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たこやき さんのレビュー一覧
たこやきさんのページへレビュー数38件
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なかなか硬派な作品です。犯罪が頻発する都会と違って、森と湖、冬は厳しい自然にまれているような田舎での出来事で、底流にはネイティブアメリカンと白人との関係が浮き彫りにされています。
ミネソタ州にはネイティブの保留地があるんですね。侵略しそしてその後も搾取し、権力を振りかざす白人の厚かましさ(日本もえらそうな事は言えませんが) もちろん、そんな人ばかりでないのはわかっているのですが、そのネイティブと白人のハーフであり、元保安官のコークは正義とは何かをクソ真面目に追求するおじさんです。 その真面目さゆえに保安官の仕事もやめるはめになり、妻にも見限られて愛人との間に救いを見出しつつも、家族にも未練がありなんとかやり直そうとあがくのですが、そこに事件がからんで話は展開していきます。 それにしても人物描写が素晴らしいです。夫婦のいさかいや子どもとの関係。家族がこれから再生していくのか続きが楽しみな作品です。 |
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とても怖い物語でした。
ミステリーと言うよりホラー?と言う感じでしたが、やはり構成が抜群に上手いです。怖いのですが、読み出すとやめられない魔力のようなものがあります。 催眠療法は実際に存在しますし、取材ももちろん多くの事を綿密に調べておられるでしょうが、事件そのものは現実にはありえないと思います・・・思いますが、ひょっとしたら本当にこんな事ができるの?・・・と思わせてしまう怖さがありました。 こう言ったジャンルはどちらかと言うと苦手な方だったのですが、訳者の方が上手なんでしょう、読者を楽しませる仕掛けが一杯で『治療島』の時はもひとつしっくりこなかったのですが、この『治療島』とも、それとなくリンクさせているところは作者の筆力を感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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娘の自殺と言うトラウマから立ち直れない犯罪心理学者イーラ。自らも自殺願望の塊になっていたその時に
ラジオ局の立てこもり犯への交渉人として呼び出されるのですが、犯人の要求が非常に突飛なもので、その交渉の中で自分の身の上までラジオで流れてしまうと言う非常に特殊な状況なのですが、最後まで飽きさせることなく非常に面白い展開でした。 プロローグを読んでいるので、犯人の要求には何かあると匂わせるものがあるのですが、前作の『治療島』を読んだあとなので、また妄想話?と思ってしまいましたが全然違いました。 続きが気になって途中でやめられませんでした。 前作がいまいちだったのでどうなのかと思っていましたが、これはお勧めです。 心理描写が非常に上手く、ジェフリー・ディーヴァーも顔負けのどんでん返しが楽しめます。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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アメリカのサスペンスにありがちなサイコな事件ですが、犯人はすでに捕まって刑務所の中。謎をといていくのはその自伝?を依頼された、あまり熟れない作家なのですが、挿入されるこの作家の劇中劇のようなポルノ小説やヴァンパイア小説SFとかがかなり面白いです。話のメインストーリーとは直接何も関係ないのですが、主人公の言うところの虚構の世界と現実の世界。そしてこの物語そのものも私達にとっては虚構の世界なのですが、その対比が絶妙です。
真ん中ちょっと前くらいに出てくる『なにゆえぼくらは本を読むのか・・・』に続くところが無性に心に響きました。 そして最後の方に『虚構の世界は現実の世界ほど謎に満ちていない・・・』で締めくくる一人称での語り口は抜群に上手いなあと思いました。タイトルと違い一流小説家ですね。 |
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登場人物が非常に個性的でとても面白いです。
ヘニング・マンケルのヴァランダーがいじけ系だとすると、カールはぼやき系でしょうか? 地下へ追いやられ古い解決済み事件の洗い直しを始めるのですが、金と権力を持つ真犯人から色んな圧力をかけられながらも追い詰めていくところはすばらしいです。 それにしてもカールを取り巻く人達は本当にユニークです。 個々に抱えている問題はかなりシリアスなのに、何故か暗くならないところがいいですね。傍若無人な奥さんなのに何故か切って捨てられないあたりはとても笑えます。 続きが非常に楽しみな作品です。 |
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20年ぶりくらいですが、久しぶりに再読しました。
物語はすっかり忘れていたのですが、狼犬のことだけは主人公の音道刑事と同じく、かっこいいなあと感じたのを覚えていました。 いきなり人間が炎上すると言う始まりはなかなかショッキングですが、古臭いタイプの滝沢刑事と主人公の人物描写がすごく巧みで、家族との軋轢や苦悩を物語の中で非常に上手く描かれています。 ただ、犯人の動機が少しだけ弱い気がするので、マイナス1となりました。 |
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久しぶりのクルト・ヴァランダーです。
テーマは南アフリカのアパルトヘイトで、なかなかに重い作品です。しかしそこはダメダメ親父の主人公のおかげで、堅苦しい話になってないところがいいですね。でもちょっと悩みすぎ感がありますが。 スウェーデンと言う国の背景がよくわかると同時に、歴史の勉強にもなりますね。 物語はそこに元KGBがからんできたりして国際色豊かですが、それにしても欧米の民族間の紛争とか差別とかは想像を絶するものがあります。 ヴァランダーは自分の気持ちや勘を優先して一人で突っ走るのですが、中年親父の哀愁が漂いすぎて、ちょっとくどい気がします。 ですが、作品としてはやっぱりすばらしいです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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日本での死刑制度の問題を物語に盛り込みながらのサスペンスでしたが、すばらしかったです。
アメリカの死刑制度の是非を問う作品も何冊か読みましたが、システム?が違うにも関わらず、刑務官の苦悩と言うのは共通なんだなと思いました。 応報的な刑罰としての死刑は遺族感情を考えると、なくすのはどうなのか?とも思いますが、それ以上に日本では終身刑がないことの方が問題な気がします。たかだか10年くらいで出てこられたら、遺族が納得できないのは当たり前ではないでしょうか? どちらか一方の主張に偏ることなく、絶妙のバランスで読者に刑罰の意味を問うているところは秀逸だし、それに加えて三上のように被害者の立場と加害者の立場の両方を持っている人間の心理描写がすばらしかったです。 多くの人に読んでもらいたい作品です。 |
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物語の構成とか人物描写とか、とにかく非常に面白かったです。
比べるのは申し訳ないのですが、これの前に読んでいた逢坂剛さんの『百舌シリーズ』もやはり同じように公安がからむ警察小説なのですが、サスペンスとしてもハードボイルドとしてもこちらに軍配が上がりました。日本では欧米ほど多くないサイコ系のエンターテイメントですが、犯人の背景や実際にあった事件なんかを巧みに盛り込みながら、被害者の遺族の気持ちを問いかけるような内容も秀逸です。 結末がなんとなく想像できてしまったのでマイナス1ですが、読後感は良かったです。 |
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これの前に原告側弁護人を読みました。こちらは正義感あふれる新人弁護士が大手法律事務所を訴える話だったのですが、こちらは新人弁護士の活躍と言うより運に助けられて(と言うか判事が活躍しただけ?)と思えるような話でいまいちだったのですが、『路上の弁護士』はなかなかよかったです。ミステリーではありませんが、主人公のマイケルがある事件をきっかけに、ホームレスの人達のための無償の弁護士として人生をやりなおす物語ですが、変化していく過程とその人物描写が非常によかったです。
アメリカのホームレスって日本の比じゃないんだなあと改めて思いました。 モーディカイと言う黒人の弁護士さんの言葉がすばらしいですね。物欲、金銭欲にいつもどこかで支配されているのは日本も同じで、多くのことを考えさせられました。 最後に大手法律事務所の最高責任者のアーサーが、マイケルのもとを訪れてくるエピソートでこの物語が終るのがすごくよかったです。 |
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ミステリーではありませんが、すばらしかったです。
過酷な自然の中で生きる人たちの力強さ、自然に対する謙虚さや真摯な行いには、本当に感動します。 全てではないでしょうけど、東北に生きる人はみな我慢強く、働き者なんではと思ってしまいました。 頭領の善次郎さんが、マタギをやめて富治と再会して語った言葉に、作者の思いがこめられているのかなと感じました。 それにしても山の描写がすばらしいです。 東北の温泉に行きたくなりました。 |
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中世のスペインで作られたユダヤ教の祈祷書。
紛争中のサラエボで見つかった美しいハガダー・・・と言う史実をもとに書かれた物語ですが、フィクションでありながら中世の情景が目に浮かぶような秀作でした。 架空の話でありながら、長い年月の間そこに生きてきたユダヤ人の苦悩ははかり知れないものがあります。 キリスト教がいかに支配と搾取や弾圧をくりかえしてきたのかと言うこと、その中でその美しい本を守るだめに、命をかけて存在した人達の生き様や家族の思い。 主人公ハンナの人生も含めて、家族とは何なのか問われているような気がしました。 それにしてもジャーナリストが書くフィクションは、総じてレベルが高い気がします。取材力と筆力が常に鍛えられているからかもしれませんが、ぐいぐいと引き込まれていきました。 本物を見てみたくなりました。中世の歴史を知る上でも貴重な物語だと思います。 |
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順番が前後して、最後に読んだのがこの作品でしたが、かなり衝撃的な作品でした。
警察官と言う立場を利用して、職権乱用も甚だしい男が、入院していた病院で惨殺されるところから始まるのですが、この時代のスウェーデンって本当にこんなひどいことがまかり通っていたんだろうか? と思ってしまいます。 役職があろうとなかろうと、権力の側にいることの意味をかなり直接的に問うている、重いテーマの物語でした。 日本の警察も戦中は同じようなものだっただろうし、今はさすがにこんなにひどくはないでしょうけど、あちらの立場にいる人達には是非読んでもらいたいなあと思います。 暴力から生み出されるものは、何もないと言うことを。 読むならば、シリーズの全部を読むことをお勧めします。 |
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映画になるとの事で初めて知り1から読み始めたのですが、読みふけってしまいました。
あまり知らないスウェーデンと言う国の知られざる一面を、余すことなく堪能させてもらいました。 1部は独立した物語ですが(いや続きと言えば続きでしょうけど)2部と3部は別々ではなく連続しているので、3の後半は読者にはある程度結末が見えているものの、物語の当事者達にとっては一番緊迫した場面だったのではないでしょうか? それにしても、ここに登場する女性たちのたくましいこと! 残酷で悲惨な生い立ちを持つリスベットは言うに及ばず、それ以外の女性たちも非常に魅力的です。 権力を持つものとそうでないもの・・・の最後に集約されるのは、ミカエルの言葉にもありましたが、『よくある女性への暴力と、それを可能にする男どもなんだ。・・・』 ということではないでしょうか? 日本人には受け入れにくような、男と女の関係も(特にミカエルの女性遍歴はすごいですが)成熟した大人としての文化が根付いたスウェーデンならではの話ではないだろうかと思いました。メインストーリーではありませんが、この話には同性愛者や移民などのマイノリティーである人達の人物描写もすばらしく、人権運動などに関っていたジャーナリストである作者の気持ちが良く伝わってきます。 特に日本人にはこの話は好みが分かれるところだと思いますが、成熟した大人の社会の物語として、そしてまたミステリーとしても一級品だと思います。 |
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いや~~久々に心拍数あげながら、読みました。
お札の薀蓄がものすごくて、思わず自分の財布の1万円札を出して虫眼鏡で眺めてしまいました。 真保さんの作品は、『ホワイトアウト』と『アマルフィ』しか読んでいなかったので、 物語自体はそれなりにシリアスなところもあるのですが、全体としてはユーモアがあって、 最後のオチには笑えました。 内容が内容だけに、映画にはなりにくそうですが・・・・ |
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ミステリーにはまるきっかけとなった作品です。
少し硬派な作品で、読むのに集中力がいるかもしれませんが、とにかく文章が美しい・・・そして切ない。 取材力もすごいと思います。 若い人には共感しずらいかもしれませんが、警察小説としては私の中では№1です。 |
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