博士の愛した数式

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博士の愛した数式の評価:

4.32/5点 レビュー 849件。 A ランク

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平均点4.32pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1,769件 941〜960 48/89ページ
No.829
(4pt)

平坦な温かさ

激情を描いた本が多い中で優しい愛情を奇妙な設定の中で描いている。物語そのものは山もなく谷もなく淡々とした感じだ。物足りなさを感じてしまうくらいで前評判の良さが邪魔になったりもする。記憶障害の数学者と母子家庭の母と息子。記憶障害の老いた数学者を気遣うために色々な嘘をつき続ける事が出来た若干10歳の息子はとても立派だった。物分りが良すぎるような気もしたが、あんな風に育つ子供ばかりだったなら・・・と有り得ない事を想像したくなる。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.828
(4pt)

平坦な温かさ

激情を描いた本が多い中で優しい愛情を奇妙な設定の中で描いている。物語そのものは山もなく谷もなく淡々とした感じだ。物足りなさを感じてしまうくらいで前評判の良さが邪魔になったりもする。記憶障害の数学者と母子家庭の母と息子。記憶障害の老いた数学者を気遣うために色々な嘘をつき続ける事が出来た若干10歳の息子はとても立派だった。物分りが良すぎるような気もしたが、あんな風に育つ子供ばかりだったなら・・・と有り得ない事を想像したくなる。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.827
(4pt)

それから博士の切なかった恋も。

私は朝起きるのが苦手だ。それがたとえ朝の6時であっても昼の11時であっても。ひたすら、まだベッドの上に寝そべって毛布にくるまっていたい。ただ純粋に眠っていたいだけ。毎日がつらいわけでもなんでもない。でも、もし、もしも朝起きて、毎朝毎朝自分の記憶は80分しか もたない、なんてことを突きつけられるとしたら、どうだろう?むろん、記憶が80分しかもたないこの博士は、 その事実自体をも、覚えられはしないのだが。博士と博士をとりまく人々のやりとりや人間模様はある程度先が読めてしまった。が、博士の数式を慈しむような言葉には意地悪な考え無しに、素直に耳を傾けたくなる。この80分しか記憶がもたない博士と、博士の存在に懸命に何かを見出そうとする母子の心優しい様子を静かに見守ろう。それから博士の切なかった恋も。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.826
(4pt)

それから博士の切なかった恋も。

私は朝起きるのが苦手だ。それがたとえ朝の6時であっても昼の11時であっても。ひたすら、まだベッドの上に寝そべって毛布にくるまっていたい。ただ純粋に眠っていたいだけ。毎日がつらいわけでもなんでもない。でも、もし、もしも朝起きて、毎朝毎朝自分の記憶は80分しか もたない、なんてことを突きつけられるとしたら、どうだろう?むろん、記憶が80分しかもたないこの博士は、 その事実自体をも、覚えられはしないのだが。博士と博士をとりまく人々のやりとりや人間模様はある程度先が読めてしまった。が、博士の数式を慈しむような言葉には意地悪な考え無しに、素直に耳を傾けたくなる。この80分しか記憶がもたない博士と、博士の存在に懸命に何かを見出そうとする母子の心優しい様子を静かに見守ろう。それから博士の切なかった恋も。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.825
(4pt)

ゆっくりしたペースで読める本

80分しか記憶がもたない博士と、家政婦とその子供の柔らかいお話でした。それだけしか記憶がもたないから、毎日通っても毎回「はじめまして」を経験します。その奇妙な関係。それでも尚、築いていく信頼関係がうまく描写されていたように思います。話の中に数学的見解があり、それが平坦に進んでいる話に重みを増してくれている感じです。ダビンチコードのように、難しい論理ではないので理解できますし、それがなんだか博士を際立たせている様でした。家政婦の子供ルートがとても優しい男の子で、心があったかくなりました。ただ、博士が毎朝経験する「記憶が80分しかもたない」という現実への直面に、胸が痛くなるのも事実。想像すると悲しいですよね。毎日病気の告知を受けているのと同じですから、毎日ショックを受けます。そんな3人を、ゆっくりと読みすすめることができる本でした。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.824
(4pt)

ゆっくりしたペースで読める本

80分しか記憶がもたない博士と、家政婦とその子供の柔らかいお話でした。それだけしか記憶がもたないから、毎日通っても毎回「はじめまして」を経験します。その奇妙な関係。それでも尚、築いていく信頼関係がうまく描写されていたように思います。話の中に数学的見解があり、それが平坦に進んでいる話に重みを増してくれている感じです。ダビンチコードのように、難しい論理ではないので理解できますし、それがなんだか博士を際立たせている様でした。家政婦の子供ルートがとても優しい男の子で、心があったかくなりました。ただ、博士が毎朝経験する「記憶が80分しかもたない」という現実への直面に、胸が痛くなるのも事実。想像すると悲しいですよね。毎日病気の告知を受けているのと同じですから、毎日ショックを受けます。そんな3人を、ゆっくりと読みすすめることができる本でした。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.823
(5pt)

リセット

やっぱり博士が一番好きですよね。 たった80分しか記憶が保たないという状況の中で、博士は好きな数学をやっぱり解き続けているんですから。自分でも記憶が保たないことを判っていても、ただひたすらに。賞金が出ているような難しい数式を解いても、特に何か気にした風でもなく、ただ淡々と。 また、ルートと主人公が、博士のために一生懸命野球選手のカードを探す場面も、いじらしくて好きです。……「いじらしい」って、不適当ですかね。 最後でルートが数学の先生になるんだ、と博士に報告した場面は、私の中で一番印象強い部分です。80分でいわば人生がリセットしている博士だけど、そんな彼でも、彼を取り巻く人に影響を与えることはできる。そしてそれは、つまりは博士自身のリセットをリセットでなくしていると思うのです。 博士本人が覚えていなくても、博士がいたことで、ルートは数学の先生になろうと決めた。 そして博士は、ルートたちが探した野球選手のカードを、ずっと首から提げていた。 何がリセットで何がリセットでないのか。 博士を取り巻く人々(主人公であり、ルートであり、義姉である)の温かみ。 この小説は、それらを私に感じ取らせました。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.822
(5pt)

リセット

やっぱり博士が一番好きですよね。 たった80分しか記憶が保たないという状況の中で、博士は好きな数学をやっぱり解き続けているんですから。自分でも記憶が保たないことを判っていても、ただひたすらに。賞金が出ているような難しい数式を解いても、特に何か気にした風でもなく、ただ淡々と。 また、ルートと主人公が、博士のために一生懸命野球選手のカードを探す場面も、いじらしくて好きです。……「いじらしい」って、不適当ですかね。 最後でルートが数学の先生になるんだ、と博士に報告した場面は、私の中で一番印象強い部分です。80分でいわば人生がリセットしている博士だけど、そんな彼でも、彼を取り巻く人に影響を与えることはできる。そしてそれは、つまりは博士自身のリセットをリセットでなくしていると思うのです。 博士本人が覚えていなくても、博士がいたことで、ルートは数学の先生になろうと決めた。 そして博士は、ルートたちが探した野球選手のカードを、ずっと首から提げていた。 何がリセットで何がリセットでないのか。 博士を取り巻く人々(主人公であり、ルートであり、義姉である)の温かみ。 この小説は、それらを私に感じ取らせました。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.821
(5pt)

この博士は健忘症ではあるが、認知症ではない。

精神科医 小沢勲は 日本の医療界の良心。 かれは自己の『認知症とは何か』(岩波新書)で小川洋子の作品を次のように評価した。「認知症とは、病態失認である」 38頁から42頁にかけて、小川洋子の『博士の愛する数式』を具体的に取り上げて語ってくれる。「この博士は健忘症ではあるが、認知症ではない。」 「では、なにが物忘れを認知症の記憶障害にするのであろうか。それは記憶障害事態に特異なパターンがあるというより、彼らの記憶障害に対する態度でもいうべき「何か」であろう。認知症には自らの記憶障害に対する防衛策を講じないと、うまく暮らしていかないという認識が抜け落ちてしまうのである」 この核心をついた見方。さすが、小沢勲である。 私は、この小説が、映画になり世界中の人間を 心優しくしたことをしっている。同時に、博士は「認知症」ではないと小沢は言い切る。これだけ すごい小説であることを 知ってもらいたいのである。では、「認知症とは何か」。これは小沢の書物を読まないと...
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.820
(5pt)

この博士は健忘症ではあるが、認知症ではない。

精神科医 小沢勲は 日本の医療界の良心。 かれは自己の『認知症とは何か』(岩波新書)で小川洋子の作品を次のように評価した。「認知症とは、病態失認である」 38頁から42頁にかけて、小川洋子の『博士の愛する数式』を具体的に取り上げて語ってくれる。「この博士は健忘症ではあるが、認知症ではない。」 「では、なにが物忘れを認知症の記憶障害にするのであろうか。それは記憶障害事態に特異なパターンがあるというより、彼らの記憶障害に対する態度でもいうべき「何か」であろう。認知症には自らの記憶障害に対する防衛策を講じないと、うまく暮らしていかないという認識が抜け落ちてしまうのである」 この核心をついた見方。さすが、小沢勲である。 私は、この小説が、映画になり世界中の人間を 心優しくしたことをしっている。同時に、博士は「認知症」ではないと小沢は言い切る。これだけ すごい小説であることを 知ってもらいたいのである。では、「認知症とは何か」。これは小沢の書物を読まないと...
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.819
(4pt)

数学の美しさを知る一冊

今までの人生で数式(数学)が美しいと感じたことがあるでしょうか?おそらく、多くの人は数式に美しさを感じたことなど無いでしょう。それどころか、数式を見るのもウンザリという人が多いのではないだろうか?おそらく、それなりに数学に精通していない限り、数式を見て、美しいなどと感じることはないことでしょう。しかし、本書からならば、数学嫌いな人でも、「数学の美しさ」や「数学の神秘さ」を感じ取れるのではないだろうか?物語の中で、博士が数字の神秘を語るくだりは、つい引き込まれてしまいます。「この本を中学生の頃くらいに読んでいたら、もっと数学を勉強していたかもなぁ〜」なんて思いました。お勧めの一冊です。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.818
(4pt)

数学の美しさを知る一冊

今までの人生で数式(数学)が美しいと感じたことがあるでしょうか?おそらく、多くの人は数式に美しさを感じたことなど無いでしょう。それどころか、数式を見るのもウンザリという人が多いのではないだろうか?おそらく、それなりに数学に精通していない限り、数式を見て、美しいなどと感じることはないことでしょう。しかし、本書からならば、数学嫌いな人でも、「数学の美しさ」や「数学の神秘さ」を感じ取れるのではないだろうか?物語の中で、博士が数字の神秘を語るくだりは、つい引き込まれてしまいます。「この本を中学生の頃くらいに読んでいたら、もっと数学を勉強していたかもなぁ〜」なんて思いました。お勧めの一冊です。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.817
(5pt)

違った気持ちで「数式」を見れる

大げさな展開などなにも無いのだけど、静かに家政婦と雇い主という関係が始まり、子供がかかわり、ところどころに事件があり、静かに話が進められていて、終わりも暖かな余韻とともに静かに終わっている。 なんか、登場人物がとてもリアルでユニーク。そして彼らの交流がほんわかしてて、そこがじわじわじわじわと胸にくる。 数式って、こんなに興味深いものだったっけ?と、どこか昔に学校で習ったことのある定理を違った気持ちで読んでいた。 無味乾燥な数学が、とても面白くドラマティックに思えてくるのは著者の筆力の賜物ではないかな。 誰かに大切にされるって、こんなに素敵なことだったんだね、って改めて思う。静かに泣ける1冊です。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.816
(5pt)

違った気持ちで「数式」を見れる

大げさな展開などなにも無いのだけど、静かに家政婦と雇い主という関係が始まり、子供がかかわり、ところどころに事件があり、静かに話が進められていて、終わりも暖かな余韻とともに静かに終わっている。 なんか、登場人物がとてもリアルでユニーク。そして彼らの交流がほんわかしてて、そこがじわじわじわじわと胸にくる。 数式って、こんなに興味深いものだったっけ?と、どこか昔に学校で習ったことのある定理を違った気持ちで読んでいた。 無味乾燥な数学が、とても面白くドラマティックに思えてくるのは著者の筆力の賜物ではないかな。 誰かに大切にされるって、こんなに素敵なことだったんだね、って改めて思う。静かに泣ける1冊です。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.815
(4pt)

静かに時間が流れる中で

朝目覚めると、身体に貼り付けたメモから「自分が80分間の記憶しか持てない」ことを知らされて博士の一日は始まる。 自分自身を縁取るバックボーンを、何一つ認識できない心細さとは如何なるものだろう。 私たちは、所属する団体や会社、学歴、資格、人脈、過去の実績など自身を取り巻く多くの「後ろ盾」によって相対的評価されることに慣れている。 ところが、ここに登場する博士は、今この瞬間に生きる自我のみが絶対的唯一の存在価値であり、それ以上でもそれ以下でもない。 数学者である博士自身が、「全体との相対的比率を問題としない、絶対的な数値」を言う『絶対数』を体現しているようだが、しかし博士が最も愛する絶対数『素数』に「1」はあてはまらない。 「絶対数」的博士も、独りではその存在に光は当たらない。博士を取り巻く「私」や「ルート」、「未亡人」などの人々が居て初めて博士たり得る、つまりは『素数』の人なのではないだろうか。 文中、「静けさ」を 「あるべきものがあるべき場所に納まり、昔からずっと変わらずそうであったかのような、そしてこれからも永遠にそうであり続ける確信に満ちた状態」と表現する言葉が美しい。 「ああ、静かだ」 一日の終わりには、こうつぶやきたいものです。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.814
(4pt)

静かに時間が流れる中で

朝目覚めると、身体に貼り付けたメモから「自分が80分間の記憶しか持てない」ことを知らされて博士の一日は始まる。 自分自身を縁取るバックボーンを、何一つ認識できない心細さとは如何なるものだろう。 私たちは、所属する団体や会社、学歴、資格、人脈、過去の実績など自身を取り巻く多くの「後ろ盾」によって相対的評価されることに慣れている。 ところが、ここに登場する博士は、今この瞬間に生きる自我のみが絶対的唯一の存在価値であり、それ以上でもそれ以下でもない。 数学者である博士自身が、「全体との相対的比率を問題としない、絶対的な数値」を言う『絶対数』を体現しているようだが、しかし博士が最も愛する絶対数『素数』に「1」はあてはまらない。 「絶対数」的博士も、独りではその存在に光は当たらない。博士を取り巻く「私」や「ルート」、「未亡人」などの人々が居て初めて博士たり得る、つまりは『素数』の人なのではないだろうか。 文中、「静けさ」を 「あるべきものがあるべき場所に納まり、昔からずっと変わらずそうであったかのような、そしてこれからも永遠にそうであり続ける確信に満ちた状態」と表現する言葉が美しい。 「ああ、静かだ」 一日の終わりには、こうつぶやきたいものです。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.813
(5pt)

数学を文学として表現した見事な作品

久々にいい本に出会えました。数学を文学として表現した見事な作品です。友愛数や完全数のくだりなどは、数字の美しさに思わず惚れ惚れです。博士と家政婦の私、そして息子のルートの3人の間の愛情が満ち溢れている、なんともいえないほのぼのとした感じがいいんです。本書を読み終わった後、映画も見ました。映画化されるとイマイチという作品が多い中、「博士の愛した数式」に限ってはイメージ通りでした。子役のルートが良かったですね。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.812
(5pt)

数学を文学として表現した見事な作品

久々にいい本に出会えました。数学を文学として表現した見事な作品です。友愛数や完全数のくだりなどは、数字の美しさに思わず惚れ惚れです。博士と家政婦の私、そして息子のルートの3人の間の愛情が満ち溢れている、なんともいえないほのぼのとした感じがいいんです。本書を読み終わった後、映画も見ました。映画化されるとイマイチという作品が多い中、「博士の愛した数式」に限ってはイメージ通りでした。子役のルートが良かったですね。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.811
(4pt)

数式のように素っ気ない淡々とした物語。なのに、それは胸をうつ。

事故の後遺症で80分ごとに記憶がリセットされてしまう、数学の老「博士」。家政婦とその息子「ルート」。3人が繰り広げるのは、とてもとても静かな物語だ。判で押したように繰り返される同じような日々。退屈であるはずの物語が、鮮やかでかけがえのないものに感じられるのは、博士には、それが決して「昨日と同じ今日」になりえないからだ。朝の目覚め、ルーティンワーク、お手伝いさんを迎えること、ルートの頭をなでること、三人で晩ご飯を食べること・・・。80分しか記憶のもたない博士は、一瞬一瞬を、どんな気持ちで生きているのだろう。静かな、静かな生活であるからこそ、それは心に沁みる。けれど「昨日と同じ今日」を持たないのは、私たちであっても同じなのだ。「今」の大切さを、博士は何も語らずとも、冗舌に語る。お手伝いさん母子と博士が、数学と野球を通して(この二つの要素がまた、ユーモアとペーソスがあってすごくいいと思う)心を通わせていく様は、ほほえましく、温かい。なのに、どんなに心を交感しても「覚えられない」「覚えてもらえない」というせつなさ。そして彼らと両極にある、もう一人の登場人物・未亡人の「決して忘れられることのない」呪縛のような思い。人が人を思うことの、やるせなさといとおしさが、淡々と描かれている。ただの数字の羅列が、実は強烈な意味を持つように、何てことのないエピソードのひとつひとつが、深く強く、心をうつ。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.810
(4pt)

数式のように素っ気ない淡々とした物語。なのに、それは胸をうつ。

事故の後遺症で80分ごとに記憶がリセットされてしまう、数学の老「博士」。家政婦とその息子「ルート」。3人が繰り広げるのは、とてもとても静かな物語だ。判で押したように繰り返される同じような日々。退屈であるはずの物語が、鮮やかでかけがえのないものに感じられるのは、博士には、それが決して「昨日と同じ今日」になりえないからだ。朝の目覚め、ルーティンワーク、お手伝いさんを迎えること、ルートの頭をなでること、三人で晩ご飯を食べること・・・。80分しか記憶のもたない博士は、一瞬一瞬を、どんな気持ちで生きているのだろう。静かな、静かな生活であるからこそ、それは心に沁みる。けれど「昨日と同じ今日」を持たないのは、私たちであっても同じなのだ。「今」の大切さを、博士は何も語らずとも、冗舌に語る。お手伝いさん母子と博士が、数学と野球を通して(この二つの要素がまた、ユーモアとペーソスがあってすごくいいと思う)心を通わせていく様は、ほほえましく、温かい。なのに、どんなに心を交感しても「覚えられない」「覚えてもらえない」というせつなさ。そして彼らと両極にある、もう一人の登場人物・未亡人の「決して忘れられることのない」呪縛のような思い。人が人を思うことの、やるせなさといとおしさが、淡々と描かれている。ただの数字の羅列が、実は強烈な意味を持つように、何てことのないエピソードのひとつひとつが、深く強く、心をうつ。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X