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64(ロクヨン)
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64(ロクヨン)の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.14pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全416件 401~416 21/21ページ
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重量も内容もずっしり重い1冊で、読み応え十分です。 横山さんの著書は『クライマーズ・ハイ』を皮切りに(たぶん)全部読んでいますが、 この『64』は、個人的にはナンバー1だったその『クライマーズ〜』に匹敵する面白さでした。 とにかく主人公が悩む・悩む・悩む。そしてのたうち回る。 まずそのドタバタぶりがイイ。私自身を投影する必要がないほど 微細に葛藤が描かれ続けるので、途中で読むのを止めることができない。 だから寝不足です。 続いて、潔く痛快な開き直り。そして見事な結末。 さあ、もう一回読もう! | ||||
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たった7日間しかなかった昭和64年に起きた“翔子ちゃん誘拐殺人事件”の時効があと1年となったいま、警察庁長官のD県警視察が決まった。1週間後である。本小説の主役は、D県警警務部の広報官、三上義信警視。彼に降りかかる様々な難題を描いた長編小説である。三上は、長年刑事部のエースとして活躍してきた。ところが、突然広報のトップに抜擢され、不本意ながら、三上の考えるマスコミ対策や理想的の広報体制づくりに対峙していく。だが、娘の家出や妻との関係といった家庭内のトラブルから警務部長に弱みを握られ、広報方針への介入を許すことに。そのような時、三上は交通事故加害者の匿名問題をめぐって記者クラブと対立。記者は長官視察の取材ボイコットを示唆する。広報官として警察の発表のあり方に苦しむ三上が、記者たちと真剣に対峙する場面は感動的である。また、長官が慰問する予定の被害者遺族は、これを頑なに拒否する。三上の前に不可解な箝口令の壁が、これは、上司からの圧力、キャリアへの反発、刑事部と警務部との反目等の・・・根深い対立が。長官の視察予定日は迫る。記者クラブとの葛藤、内部の勢力争い。この部分の著者の記述は流石に凄い、板挟みの中にある三上の苦痛、息詰まる緊張感を見事に描き切っている。長官の視察には何か裏が?思惑が?あるのだろうか・・・・。 話が佳境に入った時、思いがけない・・・が。ここから、これまでとは異なる相転移の世界へ・・・著者7年ぶりに描く感動の真実をお楽しみください。これは一気読み! | ||||
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元新聞記者が警察発表や記者クラブを題材にする強烈なリアリティ。 サラリーマンの多くが共感する派閥、組織での処世術を題材とするセンス。 丁寧に伏線を敷きながらも、終盤にならなければ気付かないミステリーの完成度。 推敲されつくした意挙手一同足の描写。 どれをとっても「究極の警察小説完成」の謳い文句に偽りがない。 クライマーズ・ハイに勝るとも劣らない。 | ||||
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著者の作品は単行本化されたものは総て読んでいます。 他の方も書いていますが、短編こそ筆者の真骨頂というか、後世に残る秀逸なものがあると思ってました。 長編は、映画化された「半落ち」「クライマーズハイ」など有名な作品が多いものの、実はそんなに感銘を受けませんでした。 しかし、この「64」は、違います。ひょっとしたら著者の最高傑作かもしれません。 後半になるまでこの物語がどう収束するのか全く予想が付かなかったのですが、 長々とした導入部にあった伏線はやがて見事に回収され、読者が十分なカタルシスを得る大団円を迎えます。 それまでの主人公三上の思考、行動、逡巡を、丁寧に綴り、見事に纏め上げる著者の筆力にも感服しました。 映像化するとすれば、2時間ドラマや映画ではなく、5回以上の連ドラにしてほしいです。WOWOWかNHKがいいです。最悪TBSでも。 上川隆也のイメージが強い二渡はそれでいいとしても、主人公三上は誰がいいのか、この長い本を読みながらずっと考えてました。 イケメンではなく強面、オールバックの髪型でかつ剣道が強いという設定なので、遠藤憲一あたりかなあ、などと。 | ||||
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主人公の広報官三上は警察官である前にひとりの人間である。 集大成とも呼べる横山秀夫渾身の一作。 この大作を書き上げるにあたり、かなりの苦悩があったと聞く。 鬱、記憶喪失にも悩まされたそうだ。 それもそうだろう。 組織、家族様々な苦悩を抱える三上の深い深い心情を 独特の短い文章で書き連ねていくことは想像を絶するストレスに違いない。 しかも一文たりとも無駄のない完ぺきな作品を追求したと思われる緊張感溢れる仕上がりだ。 著者最長の600ページ超の作品だが、全く飽きることなく読み切ることができる。 ありきたりの警察小説かと侮る事なかれ。 本年イチ押しの長編小説である。 | ||||
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正直、最初の100ページはなかなか読み進められなかったです。 説明的な文章が続いたので、いまいち物語にのめりこめませんでした。 しかし、段々と物語の世界に引きこまれていきました。 私は20代女性なので、主人公に感情移入する要素は少ないと思います。 それでも、主人公の三上広報官の苦悩、家族というものへの葛藤には感情移入してしまいました。 最後の50ページは、本当に心を奪われ、胸がどきどきしましたね〜!!! 途中からうっすら筋が見えてしまっていたのですが、それでも細部の構成は見抜けず。 そしてそこがこの話の、キモでした。 冗長的に思えた最初の部分も、総て必要なものだったのだと思えます。 無駄な文がないのです。伏線が随所に張り巡らせられており、それが見事に回収されていく。 まさに職人技ですね。脱帽! | ||||
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”あ〜。読み終わっちゃた。。。” という、あの独特の寂しさとともに胸の中に熱っぽさが残り、普段は横になったら速攻眠ってしまうのに 「64」最終日はなかなか寝付けませんでした。 ずっしりした重さにもためらうことなく毎朝カバンに入れ、その重さに腕がしびれながらも 満員電車の中、片手で読み進め、仕事から帰るとさっそく続きを読む至福感。 他の方も書いてらっしゃいますがクライマックスは本当に圧巻で、 1ページ1ページから熱が伝わってき、すっかり物語の中に入り込んで涙しながら読みました。 この横山ワールドの熱にずっとうなされていたい、とさえ思っています。 | ||||
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この厚さ、この値段(それでも安く設定されてると思います)、誰でも文庫化を待ちたくなるでしょう。 それを差し置いても、今買って読んだ方がいい。それくらいの力作だと思います。 これだけ前評判がいいと、期待が高すぎて最後の印象が薄まる事があるが、それを差し引いても驚くべき結末に圧倒されました。 7年を空けてもこの圧倒的な筆力を維持している著者がすごい。 復帰を祝うためにもこの本は売れないといけない。 | ||||
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とにかく、新作を読みたかった。 書店に行っては、「あ」から始まって、「や」行まで覗きながら、「横山秀夫」の新作を探していた。 けれど、なかった。 けれど、「や」行で「横山秀夫」に7年かかってたどり着いた。 そんな気がする。 驚くばかりのその分厚さ、そして本そのものの物理的重量。 ずっしりとした手ごたえは、そのままレジへ持っていくのにためらいを感じるほど。 それは杞憂ではあったのだけれど、しかし、氏の作品には、いわゆる「本物の長編」が少ない。 登場人物が同じでも、それぞれのエピソードが独立しており、そして一つ一つが珠玉ともいえる完成度を誇った短編、そんな趣が横山秀夫の作品にはあり、それが何よりの魅力の一つだと感じていたからだ。 「半落ち」にしても、主役が入れ替わりつつ物語が進んでいく一種の短編ともいえたし、文句なしの名著「第三の時効」もまた然り。 「クライマーズ・ハイ」が長編としては最も好きだが、「深追い」や「臨場」のような、濃密かつ後味の濃いシリーズに睡眠時間を削られている身としては、もちろん大好きな「D県警シリーズ」をベースにした長編とはいえ、けれど既存の世界観を踏襲した長編が今度の新作であることに、やや不安も感じたのだ。 もしや、横山秀夫は、創作に情熱を失ってしまったのではあるまいか。 編集者や読者の声にこたえるために、わざわざ「D県警シリーズ」を銘打ち、ページ数を稼ぎ、上梓したのではないか。 それはもうまったくの杞憂以外の何物でもなかった。 北海道は新刊の発売が、相も変わらず三日は遅れる。 これだけ物流が発達した世の中だというのに、30年前と大して変わらないその流通システムに憤りを感じながら、おそらく北海道は札幌市での発売日に、ほんのわずかな逡巡とともに、「64」を購入した。 結局、この分厚く重く、圧倒的な物語を、睡眠時間を削って読み切ってしまった。 短編ならば、エピソードで区切って「あとは明日また読もう」とページを閉じることができるのに、この「64」はそれを許してくれなかった。あたかも主人公のD県警広報官・三上が終盤、睡眠時間を削ってなぞに対峙するかの如く。氏は読者にもその過酷な任務を任命したのだ。 横山秀夫ファンならば、何も言わずに、新品で買うべし。 古本屋に並ぶのを待つのは、時間の浪費である。 一刻も早く手に取り、十秒くらいはこの本の分厚さと重さに覚悟を決め、そして帰宅してから第一ページを繰るまでの時間、期待に大いに胸をふくらませるべし。間違っても帰宅途中にページを開かないこと。止まらなくなること請け合いだからだ。 ストーリーは伏線が巧みに張られている。 警察小説であり、しかしこの物語がれっきとした「ミステリー」なのだと思い知る筋立て。 いくつも張られた伏線が、もしやこのまま消化不良で終わるのではないかと心配になるかと思いきや、それらはしっかりと回収されるのは、もう見事としか言えない。 やはり横山秀夫という作家は、非凡中の非凡だ。 警察官。 それも、刑事部ではなく、警務部所属の、しかも広報官。 序盤は様子見。 「見知った」名前もちらほら出てくる。 婦警担当警察官に懐かしい名前を見、もしやあの似顔絵婦警も登場かと期待を持たせる展開に、しかし今回は記者、刑事部の本物の刑事たち、そして横山小説の真骨頂ともいえる上層部と現場の対立が次第に立て込んでくる。 この分厚い小説の半分も過ぎるころ、いったいどうやってこの物語は終わるのかとまったく先が見通せなくなってくるが、そのあたりから物語はどんどん動き始めてくる。 主人公・三上の「決意」は、「クライマーズ・ハイ」の悠木の「決意」を思い起こさせる。 記者会見で記者ともめる一幕は、雫井脩介「犯人に告ぐ」の1シーンをふと思い出したが、あの小説の「修羅場」がこちらはさらに濃密かつリアリティをもって迫ってくる。このあたりはさすがに元新聞記者の持つ経験といったところ。 終盤はとにかく圧巻。 ストーリーの紹介はしない。 予備知識なしに読んだ方が圧倒的に面白い。 それにしても、読み終えてしまったことがとにかく残念。 次に氏の小説を読めるのは、いったいいつになるだろう。 「17年後」ということはまさかあるまい。 7年程度なら待ってもいいかもしれない。 それまでの間、また書店の書棚の「あ」から順に数えて、「よ」まで辿ることを続けていこうと思う。 案外早く次の物語が……。 この小説を最高得点にしなければ、なにを最高得点にしたらいいのかと思えるほどに、今年読んだ小説では断トツで面白かった。 | ||||
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7年分ためたものを一気に吐き出すような、最初から最後まで横山秀夫節がグレードアップして全開、大いに楽しめた! たたみかける文章はより一層シンプルで、その言葉の一つ一つが強い。 警察内の男たち女たちの価値観、矜持、猜疑、欲望、弱みがひとりひとり見事に活写され続け、ただ単純なエリート官僚vs叩き上げの物語にはならない。 そこは、登場人物たちの生きざまが問いかけられ続ける世界なのだ。 何より、横山秀夫は主人公に「足枷」をかけるのがうまい。足枷はあまりに酷く強い力で主人公を縛り、物語の中で思うように行動をさせない。 主人公はその足枷ゆえに、己が立位置に苦しみ、悩む。揺れ動く。俺は自分の誇れる仕事をしているのか、ためらいを家族のせいにしているのではないか・・・。 そこに滲み出てくる主人公のあたりまえの人間臭さがいい。その自分の弱さに焦れる気持ちに共感できる。 だからこそ、主人公がこの過酷な状況を果たして打破できるのか、目が離せなくなるのだ。647ページも! 最後の無線、携帯での会話とパソコン画面だけを通して描写される追跡捜査も、リアリティがあって面白い。 広報官、という職業を主人公にしたてたのも、新鮮だ。警察機構の仕組み(のゆがみ)にまた一歩踏み込んだ世界を読める思いがする。 不気味に出没する二渡という人物ががいまいち分からないなー、これだけが瑕かなと思っていたら、ちゃんと最後に。 言うこと無しです。 | ||||
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7年分ためたものを一気に吐き出すような、最初から最後まで横山秀雄節がグレードアップして全開、大いに楽しめた! たたみかける文章はより一層シンプルで、その言葉の一つ一つが強い。 警察内の男たち女たちの価値観、矜持、猜疑、欲望、弱みがひとりひとり見事に活写され続け、ただ単純なエリート官僚vs叩き上げの物語にはならない。 そこは、登場人物たちの生きざまが問いかけられ続ける世界なのだ。 何より、横山秀夫は主人公に「足枷」をかけるのがうまい。足枷はあまりに酷く強い力で主人公を縛り、物語の中で思うように行動をさせない。 主人公はその足枷ゆえに、己が立位置に苦しみ、悩む。揺れ動く。俺は自分の誇れる仕事をしているのか、ためらいを家族のせいにしているのではないか・・・。 そこに滲み出てくる主人公のあたりまえの人間臭さがいい。その自分の弱さに焦れる気持ちに共感できる。 だからこそ、主人公がこの過酷な状況を果たして打破できるのか、目が離せなくなるのだ。647ページも! 最後の無線、携帯での会話とパソコン画面だけを通して描写される追跡捜査も、リアリティがあって面白い。 広報官、という職業を主人公にしたてたのも、新鮮だ。警察機構の仕組み(のゆがみ)にまた一歩踏み込んだ世界を読める思いがする。 不気味に出没する二渡という人物ががいまいち分からないなー、これだけが瑕かなと思っていたら、ちゃんと最後に。 言うこと無しです。 | ||||
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まさしく、連続ドラマ化を前提にした作品だ。昨今の空虚なテレビドラマを蹴散らす、大物感である。翻訳し、海外での放映すら可能だろう。この大作を、2時間で観るのは余りに、もったいない。 | ||||
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いつもなら文庫化を待って購入するんですが、 キャッチの「究極の警察小説」に負けて衝動的に買ってしまいました。 いやーこれは買って正解。 的確でスッと胸に落ちる描写は変に文学めいた回りくどい言い回しが一切なく、 平易な文章で統一されているからとにかく読みやすい。ぐいぐい読ませる。横山節健在です。 全647ページ。この分厚さが途中から嬉しくなりますね。 まだ終わらない、まだ読めるぞと。 ストーリーや結末には触れませんが、会社勤めしてる40代なら誰しも主人公の三上の気持ちが胸に沁みるはず。 おすすめです。 | ||||
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待ちに待った、横山さんの新作。 もう一気読みしました(5時間かかりましたが)。 それくらい、熱中する内容でした。 ま、最後は意外な終わり方でしたが、大満足!!! 早く次の新作、出ないかなあ〜←気が早い。 | ||||
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「これを書かずに死ねるか」のひと言に釣られ手に取った。 ずっしりと分厚い単行本はこれまでになく重い。 最初は文庫本になるまで待つか、あるいは中古でもいいか、 という想いもよぎった。 だが、かつてのインタビューで毎日睡眠3時間半。正月以外ほとんど帰らず 執筆に明けくれ、危うく心臓発作で死にかけたという記事を読んでいた。 恐らく著者自身の生きざまなのだろう、いつも主人公は思うようにならない 組織のはざまで生きる姿をかもし出してくれる。 この世の中はそういうままならない世界。その中にひと筋の光を見い出していくのが 横山小説の醍醐味だ。 私は横山氏の短編小説「真相」あたりのファンであり、 描写部分を引き伸ばした感のある64は買おうかどうか少し迷ったのも正直なところ。 しかし2度目に手にしたときそのずっしりとした重みのある文章に、 健康に留意しながらも横山氏が並々ならぬ想いで書き上げたのではないか、 という気がした。そして2度目に手にしたとき、これは買わなければ、との想いが 出て購入に至った。 内容の細かいことはほかの人がレビューするだろうから割愛するとして 大事なことは、主人公の生きざまに対する描写。組織のジレンマにさいなまれながらも 自らの主義を貫いていくところにいつもながらの横山小説の醍醐味がある。 私自身組織のはざまで苦しんだ。だからこそ彼の言わんとするところはよくわかるし 救われた身だ。 横山氏のジリジリと訴えかけてくる文章は今回も秀逸だ。「半落ち」で彼の世界に触れ、 私自身も本を出せるきっかけとなった。 7年も待たされたし次はいつ出るかわからないのだからぜひ単行本の新刊で手にされたし。 | ||||
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ずっしりとしたボリューム。それもそのはず、ページ数は著者最長の647ページにも及ぶ。 長い。しかしそれだけ作者には書きたいことがあったということだ。 組織と個人。警察とマスコミ。家族の問題。過去の因縁。。 著者が今まで書いてきたテーマで直球勝負している。「俺にはこれしかない」という作者の魂(覚悟)がこもった一球だ。 七年ぶりの横山秀夫の文章は懐かしく心地よい。鈍るどころか鋭さを増し、読者に読むのを止めさせない。もう一章、もう一章と思っているうちに、読み終えてしまっていた。 長年待っただけあり、読み応え十分の大作になっている。 著者の警察小説の特徴として、派手に事件を解決する刑事よりは、どちらかと言うと地味な事務畑の人が主人公になることが多い。今作もその例にもれず広報官が主人公だ。 D県警の広報官・三上義信の家族に起こったある事件を通奏低音として、物語は緩むことなく次々と展開していく。全編に渡り緊張感が張り詰め、三上の息遣い、叫びが聞こえてくるかのよう。 三上は少ない手がかりを追って、徐々にD県警を揺るがしかねない秘密の核心に迫っていく。その過程で多すぎることを考え、悩み、葛藤し、怒り、脅し、涙する。まさに一人の人間が主人公なのだ。 組織での男の葛藤を見せられると、自分の父を思わずにはいられない。自分の父も(程度の差はあるが)会社という組織に属し、子供である自分を含め家族を養ってくれた。父の、決して家族の前では見せない苦悩を垣間見た気がした。 そして著者は、警察官である限りどんな人でも全員警察官としての誇りを持ち働く姿を描いている。 横山秀夫の本を読んで奮い立たされる本物の警察官もいるのではないだろうか。 | ||||
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