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硝子の葦
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硝子の葦の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.92pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全24件 1~20 1/2ページ
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踏み込むと危険な谷地や沼のように、アウトローで乱脈すぎる。かつて仕事で道東に10年近く住み、現地の人々と浅からぬ交流を持ち、確かにディープなエピソードをあれこれ見聞きしてきたが、離れてしまうと奇異に感じてしまう。程度の差はあれ、みんなこんな風なのか? とはいえ、紫乃さん(現地で勤務していた書店の社長が、親しみを込めてそう呼んでいた)の作品はつい手に取ってしまう。 耳の千切れそうな真冬の釧路の街を歩いたことがあるが、極寒の気候が、人間性を極限まで剥き出しにしてしまうのだと思う。底辺の人々を一貫して描き続ける著者の作風にはやはり真実味がある。それが根強い人気の源泉だろう。 | ||||
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少し前、知人から『起終点駅』を紹介され、二冊目に『ホテルローヤル』を読んだ後本書に行き着いた。桜木紫乃氏はライトノベル系作家と思いこんでいたが、直木賞を始め受賞歴も多い本格作家だった。連作短編集が多いようだが、この長編に心を鷲づかみされた。受賞歴はないが傑作である。作家が原田康子氏(1928 - 2009)に師事したという記述から、久しぶりに『挽歌』(1956)も再読し、桜木氏は原田氏の正統な後継者であるとの思いを強くした。 『挽歌』の主人公・兵藤怜子は小悪魔的存在である。彼女をこうまで我が儘に動かせるのは、上流中産階級の出自であることに加え、戦後急速な民主化に向かった世相も配慮されているのだろう。それでも作家は怜子の「非常識な」言行を描くに、彼女は「右肘に軽い障害があり」と但書しなければならなかった。公園で出会った建築家の桂木さんに惹かれ、周辺を探っているうちに彼の妻が不倫をしている事実を掴んで桂木に急接近する。フランス語に堪能な彼女の言う「コキュ」という語が一世を風靡したことは名高い。秘密を知られた妻は自殺し、怜子も桂木と別れることが示唆されて小説は終わる。怜子の物怖じしない行為が、一人の美しい女性を殺してしまった。だがそれを仕掛けている怜子自身が、この先どうなって行くのか判らないのである。それは『硝子の葦』の女性たちが「必死に流されて行く」と言う感覚と相似ている。 『硝子の葦』登場人物は怜子の子供世代、倫子の子供については孫世代にあたる。ここの女性たちも皆「悪魔的」である。だが彼女らには人を殺しても自ら死んだりはしない時の移り変わりがある。 物語は語りの大部分を担う幸田節子を中心に展開してして行くが、彼女を主人公に規定しまうのは誤りで、この本は登場する女性全員の群像劇として読むべきである。一人一人が重要なのである。彼女らの簡単な経歴を記す。なお年齢は終章で書かれる当時を示す。 幸田節子(30歳)。厚岸で飲み屋を開いている網元の娘・藤堂律子と行きずりの漁師との間に産まれる。少女時代母親から激しいDVを受ける。母の愛人たちが節子を犯すのを背後から観ていて、料金を取る女だ。高校入学で別居、短大卒業後、店の常連客で釧路湿原を見下ろす郊外の「ホテルローヤル」の経営者・幸田喜一郎(60歳)の紹介で、ホテルの会計顧問の澤木昌弘(40歳)の事務所に就職、昌弘と関係を持つ。5年後喜一郎と結婚するが昌弘との関係も持続。喜一郎も律子との関係を維持する。 幸田梢。喜一郎の娘。母は離婚し別の男と再婚。義母の節子に反目して高校卒業後家出。男仲間と大麻の栽培に手を染める。 佐野倫子(35歳)。節子とは「サピタ短歌会」の知人。年少の夫・佐野渉(30歳)はデパート経営者の一族で、店舗破産後は郊外の大手スーパーの二階で輸入ブティック店を経営している。店員だった倫子と一族の反対を押し切って結婚するが、その後の店の不振の原因は倫子と彼女の連れ子にあるとして、二人に激しいDVを振るう。 佐野まゆみ(9歳)。倫子の連れ子。義父の激しいDVから逃がすために、倫子は節子に助けを求め、節子はしばらく少女を一番捜査の及びそうもない梢に預ける。節子はまゆみに言う「助けて貰いたいのなら、もっとずるい子にならなきゃ駄目」だと。しばらくの後、まゆみはすう~と消えてしまう。 これらが主な女性登場人物だが、ストーリーに厚みをもたらす脇役たちも欠かせない。先ずは石黒加奈。梢の叔母でカクテルバーを経営、姪の梢との連絡を欠かさない。宇津木とし子(50歳)。「ホテルローヤル」に欠かすことの出来ない重要従業員。元は釧路の繁華街でラブホテルを経営していたが破産。夫の自殺後喜一郎に経験を請われて雇われる。木田聡子(60歳)。澤田会計事務所の熟達従業員。両親の介護に追われて婚期を逸す。 これら彼女たちが絡み合って、半年の間に、「事故に見せかけた殺人1件」、「自殺にみせかけた殺人1件」、「事故に見せかけた自殺1件」を起こして行くのだが、そのどれもが「それしかない」と納得させられるものばかりだ。前述したように「必死で流されて行く」女たちの可愛さがまでが感じ取れる。 最後に倫子がまゆみを見ながら節子に言う。「何もかもこの子の言う通りになりました」と。この聡明でずる賢い少女は、確かに『挽歌』の三代目に似つかわしいと思うと鳥肌が立つ。女たちは現世的で、足が地に着いており、運命にもてあそばれながら、選ぶ方法は常に具体的だ。生きる気力がみなぎっている。男たちがいつまでも子供じみているうちに、女たちはしっかりと自立を果たした、と言うのが私の感想である。 | ||||
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登場人物のうち、男性は僅かに三人(澤木と都築と倫子の夫)だけでしかも影は薄い。そういう意味では女性上位の物語。もちろん物語の推進役も女性である。誰と誰がどういう関係なのか、序盤においては戸惑うものの、理解してしまえばむしろそれらが出来事に影を落としていることが分かる。プロローグで示された焼死事件へと物語は収斂してゆくのだが、その事件の真相が意外な形で仄めかされた後も、すなわち物語が終わっても、解明されないままの謎が残る。それは「なぜその写真は送られてきたのか」ということだ。その行為の背後にあるのはどんな「思い」なのか? 読み終わってもなお、そんなことについて考える楽しさがある作品。 | ||||
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ドラマを観て、原作が気になりまして購入しました。映像で観てから、文字を読むと理解が深まりますのでオススメです。 | ||||
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湿原に凛と硝子の葦立ちて洞さらさら砂流れたり 北海道東部を舞台に、虐待されて育ち、30歳年上の旦那と結婚した幸田節子が詠む短歌である。なんとも人間の無力さや人生の虚無感に満ちた歌である。 ミステリー仕掛けの小説。ミステリーとして最後に思いもしない結末になる展開も秀逸だが、節子を虐待した母、短歌教室で出会った親子、もと職場の上司で不倫相手などが絡むヒューマン小説と言っていいだろう。 短歌のように、現実に流され、諦観のなかで黒々とした平和の中で生きながらも、一方で、自分自身の運命を変える狡猾や力強さの必要も主題としている。 | ||||
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お友達の紹介でなかなか面白いよと聞き購入しました。なかなかでした。 | ||||
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今回の作品も途中から意外な展開で、最後の結末もよく工夫されていた。 | ||||
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暗い寒い寂しい煙たい雰囲気がたまらない作品です。 大雨の中暖房のぬるい空気とタバコの匂いで充満した車内で車酔いしてる気分にさせられる。 きっとそれがイヤだという読者もいるでしょうけど・・・ | ||||
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自分の桜木作品読書歴はかれこれこれで10作目となるが、これもまた、さすが!と唸らせる上質のミステリーである。 序章でのいきなりの出来事の後、本編で少し時がさかのぼってから物語は進み、やがて時間軸は終章で序章に追いつくという結末はよくあるパターン。 しかし、この終章で明かされる真実は、ずっと気になりながら読み進めていた読者を、そうだったのかぁー、と驚かせるに十分の展開である。 ミステリー物はこれでなくてはいけない。 最後の終わり方はいくつかの謎を残したままの余韻含みであり、その分何か不自然というか、不完全で煮え切らないと感じる向きもあろうかと思うが、その辺は何度も前のページをあちこち読み返してみると、この作品の奥深さが読み取れると思う。 とにかく桜木作品は会話文が上手い。語り言葉がドラマの台本そのもののように自然で違和感がない。 そしてもう一つの魅力、は人間の感情、行動、自然の情景や動きなどを表す文体の見事さである。純文学と呼んでもよい文章表現力である。 北海道、道東の厳しく寂しい土地に生きる、貧しくもたくましい女性たちを描くいつものテイストはそのままに、今回はそこに上質のミステリー仕立ても加わって、やはり彼女はいつまでも目の離せない作者であることを再認識させられた。 昨年WOWOWでドラマ化されたのを観損ねていたのは残念。番組のホームページで見ることの出来る各配役の顔ぶれに、WOWOWなら多分いつか実現するであろう再放送が、今から楽しみである。 | ||||
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いつも桜木さんの小説の舞台になる道東に対する自身の偏見か、どの小説も常に薄暗い感触です。 そして、登場人物が、なんとなく不幸なんですよね。 でも、文章や話の流れは嫌いではありません。 というか、結構クセになります。 本書もなかなか面白く読ませていただきました。 トリックなどは少々うまくいきすぎな気もしましたが、まあ本格ミステリーというわけでも ないのでこれもありでしょう。 | ||||
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単純におもしろかったです。 サラサラと読めてしまいました。 1日で読めてしまうのでは? | ||||
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文章の巧みさは、宮部みゆきとは違う意味の凄さを感じる。北海道以外の作品に期待したい。 | ||||
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「湿原に凛と硝子の葦立ちて洞さらさら砂流れたり」 作中で主人公が読む歌です。 その歌が、この小説のすべてを語っている様に思えます。 北の大地の抒情性豊かな風景の中に、「凛として立つ葦」の様な存在として主人公が描かれています。 その育った環境の過酷さから、たくましく生きて行く主人公の姿は、普通の生活からはかけ離れたものではあるのですが、何がしかの共感を抱かざるをえません。 その子ども時代を象徴するような存在として描かれる佐野まゆみが登場することで、現在の主人公の生き方に説得性を感じさせられます。 現実社会の中で超然とした生き方をする主人公は、こうして作られたのかと納得させられるのです。 そして、まゆみの母親倫子の存在も大きいと思います。 常に「演技」をしている女性として描かれています。 傍から見れば、何を考えているのか良く解らないが、その立場を演じ切っている女性です。 この二人から生まれる犯罪は、主人公自身の犯罪にも繋がっています。 この人間関係とその心理描写が、この作品を生き生きしたものとしている様に思えます。 なかなか読みごたえのある作品でした。 | ||||
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最初からぐんぐん引き込まれました。 そしてラストシーン。 切なさと共に、女性の強さを感じます。 素敵な本に出会えました。 | ||||
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ドラマ化を機に購入。 直木賞受賞時に「ホテルローヤル」は購入していましたので、各登場人物のスピンオフ的な一冊かと思っていました。 読後感はややこしい話だな…。人物相関図が欲しいなと思いました。 また、センセーショナルな物語かと思いましたが、意外に淡々と描かれているので、読者をグッと惹きつける展開があっても良かったと思います。 | ||||
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著者の桜木柴乃さんは、1965年4月北海道釧路市生まれ、2013年ホテルローヤルで第149回直木賞を受賞されています。 冒頭、主人公が自殺?する場面から物語は始まります。そして、時間は約半月前の8/2にさかのぼります。 主人公の幸田節子は、釧路でラブホテルを経営する喜一郎の妻ですが、その日、喜一郎は、自動車事故で意識不明の重体に陥ります。 そして、この日喜一郎は、節子の母親と会うために厚岸に出向いていたことがわかってきます。 実は、喜一郎は節子と結婚する前は、節子の母親と長い間、深い仲にありました。 また、節子は、少し前、喜一郎のすすめで、第1歌集「ガラスの葦」を上梓し、 そのことがきっかけで、会員の佐野倫子と娘のまゆみと知り合います。 そして、節子は喜一郎と結婚する前、釧路で会計事務所を経営している、税理士澤木のもとで働いていて、 その澤木と深い関係にありました。 主な登場人物、そして、物語の背景は以上です。、そして、喜一郎の事故をきっかけに、今まで順調に回っていた歯車が、 大きく狂い出します。あまり、書くとネタバレになりますが、本作は、良質のクライム・サスペンスで、最初、少しとっつきにくい感がしますが、 我慢して読むと、そのうち、物語にぐいぐい引き込まれていきます。 物語の舞台、背景は、作者の実体験がかなり反映されているものと思われます。 厚岸の寂れて荒涼とした感じが、物語とうまくマッチしていて、読後に深い余韻を残します。 クライム・サスペンス好きの人には超お勧めです!!! しかし、帯の「度肝を抜く大どんでん返し、驚愕の結末!」のキャッチ・コピーは感心しません。 勘のいい人なら、少し読めばラストがわかってしまいます・・・・・・ | ||||
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道東を舞台にしたミステリー。あの直木賞受賞作『ホテルローヤル』の舞台が、この作品でも中心的な役割りとして描かれている。 『ホテルローヤル』の経営者の妻・幸田節子、節子の短歌仲間の佐野倫子の二人の女性が物語の中心人物であり、二人の周りの女性たちも物語を構成する重要な役割りを演じる。すなわち、この作品もまた、これまで桜木紫乃が描いて来たような女性の物語なのである。 ミステリーを味わうというよりも、北の大地で繰り広げられる女性たちの裏の姿と、それと対比して描かれる本能のままに生きる男たちの姿を楽しむべきかと思う。 | ||||
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構成が斬新。思わず読み返してしまい、なるほど、と思います。三回くらい読み直すと、更に味わいがありますね。 | ||||
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男が女を愛し、女がそれを受け入れる。 そこには一種諦観にも似た世界観がある。 | ||||
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心地よく展開していくストーリー。 出だしが後半にうまいように繋がり、男では考えられないことが 女性の目線で淡々と語られる。 ミステリーでヒューマン小説が女性ならではの怖さをかもしだしています。 | ||||
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