(短編集)
菖蒲狂い
- 名探偵 (559)
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菖蒲狂いの総合評価:
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これまで数々の文庫で若さま侍シリーズを楽しんできたけれど 本書にはごく一部に重複する短編が収まっているだけで、ありがたいことに大半は初見。 お気軽に若さまと遠州屋小吉のかけあいが楽しめた。 | ||||
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創元文庫の時代ミステリシリーズのひとつ。若さま侍という名前だけは知っているので、一度読んでみたかった。25篇収録している。 柳橋の船宿に、若さまと呼ばれる侍が居候している。本名や素性は誰も知らない。 御用聞きの小吉が難事件に困って相談に来ると、快刀乱麻を断つごとく解決する。 本編は安楽椅子探偵ではない。若さまがいつも同じ場所で酒を飲んでいるというだけで、必ず現場を見て関係者から事情聴取する。普通の探偵ものだ。 戦前の作が三本、残りは1947年から60年にかけて執筆された。さすがに古めかしく、トリックも単純だ。 人が殺されてるのに快活に「ハッハッハ!」と笑う主人公はどうかと思うが、人物が極限まで単純化されて人間味が乏しいせいで、あまり不快ではない。 ワンアイデアのショート探偵ものとして、そこそこ楽しめる。 際立った傑作は無いが、表題作と『尻取り経文』『あやふや人形』『さくら船』などが、ちょっと洒落ている。『女狐ごろし』は凝ったプロットが気に入った。 『生首人形』は戦前の横溝正史を思わせる異色の猟奇篇で、好みだ。 | ||||
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若さま侍捕物手帖25編である。 全部で約250編あるそうなので、約10分の1である。全640頁。これに編者解説が10頁ついている。 半七も、平次も、佐七も、640頁ぐらいはスラスラと読めてしまう。しかし、若さま侍を640頁読むのはかなりの難行である。三日かかってしまった。 それで、全25編について、コメントを書こうと思ったのだが、編者解説の各論部分(651頁中央~657頁)が素晴らしい内容で、各作品のポイントが簡潔にして、書き尽くされてしまっており、これ以上何も書くことがない。困った。でもちょっとだけ書いてみよう。 概要 シリーズの基本的構成は、若さまが船宿の二階で、娘おいとの酌で酒を飲んでいる。→御用聞きの小吉が奇妙な事件(多くは殺人)の話を持ち込んでくる。→第二の事件が起きる。(すでに起きている場合もある)→若さまが捜査に行く(推理の確認の場合も、現場で真相を突き止める場合もある)→若さまが犯人(または犯人+犯行方法)を指摘→小吉が犯人を逮捕。→犯行動機の説明。 私的感想 一、作品について 〇全25編につき、ごく簡単なコメントを付し、作品、トリック、面白さ、好みの視点で各4点、計20点で私的評価する。失礼ご容赦。 ☆「舞扇の謎」暗号ミステリー。凛とした芸者菊香がよい。作品3点、トリック4点、面白さ3点、好み3点。計13点。 ☆「かすみ八卦」変装ミステリー。ユニークだが、展開が強引すぎる。女スリがよい。作品4点、トリック3点、面白さ4点、好み3点。計14点。 ☆「曲輪奇談」複雑なプロット。作品4点、トリック4点、面白さ4点、好み4点。計16点。 ☆「亡者殺し」大トリックのバリエーション。うまい。作品4点、トリック5点、面白さ5点、好み4点。計18点。 ☆「心中歌さばき」ちょっとウェット。作品3点、トリック3点、面白さ3点。好み3点。計12点。 ☆「尻取り経文」私立探偵黄金パターン+犯罪の奇妙な展開。作品4点、トリック4点、面白さ4点、好み3点。計15点。 ☆「十六剣通し」剣通し手妻のネタの解説が面白い。作品3点。トリック4点、面白さ4点、好み4点。計15点。 ☆「からくり蝋燭」題名でネタを割っている。シンプルにまとまっている。作品4点、トリック4点、面白さ4点、好み5点。計17点。 ☆「菖蒲狂い」ユニークな動機だが、説得力あるかな? 作品4点、トリック4点、面白さ4点、好み3点。計15点。 ☆「二本傘の秘密」玄人好み。作品4点、トリック4点、面白さ3点、好み3点。計14点。 ☆「金のなる木」この殺害トリック見事。どろ沼情事も面白い。作品4点、トリック5点、面白さ4点、好み5点。計18点。 ☆「あやふや人形」強引に二つの事件を結びつける得意のプロット。これはシンプルすっきりの上に、変な人形という小道具がよく効いている。作品4点、トリック4点、面白さ4点、好み4点。計16点。 ☆「さくら船」アリバイトリック。なかなか巧妙な展開。作品4点、トリック4点、面白さ4点、好み4点、計16点。 ☆「お色検校」登場キャラクター楽しい。バリエーショントリックも楽しい。犯人意外。作品4点、トリック4点、面白さ4点、好み5点。計17点。 ☆「雪見酒」雪の上の死体トリック。作品4点、トリック4点、面白さ3点、好み4点。計15点。 ☆「花見舟」凶器トリック。トリックは面白いが、解説される動機が強引。作品4点、トリック4点、面白さ3点。好み3点。計14点。 ☆「天狗矢ごろし」大トリックのバリエーションだが、失敗と思う。作品2点、トリック3点、面白さ3点、好み2点。計10点。 ☆「下手人作り」よくできたプロット。後半エキサイティング。作品4点、トリック3点、面白さ4点、好み4点。計15点。 ☆「勘兵衛参上」これも面白いプロット。香炉の扱いがうまい。作品4点、トリック4点、面白さ4点、好み3点。計15点。 ☆「命の恋」倒叙ものと思いきや、ラストハッピーなメロドラマになる。好き。作品4点、トリック4点、面白さ5点、好み5点。計18点。 ☆「女狐ごろし」珍しく扇情的なストーリーを基礎に、お洒落なトリックを盛り付けて。作品4点、トリック4点、面白さ5点、好み5点。計18点。 ☆「無筆の恋文」無筆かどうかが問題となる玄人好みの展開。作品4点、トリック3点、面白さ4点、好み3点。計14点。 ☆「生首人形」ちょっとホラー的。ちょっとウェット。作品4点、トリック3点、面白さ4点、好み3点。 ☆「友二郎幽霊」幽霊が出てくる動機がわかりにくいが、リアルな幽霊面白い。作品3点、トリック4点、面白さ4点、好み4点。計15点。 ☆「面妖殺し」毒殺トリック。作品3点、トリック4点、面白さ4点、好み3点。計12点。 〇以上から、私的ベスト5は、第一位「亡者殺し」「金のなる木」「命の恋」「女狐ごろし」18点。第四位「お色検校」「からくり蝋燭」17点となった。 二、作品解説について 〇上記のように、よくできた解説で、各論部分には突っ込みどころが見つからない。それで、総論部分で探してみると、次の個所が気になる。 ☆「つまり、『若さま侍捕物手帖』は、人間を描かない点も、トリックを重視した点も含め、黄金期の本格ミステリを思わせる世界観になっているのだ。これと同じように、クリスティなど英米本格のテイストを捕物帳に取り入れながら、ストーリーテリングにもこだわった横溝の『人形佐七捕物帳』とは対照的であり」 ☆この論旨を書き直してみると、黄金期の本格ミステリの世界観は「人間を描かない点」と「トリックを重視した点」にあり、その代表がクリスティということになるようだ。 〇しかし、ハヤカワミステリマガジン11月号には、次のような見解も載っている。 ☆「クリスティはミステリのテクニック以前に、小説そのものがべら棒にうまいということなんだ。犯人解明のあとも、クリスティは小説として、各登場人物の人生の決着について誠実に向き合って書いている」(山口雅也 27頁) ☆「そもそもクリスティーはトリックメイカーではなく、その凄さは殺人をめぐる人間関係の綾織りに仕掛けるミスディレクションの巧みさにある。」(霜月蒼 77頁) 〇ささいなことで、失礼した。 私的結論 〇『若さま侍捕物帳』堪能した。 蛇足 〇『若さま侍捕物帳』でも、短い中に、結構ミスディレクションが織り込まれているように思う(成功しているかどうかは別にして)。それが読みにくさの一原因になっているのかもしれない。 〇『若さま侍捕物帳』でも、短い中に、結構人間が描かれているように思う。おいと、棟梁の娘おきぬ、水茶屋女おしづ、若妻おさい、妾おちよ、浪人の女房いそ、茶の師匠おたえ、女中おうら、名前不明女狐、女太夫一蝶、武士の娘あや、花魁都路、女スリおきた、芸者菊香・・・。 | ||||
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