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無情の世界
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無情の世界の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.16pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全14件 1~14 1/1ページ
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トライアングルズについては、確か芥川賞の選考会でここに書いてあるのはロボットであって人間じゃないとか、ボロクソに言われたんだよなあ。でも、それこそ作者の狙いでは?と思ったが。 ストーカーである先生の教え子である語り手もまたストーカーと化してしまうところとか、色々あるが、基本的には神話的な枠組みで進んでいく小説だと思う だから、近代文学的な意味での心や人間は描かれない。 それがロボットに見える、ということだろう。まあ、ロボットではないのだが。 人間のロボット性みたいなものだろう。 人間とは理知的で、優しく、真心があって、少し愚かだけれど、憎めないんだよなあ、なんて価値観の人からすれば、 この作品集に描かれた人間たちのなんと不気味なことか。 それを思うと笑ってしまう。 それと、やはりこの文学性の剥ぎ取られた完璧な文体、作者の大きな魅力の一つだと思う。 いわゆる文学臭さがない。 日本近代文学臭さ、というやつが。 ポップとも違うのだが、当時はJ文学などと言われていた。 20年程度経つが、再読しても、古びていないし、物語の見事さは十分に感じられた。 | ||||
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テイストは、好きなipの形式に近いです。 結局はなにやらかにやらわからない、ドグラマグラなとこも、かなり計算されていて、好きです。シンセミアは、その、表裏のか細い世界が、完全に、在りもの、と、なってしまい、この頃の、寄る辺無さの方が、なんか切なくて好きです。 短編で成り立っていて、最初の割に長い話が、主客がはっきりせず、 どういうことか分からないままに展開するのですが、 細部まで、そのやり方を計算し、効果を出そうとしているのは、小説ならではで、 どうも映像化しようもなく(ただの共感不能なヒステリック犯罪映画にしかならない)とても、文章の力を感じました。 | ||||
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阿部和重さんの初期の頃の作品は、とっても饒舌である。この饒舌さは、深さとともに広がりをともなってがいるゆえに、ストーリーを追うのが難しくししまっているように思う。 『無情の世界』は、そんな中でもわかりやすい短編集である。『インディヴィジュアル・プロジェクション』や、『アメリカの夜』、『ニッポニア・ニッポン』のようにアイデンティティーの問題といった明確なテーマを見出すことはできない。収録されている三作品に通底しているものを探し出すとするなら、鬱屈した暴力の発露となるだろうか(無理やりの解釈だけれども)。 ■トライアングルズ 父親の不倫相手へ宛てた小学六年生の少年の手紙という体裁の作品である。彼女へ恋をした少年の家庭教師の行状がつづられていく(彼女へ恋をしたがゆえに、少年の家庭教師にもぐりこんだわけだが)。少年の家庭教師への同情的な視線から、家庭教師のストーカー行動が明らかになっていくのだが、家庭教師のへ理屈とも言うべき饒舌さが少年というフィルターを通して可笑しみに変換される。ラストの修羅場はなかなか衝撃的である。 ■無情の世界 高校生が深夜の公園で見かけた露出マニアの女性。欲情をもよおし近寄ってみると、なんと、死体だった というお話し。高校生の内省的な世界に油断していたら、ちゃんととオチがついていた。 ■鏖 不倫関係を楽しむオオタツユキが、ファミレスで同席した中年男。男が見ていたテレビモニタには、不倫中の妻が写し出されていた。不甲斐ない男に、噛み付くオオタ。男はオオタに自身のテレビモニタを預けて、姿を消してしまう。やがて、男が不倫をはたらく妻を間男を撲殺する姿がモニタに ・・・ これに、盗みで窮地に陥っているオオタとオオタの不倫相手とのゴタゴタが絡み合って、奇妙な物語が展開される。錯綜していながらスピート感がありすっきりとまとまっている。本短編集ではいちばん読み応えがある作品だ。 | ||||
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本書は芥川賞作家阿部和重の中編小説三篇が収められている。少年が自分の父 親の愛人に向けて、彼女を愛した狂気の男の顛末を綴った手紙の体裁をとる「トライ アングルス」、押さえがたき性欲をはらすために深夜の公園に忍び込んだ少年が巻 き込まれる異常な事態とそれと父親の関係がほのめかされる「無情の世界」、バイト 先の売り物の時計をくすねた男がたちよったファミレスで巻き込まれる狂気の現場を 活写する「鏖」の三篇。 阿部作品ではもはやお馴染みといえる手記の体裁をとる冒頭「トライアングルス」は、 紙面には描かれない欄外を思い浮かべながら読むことを強いられる、すこし変わった 小説だ。本来ならこの手紙を読むことになるのは男に付きまとわれていた女性であり、 これを彼女が読んでいるのだと想像しながら読むと、阿部和重特有のとうとうと記述し ていく文体とあいまって途端に面白おかしくなってくる仕掛けになっている。相手に対 するバカ丁寧さが逆に失礼になるというのがよくわかる。 ラストを飾る「鏖」はその名の通り血なまぐさい小説。卑俗で利己主義的な青年が織り なす序盤の逃走劇から、終盤の血みどろの場面まで、結局この小説がどの方向に行 こうとしているのかよくわからないことそのものが、読み手の不安を催す小説だ。正義 はなにか。善く生きるとは何か。そんな問いが放り出された、背骨の通っていない時代 の浮遊感、不安定感を絶妙に切り取った作品群。 | ||||
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が半端ではない! 鏖(みなごろし)は三人称で書かれており、 基本的には主人公オオタの視点なのですが、 絶妙なタイミングでカチっ!と視点が変わります。 小説においてのカメラの視点なんて ホントはどうだっていいことなんでしょうけどね。 でもそのこだわりが阿部自身の最高傑作と謳われるシンセミアを産んだのだから やっぱり物事にこだわるってとってもいいことです。 ちなみに小説の中身自体もホントに馬鹿げていて最高です! | ||||
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野間文芸新人賞受賞作品。 やはり阿部ちゃんはただ者ではないと実感。 今まで読んだ阿部作品の中で最高傑作かもしれない。 阿部和重の文章と言うのは現代小説から欠かすことの出来ない「比喩」を徹底的に(意図的に?)排除している。 それはとても新しいし、現在他にそんな作家はいない。と思う。 この点、天才的な比喩を駆使する村上春樹とは対極の位置にいる作家と言える。 『トライアングルズ』 『無情の世界』 『鏖(みなごろし)』 の三篇が収録されているが、どれも良い。 とくに『鏖(みなごろし)』は一気読み間違いなし。 とにかく普通じゃないけど、面白い。 「のび太は放っておけ!あいつには構うな」 | ||||
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阿部和重さんの本はこれが初めてである。この小説は、小説と思えないほど文字数が多く、また一話簡潔で合計三話収録されているのだが、どの作品も非常にスピード感とドライヴ感が溢れているためあっという間に読めてしまう。 特徴としては、登場人物は必要最低限の人数、そしてその人間一人一人にはきちんと背景が与えられており、かつ場面・情景がこと細かに描写されているため映像がありありと想像でき、あたかもその小説の世界に実際居合わせているかのような臨場感を保ったまま読める。またどの話もテーマが快楽殺人やらストーカー、万引きなど現代の問題ともマッチしている上、主人公が若いので、そのぶん年の近い僕は緊張感を持って読むことができた。 ただ、物語は予測不能なようにコロコロと思いがけない展開をするのに、終わり方はあまりに歯切れがよいため、読んだあと「あれ、もう終わり?」となってしまう。あんまりにもすっきりと終わりすぎるので、読者側の推量の働く余地なしになってしまうのが惜しい。筆者の展開に否応なくついていかされる感じだ。 | ||||
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阿部和重の作品に触れたのはこれが初めて。本書は三つの物語で一つの世界が構成されている。私は本書から「狂気、暴力によって惹き起こされる悲劇の連鎖を食い止めるものとは何であるのか。そして今それが失われているのではないか」というメタ・メッセージを読み取った。 最初の「トライアングルズ」では自らの狂気を自覚し、その狂気を自身へと折り返すことで悲劇の連鎖を断ち切ろうとする「先生」が描かれる。「先生」によって世界は一時的であれ救われる。二番目の「無情の世界」では連鎖の渦に今まさに巻き込まれようとしている少年が、抵抗する術をネットに求めている。ここでは世界は救われるかもしれないし救われないかもしれないという曖昧さが残るが、最後の「鏖(みなごろし)」では、すべての人が連鎖に巻き込まれ、なすがままであり、世界の破滅は確実な状況へと追い込まれる。すべてを他人のせいにして自らを省みることのない自己中心的な人間が溢れかえっている現代を象徴している。 | ||||
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時々こんな小説に出会うことが出来る。何も知識もないまま本屋でそれに触れて、出会った本が逆にその小説家の名前を僕の胸に刻んだり。 この本はそんな本の一つだ。 著名だった作者を知らなかった僕がこの業界に疎いのは問題だが、運よく、この小説と出会えて良かったと思う。確かにこの本の内容は人によって好き嫌いはあるかもしれない。しかし、このような真っ暗な世界は僕は好きでたまらない。なぜなら、真っ暗な世界でこそ、煌きがより一層生えるのだから。 | ||||
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野間文芸新人賞受賞作。 とにかく読んでいて面白い。リアリティが崩壊した現代社会、もう人々は愛とストーキングの区別もつかなくなり、子供はわけもなく傷つく。 自分が一番気になったのは表題作。 ショッキングな話です。最後の最後に明かされる秘密がまさしくショック。主人公は明らかに傷ついているが、その痛みを上手く痛みとして取り込めていない感がある。情けなさ100パーセントで、行間からそのみじめっぷりがひしひしと湧き出してくる。家族との触れ合いがあるがそれに頼ろうとしない。そして、困って困って助けを求める先がネットの住人たち。うーん、現代的じゃないですか。 | ||||
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阿部氏のパルプ的小説づくりの才が爆裂した感のある短編集。狂気と笑気が絶妙なバランスでブレンドされ、ラストへ向けて駆け抜けていきます。鏖(みなごろし)は、その映像が次々と浮かんできて、どうしようもなく楽しめました。 ほんっと悔しくなるぐらい!本当は、この作品で芥川賞をとってもらいたかったですよ。 | ||||
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お笑い芸人ですな、阿部ちゃんは。3編の短編すべてを通して狂気の匂いがする。そしてそこはかとなく漂ってくる笑いの感覚。不健康な笑いの後に暗い気持ちになるお笑い。息子に「ドラえもん」を全巻買い与えた父親が、「のび太には構うな、あいつのことは放っておけ!」と怒鳴るんですよ。変な小説ですよねえ。文庫の巻末の加藤典洋さんの解説が近年まれに見る駄文。 | ||||
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異様さが世界そのものになっている物語。怖いのは、冷静な記述が主人公たちの思考とシンクロするところ。主人公のなかでは、普通に思考しているのに、外からは異様なってしまうっていう・・・。でも一番何が異様かというと、こんなのを書いた作者ですね。 | ||||
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表題作「無情の世界」を含む三作品が収録させている。お勧めなのは、「鏖(みなごろし)」である。大馬鹿者が超レアな腕時計を万引きする。しかも命がけで。先の読めない展開が飽きさせない。読んでいると頭の中で映像が動き出す。 妄想万歳!アメリカ万歳! | ||||
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