ニッポニアニッポン
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初めて阿部和重の小説を読むという人にはこの作品を推すかもしれない。 「シンセミア」「ピストルズ」は長すぎるし、「インディヴィジュアル・プロジェクション」では堅すぎる。「グランド・フィナーレ」は最悪の選択肢。こうしてみるとやっぱり「ニッポニア・ニッポン」が入門書のように感じる。 推す理由としては、まず物語としてしっかり面白い、というのが一つある。 「自分の苗字に鴇という字があることからトキの存在に興味を持った主人公が、やがてそのトキを国家から解放するためにテロ計画を遂行する」 こんなにキャッチーなあらすじに、(そりゃ今でこそ形骸化してるけど)インターネット、引きこもり、ストーカー、なんてキーワードが付いて回る。 「ね、おもしろそうでしょ?」なんてテンションで知り合いに薦められそうな身なりだ。 で、作品に張り巡らされたテクニックもすごい。荒唐無稽なあらすじを小説としてまとめあげた文章もさることながら、まるでサイトのリンクを辿るみたいに飛び飛びで挿入される過去話や、唐突な場面転換など、至る所に物語の要素に連なる技巧が点在していて、ニクい。 惜しむらくは話そのものが意外と綺麗にまとまってるところ(もっと破天荒な展開があってもよかった。したらば少なくともこの主人公をもっと躍動させることができた)と、ラストはなんだかんだでいつもの阿部和重なところ。でもまあこういうオチはお家芸か。 三島賞取れなかったのは残念だけど、よりにもよってグランドフィナーレで芥川賞取っちゃう阿部和重だから、そこんとこも致し方なし。 | ||||
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ティーンの思春期、反抗期って考えていることと、実行できる事の差への苛立ちだと思う。その差をどう埋めるかが問題なわけで、それをテロによって埋めようとする心象は、大江健三郎の17歳に通じるテーマ。 | ||||
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さらにこじらせた主人公による、パラニューク的(あるいは「12モンキーズ」的)環境テロリズムの不幸な結合。 | ||||
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本作品の主人公 鴇谷春生(とうやはるお)は、自身の姓に含まれるトキへ並々ならぬ関心を抱いている。学校にもいかず、仕事もぜず、トキに関する様々な情報を調べ上げる日々を送っているのだ。春生がたどり着いたのは、トキの飼育、解放、密殺の三択。 本作品は、春生の、特別天然記念物トキをめぐる革命闘争の記録である。 同級生 本木桜をストーカーした挙句、故郷から追い出された春生は、なんら悪びれることもなく、親の仕送りで暮らしている。読み進めるうちに春生の人間性が伝わってくるのだが、なんとも苦い気分になる。春生の、ことごとく自己を正当化し、周囲のネガティヴな反応を一蹴する、歪んだプライドを感じてしまうのだ。トキのように、自分は特別な存在であるという意識が、沸々を湧き出てくるようだ。これが春生のアイデンティティ。 春生は、武装を整え、佐渡トキ保護センターへ。特別な存在のトキは、特別な存在の春生によって、自由になるべきだという発想だ。 春生は、佐渡へ向かう途中、瀬川文緒という中学生と出会う。文緒が、ただならぬ気配を察知したとき、春生は、文緒に桜を重ねて心情を吐露する。初めての魂の叫び声だ。 「俺はやっと、自分の使命がわかったんだよ。人生最大の目的をしっかり掴んだんだ。明日は絶対にそれをやらなきゃいけないんだよ。だからもう、俺を迷わせるのはやめてくれないか! ・・・」 どこかゲーム感覚であった春生の計画は、痛々しいまでの自己実現への希求だったことがわかる。春生の革命ははたして成就するのか。なんともやるせない幕切れなのだが、どうだろうか。 | ||||
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阿部は本作にて、三島由紀夫『金閣寺』の愚直なまでの反復をやってみせることで、鬱屈した若者の内面に迫る近代小説の可能性を実験したのだろうか。それとも村上春樹がリアリズムの訓練と嘯いて『ノルウェイの森』の執筆動機を語るように、技術上の要請として本作を書いたのだろうか。 中高生は誰もが通過する届かない思慕の念を溜め込んだあまり、ドス黒い鬱屈を天然記念物のニッポニアニッポンの殺害に転化してしまうという、いびつで苛烈なロマンティシズムの破綻。比喩表現を最小限に抑えた愚直で朴訥とした文章が、私たちのの些細な負の感情を鋭敏につかみとり、かっさらうようにして滅亡への道へ誘う。 | ||||
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