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ウランバーナの森



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ウランバーナの森の評価: 6.33/10点 レビュー 3件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.33pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(4pt)

コードギリギリだなぁ

ジョン・レノンが生前主夫生活を送るのに軽井沢に逗留していたのは有名な話だが、本書はジョンが軽井沢で送っていた4年間の逗留生活にスポットを当てたお話である。
ジョンが名作“ダブル・ファンタジー”の創作のきっかけを掴むまでに至る魂の逍遥とでも云おうか。

なお作中のジョンの妻の名前や曲名などが微妙に変えられている(作中ヨーコではなくケイコ)。この辺は大人の事情なのだろうが、実に座り心地の悪い読書を感じさせ、もどかしかった。

まず延々ジョンの便秘が解消されない問題が続くこと。排便シーンがいくつもあり、もしかしたらこんなにトイレで排便するのを語った小説はこれが初めてではないだろうか?
ジョンが便秘と格闘し、苦悶する姿は滑稽でありながら実に面白い。特に病院で与えられた特大浣腸の件は爆笑してしまった。

またそのシーンで挿入されるアビー・ロードスタジオでいつも排便していたことやコンサートで『I Feel Fine(作中ではI Feel So Fine)』演奏中に便意を催して青い顔で熱唱したなどのエピソードがあるが、果たして本当だろうか?

実はこの便秘がこの小説のキーだとは思わなかった。この便秘が解消されることがジョンの悔恨からの解放に繋がるのだ。

これはモデルとなったジョン・レノンを思わせる―というよりもほとんど彼なのだが―主人公が登場することからノンフィクションもしくはドキュメントのような印象を持ってしまうが実は幻想小説なのだ。
ジョンが出会うのは若気の至りで行っていた強盗の際に誤って殺したと思っていた水夫だったり、昔の彼女の母親だったり、バンド時代のマネージャーだったり、と彼が傷つけてきた人々たちだ。

一応物語の中盤でこの邂逅についての理由は付けられるが、この理由を凌駕してジョンとケイコ、そしてドクターとその助手を巻き込んで死者との接触がなされていく。
これこそ奥田氏がやりたかった、バランスの取れた物語の枠組みを超えるということではないだろうか?

しかし個人的にはどうにも盛り上がりに欠け、面白みに欠けた。なぜならずっとジョンが便秘に悩まされるシーンが続くからだ。
ドクターと話す内容も便秘だし、排泄に四苦八苦するシーンが何度も繰り返され、いい加減にしろ!といいたくなるくらいだからだ。これが後に稀代のストーリーテラーとなる奥田氏のデビュー作とは思えないほど盛り上がりに欠ける。

ジョン・レノンに纏わる逸話や実話、エピソードを消化して彼の人生と創作のキーとなる母親という存在、そして息子を上手く絡ませて幻想小説を紡ぐという発想は買えるものの、もう少しエンタテインメントによって欲しかった。
私は今は閉館したジョン・レノン・ミュージアムにも行ったくらいのファンだが、それでもなかなかこの物語にはのめりこめなかった。特に先にも書いたが諸般の事情からか有名なビートルズの歌やジョンの歌も歌詞も微妙に変えられているし、核心の手前で妙な幕で一枚仕切られて一番触れたいところに触れられない忸怩たる思いを終始感じたからだ。オノ・ヨーコが本書を読んでどう思うのか(思ったのか)、知りたいものだ。

ところで本書で出てくるアネモネ医院の心療内科の先生は後の伊良部先生に繋がるのだろうか?そう考えると今の奥田氏の原型はすでにここにあったのだろう。そう考えると奥田ファンこそ当たってほしい作品だ。


▼以下、ネタバレ感想

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