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風葬



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【この小説が収録されている参考書籍】
風葬
風葬 (文春文庫)

風葬の評価: 7.50/10点 レビュー 2件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.50pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

風葬の感想

著者作初読み。
200ページ少々の小品ではあるが、軽くはなく読みごたえがある。
「涙香岬」・「書道」というのが鍵となり、文学的な雰囲気を醸し出し、味わいがある。期待を持って読み進めることができた。

では期待の結果はどうであったかというと、思っていたよりエンタメ感も高く、ミステリー要素も多い。「裏表紙には桜木ノアールの原点ともいうべき作品」と記載されているが、ノアール感はほとんど感じない。小ぶりにまとまったサスペンス小説という所であった。

夏紀の出生の秘密などの結末は、殆ど予想された通りで、特段大きな驚きは無いが、気になったのは川田親子の最後の有り様。
特に息子川田隆一の描き方。悪に徹しきれない中途半端さが、上手く描ききれていない。年に2回50万ほどの金を30年もの間、無名で弁護士に預託する。そんな良心を持った男が、平気で人を始末しようとする。なにか、釈然としない。
どうなんだろう。もう少し、ちぐはぐにならないよう捌けなったのだろうか・・・
前半から終盤に至るまでの雰囲気がよかったこともあり、ラストの三流サスペンスドラマのようなドタバタ感は、やや安っぽく感じてしまった。

母夏江と娘夏紀。そして、ひょんなことから彼らに絡んでしまった元校長の父徳一と息子優作。北海道釧路地方の自然と風土を背景に、この2つの親子の人間模様をもう少し掘り下げ描いていれば、より品の良い作品に仕上がったのではないだろうか。

マッチマッチ
L6YVSIUN
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

桜木ワールドの萌芽が見られる初期作品

2008年に刊行された単独作品。認知症の母が漏らした地名から自らの出生の秘密を探ろうとした女性書家の行動が国境の港町の暗部につながっていく、ヒューマン・ノワール・ミステリーである。
釧路で書道教室を営む夏紀は、新聞の短歌欄に出てきた「涙香岬」の名前に驚き、作者である根室在住の元教師・沢井徳一を訪ねることにした。というのも、初期認知症を患う母・春江が「ルイカミサキに行かなくちゃ」とつぶやくのを耳にしていたからだった。母一人子一人で父親を知らない夏紀は、自分の出生にかかわる何事かが涙香岬にあるのではないかと疑問を持ったからだった。現地では何もわからないまま帰った夏紀だったが、案内した沢井徳一は夏紀を一目見て激しい衝撃を受けていた。夏紀は、徳一が若い時に救えなかった教え子の少女に瓜二つだったのだ。この運命的な出会いは、ソ連との国境で密猟を巡る暗闘が繰り広げらていた時代の根室の街に隠されていた秘密を暴き出すことになった…。
夏紀の出生の秘密、徳一の教え子に対する後悔、さらに徳一の息子・優作の現在直面している悩みという、三つのエピソードが少しずつ重なり合い、悲しい物語が紡がれていく。欲を言えば事件の動機、犯人像にもう少し深みが欲しいが、まさに桜木ワールドの原型が見れれるヒューマンドラマであり、文庫200ページ余りの中編だがずしりと重い読みごたえがある。
桜木紫乃ファンなら必読。ヒューマンドラマ要素が強いノワールのファンにもオススメしたい。

iisan
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