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夏と花火と私の死体



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【この小説が収録されている参考書籍】
夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

夏と花火と私の死体の評価: 6.46/10点 レビュー 24件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.46pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全10件 1~10 1/1ページ
No.10:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ドアひとつ隔てた隣の家庭の暗黒

当時週刊少年ジャンプ誌上でも募集がされていた「ジャンプ小説・ノンフィクション大賞」を若干16歳の若さで受賞したのが乙氏の「夏と花火と私の死体」だった。その作品を含んだ2作の中編集が本書。

さてそのあまりに鮮烈なデビューとなった表題作はどこかの田舎町を舞台に繰り広げられるあるひと夏の出来事だ。
一言、上手い!
いわゆるアンファンテリブル物だが、ことさらに恐ろしさを強調するわけでもなく、あくまで静かに淡々と語ることで恐ろしさを助長しているのがすごい。わずか16歳でこの文体で子供による死体遺棄事件の顛末を語る着想に至った乙氏の才能に戦慄する。
とにかく弥生の兄健の造形がすごい。いつも笑顔を絶やさず、周りの大人からはいい子として認知されている人気者。しかしそれでいて人が死んでも眉一つ動かさず、度重なる窮地に動揺する素振りは一つも見せず、寧ろその状況を愉しみ、いかにやり過ごすことが出来るかを考えている。つまり健にとってこれらはゲームに過ぎないのだろう。
当事者でありながらも第三者的に物事を見据え、冷静に判断する頭脳と胆力の持ち主。まさに恐るべし16歳が描いた末恐ろしい10代だ。
そして周到に散りばめられた伏線が最後の何とも云えない虚無的なラストに繋がる。私は子供の企みなぞは目端の利く大人にしてみれば全てお見通しなのだという戒めを説いた皮肉な結末を予想していただけにこの結末は意外だった。
しかし語り手である犠牲者の五月とその母親が何とも浮かばれない。
それらを淡々とした描写で語る乙氏の文体。正直語り手となる私こと犠牲者の五月が知りえないことも地の文で語るなど、文体としてはおかしな部分も散見させられるが、それを若さゆえの過ちと寛大に捉え、ここは素直にその才能を称賛したい。
なお、小野不由美氏の解説、五月の一人称叙述が彼女が亡くなることで神の視点になったという解釈はこの文体の欠点を補った素晴らしい名解説と云えるだろう。

もう1編は「優子」という。
あまりに淡々と語る文体は本編でも健在で、あくまで静かに狂気を描く。
相変わらずその筆致は時間の流れをゆっくりと感じさせる独特の雰囲気に満ちている。
しかし本書では逆にそれが物語の深さを減じているように感じた。
坂東眞砂子氏ならばもっと土着的な濃厚な物語を繰り広げただろう。主題と文体が結びつかなかった、そんな印象を受けた。


2002年の『GOTH』でいきなりミステリシーンに躍り出た乙氏の驚異のデビュー作所収の中編集。
当時週刊少年ジャンプ読者だった私はリアルタイムで乙氏のデビューを目の当たりにした。今は亡き栗原薫氏が審査員を務め、絶賛の上、強烈に推挙したのを鮮明に記憶している。

その話題作を16年を経てようやく読んだ。
いやあ、天才は本当に存在するんだなぁと思わされた。繰り返しになるがとても16歳が書いたとは思えない着想と文体。

するする読めるがもっと味わいたくなる抒情性に溢れている。誰もが心に抱く風景を事細かに、しかしくどくなく適度な量で映し出す。私が読んでいた終始浮かんだのは夕焼けの色だった。

そんなノスタルジイを感じさせながらも語られる話はサスペンスだったり、ホラーだったりと実は穏やかではない。
しかし実は世の中の出来事とはこのように我々がいつも見ている風景の中で、人知れず行われているのだということを再認識させられる。ふと足を踏み外すとそこにはある種の狂気が潜んでいる。マンションの住民の一人がある日姿を見せなくなってしまうように、犯罪はドア一枚隔てた、なんとも薄っぺらい防御の外で起きている。笑顔の中に隠された企みや秘密を知られないように、明日もまた同じような日が始まると思わせておいてその背後では死体が一つ隠蔽されようとしている。
つまり我々の日常の紙一重の場所で犯罪や狂気は存在するのだと知らされるのだ。そんなシチュエーションが乙氏は面白く感じるのだろう。

この後乙氏は作品を着々と発表し、『GOTH』に至るわけだ。そしてその後の『ZOO』でその実力を不動の物とし、次々と旧作が映像化されていく。

久々に語るべき物語を持った作家に出逢った思いがした。
現在40歳の乙氏。次に我々に見せてくれるのはどんな物語なのだろうか。
同郷の者として実に誇らしく思うこの作家のこれからの活躍に注目していこう。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.9:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

夏と花火と私の死体の感想

ハラハラドキドキしっぱなしでした。

conejo
ZYHEZN1P
No.8:
(7pt)

言う程か?

以前読んだ短編集「石の目」でも思ったが、あまり巧い文章とは思えなかった。
読みやすさはあったが、ホラーとしては弱いし、ミステリとしても展開を読みやすく、天才と言うほどではないように感じる。
7点。

かいん
AGLSXFF0
No.7:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

夏と花火と私の死体の感想

2編両者とも結末に近づくにつれ恐怖が襲ってくる感じがした。朱川さんを思わせるどこか懐かしいノスタルジックホラー。

水生
89I2I7TQ
No.6:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

夏と花火と私の死体の感想

この作品は乙一が16歳の時に書いたものと言うことで、あまりの文章力、表現力にビックリしました。
とても着眼点が面白く、読みやすかったです。

マグル
ZH9M7YFR
No.5:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

夏と花火と私の死体の感想

たまたま本屋でランダムに手にとったのが、乙一作品との出会いの始まり。一読して衝撃!ホラーともミステリーとも取れる怪しい魅力にはまりました。

ジャム
RXFFIEA1
No.4:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

夏と花火と私の死体の感想

一人称描写で語り手が何と死体という斬新な作品です。
語り手の五月はわずか9歳の少女であり、彼女は非常に無垢な少女として描かれます。
その彼女が感じた事しか読み手に伝わらず、当然の如く非常に「浅い」のですが、その説明不足な部分が、読み手の想像力を駆り立て、独特の恐怖感を産み出すトリックになっていると感じました。


▼以下、ネタバレ感想

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梁山泊
MTNH2G0O
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

や、すごいよこの視点

まずタイトルがすごい。
内容も凄かったです。いやいや、どろどろ好きなんですよ。
どろどろが。オチもしっかり嵌まってて楽に読めました。

Sランド
8LZWGBLM
No.2:5人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

夏と花火と私の死体の感想

処女作なのにさすが乙一という感じですね
いかにも乙一らしい独特の世界観です
この作品を書いたのが十代半ば過ぎというのがとても信じられません
この表現力というか発想はまさしく天才だと感じました
同じく収録されている"優子"も素晴らしかったです

LN
XL1SRHRZ
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

夏と花火と私の死体の感想

面白かった。そして読みやすかったですね。
死体の視点で描かれているって知った時はどんな不気味なホラーかと思いましたが、子供の無邪気さと独特の文章表現が新鮮で不思議な感覚でした。

ゆー
98N04ZLM

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