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人質の朗読会
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人質の朗読会の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.23pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全56件 21~40 2/3ページ
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ゲリラの人質たちが語る自分語り. 日常のストーリーとして語られる生と死の物語. 人質という異常な状態の設定であるが, あまりそれを感じさせない淡々とした語り口である. 語られる物語には,印象的なイベントもあれば,取るに足らない出来事もあるが, 多くの物語が「死」を感じさせるストーリーになっている. 極限状態の中で,破滅的な結末を迎える人質たちが, 穏やかに,それぞれの向き合い方で「死」について語り合うという, 悲壮感を感じさせつつも,不思議と幻想的な雰囲気も感じられる. 大きなどんでん返しも,明確なメッセージもないが, こういう小川洋子氏ならでは味わいが好きな方にはお薦め. | ||||
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バイオリズムというのかなんなのか、 自分の心理的コンディションと小説の内容がバチッとはまってしまうような事があって、 これがまさにそうでした。 南米のどこかで現地ゲリラに捉えられた日本人の人質8人が 一夜にひとりずつ、自分の物語を語る。(それを盗聴したテープが発見される) という形式で綴られる短編集。 それは、およそそういった状況でなければ語られるはずのない 極めて個人的で、ささやかで、しかし本人に取っては大切な物語。 そこにはテーマも教訓もドラマチックな展開もないのだけど、 聞き手(読者も含む)はその中の登場人物を尊重し、そこにある尊厳をたたえ、 話の後には慈しみに満ちた静かな拍手を送ることになります。 各話語り部が変わりながらも、語り口はしっかりと心地よい小川洋子さんの文章で、 不思議と言えば不思議なんだけど、 そこはファンタジーとリアリティーを自在に行き来する小川洋子マジックで 違和感なく読み進められます。 最後に事件当時盗聴役だった兵士が人質達に感化されて自分の物語を語るのだけど、 彼の存在が時間的にも空間的にも切り離された人質達と 読者の間をつなぐ役割を担っていて、 爽やかな読後感を与えてくれます。 果たして自分がこの中にいたら、 なにを語るだろう。 と、多くの人が自分自身の物語の事を思うのではないでしょうか。 | ||||
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職場の人に読書用に薦められた本なのですが、殺される前の悲壮感はなく、一人ひとりが短編で語る日常のありふれた生活の場面が繊細な心理描写で描かれています。とてもありふれた出来事や印象が、日常会話の中で語られることは実は思っているほどに多くはなく、人質として拘束されているという状況の中で、人は普段感じているが、言葉にする機会がないありふれた出来事を語るのかなあと思いました。 とても些細な事ではあるのですが、普段言葉にすることのない小さな動作に細やかな心理描写がなされていることに、おもしろさがありました。 一人の人間の平凡な日常って、実はどんなドラマよりも尊くて貴重なものなのかもしれません。 | ||||
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設定上はゲリラに捕らえれた人質がそれぞれの物語を語っていくという筋書き。 ただし一冊を通じて各章に共通点はなく、独立している分空き時間に読むのにはいいと思います。 逆に言うと一気に読むと印象が薄いかも。 朗読会という設定で色々な人がそれぞれ違う体験をしている、という月並みな言い方をすれば「十人十色」がこの作品の特徴なのかなと思います。 各章ごとに内容のテイストがまったく違うので、短編集と思わずゆっくり読んでみるのがいいのかもしれません。 | ||||
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何度も読み返している大好きな本です。音読しています。電子版も購入しました。 | ||||
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読みたい時に届く感じですね 早く届いたのでいっきに読ませてもらいました | ||||
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心深く染み込んでいく物語。 いつもの不思議な世界ではなくリアルな現実。 だけど、何故かメルヘン的な感じもします。 地味ですがDVDも出ています。 原作のイメージをよく伝えていますから、ぜひご覧になってください。 お勧めです。 | ||||
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ひとつひとつのお話は、日常に寄り添うような良い意味で普通のお話だと思います。 (もちろん短編小説としてきちんと面白い。 )それが、全体の設定、どんな状況で語られたのか、でまた色を変える。 それを知らずに読んだら、自分はどう感じただろうか。 そんなことも考えさせられる本でした。 | ||||
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一つ一つの話に引き込まれました。それぞれが、ささやかだけどその人を支え励ましてくれた1つの物語なのだと分かります。そのはなしを聞いている人質達は話し手の人生を暖かく受けとめながら聞いていたのです。「未来がどうであろうと決して損なわれない過去」を慈しみあう時間が流れていたのでしょう。それは、彼らの遺体が「ひったり体を寄せ合っていた」事からも伺えます。 1つの物語を読み終わると暖かい思いに満たされました。でも、文末にある( でこの人がその後どのような人生を送り最後にはハイジャック犯に殺されてしまったことが確認され、とても切ない気持ちになりました。でも不思議なことですが、その物語がこの人をきっと支えていたんだなと思うことで、読み手側が慰められた感じもしました。 良い物語を書いて下さった小川洋子さんに感謝です。 | ||||
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8+1=9人の体験談。興味深いがそう大した物語でもない。ところがどのエピソードも痛切に胸に響く。小川洋子はあるプロジェクトに触発されてそんな小説をものにした。見事な腕前である。 そのプロジェクトとは私の大好きな米作家ポール・オースターの「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」。ラジオ番組を持たされてネタに困ったオースターが妻シリの助言を受けて、リスナーから本当にあった面白い話を募ったところ、予想外の膨大な投書が寄せられたところから始まった企画で、もちろん本になり邦訳もされ新潮文庫に収められている。 市井の名も無き人々が語ったのは、奇跡的な再会や驚くべき偶然、笑えるヘマ、思わぬ死との接近遭遇等々、まさしく「事実は小説より奇なり」を絵に描いた様な体験談であった。 これを小川洋子はある地球の裏側の国で起こった誘拐事件に巻き込まれたツアー客七人とツアーガイドが、拘束された生活の中で自らの体験談を語る朗読会という形に置き換え、それを盗聴していた政府軍兵士のインタビューを加えた九つの物語で構成される実験的小説に転化してみせた。 どの体験談もセンス・オブ・ワンダーに満ちているし、もちろん素人の投書とは段違いの質の高い文章である。特に「B談話室」「冬眠中のヤマネ」「コンソメスープの名人」などは単独でも優れた掌の小説と思える。「死んだおばあさん」に関する政府軍兵士の一言もスパイスが効いている。 しかし「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」に優劣など無かったように、この小説のどのエピソードにも優劣など無い。朗読会が行われた環境と彼らの運命という通奏低音がそれぞれの語り口に実に深い陰影を与えているからだ。 政府軍兵士の「(ハキリアリが)自分が背負うべき供物を、定められた一点へと運ぶ。そのようにして人質は、自分たちの物語を朗読した」という最後の一文が痛切に胸を打つ。 | ||||
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この本に限らないが小川洋子の小説は主人公の視点が狭い。 悪い意味ではない。 主人公と登場人物の関係や組織のどの立場にいるのかなどあえてぼかしている。 その代り、主人公はものの見方、考え方が独特でそこに焦点を当て、話しを展開させている。 子供の視点に似ていると思う。 | ||||
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小川の作品はあんまり読まないけど、これは心に響くの一冊です。特にB談話室が気に入ります。 | ||||
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一つ一つの朗読に引き込まれます。小川洋子の一つ一つの言葉が響きます。 | ||||
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死に一番近づいた人々が、生について語り合う。 重いテーマをたんたんと語る文体が印象的。 一見軽く扱われたかに見える命の一つ一つに重みや、奥行きがあることに気づかされ、 だからこそ、これを読むことにより、一つ一つのいのちを慈しむことを教えてくれる稀有な作品 いろんな事をこの作品を通して感じて欲しい | ||||
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非常に高い技巧的構成で作者の持ち味と小説の醍醐味とを堪能出来る短篇集。海外でテロリストのために人質となり、結果として爆死した8名の日本人が、人質期間中に順番に朗読を行なったものを文字に起こしたという体裁の物語。最後に総括的な短編が付いている。人質という立場は勿論だが、3.11を意識したものなのだろうか、全編に"死"のイメージが漂っており、題名の「人質の朗読会」を「死者の回想譚集」と読み換えても差支えない。死者の入れ子構造である。また、この構成は漱石「夢十夜」をも意識したものだろう。 私は作者の短編「巨人の接待」を読んで、その不条理性に驚嘆したものだが、本短篇集にもその不条理性と幻想性とが玄妙に混淆している。それでいて、読んでいてある種の郷愁を感じさせるのは、死者(及び死者に対する記憶)への哀悼の意が溢れているからだと思う。更に、人は誰しも語るべき物語がある事を穏やかに主張している様でもある。また、ある短編が本作の成立過程の説明になっている辺り、本作の幾重もの重層構造を改めて感じさせ、本当に巧緻な創りになっている事をシミジミと実感した。 本筋とはやや外れるが、"モノづくり"や数理に対する作者の拘りの姿勢が各編から窺え、これまた楽しい。不条理な"死"に見舞われた人々に対して、静謐かつユーモラスな不条理小説で応える。作者の近年の充実振りを十二分に示した秀作だと思った。 | ||||
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それぞれの語り手と、同じ体験をしてるような もしくはそれを見てるような、 そんな気持ちになりました。 ほのぼのとした、というような。 このひとたちが置かれてる立場を 忘れてしまうような。 | ||||
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というかWOWOW ドラマを知り、急いで原作を読みました。一つ一つの話にその人の世界があり、大変おもしろかったです。 しかしWOWOWドラマがまた優れていました。原作の風景や音、感覚までも、より豊かに表現されていました。 普通はの原作の持つ重み、深みに映画やドラマは届かず、がっかりすることが多いのですが、今回は違いました。 ぜひ原作を読み、ドラマを見ることをおすすめします。 | ||||
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ゲリラに人質に取られると言う、非常に特殊なシュチュエーションです。 でも、そこに書かれているのは、そうした非日常的なことではありません。 そうではなくて、誰にでも「小説」があると言う事です。 どんな人でも一つくらいは「物語」を持っており、そのことがその人の人生に大きな意味を持っていると言うことです。 この小説を読んでいると、その一つ一つの小さなその人にとっての大切な「話」が、実に心地よく胸に響いてきます。 決して、それらは明るい話ばかりではないし、取り止めのない話もあります。 それらは、私にはファンタスティックな雰囲気の中に、人生の深淵を見せてくれている様に思えます。 私にとって、素晴らしい「出会い」だったような気がします。 | ||||
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小川洋子はかえりみられないひとびとをすくいあげて慈しむのが本当にうまい。 やまびこビスケットの吝嗇大家しかり冬眠中のヤマネのぬいぐるみ売りの老人しかり、世間から奇人変人、または厄介者と見なされ忌避され疎外され忘れ去られてる人物と語り手のぎこちない交流を通し、淡く浮かび上がってくるやさしさと哀れみがしみじみしみいる。 そしてこの小説の語り部たちも「忘れられた人々」である。 大前提として、話の開始地点で語り手となる人質は全員死亡しており、どうあってもその事実は覆せない。 しかし彼等一人一人が語る話に理不尽な事件の渦中の悲壮感や絶望感はない。 個々の挿話は特別劇的ではない、日常に紛れこんだささやかな非日常を取り扱ってはいても日常の大枠からは脱してはおらず、どこにでもいるありふれた人たちのささやかな人生の切片、ゴールも間近、遠く離れてから振り返る通過点にスポットライトをあてたともいえる。 作中の引用「未来がどうあれど過去は決して損なわれない」。 この言葉は従来消極的な意味で使われる。 「決して変えられない、動かせない」 この繰り返しは盤石の重責を帯びた不可避の悲劇の象徴となる。 でも作者はあえて「損なわれない」と表現する。 損なわれないのは何か? 希望である。 閉塞した現在、不可視の、理不尽に断ち切られるであろう不安を秘めた未来。 その時、記憶の中でけっして損なわれず光り続ける過去は救いになる。 声と音を吹きこまれ語り継がれる事によって、彼等の記憶の中に埋もれていた事柄、喪われていた人やものが生き直すことができる。 これを希望と呼ばずなんと呼ぶ? 八人の人質が寄り集まった朗読会。それぞれのトーンで語られるそれぞれの人生の挿話。 のちに人生を方向付ける出会い、秘密めく忘れがたい思い出、束の間のふれあいがもたらした尊いモノ。 世界を創造する鉄工所の火花、机の上に並べられたおちこぼれのアルファベット、縫い目にそって涙がしみた布、片目だけの奇形のぬいぐるみ、カップの中の澄んだスープ、バッティングセンターに響く快音、手に余る花束、地面を這うハキリアリの行列。 その時こそ取るに足らないと見落とされていたものは録るに足るもの、他愛ないと軽んじられていたものは他者の愛に足るものとして、ろうそくの灯が瞬く廃屋の暗闇でひそやかに息を吹き返すのだ。 だからこれは悲劇ではない。 語り継がれる事によって語り接がれた希望の話である。。 | ||||
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短編集のデメリットは一冊に収められた作品のなかに、どうしても出来不出来や好き嫌いが出てしまうことではないだろうか。この『人質の朗読会』に収められた9篇についても同じことが言えて、すべての作品が最上の傑作だとは言いかねるかもしれない。しかしながら、異国の地で人質になった8人の朗読会(+1篇)を描いたこの作品集は、連作という形を取ることによって、個々の評価よりも全体を俯瞰することが常に要求されるために、通常の短編集に与えられる評価軸を巧みに回避することに成功しているのではないか。作品のテーマは、文中にある「未来がどうあろうと決して損なわれない過去」という一節がよく表していると思う。本書のイントロダクションを読めば分かるように8人に未来はないのだが、彼らがどう死んだかということよりも、どう生きたのかということに作者の眼差しは注がれる。それはメディアが扱う、記号や数字のようになりがちな「死」によって隠されてしまう、個々の「生」の匿名性とは対極にあるものだと言える。 | ||||
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