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マリオネットK さんのレビュー一覧
マリオネットKさんのページへレビュー数147件
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ジョン・ディクスン・カー氏の実質的なデビュー作です。
密室+怪奇趣味とデビュー作から「らしさ」が全開ですね。 あらすじは結構期待したのですが、冒頭であっという間に殺人が起きたかと思うとあとは淡々と話が進み、あらすじをなぞっているだけ感があって正直退屈でした。 トリックもちょっとアンフェア&無理があると思います。 あとこれは作者の責任じゃないですが、私が読んだ創元推理文庫版は日本語訳が読みにくすぎです。 2013年初版の新訳版なのになんでこんな読みにくいんですか?翻訳者は日本人じゃないんですか?と言いたくなりました。 やたらもったいぶった言い回しは原文に忠実に訳しているのかもしれませんが、なぜそこを漢字にせず平仮名で書く?と思うところが多々あったり、擬音も全部平仮名なのが最高に読みにくかったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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前作『ジョーカー・ゲーム』の続編にあたる、スパイミステリー連作短編集の『D機関シリーズ』第二弾です。
現実のスパイ事情などはよく知りませんが、納得させられてしまう説得力とリアリティは前作から健在です。 ……ただ、前作の衝撃に比べると飽きもあるのかあまり面白くは感じませんでした。 今作はD機関に対してライバルや敵対関係にある存在の視点から見た話が中心なのですが、正直いずれも最初からD機関の相手が務まるような存在に見えず、結局どの話もオチは「D機関は凄い!」になるんだろうなぁという予想が出来て、ややワンパターンに感じてしまいました。 ※以下個別ネタバレ感想です ▼以下、ネタバレ感想 |
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地名+殺人事件の内田氏の定番のパターンに、彼に最も縁のある都道府県である長野の名がとうとう登場しました。
浅見光彦シリーズ第100作目としてまさに満を持した感があります(どれを100作目とするかは諸説ありますが) 舞台が長野県ですので「信濃のコロンボ」との競演作でもあります。 長野オリンピックの際の十数億にも及ぶ多額の用途不明金に関わる、失われたはずの資料をめぐっての殺人事件という、まさに長野県全体、長野県民全体に関わる内容なのですが、なんと言ってもこの作品で一番印象に残るのは、メインキャラとして登場する県知事でしょう。 ・名詞折り曲げ騒動 ・ガラス張りの知事室 ・脱ダム宣言 と、どこからどう見ても田○康○氏がモデル……というより、もはや実質本人を登場させているとしか思えないです。 長野県民や、当時の長野県知事の話題などを興味深く見ていた人などはそれだけで惹かれる内容ではあるのですが、いかんせん肝心のミステリ部分が退屈すぎました。 もう少し面白い話だったら「これを読むのは長野県民の義務!」とでもタイトルに付けたい所だったのですけどね。 どうでもいいですが、あとがきで述べられていた、県知事選挙で「内田康夫」と投票する人がいたり、内田先生の奥さんに「当選おめでとうございます」と言った人がいたというエピソードには笑いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『速水三兄妹シリーズ』第三弾にして、とりあえず完結編ということになるのでしょうか?
今回の題材はミッシング・リンクもので、クイーンの名作『九尾の猫』を意識したような作品となっています。 とはいえ前二作同様、作風はユーモアミステリなので「後期クイーン問題」などはどこ吹く風で、楽しく(?)推理が進んでいきます。 発表が1990年という事を考えると、パソコン通信などを取り扱ったミステリとしては当時としてはかなり前衛的な部類に入ったのではないかと思います。 ただ今読むと、ある意味古典作品以上に時代を感じてしまい、90年代のインターネット黎明期をよく知らない人などはイメージが沸かない部分もあるかもしれません。 恭三氏の将来のお嫁さん候補が出来たのは良かったですね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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人間性の評判はあまり良くないが、面白いパーティを開くことで定評のあるシャイタナ氏。
ある晩彼は「殺人者4人」と「探偵4人」を招待した、奇妙なパーティを催すが、自らのお膳立て通りにトランプゲームの最中何者かに殺害されてしまう。 容疑者候補は4人と少ないながら、全員が過去に殺人を犯しながら法から逃れているという、ブリッジパーティよりインディアン島にでも招待されろよという面々であり、実際一人一人の過去の殺人も明かされるのも相まってかなり「濃い」面子です。 一方の探偵側の4人は、よく「クリスティオールスター」的な大げさな紹介をされたりしますが、実際の所主役のポワロ以外は、単に捜査に協力してくれる人たちという域を出ません。マープルが競演してたりしたら豪華だったのですが。 ブリッジというトランプゲームは日本ではメジャーでなく、かく言う私もこの作品を楽しむためにブリッジのルールを事前に勉強しました。ハヤカワ版ではあとがきの解説でルールを説明しているので、そこを先に読むのがいいかもしれません。 しかし概ねルールを理解しても、やはり実際に何度かゲームをプレーしてその雰囲気や基本定石そのものを理解しないと100%楽しめないのかな、とも思いました。 (ちなみに作中の推理の理論的には別にゲームのルールを理解していなくても十分理解可能、納得のいくものです) 決してつまらなくはなかったですが、いろんな面でもっと面白くすることも(読むことも)できた気がするのが惜しい作品ですね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ミッシングリンク殺人(未遂)が題材かと思えば密室消失ネタなどが出てきて、かといって本格かと言えば、バイオレンスな作風はハードボイルド寄り?
随所の笑えるようで笑えない展開はブラックユーモアというよりは、むしろそれと真逆の一見ユーモアに見える重い展開であったり……とにかく特定のジャンルのくくりで説明できない、この作者だけの世界が広がっていた作品です。 個人的な感想を一言で言うと、ミステリ作品の皮をかぶった「こういう独自の作品」でした。 この独特な空気と文章は、合う人はスラスラ流れるように一気読みでしょうし、合わない人は拒否反応を示すでしょうね。全編通して直接事件とは関係ない部分含め、暴力、暴力&暴力なので、この辺も爽快感を得る人と、嫌悪感を催す人が分かれるのではないかと思います。 自分としては合うのか合わないのかよくわからなかったというか、ある部分では合ったしある部分では合わなかったと感じたので、間を取ったような点数になりました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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リアル人狼ゲームシリーズの第三弾です。
第一作、第二作との直接的なストーリーの繋がりはありませんが、複雑化するルールの把握のためにも前二作を読んでから読むのが推奨されます。 今回はさらに配役が増え、「村人」でも「人狼」でもない、第三の立場である「狐」が登場します。 「狐」はたった一人の勢力で村人に紛れ、夜に「人狼」に襲われても死なないけれど、「村人」の役職の一つである「預言者」の調べられると死んでしまい、自身が預言者に調べられる前に、「村人」「人狼」どちらかが全滅した場合一人勝ちという特殊な立ち居地です。 しかし今作で主人公となる「狐」を割り振られた少女は一緒にゲームに参加している一人の少年に一方的に強い愛情を抱き、なんとか彼と生き残りたいと考えます。 一方で「人狼」側は本来「人狼」同士はお互いの正体を知り、協力してゲームを進めているのに対し、「人狼」のうちの一人が名乗りでないという、異例の状況で ゲームは進行していき、物語は「狐」パートと「人狼」パートが同時平行で進んでいきます。 前作とも前々作とも異なる切り口で物語を進めているのは面白いのですが、正直ルールの複雑化に読者以前に作者もやや持て余し気味感を感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルから想像出来るとおりクローズドサークルものですが、この作品(シリーズ)の最大の特徴は「猫が主人公」なことです。
猫が探偵と言えば『三毛猫ホームズ』シリーズが有名ですが、この作品の場合はあの夏目漱石の『我輩は猫である』のように「猫視点」で人間の世界を見て事件の真相に迫ります。 猫が人間と会話したり細かい意思疎通を取れるわけではない一方、猫同士では人間レベルの会話をしていたりする荒唐無稽な設定であるのですが、随所に作者の猫好きが伝わってくる「猫あるある」ネタなどが盛り込まれ、猫好きの人は楽しめるのではないでしょうか。 (ちなみに自分は犬派ですが、犬も出てきますよ!) そのような特徴が面白い作品ではありますが、肝心の本格ミステリとしての内容は「普通」かな、という感想です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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乱歩御代の短編の中でも有名かつミステリ色の強い一作。
まず「屋根裏の殺人鬼」とか「屋根裏の犯罪」などではなく「散歩者」というタイトルにセンスを感じますね。 とにかく何をやってもつまらない、人生を退屈している男がとうとう見つけた楽しみ……という犯人目線の倒叙ミステリです。 やってることは本当に酷いんですが、なぜか感情移入してしまう犯人でした。 明智小五郎も登場しますが、後の私立探偵として有名な完全無欠のヒーロー的なキャラクターではなく、『D坂の殺人事件』同様、正義感ではなく単純に好奇心から事件の真相を探る変わった男という位置づけです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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誰が彼もが腹に一物持っている資産家一族という、ミステリ定番の誰が殺されてもおかしくなさそうな一家が、女主人の誕生パーティに他人の人生を弄ぶ悪趣味な余興をするという、さらに自分たちで殺されそうな状況を作り出し、所謂「死亡フラグの乱立」をしながら中々誰も死なない…
ちょっとあらすじを説明するのは難しいですが、一言で表すと三谷幸喜氏あたりが脚本を書いていそうなドタバタブラックコメディ調のミステリーです。 この短いページでこれだけの登場人物が登場する話を見事に纏めてしまえるのはさすが赤川氏です。 とにかく登場人物がクズばかりですが、中でもやはり話の中心になる女主人の老婆がいいキャラしていて、性格の悪さもここまで来ると清清しくて逆に好感が持てるというレベルでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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90年代に絶大な人気を誇り、ティーン層を中心にミステリの普及に大きく貢献した『金田一少年の事件簿シリーズ』のノベライズ版第一弾。
原作漫画の第一話の舞台である、孤島のホテル「オペラ座館」を再び訪れた金田一一たちが、そこで再び連続殺人事件に遭遇するという内容ですが、漫画版第一話の謎解き部分のネタバレがあったり、予備知識が特に必要という内容ではないです。 しかしオーナーの顔の傷や、娘の墓など、漫画では結局明かされなかった謎がこの作品で明らかになるので、原作ファンはその辺りも注目ですね。 ミステリ作品としてはお世辞にもレベルが高いとは言えません。 この本は原作者の天樹征丸氏がまだ小説自体を書き慣れていなかったということもあり、まず文章が拙いですし、犯人の正体もトリックもある程度ミステリを読んでいる人間には、もうほぼ全てが容易に予想がつく内容です。 ミステリファンに今更勧められるという作品でははっきり言ってありません。 仮にこの内容を無名の作家がオリジナルキャラクターで書いてどこかの賞に応募しても、一次選考通るかどうかだと思います。 ただ、ミステリとしては基本の基本を押さえていることもあり、まさに原作の『金田一少年シリーズ』などの推理漫画で、ミステリに興味を持ってくれた小学校高学年~中学生ぐらいの子供の推理小説への橋渡しには十分その役割を果たしてくれる(た)、作品ではないかなと感じました。 本を読み慣れた人ならおそらく2時間とかからず読める文章量なので、手軽に「クローズドサークル連続殺人もの」を読みたいという人にもおすすめできるかもしれません。 ただ良くも悪くもジュブナイルに毛の生えた程度の内容にも関わらず、やたら性的な描写を入れるのは止めてほしかったですね。 生々しい動機については物語の核心に影響するので仕方ないですが、嬉しくもない無駄なお色気シーンや、一がコンドームを持っているシーンとかは、まさに薄っぺらな「子供騙し」感を覚えてしまいました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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東野圭吾氏の最初期の作品です。
この時代から長編にしてはコンパクトな分量で読みやすさは抜群な作風は健在です。 その多くはないページ数の中で、雪の山荘での密室殺人という定番の本格ミステリシチュエーションに加え、暗号解読・宝探し要素も加わるなど中々豪華な内容になっています。 ただ全ての要素が正直中途半端といった感じで、密室トリックも暗号解読も既存の作品のアイディアのあまり上手くは無い流用という印象でした。 また見出しの通り、「雪の山荘」+「マザーグース」などという題材は抜群にワクワクさせてくれるものだったのに、自分の好みのクローズドサークルでも見立て殺人でもなかったというのが、個人的にはガッカリでした。 登場人物もみんなあまりキャラが立っていないわりに、マイナスイメージだけははっきり伝わってくる感じでなんかちょっと嫌でしたね。 総合して、駆け出し時代の作品としては及第点という感想でしょうか。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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有名なゴシックホラーの短編。
主人公が自らの犯した犯罪からその罪の露見までの独白するという形式はある意味「倒叙ミステリ」の走りとも言えるのでしょうか? 猫に心理的にも物理的にも追い詰められる形になる主人公の恐怖に感情移入すべき小説なのかもしれませんが、正直完全に主人公の因果応報(というかそもそもキチガイ)なので、猫は怖いというより可哀想だし、ラストはむしろ「よくやった」って感じですね。 |
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少女向けのような可愛い挿絵とタイトルに騙されると大変なことになる、かなり残酷で救いのない話です。
最初から結末は提示されていて真相のどんでん返しがあるわけではなく、犯人が何か計略を練っているわけでもなく、結局謎が謎で残されている部分もあり、ミステリとして見ると、面白いとか出来の良し悪し以前にその体裁をなしてないです。 ミステリ要素を期待して読むのではなく、純粋(?)な文学作品として見るべき本でしょうか。 とにかく読んだ人の誰しもの心には何かが残る話だったと思います。 ただ結局この話は何を伝えたかったのか、十代の時初めて読んだ時も、再読した時も私としてはよくわからなかったし、わかりたいとも思えない作品でした。 |
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登場人物がどいつもこいつも頭に思い浮かんだことを全部口に出しているようなイカれた奴らで、面白いんですが、古い作品とはいえちょっと文章が読みにくすぎます。
それほど長い話ではないし、ストーリーそのものは難しくなかったのでなんとか読めましたが、これでもっとページが多かったり複雑な内容だったりしたら、途中で挫折してしまったかもしれません。 改めて古い作家でも文章が読みやすい江戸川乱歩や横溝正史は凄いというか、ありがたいな、と感じました。 よく指摘される登場人物の多さに関しては、所謂読者目線での「容疑者」になる主要人物と、単にその場で出てくるだけのようなチョイ役は割りとはっきりしていたので、ここについては自分は特に気になりませんでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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有栖川氏のクローズドサークル作品と言えば『双頭の悪魔』や『孤島パズル』など江神二郎が探偵役の『学生アリスシリーズ』が有名ですが、これは火村英生が探偵役の『作家アリスシリーズ』の中では珍しいクローズドサークル作品です。
本来日本に生息しない大鴉の群れが舞う孤島といういかにもな舞台設定ですが、昭和から平成に移り変わろうとしている時代が舞台の『学生アリスシリーズ』とは異なり、こちらは紛れも無い21世紀の時代設定なので、携帯電話もインターネットも存在する世界観です。 それらは結果的に使用不能になり外界から孤立した状況にはなるのですが、単にクローズドサークルという設定には邪魔なものを排除したというわけではなく、話に後々それが絡むことになるのが、作者のまさに現代ならではのクローズドサークルを書こう、という意気込みが伝わってきた作品でした。 他にもホリ○モンがモデルのキャラが登場したり、ES細胞によるクローン技術が話の一つのテーマになっていたりと、作品発表当時(2006年)にホットだった内容を題材にしている作品なのですが、10年以上が経過した今はすでに少し時代を感じてしまいます。 最初から良い意味で古臭い『学生アリスシリーズ』の作品の方がやはり何十年も先まで読み継がれる作品になりそうだと感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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弟の失踪と死の謎を追い、彼が生前滞在したという地図にない村を目指した青年は、突如鴉の大群に襲われ意識を失う。
目を覚ますと彼は目的の村の、一つの屋敷に匿われていた。 その村は現代日本でありながら、深い山奥で外界から隔離され、村内で神と崇められる「大鏡様」が絶対的な権力を持つ、封建的な時代がそのまま残ったような場所だった。 青年は村で弟の情報を求めるが、そこで連続殺人事件が発生する…… ある程度の規模を持った村という本来クローズドサークルの舞台としては不適合な状況ながら、警察の捜査や法律などが一切介入しない治外法権的な設定から、紛れも無いクローズドサークル的な作品となっています。 麻耶氏らしい驚きのトリックやどんでん返しが仕込まれている作品ですが、この作品の真相や結末は「フェアかアンフェアか」「非現実性をフィクションと割り切って楽しめるか」の観点で、ミステリとして見ると個人的にはちょっと「許容範囲外」です。 ちょっと納得がいかないし、無理がありすぎると思いました。 話の雰囲気そのものは嫌いじゃないのですが、オチに全く救いが無く、後味が悪いこともあり、楽しく読めたとも言い難いです。 この作者の作品の傾向は判っていたので最初からハッピーエンドなんてのは期待していなかったはずなのですが、話の真相やトリックに納得がいかないとせめて大団円で終わらせてほしいという心理が沸いてしまうのでしょうか。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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学園祭最終日、一人の生徒が校舎の屋上から飛び降り自殺をした。
それから三ヶ月ほどが過ぎたある雪の日、8人の高校生たちはいつものように登校するが、学校に彼ら8人以外は生徒も教師も姿は見えず、さらに彼らは校舎の中から出られなくなってしまう。 明らかに現実の校舎とは異なるその中で、生徒たちは学園祭最終日のクラスメイトの自殺に再び向き合うことになると同時に、時間の経過とともに一人ずつ姿を消していく…… という、少しホラー調のミステリ。 校舎に閉じ込められるというSF的な設定は、媒体は違いますが楳図かずお氏の『漂流教室』ですとか『涼宮ハルヒシリーズ』の閉鎖空間的なものを連想しました。 クローズドサークルにも分類されるのでしょうが、誰かの「精神世界」という舞台のため、常識などは通じない「何でもアリ」の世界観であり、ロジックで犯人を導き出すような本格ミステリとは赴きが異なるでしょう。 デビュー作でありながら1000ページ越えの大作であり、校舎に閉じ込められた8人の高校生のキャラクターの内面描写が非常に丁寧です。 しかし、正直に言って登場人物は4~6人程度に減らすなどして、もう少しコンパクトにまとめるべきだったのではないかと思います。 また閉じ込められた生徒たちは県一番の進学校に例年以上の倍率を潜り抜けて合格した、それだけでも立派なもんな生徒たちであり、さらにそれに加えて、その中でも特待生だったり、容姿にも恵まれていたり、スポーツも出来たり、芸術面でも評価されていたり……などハイスペックな面々にも関わらず、揃いも揃って内面が卑屈だったり自虐的な人間ばかりであまり共感が沸きません。人物描写が薄っぺらとは言いませんが、偏っているなぁと思いました。 あと、ちょっと登場人物の自殺率(未遂含む)が高すぎだと思いました。 この作者の思想や人間観が合う人にとっては面白い作品だったと思いますが、個人的にはあまり合わなかったですね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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・数十年前に断頭台に送られ処刑された毒殺魔「マリー・ドーブリー」の写真を見て語り手は驚愕する。彼女は彼の妻と同じ顔を持っていた……
・ある富豪が毒殺された夜。彼の部屋から謎のドレス姿の女の姿が現れ、壁に向かって幽霊のように消えた…… ・事件の真相の追究のため、毒殺された死体の墓を夜中暴くと、完全に密閉された空間であるそこから死体が消えていた…… ホラーな謎がいきなり三連発で最初の100ページは「これは面白くなりそうだ」と期待したのですが、そこから約150ページはグダグダと話が進まない退屈な展開でくじけそうになりました。 再び面白くなったのは探偵役のゴーダン・クロスがようやく登場してからでしたね。 消えた女の姿のトリックも、消えた死体のトリックも正直今読むと物足りなかったです。 細かい部分はともかく両方「まぁこんな感じなんだろうな」と薄々見当がついてしまい、その通りだった感じです。 ただ終盤に入っての怒涛の展開と真相には驚かされました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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