちにより街中が血まみれになった暴動ことである。 物語は1917年、新聞社で雑用を務める17歳のダビッドは運命に導かれるように短編を書くチャンスが与えられる。やがて独立したダビッドは旧市街(ゴシック地区)にある20年間空き屋敷のまま放置されていた「塔の館」で執筆活動を始める。28歳で謎の編集者・コレッリとの出会いがあり、30歳までの奇怪な体験談が物語の中心である。 この間のバルセロナは戦乱・暴動のない小康状態であるが、来るべき暗黒の闇を予感させる逢魔が時だったと言えよう。 コレッリは語る。 「この都に、たまにしか来ない人たちは、いつも晴れて暑いところだと無邪気に信じているのです。だが、わたしに言わせると、バルセロナの空は不穏で暗い昔ながらの魂をいずれ映し出す時がくる」 この物語のあとに、1931年の共和政宣言、1934年の中央政府に対するカタルーニャ自治政府の反乱、1936年〜39年のスペイン内戦、1939年のフランコ占領と、バルセロナ市民は最悪の時を迎えることになるのだ。 次々とダビッドに降りかかる禍福は現実なのかそれとも彼の妄想の産物なのか、歪みに歪んだ時空をダビッドの魂はさすらっているのか。愛は破壊され、関係者は善意の人々も含めみな死んでいく。格調高い文体に酔わされながら、複雑で大仕掛けのプロットに読者の頭はとことん混乱させられる。読後も落ち着く先が見当たらない。いったいこれはなんだったのかと、まるで悪夢を見たかのような気分である。にもかかわらずこの作品を成立させている多様なモチーフについて、わたしは勝手に思い巡らせて、大いに楽しむことができた。この作品は『風の影』を越えるミステリーであり、思索に富む文芸大作である。 下巻へ続く | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
「忘れられた本の墓場」「センペーレと息子書店」… 前作「風の影」にも登場した場所や人が登場すると、 あの世界に帰ってきたような気がしてちょっとうれしい。 雰囲気も、前作同様、どこか幻想のようで、死の匂いがする。 肝心の物語だが、上刊でかなり惹きこまれる。 主人公ダビットの家族との別れ、物書きとしての始まり、恋と病。 因縁めいた「塔の館」に住み始め、 編集者アンドレアス・コレッリからの書籍のオファーを受け、 そこから回り出すおかしな歯車。 (なんだか本人が呼び寄せてる感じがしてしまうのだが) いよいよ怪しい雲行きの中、アンドレア・コレッリのオファーが具体化するあたりから、 私の中で若干違和感が出始めた。 たくさん散りばめられた謎が、気持ちよく解決されることを期待して読み進めるが、 どうやらファンタジーでまとまってしまう?と感じ始めて、 先を読みたいという欲求は途切れないながらも、ちょっぴりがっかり。 でも、そんなことを思うのは野暮かもしれない。 (ほかの方のレビューや訳者あとがきにもあるように、 4部作全体の中の伏線であるかもしれないし) 物書きの狂気、本の魔力、人の悲しみが満ちた物語の中だからこそ、 前作ほどの読後のじんわり感はないにせよ、 ダビットを巡る人々の人間性の善の部分が救いになっているというか、 逆に際立ち、胸にしみいってくる。 (それは小説にとってすごく大切なことだと、個人的に思う) とにもかくにも、3作目、4作目を読みたい。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
話は、作家を主人公とした、(映画)[エンゼル・ハート](1987年ミッキー・ローク主演)を彷彿とさせるダーク・ファンタジー=ひょんな行き掛かりから作家ダビットが 探索することになった<塔の館>にまつわる人物が、実は...といった話で、第二次世界大戦前という時代設定の割には、激しい アクションありいの、ディーヴァー風どんでん返しも用意され、それに超常現象が絡む、”珠玉”かどうかは、わからんが、かなりの面白本。 翻訳も極めてスムースで、バルセロナで暮らしたことのある私にとっては、旧市街の描写、ガウディの建造物描写などは、感涙もの。 ただ、大傑作の前作[風の影]と比較すると、挿話に超常現象的オチの付け方が多用されており、前作のような最後の最後ですべてが 納得の上、”コトリ”と落ちる哀愁のラスト...とは行かなかった。 ”本の墓場”の扱いも、本作ではあまり重きを置かれてはいない。 大体、何故に謎の編集人=雇い主はダビッドを選択したのか、その理由がいまいち納得できない。 訳者後書き(この後書きが、ここまで書いて良いのか、と言うくらいネタバレ満載なのに驚くが...)に丁寧にその理由説明があるが、 (--作家としての彼の魂を欲しいままにして、...に君臨...--)君臨して、結局なにがしたいのか... 最後の最後、雇い主がつぶやく<祝福であり、復讐である>...えっ?何に対する復讐?とちょっと混乱すら覚えてしまい、前作の 正しく”珠玉”のラストの再現を期待した分、落胆があったのは事実。 もっとも4部作となるとの事ゆえ、私の疑問も最後には氷解するのかもしれず、ここは、このまま[?]にしておくのが良いのかも... 私見ではあるが、本作は、”本の墓場”シリーズの一貫とせずに、オカルト風味を抑えて独立した時代ミステリーとして上梓されていたら、 大傑作になり得た気がするのだが,,,, | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ディケンズやボルヘスやガルシアマルケスやフーコーの振子が好きなら この本も好きなはず。 風の影ほどさわやかではないけど、気軽に読めて、 でも面白かった。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!