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(短編集)
短篇五芒星
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短篇五芒星の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.14pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全13件 1~13 1/1ページ
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タイトル通り舞城王太郎5作品がおさめられた短編集。 それぞれの作品に関連性はありませんが、子供の落書きとでも言いましょうか独特の視点で描かれた作品となっている。流産がひたすら気になり周りを不快にする男「美しい馬の地」、ダンディな鮎(魚ね)の嫁になった女性「アユの嫁」、密室の都市伝説「四点リレー怪談」、悪い箱(!)と戦う女子高生「あうだうだう」。 本作品集の中では、バーベルになった男「バーベル・ザ・バーバリアン」のとんでも話ががお気に入り。 著者の作品が初めてなら、ここから入ってはいけないかもしれないね。いつものあふれんばかりの疾走感が欠落しているからか、フツーのわけわからん話なので。 | ||||
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突然流産のことが気になりだした男の話(「美しい馬の地」)が最も印象に残りました。男の気になりすぎて取ってしまう言動と周囲の反応の一連の流れが具体的で引き込まれます。言動のいちいちが一般的な範囲からズレて周囲から非難されますが、はたしてこの男を「こいつ頭おかしい」と精神病理化して片付けてよいのか、断定できないところにおもしろさがあります。 読み進めるなかで、精神科医の中井久夫が挙げた、精神健康に関する基準を思い出しました。その基準のうち、「いい加減で手を打つ能力」「精神を無理に統一しない能力」などと関連させて判断すれば、確かにこの男は精神的に不健康だといえます。でも、不健康かもしれないけれど、悪い人ではないし、そういう描かれ方はされていないのが明白です。 そして、男はみずからの言動が招いた一連の結果を振り返って、それを流産という現象と結びつけて、1つの解釈というか結論に達します。勝手に自己解決というか、自己ツッコミを経てちょっと青臭いともとれる結論にいたるのは舞城作品によくみられますが、そこにいたるまでの言動の激しい描写との対比もあり、青臭くても印象に残って醒めた読後感になりません。 他の4作品もおもしろいです。造本面では、この書名「短篇五芒星」って著者が決めたのでしょうか?あまりにもダサいと感じるのは私だけ?表紙のイラストもダサくて買う気を一瞬削がれました。オビの「無敵の舞城世界をかたちづくる物語のペンタグラム」とか、購買にまったく訴求しないと感じるのですが、なにかあえての意図があるのでしょうか。 | ||||
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三島由紀夫賞作家・舞城王太郎さんの、『好き好き大好き超愛してる。』『ビッチマグネット』に続く三度目の芥川賞候補作。 タイトルの『短編五芒星』が表わすように五つの短編が収録された作品集です。(ちなみに、この五作まとめて芥川賞候補に当時あがりました) 『美しい馬の地』『アユの嫁』『四点リレー怪談』『バーベル・ザ・バーバリアン』『あうだうだう』が各タイトルで、各短編に内容的な関係性はなく、独立した作品がそのまま五作という形式です。 軽く内容に触れると、最初の『美しい馬の地』は突然なんとなく流産で死ぬ子供たちの死の不条理に悲しみを覚え、偏執的に苦しみ続ける若者の話。 二番目の『アユの嫁』は、姉が唐突に〈鮎〉の化身と呼ぶ青年に嫁ぎ、〈私〉や〈家族〉の記憶から姉の存在が薄れてゆき、その姉からSOSの電話が掛かるという話。 三番目の『四点リレー怪談』は、文学誌〈群像〉掲載時は『四点リレー』という少し違う題名だった、有名な怪談をモチーフにした短編。 『バーベル〜』は自分をバーベル、ガンで死んだ自分を人前でバーベルのように持ち上げた友人を〈鍋焼きうどん〉と呼ぶ主人公(現アメリカの保安官助手・元SAT隊員)の逃避のエピソードで、 『あうだうだう』は、東京から福井に転校してきた女子高生と、〈悪い箱〉〈あうだうだう〉などと呼ばれる負の摂理の神と戦うクラスメイトの少女の話。 五つの短編はどれもスピード感があり読んでいて楽しい作品ばかりです。私は個人的には舞城王太郎さんは短編より長編が好きなのですが、ひさしぶりに読むと短編も魅力的でいいですね。 よく、現代日本ポストモダン文学の若手の代表格と見られるように、ストーリーらしいストーリー、メッセージらしいメッセージはあまり前景化されず、逡巡・懊悩・自己満足のような個人的な世界観が軽いタッチでブラック&ユーモアに描かれています。(芥川賞候補ゆえか『スクールアタック・シンドローム』や『ソマリア、サッチ・ア・スウィートハート』程ではないですが) でも冒頭の『美しい馬の地』の主人公に向けられた台詞、「勝手に可哀想がることが相手を傷つけるってことくらい想像つかないか?」は普段気が付くようで気が付かない、普遍的なメッセージだと思います。 善意で放った言葉、善意で行った行動が反対に相手を傷つけること事や、予想に反して悪い結果になる可能性もある。このことは忘れてはいけない事なのではないか、と思わせる大切な言葉だと思いました。 もっとも舞城王太郎さんの小説はクレイジーとでも形容したくなる激烈で個性的な作品なので、頭を空にしてその作品世界に浸るのも最高だと思います。 あと最後の短編は、ライトノベルの悪の存在と戦う主人公を、事情を知らない日常を生きる脇役から眺めたような、そんな趣もあるので純文学ファン以外の方にもオススメです。 | ||||
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舞城は文芸誌にしか載ってないのも、あらかた読んだけどコレに収められてるバーベル・ザ・バーバリアンが一番好き。何度読んでも面白いし締めの文章が美しい。文学は音楽と菊地成孔が言ってたが納得いった。 しかし表紙のダサさよ… | ||||
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何となく引き込まれる短篇集です。 微妙にズレた現実感が面白い! 長編も読んでみたいと思いました。 | ||||
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出版当時のキャンペーン「真夏のMAIJO祭り2012」については、Amazonの説明を読んでほしい。よくもここまでという多作振りの中で、きちんといつもの舞城ワールド溢れる作品を一定のクオリティで発表した点は流石だが、個人的には「四点リレー」が今ひとつだったので、5篇分の1篇の星を削って、星4つとした。 舞城ファンとしては、正直この1冊じゃなきゃ読めない「何か」はない。(例えば、僕の場合なら「九十九十九」を読んだ時の衝撃!)だが、それは他の作品に劣っているということではなく、あくまで既存作品と同じような世界とクオリティのお話が収められているということであり、ファンの方にも、これからこの作家の作品を読もうという人にも安心してオススメできる1冊ではある。 なお、上記のキャンペーンの一貫として出版された本書は、お話によってフォントや文字のポイント(大きさ)が違っている。あんまり深い仕掛けには見えないが、編集者もノリノリであることが伝わってきて微笑ましい。 | ||||
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文体を無理やり誰かと結びつけるとするならば村上龍だろうか。 勿論ライトノベルなどにはもっと近い文体の作家さんが幾人かいるが、有名どころでミーハーな例え をするならやはり彼だろう。 一文内で話がどんどん進む。進むばかりでなく寄り道する。現代人の加速しすぎて逆に 右顧左眄する思考形態を実に巧みに表現していると思う。五作とも、ある種の雑駁さを孕んだ物語の中を登場人物の 行動と思考が闊達に動き回り、結末に向けて猛進する感じである。 特異な文体を読み慣れている人などは苦無く読めるのではないか。 内容については割愛するが、何を象徴化しているかについては色々と多角的な読みが出来そうな作品群であり、 「五編全てが芥川賞候補作!!」の大見得切りは伊達ではない。 | ||||
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エヴァ破のDVD冒頭に流れる「巨神兵東京に現わる」でこの作者を知った。 林原めぐみさんの語りは主人公が降りてきたような魅力がある。 それが、この作者の作品の作風にぴったりとはまっている。 一人称の視点は主人公と視野を共有する。 どうしても視野が限定されるが、主人公の人間性がダイレクトに伝わってくる。 それが、暑苦しく感じることも多い。 その意味では本作の五編はいずれもブレがない。 暑苦しさもブレない。 ところが、読み終わると妙な爽快感がある。 抹茶を飲むと苦味の後に涼しい甘さが残る。 そんな感じの読後感だ。 主人公は皆、荒削りで未完成の心をむき出しに語り続ける。 語る側より聴く側の方が苦しくなるような語りだ。 でも、その先にあるのは少なくとも絶望ではない。 なじめなければ薄茶なり、煎茶を楽しめばいい。 | ||||
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平易な文章で句読点が少ない文体が特徴的な舞城王太郎の作品を、初めて読み終えました。 難解で呪術めいた題名からもう少し重い内容を想像していましたが、 思いの外ライトノベルとでも言うべき軽快さで、漫画的な印象を受け、 改めて調べてみるとやはり舞城王太郎という作家は漫画との親和性が高い様で 「バイオーグ・トリニティ」という連載中の漫画の原作を担当していたり、 「ジョジョの奇妙な冒険」の外伝を小説として書いている人物でした。 半分、悪ふざけのような表現とストーリーの狭間に人の心の本質を見た様な気がしますが、 それが幻であったかの如くすぐに物語は終わってしまい、独特の余韻が残ります。 この人の他の作品も読んでみたいと思っている時点で、 この作家の商業的戦術の術中に落ちているのかも知れません。 | ||||
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五本の短編小説が収録されている本で、それぞれの作品に共通のテーマのようなものは見出せないのでありますけど、流産に固執してひどい目に会う男とか、アユのところに嫁入りしちゃった姉を心配する妹とか、暗闇の中で四人でするリレー中に、いつのまにか誰かが一人加わっているちょっとした恐怖とか、余命三ヶ月の友人にバーベルがわりにされた男や、大学生のボーイフレンドにたかられる女子高生の同級生の女の子があうだうだうと戦ったりとか、分かりにくいところに面白みを感じて読むことができました。 | ||||
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『美しい馬の地』では、 何だかよく分からないけど流産がとてつもなく許せなくなった男が主人公。 心理描写をひっくるめても、それは「衝動」に近い感情。 どれくらい流産が許せないかといえば、過去に流産し、死んでしまった友人の子供に祈りを捧げてもいいか、と持ちかけるくらい。 そしてそれを断られても、食い下がるくらい。 泣いてしまうくらい。 台無しになった宴会を途中で抜け出したところを、憤慨した別の友人にボコボコにされ、階段から突き落とされるくらい。 とにかく、 「一作目からこれか……」と思わずにやりとしてしまったことをよく覚えている。 『短編五芒星』に収録された作品は舞城ワールドからちょっと外れたり、実験的な要素もありません。 確かに、『煙か土か食い物』や『世界は密室でできている。』とは違うかもしれませんが、舞城作品にはすべて一本の線で繋がれています。 五芒星ではなく、直線。 離れてはいない。 すべて繋がっていて、すべてに暖かさがある。 文学といえば「暴力」、「性」だが、どんな凄惨な場面であろうが、舞城ワールドには「まあそんなこともあるわな」的破天荒さ、無邪気さが同時に含まれている。 それを私は、「暖かさ」だと表現したい。 必要以上に持ち上げない、でも時には必要ないくらいに汚い部分を持ち上げる。 日本を代表する文学者の誕生を確信しました。 | ||||
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収録作は以下の5作である。 「美しい馬の地」 「アユの嫁」 「四点リレー」 「バーベル・ザ・バーバリアン」 「あうだうだう」 (初出 群像 2012年3月号) どれも面白いが、とにかく「バーベル・ザ・バーバリアン」である。 短い作品だが、舞城の短編ではベストクラスの出来。 「俺の名はバーベル。俺を持ち上げるのはヘルシー鍋焼きうどん」なんて さすが舞城だぜ!と言いたくなるふざけた冒頭から、誰も予想もできない地点まで暴力的なまでに物語は流れ、最後は何ともいえないほど寂しい気持ちになる。これは暴力の物語であり、暴力に晒されて遠くへ行こうとする男の物語だ。ラスト一行がとても綺麗、寂しい。 この一編だけでも買った価値はあった。私にとっては。うどんが食べたくなる。 次点で「あうだうだう」。なんのこっちゃ?なタイトルである。 「あうだうだう」という悪的な存在と戦う動物を身にまとって少女とその同級生である普通の女の子の物語、と言えばいいのだろうか?この話もラストがいい。二人の少女が交わす言葉が、なんだか良いのだ。戦いに赴く魔法少女とその帰りを待つ平凡な女の子的な、なんというか・・・とにかくいいのである。 芥川賞云々は興味がないのでどうでもいいが、この本はとてもいい本だ。 (難をあげるとすれば、この本、けっこう読み難く感じた。舞城独特の文章云々ではなくて、 文字が大きいし、行と行とがやや離れすぎているような気がする。私は雑誌に掲載された際にも読んでいるので、非常に読み易かったそちらのイメージが先行しているせいなのかもしれないが。) | ||||
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舞城らしさが詰まった短編揃いだった。 一遍目の「美しい馬の地」は完全なる純文学。流産について考えてしまう男の群像模様を巧みな文章で描いている。舞城は同じことを何度もループして書く癖があるようだが、今作品ではそのループが主人公のリアルな葛藤として如実に表れている。物語にはこれとって起伏もなく、けれどしっかりと主人公の成長を描いているのは流石だと思う。 二編目の「アユの嫁」では、アユと結婚した姉の様子を妹視点で描いている。アユといっても魚の姿ではなく、しかし人間でもない。そんな不思議な世界観でリアルな感情を交錯させている。結末まで読んでも謎が多くのこる作品故に、賛否両論分かれそう。 四編目の「バーベル・ザ・バーバリアン」は秀逸。バーベルとして持ちあげられたことのある主人公が、主人公を持ち上げ今はもう死んでいる渡辺の影をいつまでも追いかける話。短編にも関わらず様々な事件と人間模様が揺れ動き、そのスピード感にひきこまれる。結末もこの五編の中では一番すっきりとわかりやすく、主人公の成長も見事に描ききっている。 秀作ぞろいの本作だったが、どの作品も芥川受賞に至るほどの迫力は無かった。 ただ「これぞ舞城」と言えるような、素晴らしい作品が詰まっている。 世界観に疑問を抱き、テーマの新しさに感嘆し、結末で再び疑問を抱く。 どの作品でも、他にないカタルシスを味わう事ができる。 良くも悪くも、舞城らしい短編集。 芥川賞候補作とか知らずに読んでほしい。 | ||||
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