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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数359

全359件 201~220 11/18ページ

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No.159: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

百年法の感想

面白かった。
永遠の若さを手に入れられるが、人類の世代交代を促す為に100年後に死ななければならない。
この設定だけで特異な小説なのですが、内容が非常にリアルに描かれている為、違和なく没頭できました。

こんな事が現実に起きたらどうなるんだろう?と考えた時の可能性が、非常に練られたシミュレーションとなっているのが見物。
不老な為、年齢の関係ない自由恋愛や別家族を新たに作り直すファミリーリセットや、100年目を迎える人々の受け入れ方や反発心などの感情面、100年生きられると認識している場合、活動が怠惰になり経済面が衰退するなど、作中に出てくる未来を暗示したMレポートが本書自体のような錯覚を得ました。(作者名の宗樹レポートなんちゃって)

余談として、不老世界な為、絵面を想像すると皆20代付近の容姿なのが面白い。会話の言葉遣いで立場や貫禄を読者にイメージさせているのが作家の技だなと思いました。

▼以下、ネタバレ感想
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百年法 上
山田宗樹百年法 についてのレビュー
No.158:
(7pt)

スマイルメイカーの感想

著者2作目の読書。本書もミステリの手法を使った爽やかなストーリーで読後感が気持ち良い。
手に取った2作がたまたまなのか作風なのか、他の作品も気になり始めた作家さんです。

前半の強盗の話の時点では、感性が合わなくてどうかなという心境でしたが、徐々に話が見えてくると、それも気にならなくなり作品にのまれていました。
大きな仕掛けや驚きはないのですが、各ドライバーの話の繋がりの巧さや人情味豊かなエピソードが良くて、ほっこりさせられます。
展開が分かりやすくて軽いので、物足りなさを感じるかもですが、そこがかえって安心な良さがあります。
殺伐としない温かいミステリをお探しなら本書はオススメですね。

▼以下、ネタバレ感想
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スマイルメイカー (講談社文庫)
横関大スマイルメイカー についてのレビュー
No.157: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

ワイルド・ソウルの感想

これは凄いわ。ただただ圧倒されて言葉を失った作品。
「日系ブラジル人」という過去にブラジルへ移民した日本人を耳にした事はあるものの、その内容がこういうものだったのかと詳細を知り、衝撃を受けました。

ページボリュームが多い為、食わず嫌いで手に取っていませんでしたが、評判の良さでやっと読書。
骨太の社会的なテーマが敷かれつつ、個性的な登場人物達のドラマも魅力で退屈しない読書。脇役にあたるような、報道チームや警察側の秋津など、外伝で1冊掛けそうなぐらい印象に残ります。気付いたら惹き込まれて一気読み。上下巻まったく気にならなかったです。

作品として完成されているので後は好みの問題。読んで損はないでしょう。素晴らしかった。

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ワイルド・ソウル〈上〉 (新潮文庫)
垣根涼介ワイルド・ソウル についてのレビュー

No.156:

CUT (単行本)

CUT

菅原和也

No.156:
(7pt)

CUTの感想

首切もの。被害者はなぜ首を切断されたのか。
パターンとしては見慣れたものですが、使い方や真相の隠し方が巧かった。終盤の展開はなるほどなぁと思う。

現実では、捜査や検死が行われれば直ぐに解明してしまいそうな内容。警察が機能していない気がしますが、本書のエピローグ以降に警察によって真相が究明するかもしれないと勝手な想像をする事にします。
とはいえ、本格志向のミステリはやはり面白い。作中の小道具や首切問題、重力密室と称する足を踏み入れたら床が崩れてしまう空間内で起きた殺人の謎。真相が分かればそれらが綺麗に繋がっていた事がわかる。こういうのは好み。
著者3作目の読書。どの本も、猟奇的、アングラ思考、著者の経験からくる夜のお仕事のお話など、持ち味があって面白い。文章も内容に対して軽くて嫌にならない為、見知らぬ世界の雰囲気が楽しめてよい。他の本も追っかけようと思う。

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CUT (単行本)
菅原和也CUT についてのレビュー
No.155: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

四段式狂気の感想

個人的には掘り出し物作品。ぐちゃっとしたホラーを読もうと思って手に取ったら、パズル仕掛けのミステリ小説だった。ジャンルはホラーなんですけどね。これは求めるものと結果が違うので好みが分かれそうな作品だなと思いました。個人的には巧みでアリです。

タイトルにある通り4章仕立ての四段式の狂気を描くホラー。第1幕はストーカーの常識が通用しない思考回路の狂気。いやーなんていうかパターンが見える。見え見えなので人によってはここで評価がガクンと下がるかも。が、これは狙ってやっているのか、このあと続く次章で物語が変容しだして、そうきたか。と驚かされる。緩急の刺激が効きました。

ネタバレではないセリフの引用で、『都合のいいように狂った』と例えがでるのですが、この言葉は正に本書の作りに感じます。『狂気』という感性が仕掛けのピースとなっているのが巧い。
なんとなく昭和のおどろおどろしい時代の作品なら本書は名作に成りえた気がするのですが、現代風のテイストになると何故か怖くない軽いホラーになっているのがもどかしい所。
パズル的な仕掛けを味わうホラーでした。

▼以下、ネタバレ感想
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四段式狂気 (TO文庫)
二宮敦人四段式狂気 についてのレビュー
No.154: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

さあ、地獄へ堕ちようの感想

現実的なアングラ世界を盛り込んだ横溝正史ミステリ大賞受賞作。

SM譲の主人公ミチに始まり、類は友を呼ぶのかその近辺に交わる人々も特殊な方ばかり。
皮膚に針を刺したり、割いて血を流したり、吐いたり、ピアスの穴開けより過激な人体改造ものがでてきます。こういう表現作品が苦手な人は本作は避けましょう。個人的には現実にある狂ったアングラ世界を垣間見るという意味では刺激的で面白かったです。

意図せず知ってしまった死体投稿SNSサイト「地獄へ堕ちよう」に数日後、知人が凄惨な姿でUPされていた。
サイトに触れた事をきっかけに、ホラー作品っぽく不気味な世界に足を踏み入れてしまった流れ。どうでもいい現実世界に刺激が舞い降りてきたわけで、そこでサイトの存在を調べるという目標を持った主人公が活動していく様は、生きる意味を見い出した姿に映りました。アングラ世界での青春小説な感じ。

ヤクザ作品のような大人の落ち着きとは違う、若者のやんちゃさ勢いがある非日常世界。
痛々しく勢いのある文章は刺激的で一気読みしやすく好みでした。
ラストの幕切れ方もスパッといい所で切った感じが好き。

▼以下、ネタバレ感想
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さあ、地獄へ堕ちよう (角川文庫)
菅原和也さあ、地獄へ堕ちよう についてのレビュー
No.153: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

時限病棟の感想

『仮面病棟』とまとめ買いしていたので続けて読書です。

今作は、状況不明な状態で目覚めた男女5名が、爆弾の仕掛けられた場所から脱出すべく、ピエロからのミッションを解いていく所から始まります。登場人物の1人に「リアル脱出ゲーム」経験者がいて、その人のアドバイスを参考に謎を解いていくシーンは、まさに「リアル脱出ゲーム」の小説版といった所でした。

私自身も何度か「リアル脱出ゲーム」に参加しているのもあり、あるあるネタで楽しめました。その雰囲気は十分に伝わってきます。また、前作の感想で現役医者ならではの仕掛けを期待する所があったのですが、本作ではその点は十分に活かされていました。ミッションに必要な医療準備や手術などは現実の脱出ゲームにはない異様な雰囲気を盛り立てており好みです。

真相もよく出来ていて驚かされはしたのですが、点数はそぐわないです。理由としては真実に至る過程が論理的に導かれるのではなく、自滅というか告白というか、勝手に明かされていく所。ワクワクさせておいて答えが勝手に出てきてしまうような感覚が拍子抜け。なんか凄く勿体ない。
著者の作品は『仮面病棟』に続き2作目の読書なのですが、伏線が分かり易く答えが見えてしまうので、ミステリ小説というよりTVのサスペンス系で、常に視聴者を繋げる為に謎と答えとイベントの小ネタを繋いでいくような感じを受けました。名探偵ものみたいに、最後の最後でまとめて真相を明かした方が衝撃的な作品になりそうだけど、前作同様に分かり易くて勿体ない。作風と好みの問題ですね。読みやすいのはよかったです。

▼以下、ネタバレ感想
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時限病棟 (実業之日本社文庫)
知念実希人時限病棟 についてのレビュー
No.152: 5人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

孤狼の血の感想

濃い作品を読みました。とても惹き込まれて面白かったです。

警察小説は苦手で敬遠がちなのですが、推理作家協会賞受賞作品という事で手に取りました。著者作品を初読書。

これは警察小説というよりヤクザもの。そのヤクザと繋がっている警官が上司である新人の視点で描かれる物語。
状況が何も分からない新人視点というのは読者と気持ちがリンクしており、世界観に入りやすくて良いです。上司との対面、ヤクザとの対面、序盤は新人日岡とともに読者も非常識な世界へ足を運んでいくわけです。正義感溢れる日岡は、上司のヤクザとの繋がりや違法捜査を目の当たりにしながら、悩み葛藤するわけで、読書中は同じ心境でした。読み進めていくにつれ、徐々にヤクザや上司に魅了されていくのですが、これはそれぞれのキャラクターがとても良いからですね。正義と悪のキャラが分かりやすいので、ヤクザも上司もなんとかしてくれる頼れる安心感と期待が感じられて好んでいきます。
人情的にも面白いですが、本筋は殺人事件解決の捜査と、関わるヤクザ抗争の一発触発のハラハラ感。これも面白い。まぁ、個人的にはヤクザ抗争はトントン拍子で収束した感がありましたし、期待するミステリっぽくはなかったので最近の推理作家協会賞はエンタメ系かなと思いました。ただ、読後感の良い主人公の物語という事で、とても楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
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孤狼の血 (角川文庫)
柚月裕子孤狼の血 についてのレビュー
No.151: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

シャドー81の感想

本書購入後、本の厚みと登場人物一覧の名前が頭に入らずで、しばらく積読状態でした。
ただ、読み始めてみると人物の登場の仕方が区分けされていて把握しやすい。色々と杞憂でしたね。

犯人視点を含む倒叙ミステリで、序盤は何を計画しているのか読めない『犯行の準備』が見どころ。特殊な船を購入したり、マネキンを用意したりと、謎に満ちたワクワク感が楽しかったです。あらすじにあるハイジャックシーンだけを描くのではなく、その犯行の準備や苦労をしっかり描く本は中々珍しいかも。登場人物紹介や舞台背景のベトナム戦争や政治的内容を描いているにも関わらず、さらっと読めてしまうのも○。

ハイジャックや戦争という単語内容に対して殺伐とした雰囲気がないのが凄い。中身は爽やかです。終わり方も綺麗に閉じて巧い。
良書を読んだって気分になり満足でした。

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シャドー81 (ハヤカワ文庫NV)
ルシアン・ネイハムシャドー81 についてのレビュー
No.150: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

図書館の殺人の感想

裏染天馬シリーズ長編第3弾。
いやー面白かったです。ロジカルな推理と犯人が明かされるシーンはお見事でやられました。
好みなのもありますが、シリーズ通して外れが無いのが嬉しい。

学園ミステリとして登場人物が増えてきました。なので人物を把握する上で、本作単体で楽しむのはちょっと難しく、1作目ぐらいは事前に読書してあると良いです。

ロジカルな推理を得意とした本格ミステリでありつつ、学園風のドタバタや笑いも交えているのは楽しいです。今回はクスっとする所が多かったです。序盤、学園内での裏染登場シーンで颯爽と推理を披露するも、女子生徒に「女の子の靴からそこまで考えるなんて変態みたい!」と突っ込まれるのは裏染のキャラクター性がはっきりしているからですね。よい探偵役です。金田一少年系といえばそうですが、アニメネタで現代風にアレンジされているのがいい感じ。

さて、事件は図書館での殺人。そんな所で事件起こさないでよ。とか、科学捜査をすれば直ぐに解決してしまうのでは。。。とか思う所がありますが、そういうのは気にしないで楽しむ作品です。現場の手がかりから論理的に事件の真相を導く様。探偵の奇怪な行動も、あとあと納得と驚きに変わる刺激。こういうのがいいんです。

一見、地味な殺人事件なのですが、推理パートで面白く読ませちゃう作品は凄いなと思います。
裏染の過去もでてきて日常パートも充実してきました。次回作も楽しみです。

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図書館の殺人 (創元推理文庫)
青崎有吾図書館の殺人 についてのレビュー
No.149:
(7pt)

複製された3つの自分の精神体。犯人はどの自分なのか?

ソウヤー4作目の読書。だんだんと著者のエンターテインメントの傾向が感じられてきました。
本書もSF+ミステリ+男女模様。

男女模様は熟年夫婦の不倫問題という人間臭い話。男性側の辛い気持ちがとても伝わってくる。作品全体を包括していて巧いつくり。

SF要素は、人間の死をスキャンして魂の存在が確立した世界。人の脳味噌をスキャンしてニューラルネットワークを構築する事も複製も可能です。
人間の死とは何なのか。医学的な死、自然死、精神だけがコンピューターに存在する世界が面白く読めました。この手の話は好みですね。

ミステリ要素は、自身の脳をスキャンして生み出された3つの人工知能による事件。1つ目は自身の複製であるオリジナルの精神。2つめはオリジナルから死の概念を消去した不死の精神。3つ目は肉体の概念を消した死後の精神。
この人工知能のどれかが、殺人事件を行うわけで、どの自分が犯人か?という特殊設定が面白い。

これらが巧く混ざり合って、読ませるエンターテインメント作品になっているのは毎度凄い。特殊状況なのでオリジナリティ強い刺激が心地よいです。
ただ、ちょっと点数が低いのは、古い作品特有の既視感の為です。90年代以降、様々なSF作品の発展により人工知能の事件はちょっと見慣れてしまったかなという心境。

人工知能の犯人ものならデビュー作の『ゴールデン・フリース』の方が今読んでも発想が飛んでいて面白いです。
本書は、生(性)や死という人間の存在に趣がある作品として楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
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ターミナル・エクスペリメント (ハヤカワSF)
No.148:
(7pt)

幽霊には微笑を、生者には花束をの感想

幽霊を扱ったライトノベル的なミステリ。

心霊現象を全く信じない高校生主人公が、友人の付き添いで廃屋調査に参加した所、自分だけに見える女の子と遭遇する。幽霊に付きまとわれる中、自宅で妹にも見える事がわかる。これを機に兄妹で記憶の無い女の子の幽霊の相談に乗る事にする。

まぁ、軽い学園風のラノベなのですが、現実的な主人公の各種実験がミステリの推理考察的で面白い。
例えば、妹にも見えると分かった際、「同じものが見えているのか?」互いに絵を描いて認識している存在の検証をしたり、幽霊の服装や装飾物から、生まれた時期や家族などを推察したり、この幽霊は脳にどういう影響を与える存在なのかを定義する過程が面白い。

『本格ミステリ・ディケイド300』にて本書を知った次第ですが、学園幽霊ものなのに思考や事象の結びつき方がミステリ模様なので、軽い気持ちで読みながら十分楽しめた物語でした。

結末もハッピーエンドでベタベタ感ありますが、それも好みです。

▼以下、ネタバレ感想
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幽霊には微笑を、生者には花束を (ファミ通文庫)
飛田甲幽霊には微笑を、生者には花束を についてのレビュー
No.147: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

さよならドビュッシーの感想

個人的に「ドビュッシー」の作品は「ゆったり」や「やさしく包み込むような」曲の印象でして、辛く孤独になりたい時に触れるような作品で気持ちが沈みやすい。本書の知名度は把握しながらも中々手に取らなかったのは、そんなドビュッシーに対する個人的な感覚意識からで敬遠していました。
シリーズとして冊数を重ねているのでそろそろ読もうと手に取った次第。読んでみると、力強いドビュッシーの演奏表現にびっくりでした。特にアラベスクは、自分のイメージが壊され違和感を受けつつも、表現の仕方でこんなに熱く描けるのかと新鮮な視点をもらった気持ち。久々に曲を聴き直してみようと読後感じた次第。

音楽を演奏する者、鑑賞する者の思考がとてもよかったです。指運びや姿勢等、小説でここまで雰囲気が伝わってくるのは久々でした。なんというかどれも気持ちが昂るような熱さがありました。スポコンの様。

そんな具合で、ミステリよりも音楽小説として楽しめた作品です。
ミステリ要素については何というか偶然や悲劇の物語でこれは辛いなと思って好みに合わずでした。

食わず嫌いで読んでみたら良かったのでシリーズを追っかけようと思います。

▼以下、ネタバレ感想
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さよならドビュッシー (宝島社文庫)
中山七里さよならドビュッシー についてのレビュー
No.146:
(7pt)

いたいのいたいの、とんでゆけの感想

これで著者全作品読了です。ハマりました。死が絡む男女の不思議な関係は著者独特ですね。

本作は、出来事を「先送り」して一時的になかった事にする能力が現れます。
交通事故の死の瞬間を先送りにした女性が、残りの余命で私を苦しめた人たちを殺そうと復讐する話です。『三日間の幸福』でも余命が決まっている時、残りの時間何をするか?というお話でしたが、本作は悪意に染まった復讐とそれを遂行する男女の関係が著者の不思議な味わいで楽しめました。
鬱屈していて痛くて嫌なんだけど、少し暖かさを見せるといいますか。普段何気ない事がマイナスの場を作る事で感じ取れるような気がする。そんな感覚でした。

本作は残酷で描写がキツイ事柄が描かれていきます。
作風が人生に悲観している主人公の物語なのは相変わらずですが、一番不幸で残酷な描写をしている作品でした。コンセプトの1つが「落とし穴の中で幸せそうにしている人」を描いたとあり、なるほどと思いました。
毎回、事柄を文章にすれば絶望的で不幸なのに、当人は幸せそうに描かれているのが凄い。

重い作品なので他作で作風を知った上で読むとよいです。本作を一番最後に読んでよかったです。
「面白い」というと感覚が違くて、著者の世界観に浸る作品で楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
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いたいのいたいの、とんでゆけ (メディアワークス文庫)
三秋縋いたいのいたいの、とんでゆけ についてのレビュー
No.145:
(7pt)

永遠の館の殺人の感想

シリーズ完結。本作はシリーズを読んできた人向けの作品。
連続殺人鬼キーラ―・エックスと何なのか?
その行動の異常性についての背景がしっかりと描かれている作品でした。
またその内容が納得できる範囲であり、かつ個性的な物になっているのが見事でした。

全シリーズを読んでみて、ミステリ単体として楽しめたのが0作目『白銀荘の殺人鬼』。
1,2,3作目は順番に読むのが推奨で、多少気になる点があっても『雪の山荘+連続殺人鬼+α』の楽しさで満足できる楽しいシリーズでした。

本書単品としては、舞台背景がとても面白かったです。
好みは人それぞれで薦め辛いですが個人的に楽しいシリーズでした。

▼以下、ネタバレ感想
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永遠の館の殺人 (光文社文庫)
二階堂黎人永遠の館の殺人 についてのレビュー
No.144:
(7pt)

千年岳の殺人鬼の感想

『雪の舞台+殺人鬼』というワクワクするシチュエーションのシリーズ作品。
シリーズといっても前後に繋がりはないので、どこからでも楽しめます。

今作は、時空間を移動するワームホールが存在するのか?というオカルト要素を盛り込み、複雑なミステリ作品に仕上がっていました。なんというかパズル小説ですね。人間ドラマや動機は置いておいて、雪の山荘で連続殺人が起きて犯人は誰だ?系が好きな人向けです。

難点は、SFなのか、オカルトなのか、本格志向なのか、立ち位置が不明なので思考停止しながらの読書だったことです。なので伝えておきますと、本作は本格思考もの。様々な設定をミステリの部品として拾って読むとよいです。
結末は複雑すぎて、うーん。。とすっきりしないのですが、シチュエーションは最高なので楽しめました。
90~00年代の本格思考のミステリは好みだと再認識です。

▼以下、ネタバレ感想
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千年岳の殺人鬼 (光文社文庫)
二階堂黎人千年岳の殺人鬼 についてのレビュー
No.143: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

名探偵に薔薇をの感想

序盤からの見立て殺人や非現実的な毒薬ならではの推理展開が面白く、コテコテのミステリを楽しみました。完全犯罪可能な毒薬やメルヘン見立てが、演出の為だけではなく、ちゃんと意味がある設定は好きです。

また、事件パートも然ることながら、それを解決する名探偵の苦悩がとても表現されていた作品でした。
真実を明かすことが本当に良い事なのか。これ系の名探偵の悩み本はありますが、全編通して繋がる完成度は高く、哀愁漂う読後感は久々でした。

▼以下、ネタバレ感想
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名探偵に薔薇を (創元推理文庫)
城平京名探偵に薔薇を についてのレビュー
No.142:
(7pt)

恋する殺人オーディションの感想

現代風デスゲーム作品。

日本一のアイドルグループを結成すべく集められたのは日本一の【容姿】【歌唱力】【ダンス】【頭脳】【演技】【性格】に該当する6名。監禁模様が動画サイトでリアルタムに公開。視聴者が購入する投票権によって順位が決められ、最下位には死が待っている。

デスゲームもので狂った非現実作品かと思えばそうとも思えなくて、アイドルが結成される背景や舞台装置など、かなり現実的で違和感がないため、読んでいて惹き込まれました。閉じ込められた女の子達の反応もありそうな行動を起こしていくのでとても良いです。
1000年に一度のアイドルや,2ch,ニコニコ動画など現実の用語を使いながらその雰囲気を脳内補間させているのも個人的にはアリです。現実に起きたら同じような反応になりそうな所が巧い。読者層を考えたエンタメ作品としてよかったです。

頭脳戦の作品ではないので、そこに期待はないのですが、時勢ネタを取り入れた今だから楽しめるデスゲーム作品として読んでいて面白かったです。サクッと読めるライトなミステリでした。

▼以下、ネタバレ感想
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恋する殺人オーディション (メディアワークス文庫)
御影瑛路恋する殺人オーディション についてのレビュー
No.141: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

君が電話をかけていた場所/僕が電話をかけていた場所の感想

『君が/僕が電話をかけていた場所』のタイトル違い2冊が上下巻です。
文章の空気感や不思議なストーリーが良いです。単純に好みの物語でした。

顔の醜い痣のせいで交友関係も築けず人生を悲観している主人公。小学校時代の思い出の中で痣を気にせず接してくれた女の子がいたけれど、痣のコンプレックスのせいで僕なんかと釣り合わないと避けてしまう。そんな主人公が高校生になった時、謎の公衆電話からの女の賭けによって痣を消してもらうが、再開した女の子は顔に痣をおって自殺しようとしていた。という始まり。
『オペラ座の怪人』や『美女と野獣』の男視点の主人公物語といえばイメージしやすいです。逆の立場になった時、さらには新たな困難を知っていく中で恋の結末はどうなるのか。という話かと思いきや、もっと複雑になって先が読めない展開でした。

著者4冊目ですが、今作も女の子が魅力的ですし、頭に浮かぶ情景がとても綺麗。固くなくすんなり入る文章が好みでした。ミステリとしては広義な位置付け。恋愛ゲーム系のストーリーが好きな人には刺さります。ネタバレなく細かい事は言いづらいですが、暗雲立ち込めるテーマの中でこの読後感は気持ち良い作品でした。

▼以下、ネタバレ感想
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君が電話をかけていた場所 (メディアワークス文庫)
No.140:
(8pt)

SFファーストコンタクト+法廷ミステリ

著者本、初読書。
容疑者がエイリアンという変わった法廷ミステリですが、これが新鮮で面白い。

人類が初めて宇宙人と遭遇したファーストコンタクトから始まり、容姿や言語や価値観の違いなど、異星人への興味好奇心が登場人物達同様に夢中にさせます。人類は左右対称の2対に対して、現れた異星人は前後左右の4対からなる生物(表紙の異星人)。前後にも腕や目や内臓が存在するといった設定がしっかりしていて惹き込まれます。

価値観の違いを活用したミステリの経験はありますが、相手が異星人となると精神面と肉体的な物理面が異なるので、何が起きるか予想できません。中盤からは法廷ミステリとなり、1つずつ細かく事実を突き止めて行くのが見ものでした。

終盤のまとめ方も爽快で、SFとしてもミステリとしても二重に楽しめた傑作でした。
他の作品も面白そうなので追っかけてみようと思います。

▼以下、ネタバレ感想
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イリーガル・エイリアン (ハヤカワ文庫SF)