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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数370件
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クローズドサークル×予言もの
前作同様に特殊な状況を本格ミステリに加えた作品となっています。 封鎖された空間で起きる事件と検証の連続。読んでいて非常に楽しい読書でした。大好きな本格ミステリに予言という要素の新たな使い方を加えて斬新さを生み出しています。 読書前の気持ちとして、実は予言という要素はミステリではそんなに珍しくないですし、予告殺人というジャンルもあり見慣れている為、ある程度を想定して身構えていました。 本書の予言の面白い所は、予告殺人のような人的要素ではなく、SFの超常現象のようなものとして扱われている所です。前作同様に非現実的な事があるかもしれないというのを前提条件に加えてのミステリな為、事件検証方法や登場人物達の思考や行動が斬新に映りました。 また、物語の雰囲気やキャラが良いです。比留子さん&葉村の支え合うような関係も目が離せません。真面目な所と抜けてる所が程よく読んでいて気持ち良いです。特殊設定ミステリという要素だけ捉えてしまうと過去にも多くの作家さんが描いていますが、学園ミステリのキャラ立ちしている中では珍しいのではないでしょうか。この点も非常に好きな要素。新本格時代のクローズドサークルでミス研メンバーが活躍する中で新たな特殊条件が加わるという好きな要素てんこもり。大興奮な読書で読後も満足。次回作も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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異色な警察官物語。著者初読書。
交番勤務のシド巡査。自分のいる街で知らない事があるのは気に入らない。住人の生活スケジュール、給与明細までなんでも情報は欲しい。同僚には一歩間違えれば犯罪者のストーカーと言われる。そんな人物が主人公。設定も面白いが、場の表現や語り口調が面白い。雰囲気はコミカルなのですが扱う事件はサイコホラーや怪奇小説に近い。事件と表現の温度差を楽しく感じました。 読んでいて感じる雰囲気は、平山夢明の狂気や江戸川乱歩の幻想をシド巡査のコミカルさで包んでマイルドにした感じ。 9つの短編集の中では『新生』が好み。ただ、単品として楽しめたという分けではなく、順番に読んでシド巡査や場の雰囲気を捉えたうえで読む『新生』は狂気や虚無感を感じました。真相もちゃんと現実的にまとまっているのでわかりやすい。 幻想的で結局なんだったのか分からないエピソードもあるので、好みが分れる作品だと思う。個人的には新鮮な読書で楽しめました。 |
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歯医者さんミステリ。
お仕事系・日常の謎作品が得意な著者作品は読んでいて心が温まります。 物語は、過去のトラウマで歯医者が大嫌いな女子大生が、親戚が務める歯医者で受付のアルバイトをする事になってしまった話。お仕事ミステリとして巧いのは、知識のない読者と主人公を合わせている所にあります。歯医者さんには医者と受付の他に、どんな人がお仕事しているのか?アルバイトとして入った主人公目線で現場が見えるのが面白い。そして登場人物達が基本優しく、とても雰囲気がよい職場なので読んでいて癒されます。 ミステリとしては訪れる患者さんの行動・心理を紐解いていく感じです。カウンセリングに近いかもしれません。行動や発言などから、患者の悩みや状況を察してケアするような感じです。 読んでいて嫌な気持ちにならないミステリというのは万人に薦めやすい。この路線の著者の作品はどんんどん読んでみようと思います。 |
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メディアワークス文庫はライト傾向ながらもミステリ好きが好む仕掛けを入れてくる作品がたまにある。そんな本を引き当てると嬉しく思う。本書はそんな1冊。
どういう系統の本なのか、実は帯や裏表紙に書かれてしまっている。Amazonの表紙画像には書かれていない。そこがメインとして印象に残る人もいればそうじゃない人もいるので、版元としてはネタバレではなく敢えてPR材料として明記して宣伝している模様。 あらすじは、死の瞬間を幻視してしまう主人公と、幻視によってもうすぐ死ぬことになる女性の2人が、幻視の運命を変えようと行動し人助けをする話。 幻視の設定がユニークで面白い。死が訪れる現場で被害者だけの動きが映像でリピート再生されます。まだまだ未来の死の場合は映像が半透明で薄く、死が近い程色濃く現実的に映る。横断歩道で映像が見えれば交通事故と想定できる感じです。この特性を手がかりにどんな死が訪れるのか想像し先回りして対処する流れです。 男女の出会いから始まり、誰かの死を回避する為に共闘する姿は青春模様でよい。 まぁなんというか読書中は、女性の鈴さんがとても良い人で万能過ぎるし、主人公は鬱屈してたり会話が寒く感じて、キャラまわしはラノベっぽいというかレーベル通りなどなど、ひっかかる点が多かった。ですが、読み終わってみれば気になる点がプラスに転じる。総じて面白く楽しめました。特に事故回避シーンの緊迫感は文章の筆が乗っているというか勢いあって惹き込まれました。 仕掛けに関しては話のメインではないのですが、ある程度想定していたのに、そうきたか!と意表を突かれました。ただこれは少し反則技では、、、でも有名なミステリ作品でも似たような前例があるからアリなのか。もう少し設定の補強があればよかったのになと思う次第。ここら辺はネタバレで書きます。 結末もよいので、ライトノベルも許容範囲のミステリ好きにはおすすめな作品です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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なかなか変態(誉め言葉)な作品でした。
ジャンルはミステリに分類されるかな。精神が崩壊した人物達の物語を中二病&ラノベテイストで繰り広げつつ、誘拐監禁虐待の重い雰囲気を混ぜ込んだ中で恋愛ヒロイン要素もプラス。というような感じ。 シリーズ化されていますが、本書1巻で完結しています。 癖のある文章とラノベ雰囲気が好みの別れ所。世の評判としても賛否両論で感想がバラバラですね。 語り手のみーくんについては西尾維新の戯言シリーズに出てくるいーちゃんを彷彿させました。西尾維新を読んでいる方はその雰囲気の方へ意識を持っていかれます。とても上手く活用されています。 ラノベ雰囲気がなければ、精神異常者の物語としてサイコ物やホラー小説とも感じられます。という事で設定だけみるとどこかで触れた事があるような作品とも思えるでしょう。本書の味は多少乱雑で中二病的な文章で描かれた異常者達の物語であり、文章と設定が相乗効果で上手く混ざり現代的な奇妙な味と感じる作品でした。 続巻のあらすじを見ると引き続きミステリの展開が予想されて楽しみではあるのですが、文章に癖があり読むのに気力が消費されるので時間をおいて手に取れたらと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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お仕事系・日常の謎作品が得意な著者による和菓子ミステリ。
個人的にとても新鮮な読書でした。 正直、和菓子については無知なのと、デザートはケーキなど洋菓子の方が好きなので興味が湧かなかったのです。和菓子と言えば、大福、羊羹、餡子なイメージ。"上生菓子"は見た事・食べた事ありますが、この"上生菓子"なんて単語は日常で使った事がないレベルでした。 本書の類似傾向としては美術ミステリに近いです。著者の解説にありますが、暗号のような菓子名、基礎知識がないと来歴すらわからない菓子。色・形・技法で季節を感じたりと、和菓子の世界は見立てや言葉遊びに溢れておりミステリ模様です。 本書、和菓子を知らない読者程、面白いと思います。 主人公のアンちゃんはちょっぴり太めで食べるのが大好きな女の子。アルバイト探しでピンと来たのがデパ地下の和菓子店での販売員。和菓子の事は初めてで、その業界の店長や職人さんや奇妙なお客さんと関わり、和菓子の世界に触れていく流れです。つまり、和菓子を知らない読者と主人公が同じ目線なのです。主人公と同じように和菓子の仕事で分からない事が日常の謎として悩み、解決していく流れとなります。 ま、ミステリとしては非常にライトです。謎解き主体でもありません。ミステリを求めると何もなく感じてしまい、ただの漫画か仕事本じゃんとなるので、その期待値は無い方が無難。 お仕事の裏側や、仲間達との感じのよい雰囲気が楽しめます。殺伐さは皆無で子供からも楽しめるでしょう。 読後は上生菓子を検索して食べてみたくなり、デパートへ買い物へ行きました。パクっと食べるとやっぱり餡子な印象なのですが、本を読んだおかげで餡子も色々ひき方、練り方があるんだなとか教養が増えて良かったです。 ミステリを通して新しい分野を知るのはやっぱりよいです。そういう効果がある作品でした。 |
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小学生のひと夏を描いた作品。
この著者はライトな雰囲気にミステリ仕掛けを取り入れる作風ですね。1作目は七不思議で本作も不思議な伝説が出てきて少しファンタジー寄り。それらを踏まえて素敵な青春物語を描いています。1作目同様に終盤のまとめがとても惹き込まれました。 個人的好みとしては、中盤までは小学生の夏休みの生活に大きな起伏がない為に少し退屈でした。ただ、後半からの結末と読後感が良いです。これは1作目と同じ。著者の傾向が分りまして他の作品も読もうと思います。好みです。 本書は殺伐さがない小学生が舞台なので、小中学生向けのライトなミステリとしても紹介できます。 夏休みらしい友達との思い出。楽しさと切なさ含めて綺麗にまとまった作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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人工妊娠中絶と監禁拷問を扱い、独特な生と死の世界観を描いた作品でした。
主人公の医師は表と裏の生活があります。 表側は法的に問題ない殺人に近しい中絶を専門とする医師の生活。中絶をテーマに生き残った子と生まれなかった子の違いやその選別の考えを読ませます。裏側は医師の目に留まった被害者を監禁・拷問する話。表と裏の生活において、どちらも生と死のタイミングは医師に委ねられます。どちらも命を奪う行為ですがその違いは何なのか。中絶理由や被害者のエピソードを読むと妙に納得しながら読んでしまう。このバランス感覚が巧く、理不尽で異常な行動なのですが、殺人鬼の主人公に少し共感してしまったり、価値観が魅力的に見えてしまう怖さがありました。 扱われる内容の文章表現が淡々としている為、気持ち悪くもならず、むしろ爽やかさを感じる読みやすさ。 医師の意味通りの確信犯的行動に惹き込まれた読書でした。 生きているのも死んでしまうのも些細な切っ掛けやタイミングかもしれない。 殺人医師は殺人を犯すが、生き残った子には嬉しそうに生き延びてよかったと話すギャップが印象的。本書の捉え方や考え方によっては、生きている事は素晴らしい事で自由に行動できる良さを示しているのかもしれない。そんな解釈も感じました。 |
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非常に面白かったです。
科学が発達して情報がグローバルになった現代において、超常現象や妖怪を扱うホラー作品の存在意義が悩ましい中、本作はそんな思いを払拭する出来の素晴らしい作品でした。 全体像は妖怪のホラー作品なのですが、構成やミステリ的な伏線の繋がりが刺激的に配置されている為、ホラー×ミステリとも思えます。 3章構成になる本書。1章目は「ぼぎわん」という謎の存在との遭遇。まずこの「ぼぎわん」という単語の発明が巧いです。まだ未読ですがシリーズ作品のタイトル名を見ると「ずうのめ」「ししりば」「などらき」といった不気味に感じる単語が並びますが、こういう音を作るのが巧いのです。文章も読みやすく展開も早い為、不気味な存在で読者を不安にさせるホラー文芸を楽しめます。開始数ページで一気に惹き込まれました。1章目は面白いホラー作品の良いとこ取り。余計な説明なしで一気に疾走する面白さがあります。 2章目は視点を変えて物語を見つめなおします。この構造が新鮮でかつ発見的な為、違う魅力で惹き付けられました。 事件の真相を解明するミステリ小説のように、化け物の存在理由を解明したり、関わる人の内面を覗いたり、名探偵のように頼れる存在がでてきたりと、現代的なホラーは悪くないと思えた作品でした。 |
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自殺サイトを介して集団自殺を目的に廃病院に集まった12人の少年少女。自殺を実行しようと思う矢先、予定外となる13人目の少年の死体が発見される。
彼は何者?何故死んでいるの?自殺なの?殺されたの?このまま集団自殺してよいのか?...と議論していく流れ。 最初の印象は映画『十二人の怒れる男』ですね。そのパロディで日本では『12人の優しい日本人』という作品があります。本書もこの流れを汲んでいる1作となります。これらの作品が好きな人は全体像や結末を感じながらの読書となります。予想や流れを知っている事については良し悪しありますが、それ系の作品です。 本書の難点を先に述べると、12人の登場人物および舞台の把握がし辛い事。序盤は誰が誰で何処に何があってというのが頭に入らなくて大変でした。 映画では人物と舞台が視覚的に認識できるので12人ものの把握がし易いのですが、それが小説となると著者の力量や苦労を感じますね。近々映画化されるという事なのでそれは良い流れで面白そうだと思います。 本書はミステリ的な推論・議論が展開されますが、そこがメインというわけではなく、集まった少年少女の葛藤やドラマを感じる青春小説の印象を受けました。自殺をしたくなる程追い詰められた少年少女。学校という閉鎖空間で相談や頼れる人物が得られず、独り悩み苦しんでいる者達の集いです。予期せぬ死体の発見を切っ掛けに、想いを少しづつ吐出し、どうせこの後死ぬんだからと悩みもぶちまける。それぞれの死にたい悩みを聞いた反応は12人もいるので、同情する人、そんなことで?と呆気にとらえる人物も出てくる。隣の芝を青く感じたり、客観的に見えたり、価値観の違いを感じさせてくれます。12人の多人数設定が活かされる巧い作りだと思いました。同年代付近の学生の読者には、悩みの捉え方、考え方、こういう例もあるんだよと感じさせられるでしょう。ミステリ的な死体の議論と共に、少年少女の苦悩の議論を重ね合わせた構成がなかなかでした。 読後感は良かったのですが、中盤までしっくりこず。もっとドロッとした深みや感情むき出しの展開が欲しかったかな。少年少女の若い世代ゆえか素直な展開でした。 |
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『このミス』の紹介で知りました。無意識に一般文芸書として認識していたのか、今まで視界に入っていませんでした。
こういう作品でミステリのランキングに入らないのが勿体ない。そして作家さんの事を調べてびっくり。宣伝先や情報源や読者層が違うのだと思いました。 ミステリとして見事な作品。夢中で一気読みでした。 本書の構成は、AGE22とAGE32の2冊が上下巻ものとして1セットです。 1冊の本ではなく分冊しており、"上巻""下巻"と表記せずにAGEで分けている所は、読者が時代をハッキリ分けて認識させる効果を演出していました。 AGE22の物語は、就活に失敗した22歳の光太がホスト人生を歩む話。 就活失敗の嘆き、自分を落とした会社への不満、家庭のお金の問題、恋人や家族との関わり。負の心情が溢れ返ります。 光太はお金の為に働かなければならず、金の魅力からホストという未知の世界へ入り込みます。この様子は分りやすい動機と共に、視点が読者の目線と合って描かれる為、面白く読めます。 夜のお仕事系のお話ではよくある展開ですが、読みやすさと嫌な感じがしない文章表現によって違った味が楽しめました。で、ホストの世界でとある事件が発生する流れ。 AGE32の物語は、その10年後の話。AGE22から順番に読みましょう。 上下巻もの作品は長くて苦手なのですが、本書は飽きる事無く楽しめました。その要因として謎と解決が何度も発生する事。大きな事件ではなく疑問や関係性の小規模な出来事なのですが、謎としての魅せ方や解決するテンポの良さが巧いのです。さらに、謎が明かされても気持ちが晴れる事なく、新たな謎に翻弄される展開がよい。いつの間にか社会の闇に触れているような怖さを感じました。AGE32を迎え、徐々に見えてくる人間模様や話の関連性は、ミステリ好きには伏線回収やどんでん返しといった姿として映る事になるでしょう。 必然性ある設定の数々が素晴らしかったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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閻魔堂沙羅の推理奇譚の第4弾。シリーズものですが1巻読んだ後はどの巻から読んでも問題なしです。2018年で4冊一気に刊行したのは凄い。
今回の1話目『向井由芽編』は読者応募の犯人当てクイズが開催されました。 本シリーズの構成は問題編⇒推理編⇒解答編⇒後日談という構成なので問題編だけWEBに公開され、犯人当てクイズ企画が行われたのです。推理を楽しむ作品なので、読者への挑戦ものが好きならこのシリーズは楽しめます。 さて、今回クイズに応募した身でして、何度も繰り返し読んだので思い入れが強いです。正直な所、クイズとしてみると手がかりが希薄なのと、犯人特定のロジックが論理的ではなく登場人物の思いつきとそれが正しい前提なので納得し辛いです。詳しくはネタバレで書きますが、P75からの数行における容疑者選定は突然過ぎて後付けを感じてしまいます。推理の前提条件が被害者が知っている事からなのに対して、知っている情報ではなく推測の想像となっています。かつその想像が正しい前提で話が進むのです。これは深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』のような疑惑を感じる次第。。。 と、応募クイズとしてみると不満を感じる所ではありますが、物語としては面白くまとまっています。安定の面白さでした。 本書は短編2作+番外編(沙羅の日常)。いつもは短編3作なので少し物足りなさもあります。 番外編に関しては、沙羅の日常が見える楽しさとともに品が無くなっていく様に困惑ですが、沙羅のキャラはいいですね。ツンと優しさと説法の加減が魅力的です。 色々思う所を書いているわけですが、不満で文句というわけではなく、それだけ作品を楽しんでいるという事を誤解なくお伝え。推理が楽しめる小説は面白い。次回作も楽しみです。 ネタバレで自身の応募内容など書きます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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記憶ネタのホラーミステリ。
記憶を消すことができる新薬『レーテ』。その臨床試験の為に集められた被験者達が閉ざされた施設で7日間過ごす話。 各章は1日の出来事が描かれる。被験者は毎日記憶がリセットされる為、各章の初めは、同じような目覚め、同じような会話が繰り返される。が、そこで事件は起きる。そしてそれを眺める読者は前後日の不整合に違和感を感じていく……。 これは著者の持ち味が出ている作品で楽しめました。 デビュー作の『バイロケーション』のホラー&SFミステリから始まり『リライト』以降は繰り返しもの作品が世に出てきたわけですが『リライト』以降のシリーズ作品は分り辛く好みからどんどん逸れて行った為、著者作品を敬遠していました。 本作は単体作品なので久しぶりに手に取った次第。 読んでいて何が起きているのかわからない。記憶喪失者の毎日を眺めている読者。読者は全貌が見えている立場なのに前後の食い違いを感じ取り、読者自身も記憶が曖昧になる。なんだこれ?という良い意味で嫌な感覚が巧い。同じ事を繰り返している筈なのに何かがおかしい。『リライト』で味わった奇妙な感覚が、記憶喪失ネタの本作でも味わえます。 この奇妙な味わいを作風とみるか、文章力とみてしまうかで好みが分れる次第ですが、本作はなかなか楽しめました。 大仕掛けがあるわけではない。読み終わってしまえば理解しやすい単純な話。でも読書中はさっぱり意味不明で混乱。記憶ネタのホラーミステリとして面白い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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個人的に作者買いの一人。不思議な世界観と男女の心情や世の中との距離感を素敵な文章で紡いでいく小説としての良さがあり好み。本作も健在でとても素敵な作品でした。
記憶改変できる世界での恋のお話。 舞台は、サプリメント摂取のように薬を飲むことで架空の記憶を移植できる世界。楽しかった事、嫌な事、これらは記憶の中の思い出による感情であり、記憶の追加・削除により人生を豊かにしたり、欠落した虚無感を補える世の中となっています。記憶がテーマとした土台の上で、世の中から距離を持った青年視点の物語となっています。 偽物の記憶であるはずの幼馴染の彼女が現実世界に現れた謎はありますが、読みどころは青年の心模様。人を信じられない卑屈な動きにヤキモキしますが、極端な例により孤独感や拠り所となる彼女の存在をとても感じます。登場人物については基本的に孤独で悲観的で心のどこかが欠如している傾向があります。人生を謳歌していてウェーイ!という感じな人にはまったく刺さらなそうな作風なのですが、寂しさや心に傷を持ったりした時には染み渡る独特の中毒性があります。 相変わらずの他人から見たらバットエンド模様だけど当事者にはハッピーエンド…のような絶妙な物語。『三日間の幸福』とは違ったアプローチで、生き方や考え方を感じさせられました。 著者作品はアイディアも然ることながら独特の世界観とそれを表現する文章が好きです。 過去作を読んできてますが、今作は伝えたい大事な想いは前後に空白行を入れて強調したり、会話文をあえて増やしたり、または無くしたり、改行を取っ払って溢れ出す思いを描いたりと、多様な表現が目に留まりました。技術的な事はわからないですが、文章やセリフ回しが読みやすく毎回不思議な世界観に浸れる読書が心地よいです。 あと表紙の女性も綺麗。作中には出てきていない永遠の愛を意味する桔梗を持つ儚い女性。著者の作品に出てくる女性ってこういう脆さを感じる雰囲気でマッチしていますね。 久々の新作で早川レーベルになった影響もあるかもしれませんが、色々と洗練されより深く心に残る作品でした。よかったです。 |
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メフィスト賞受賞作。かなり尖がっている奇抜な作品でした。
ライトノベルではお馴染みの『異世界転生』ジャンルを用いたメタフィクション小説。作者・読者・現実世界・空想世界を認識し、影響まで起こせるような構造設定となっています。この世界観の作り方がとても巧い。 あらすじにある通り、主人公は小説投稿サイトに小説を投稿している作者。自分の作品世界と現実世界を行き来できる現象に出くわします。自分の作品のどの章からでも入れるというわけではなく、序章から時間軸に沿って転生できます。自分の書いた小説通りに話が進行するので未来がわかる神様視点の作者。姫と良い関係を築いている所で、姫の母親が黒騎士に殺されてしまうシーンを書いている事を思い出します。姫を悲しませないように、現実世界へ戻り小説投稿サイトの編集機能で内容の変更を試みるわけですが、ここの構成はSFやセカイ系作品でおなじみのタイムパラドックス・過去改変物なのです。 現代的な要素を用いて、やりつくされた感がある古典の再構築というのはとても素晴らしく刺激的でした。で、単純な過去改変作品というわけではなく、現実世界・小説世界を認識する作者。そして投稿サイトの存在や本書を読む読者の世界などなど、世界の階層構造が本書によって一体化するような不思議な作品だと感じました。メタ構成の作品は世の中いろいろありますが、本書は現代的な要素を用いた新しさを生み出しています。 正直な所、最初の数ページの文章の砕け具合を読んだ所では好みに合いそうにないと感じる読者は多いと思います。立ち読みでサラッと数ページ読んで違うと思って買われなさそう。そんな出だし。ラノベやファンタジーの「設定」に許容がある必要もあります。ただ、奇想の変わった作品に触れてみたい方にはアリかと思います。 その他思う所として、読書中は舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』を思い出しました。駆け抜ける世界のごちゃまぜと、細かい事を気にさせないで一気に収束させちゃう流れ。あんな感じをライトに楽しめた作品でした。好みは人それぞれですが、奇抜な『メフィスト賞』をとても感じさせる作品で記憶に残ります。なんだかんだで凄いものを読んだ気がして面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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分厚い本なので読むのを躊躇していました。読んでみると一気読みであっという間。
社会的な問題を盛り込んだ本書は一見難しそうに感じますが、ストーリー作りや読みやすい文章なので苦に感じません。著者の力量を感じます。 女性一人の人生を通して、家庭崩壊、貧困ビジネス、保険金、売春などなど、不幸と転落の数々を描いていきます。読書の良さとは人の人生を体験し学べる点がありますが、本書は数人分もの物語を体験した感覚でとても刺激的でした。特に保険金や貧困ビジネスについては仕組みの勉強になった気分でした。 社会的な側面がある一方、ミステリの物語として殺人事件を絡めてより飽きさせない作りにしているのは巧いです。著者の『ロスト・ケア』も好みですが、同様に読書中は社会問題を読ませる物語として楽しみ、読み終わってみると構造がミステリになっており作り方や技法に唸らされます。 総じて雰囲気が重い本ですし、ページ数も多めなので躊躇してしまいますが、ミステリ好きなら一読の価値があります。 社会派として扱うテーマが盛り沢山で、ミステリとしても伏線や構成の妙を楽しめる素晴らしい作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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久々の西尾維新。キャラ造形や設定作りが巧いなと改めて思う。
ドラマ化やらで何かと耳にしていたのですが未読でした。文庫化されたので手に取りました。 前向性健忘症で眠ったら記憶が戻ってしまう探偵の掟上今日子と、頻繁に事件に巻き込まれる隠館厄介。探偵&助手の定番フォーマットですが、記憶障害の女の子探偵&巨漢の大男という設定や対比の面白さが新しさを感じます。キャラの名前についても西尾維新らしいと感じてしまう所が、個性の確立で凄いと改めて思いました。 5編からなる連作短編集。 1話目『初めまして、今日子さん』については、最初なので作品傾向の認識から始まります。キャラや物語設定紹介+軽めの事件。研究データの紛失事件という事で殺伐としない日常の謎といった所。 純粋に推理を始めるかと思いきやアンチミステリというか古典的な犯人特定法を用いるので、読者はこの作品がどういう種別のミステリなのか戸惑うと共に、ありきたりではない先の展開に興味が沸くかと思います。 2話目も日常の謎傾向の短編。3~5話は連続した物語。全編読んで感じるのは『記憶』というガジェットを一貫して扱っている事。キャラ設定についても、行動心理についても、事件そのものについても関わってきます。こういう拘りはとても好感です。 語り部の隠館厄介について。性格が戯言シリーズの"いーちゃん"を感じました。最終話の行動が正にそう思いますとともに、一筋縄では行かないと予感させる今後の物語展開にも期待が持てます。 全体的に殺伐さがない日常の謎寄りの探偵物語です。続編の文庫化も待ち遠しいです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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かなり骨太な医療ミステリでした。
『このミステリーがすごい!』大賞作品に対する個人的なイメージはもっとライト層向けでミステリも軽い印象だったのですが、本書は本格医療小説+社会派+ミステリという感覚です。 表題となっている、癌が何故消滅したのか?という謎は序盤で仮説として明かされます。その後も謎が展開されてますが、方法は読者が思いつくような一発ネタトリックではなく、医学的な知識を用いたものなので謎解きを楽しむというより、医療現場を知れるような物語です。 医療小説ですが、出てくる言葉は専門用語過ぎず、読者がついてこられる塩梅なので、知的好奇心をくすぐる感覚で楽しめました。 癌とはそもそも何か?医療保険とは?検査では何が起きているか?それらに関わる人たちの物語として楽しめ、社会派小説としての訴えも感じられました。 医療ミステリに関しては、あまり多くを読んだわけではないですが、本書は経験上かなり高品質な作品であると感じます。 近年のキャラ小説もしくはライト設定として医療を扱う作品ではなく、直球の医療小説ミステリとして優れています。著者がそもそも、国立がん研究センターや医療系出版社勤務の方なので、専門性はバッチリなのです。ミステリとしても楽しみましたが、医療の知らない事を知れて勉強になった感覚を得た作品でした。 |
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閻魔堂沙羅の推理奇譚の第2弾。刊行ペース早いですね。相変わらず安定した面白さでした。(☆7+1好み補正)
構成は1作目と同じで、 ・各主人公のエピソード⇒ 死んでしまう⇒ 表紙の閻魔大王の娘登場⇒ 推理編⇒ 解答編⇒ 後日談。 という流れ。 本書は変化球ケースのストーリー。沙羅は皆に蘇りのチャンスを与えているの?普段はどうしているの?みたいな読者が疑問に思うようなストーリーを先に提示した物語である印象です。あらすじ内容含む3篇の物語。 どの話も、ミステリとしても人間ドラマとしても分かりやすくて読みやすい。このバランス感覚が巧く気持ちよいです。 変化球としては2話目の悪党が主人公のケース。 死因が不明。どうやって死んだのか?を問題のミステリとして楽しみつつ、悪党に対する閻魔堂の対応も楽しめる作品でした。 どの話から読んでも楽しめるシリーズとなりそうです。 マンネリ化しないようにバラエティー豊かになる今後を期待。今はまだ簡単な謎解きレベルですが、驚愕な仕掛けがあればもっと知名度あがりそう。 色々期待ができる作品として続編も楽しみです。 |
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