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地の底のヤマ
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地の底のヤマの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.10pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全30件 21~30 2/2ページ
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二段組み、863頁の大作。猛暑の中、読み通すのは 大変でした。それでも比較的集中して読めたのは、昭和 49年から現在までの主人公の約40年の警官ぐらしの 起伏と、主人公(そして著者)の故郷たる大牟田市の、往 時とその間の変遷の記述とに惹かれたからだと思います。 著者の大牟田へのこだわりは相当なもので、見返しの 三井三池炭鉱の坑口と社宅の俯瞰図に始まり、与論島 や朝鮮からの移住者の移住の経緯や、労使での争議や その後の労組間の対立、そしてガス爆発事故の発生など 全てを書き切ろうという気概が溢れて、それだけでも目が 離せぬものになりました。 ただ、少年時代に大それたことをしでかした主人公の 仲良しグループの誰もが、決定的な破滅にまで至らない のは因果応報をひとつの原則とするエンタメ小説の道に 外れてはいないでしょうか。これで直木賞はちょっと厳し かったと思います。 | ||||
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主人公がたどった人生を、九州のかつての炭鉱町・大牟田の歴史や風俗、そして現在の日常生活と照らし合わせながら語る、といったこの小説。警察小説であるが、話があちこちに飛ぶところがあるので、かの地の政治や文化等に興味のない人は、多少読みにくくもあるだろう。が、私としては、炭鉱の歴史や労働争議に関する記述が大変興味深く、ページをめくる手にブレーキがかかることはなかった。分厚い本ではあるが、その分、読み応えのある本だった。 もちろん、登場人物にまつわる様々な人間模様も描かれている。ただし、もう少し深い人物描写や心理描写があってもよかったのではないかという気もした。たとえば、主人公の少年期の行動と、その後長じたのちの行動や心情とが、この文章だけでは容易につながらないところがあったりするからだ。 と思いつつも、いかにもといった熱血漢のヒーローが登場することの多い、他の警察小説と比べれば、リアリティーを感じ、読者の想像力を充分に生かしてくれるので、大きなマイナス点でもなかろう。 最後にストーリーについてだが、ややシンプルな感じがしなくもなかった。これだけの文量を使ったわりには、「うーん、なるほど」と唸らせてくれるような場面に乏しい、そんな単調かつ凡庸なストーリー展開だった。だが、事件の真相にはやはり驚かされ、ラストシーンでは、自然と胸に熱いものが込み上げてきた。著者の訴えんとすることが、ストレートに伝わってくるのだ。 いずれにせよ、非常にパワーを持った作品であることには違いないと思う。 ところどころ?を感じる文章もなくはなかったが、著者の溢れる熱意を次回以降の作品に、さらに生かして欲しい。 | ||||
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「これを読まずに日本の戦後史は語れない--」に惹かれて読み始めました。 一読の後、二度目は地図検索で大牟田市近辺の地理を確認しながら、読んでみました。 自分の育った時代を系統的に再確認でき、満足できました。 最近では、機会あるごと、同世代の友人に勧めています。 | ||||
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毎回ほとんど同じことばかり書いてあるのになぜか飽きない西村賢太さんの小説は例外として、最近の小説にはまったく食指が動かないのですが、同じ「西村」でも一字違い一字足らずの「西村健」さんと云うお名前に惹かれたのと、この本の出版元である最大手の出版社が宣伝にまるで力を入れていないようなのに、「地味ながら評判が良い」ということもあって、ダメ元で読んでみました。結論から言うと、たいへん満足させていただきました。 概要は、九州の大牟田を舞台にした警察小説で、上下二段、860ページに及ぶ、けっこうな長編です。最近の小説はワープロで書かれるせいか、中身に比べてやたらに長くなるものが多いですが、この小説は無駄に長くはありません。ご当地味自慢が所々で挿入されるのも、ご愛嬌として気にならない範囲です。 中身は、優秀ではあるのに世渡り下手のため僻地をたらいまわしにされるノンキャリ警察官を主人公に据え、1974年、1981年、1989年、2011年の4部構成で、それぞれの年に起きた事件、人間模様、捜査を通しての主人公の成長が描かれます。主人公をはじめ登場人物たちが皆、ある「過去」を引きずっていて、純粋なヒーローは一人も登場しません。それぞれのキャラクターは類型的ではあるものの、キャリア官僚から地方ボス、平凡な市井の人々、ヤクザ、犯罪者に至るまで、社会の上層から下層まで多岐にわたる登場人物たちの行動が、生き生きと活写されます。さらに、主人公の成長物語を軸に、大牟田という地方都市の変遷、主人公が身を置く警察組織、三池争議(1959〜1960年)を起点にその延長線上にある炭塵爆発事故(1963年)から本格化する石炭産業衰退の歴史、石炭から石油(その先には原子力)へと移行する日本のエネルギー政策の変転までをも照射する、重層的な構造となっています。 このリアリティと壮大な構想力は、おそらく、地元福岡県ご出身にして、中央官庁の官僚も経験された、作者のご経歴と体験から来るものなのでしょう。この種の警察小説、たとえば合田ナントカが登場する純文学風に気取ったハードボイルド小説をお書きになる某女流作家の小説などを読むと、登場人物にリアリティが無く、作者のアタマの中だけで作り上げた世界だなあ、という印象をいつも受けるのですが、やはりね、体験に勝るものはありませんよ。知らない世界を書いてもダメですね。必ず馬脚があらわれますから。それに比べると、この小説には、東良美季さんの「東京ノアール」と同様、作者の、ここ一番におのれの蓄積をすべて吐き出すかのような、意気込みと覚悟が感じられます。 しかし、西村健さんもこれだけのものをお書きになると、次が大変ですね。よくいるでしょう、次はもっと凄いものをと野心ばかりが空回りして、空虚で荒唐無稽な長編小説を書いて、坂道を転がり落ちて消える人が。そうならないように、長期の充電期間を置かれることをおすすめしたいですね。 | ||||
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あざとく、卑怯な警官の、自分と見事に折り合いをつけながら生きていくさまが、だらだらと綴られる。 で、周囲の人々から尊敬されて、一目おかれていることも自覚的で、なにしろ気持ち悪い。 日テレ的、夕刊フジ的、週間ポスト的な、感受性の持ち主向き。 この作品を薦める人物を俺は信用しません。 | ||||
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炭鉱の町・大牟田の刑事猿渡鉄男の半生を綴った作品。 刑事だった鉄男の父の死の秘密を縦軸に、それぞれの時代の事件を横軸に構成されてます。 文学賞を受賞しなければ、手に取らなかったでしょう。 なぜなら、上下2段、800頁超。舞台は炭鉱の町。主人公は刑事。淡い恋愛もなく、無骨で泥臭い物語。内容も暗い。決して女性向きではありません。ただ、女性にこそ、読んでもらいたい作品。どのような感想を抱くのか、聞いてみたい気がします。読み応えがあり、引き込まれます。しかし、解説や説明が多く、ストーリーが中断してしまうので、もっと削って欲しかった。なので、星1つマイナス。 いつか、TBS・日9の枠、寺尾聰主演でドラマ化してほしい。 | ||||
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大牟田の歴史と猿渡鉄男の大河小説か思いましたが、質の高いミステリーです、二段863ページが苦にならない素直に面白い本です。 作家の主人公に対しての優しい気持ちも伝わります。 | ||||
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大牟田市の三池炭坑を舞台に、1人の警官の人生を追いながら、実在した組合問題、人権問題から人生や恋愛まで細かく、かつ丁寧に書かれている。殺人というミステリーに関しても、最後にきちんと謎解きされているし、とにかく壮大な大河小説です。この本に出逢えて良かった。長さは全く気になりません。とにかくお薦めです。 | ||||
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860ページで2段構成 今まで読んだ本の中で上下巻や1,2,3、、、、巻と連作でなく単独での分量ででは最高に長い小説でした。 夜 寝る前に読むと本自体が重くて疲れます。 ただ やはり内容はその重さ以上に重い。 炭鉱の町の歴史をベースに親子二代の警官が関わってきた労働組合問題、 事故、殺人、警察内部の暗部、そして最後に判明する衝撃的な事実。 色々考えさせられるなか、よくできたミステリーでもある。 一気に読みきれるだけの量ではないが、時間があれば常に先がきになり手に取ってしまう。 そんな最高の小説です。 | ||||
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当地出身の作家・西村健氏の小説、地の底のヤマ読了。 主人公は警察官。 いくつもの事件を経て、最後にある場所にたどり着く。 あることがあって、主人公は大牟田警察署に居着くことになり、いくつかの事件を経る中で己の過去と向き合っていく。 主人公の設定は団塊世代だが、明治以降の大牟田の近代史についていろいろな聞かれている。 そして、著者の作品にはしばしば出てくるが、実在の大牟田にあるお店も幾多登場し、店の中の人の顔が浮かぶ。 そして関係者の中にもモデルらしき人はいる。 あったことのあるひと、言葉を交わした人、見たことのある人、そして資料映像で見た人まで。 こういう言い方は著者には好まれないかもしれないが、この作品は「大牟田的警官の血」といっていい。 | ||||
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