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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数212

全212件 141~160 8/11ページ

※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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No.72: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないの感想

不思議な読後感を得る作品です。重くもなく軽くもなく、何が心に残ったのかうまく言えないのですが、タイトル文を借りると謎の弾丸で撃たれた気持ちであるわけで、何かを受けた気持ちになっています。

結末は冒頭にて明かされており、その内容は単語としては悲劇なのですが、本書を読んだ後だと単純な悲劇だけでなく救済とも感じられます。が、この感覚は読者によって見え方が変わるでしょう。

他者の感想によって、本書の感じ方が影響を受けるわけでも無いと思います。何となくですが、作中にでてきた心理テスト同様に本書を読んでどんな感想を描くのかで心理面が覗かれそうな気持ちになりました。

私自身、作品を読んでどう思ったかと言うと、主人公の山田なぎさや、海野藻屑ともどもには、何とも思わずそういう世界に触れたのかなとか、義務教育を終えるまでは誰かに依存する事になり、自己や自由を手にする事ができない為、設定された環境の中でどう生きるか考える必要があるな。とか思っている次第でして、これは無関心や他人事のような心理を分析されたような気持ちになりました。

読む時期によって得られるものに変化が起きそうです。
同世代の学生なら、子からの視点で選択肢のない無力感を味わい、大人の視点では手段の知識を得ていても実現できない無力感を感じるのでしょうか。と、これも人それぞれの感想だと思います。

なんとも不思議な文学作品を味わいました。
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない  A Lollypop or A Bullet (角川文庫)
桜庭一樹砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない についてのレビュー
No.71:
(7pt)

六花の勇者の感想

最近、特殊設定ミステリを好んで読んでます。本書もその1冊でファンタジー×ミステリ。

魔人復活を阻止すべく運命の神に選ばれし6名の『六花の勇者』。ただ、約束の地に集まった勇者は7名だった。
何故7名いるのか?世界の法則がおかしいのか?偽物が紛れ込んでいるのか?という疑心暗鬼もの。
現実的なミステリならスパイ小説辺りになる内容に、勇者の能力(魔法)要素を足してファンタジー世界での特殊設定ミステリに変貌させているのが面白いです。

本書はシリーズで数冊出ていますが、1巻で区切りがついていますので本書だけで楽しめます。あと補足ですが、2巻目のあらすじが1巻のネタバレなので閲覧は注意です。

閉ざされた神殿内部で結界魔法が発動された謎は、密室問題として扱っていたり、真相究明の推理場面が存在してはいますが、ミステリ要素は低めです。ただ、誰か1人が裏切り者かも?という疑心暗鬼が効果的で、勇者同士の戦闘も誰と共闘するか、誰が味方か、負傷者と犯人かもしれないあいつとを一緒にいさせてよいのか?といった戦略が楽しめました。キャラクターも良く、各人の抱えている過去だったり、主人公アドレットの熱い信じる心だったりと、物語が面白かったです。
序盤、何の能力も持たないアドレットが地上最強の男だと自称するあたりは痛い勇者で、ラノベ雰囲気抜群でしたが、後半になると良い味になるのも良いです。

シリーズは続いているみたいですが完結していないのですね。
2作目以降は様子見。1巻だけで終わらせても勇者の戦いは続いているんだなと、その後の期待感を読者の想像にお任せとして楽しめます。

▼以下、ネタバレ感想
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六花の勇者 (六花の勇者シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)
山形石雄六花の勇者 についてのレビュー
No.70: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

人間の顔は食べづらいの感想

んー…これは評価が分かれそうな小説ですね。

特殊な舞台での本格ミステリ。幾人による推理合戦や一筋縄ではいかない結末が非常に面白い。ただ、粗がとても目立ち、共感できない所が多々あります。細かい事を気にせずミステリの謎を楽しむのか、世界観を含めて楽しむのかで好みに影響するかと思います。

物語は、新型ウイルスの影響で肉が食べられなくなった後、自身のクローンを食用肉として認可された世界。食用クローンとして、人間を飼育して加工する施設で働くものを視点としたミステリです。
ドロドロした内容はないのですが、人を飼育したり加工したり食したりという雰囲気に気持ち悪さを感じる人は避けた方がよいでしょう。

個人的には特殊な世界観で、ぶっ壊れた刺激も好むので面白く読めました。登場人物達も倫理観が程よくずれているのもよいです。毎日食用人間の首を切断する加工部の人間と、こっそり育てられた食用人間のチャー坊。どちらも人間であるので牛や豚と違って言葉を話すんですよね。『てめぇは食べるために作られたんだ』といった会話が中々強烈です。

人々の会話は非常に面白い反面、世界観が舞台装置の記号・設定になってしまていると感じました。
人間を加工する部署がある。廃棄物処理センターがある。施設の入り口はここにある。という感じで舞台は説明調なのです。人間が飼育されているので、生生しい声が聞こえたり、匂いがどうだとか、その場の雰囲気がありそうなのですが、五感による空気感が感じられなかったのが残念です。
この工場は人間を加工しており、世界が注目するかなり特殊な工場だと思うのですが、セキュリティが甘々です。人が簡単に侵入できそうだったり、不審者がどうだとか、社員は自由に徘徊するなど、現実的に考えたらいろいろ納得できない所が生まれてしまい、齟齬が生じている気持ちになります。首だけ切り落として出荷って、毛や皮膚や内臓はそのままなの?冷凍じゃなくて常温?とか。細かい場が描かれず、謎解きの為に必要な設定だけが並べられていると思った次第です。
逆に言えば、描かれている事は謎解きの為に散りばめられた伏線だったり、推理合戦の材料だったりするわけなので、冒頭に書いたミステリの謎で楽しむのか、雰囲気も考慮して楽しんでいるかで作品の評価が変わると思う次第なのです。

細かい所はネタバレで。タイトルと表紙の気持ち悪さは好み。
文章は読みやすく強烈な設定が楽しめるので、今後の作品に期待です。

▼以下、ネタバレ感想
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人間の顔は食べづらい (角川文庫)
白井智之人間の顔は食べづらい についてのレビュー
No.69: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

殺す者と殺される者の感想

1957年の古典作品。永らく絶版で幻の名作となりましたが、創元推理文庫創刊50周年での復刊希望リクエストの読者投票で選ばれたのを機に新訳で復刊。その2009年の新訳版を読みました。

冒頭に記載されているのでネタバレではないですが、本書は『信頼できない語り手』の作品です。

叔父の遺産を相続し大金を得た事と、氷に足を滑らせて頭を打って断片的な記憶喪失になってしまったのを機に、仕事を辞めて故郷に移住した主人公。記憶障害の影響か、なんだか物はなくなり、住人に違和感もある、何か事件に巻き込まれているのか?いったい何が起きているんだろう……。という作品。

古い作品の為、現代ミステリでは見慣れた設定を多く感じ、これってもしかして、あれではないか?、これかも?と、読者は想像を巡らせると思いますし、その枠を大きく飛び越える事はないかもしれません。が、技の使われ方や場の雰囲気がうまく、ただの既読感で終わらないのが凄いです。

実は正直な所、新訳本での読書であるのに文章が読み辛く感じてましたし、語り手の曖昧さから内容の把握が困難で、中盤まで面白くなかったです。古い本だからハズレだったかなと思ったのですが、途中である仕掛けが発動して驚くとともに、それだけでは終わらず、その先へ継続するストーリー展開に惹き込まれました。

現代では、新しさを感じないと思う所が残念ですが、ネタの複合や使われ方でこう面白く化けるのかと上手さを感じる作品でした。タイトルも逸品で完成度の高さを感じます。

点数は、既読感の仕方なさと読み辛さの好みでこの点数。

▼以下、ネタバレ感想
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殺す者と殺される者 (創元推理文庫)
ヘレン・マクロイ殺す者と殺される者 についてのレビュー
No.68: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

いなくなれ、群青の感想

読書前後でイメージがまったく変わりましたが、なかなか気持ち良い読後感でした。

裏表紙のあらすじに『失くしたものは、何か。心を穿つ青春ミステリ』として書かれています。
ミステリっぽく、謎・真相は?・階段島と言った単語を前面に出したPRですが、個人的にこれは出版社側の商業戦略だと思いました。中身は自己や相手を思う心模様を描いた青春小説だと感じます。

記憶がなく突然島に現れた人々が、とりあえず普通に生活する階段島。舞台設定の謎は、現実的なミステリ寄りではなく、ファンタジーでとらえると良いです。
過去と外界を削除した箱庭舞台なので、登場人物達の、その後の考え方や人との関わり方に焦点が合わせやすくなり、詩的な情景や哲学的な感情を味わえます。
なので、何でだろう?という謎を追い掛けるミステリ的な読書ではなく、情景や皆の気持ちを感じる青春小説として読むと、より良い読書になると思います。

ネガティブな主人公にポジティブなヒロイン。ちょっと癖やコンプレックスがある人々など、特徴的な登場人物達による作品作りは、わかり易く巧いですね。なるほどと思いました。
成長を描くというと厳密的には違うのですが、不安定な心やそれの解放や共感など、若い世代に合う作品だと思いました。中々良かったです。

▼以下、ネタバレ感想
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いなくなれ、群青 (新潮文庫)
河野裕いなくなれ、群青 についてのレビュー
No.67: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

黒龍荘の惨劇の感想

伊藤博文、山縣有朋など、実在した歴史上の人物を交えた明治+本格ミステリの第2弾。
作者が杉山潤之助の手記を入手して本書にまとめた件りなど、現実感を演出しているのがとても面白い。
作者言葉より、前作が売れず断裁され痛恨の極みなど書かれてますが、負けずにこのシリーズは続けてほしいですね。

首なし、わらべ唄、見立て殺人など定番のミステリ要素を盛り込み、連続殺人が発生。
読書中はバタバタ死んでも雰囲気が軽いから現実味がなかったですし、屋敷内で何人も殺されて事件を防げない月輪&警察に大丈夫かなぁ、と不安も感じる中、残り40ページぐらいで16の謎が提示されます。
残りページが少ない中、解決編はまとまるのかな?と感じた不安は杞憂に終わり、あっと驚く真相で畳み込むのは見事でした。

後味は悪いですが、頭によぎっていた定番を突き抜けた真相は楽しめました。
時代設定が効果的なのと、事件の構図がガラリと変わる様は前作同様面白い。
今後も期待のシリーズです。

▼以下、ネタバレ感想
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黒龍荘の惨劇 (光文社文庫)
岡田秀文黒龍荘の惨劇 についてのレビュー
No.66:
(7pt)

ダンデライオンの感想

サイロ内の浮遊死体。ビルの屋上での開放的な密室。冒頭の昔話「空を飛ぶ娘」。双子の姉妹。古き良きミステリの要素を感じさせつつも現代的な作品。
中盤までよくある事件の普通の警察小説として読んでいたら、終盤の怒涛のまとめで社会的テーマ性や登場人物達のドラマや事件の真相などが明かされて綺麗にまとまる。着地が巧くて読後素直に凄いと思いました。

シリーズ三作目を最初に読んだからか、登場人物の姫野広海(ひめのひろみ)刑事が男なのか女なのかわからず、何か仕掛けてくるのかと余計な事で悩んでしまいました。シリーズ最初から登場しているんですね。キャラクターがよかったです。

著者本初読書でしたが、島田荘司を思わせる奇想の基点から現実的に落とし込む謎にプラスして、爽やかな刑事達のチームワークが気持ち良い。好みの作風で他の本も気になる作家さんに出会えました。

▼以下、ネタバレ感想
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ダンデライオン (角川文庫)
河合莞爾ダンデライオン についてのレビュー
No.65: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ダンガンロンパ霧切の感想

ゲーム『ダンガンロンパ』のスピンオフ作品ですが、ゲームは知らないでも問題ない独立作品です。というか、ゲームでの要素はまったくありません。では、キャラモノ作品かと思いきや、そうでもなく、"ダンガンロンパ"や"霧切響子"の名称を借りたほぼオリジナル作品と言った感じで、ちゃんとしたミステリとして読めます。キャラクター要素が強いゲームと作家の組み合わせは結構良いと思いました。

まず、舞台設定が面白いです。
『犯罪被害者救済委員会』なる謎の組織が、何らかの事件の被害者に対して復讐をコンサル・サポートする。サポート内容は復讐する場所の提供、出所の分らない凶器やトリック、金銭の提供である。
また舞台には探偵が呼ばれ、犯人は探偵に真相を見破られず、見事切り抜ければ復讐と新たな人生の獲得。探偵に真相が見破られれば、最悪を代償として受ける事になる。ここら辺はデスゲーム系のノリを感じます。

読者には予め、『黒の挑戦』という名目で事件に何が提供されているのかわかるのが面白い。
最初に、天文台を舞台にしたバラバラ殺人と提示されます。誰がどんな方法で事件を起こしたか推理をする楽しみもありました。

トリックが仕掛けられる金田一少年やデスゲーム系の作品が好きなので、個人的には当たり。
ミステリとしてもキャラ小説としても、さらっとした軽い小説で、物語の舞台の紹介が主に置かれた印象ですが、今後も期待できるシリーズとして楽しみになる作品でした。
ダンガンロンパ霧切 1 (星海社FICTIONS)
北山猛邦ダンガンロンパ霧切 についてのレビュー
No.64:
(7pt)

1/2の騎士の感想

なんというか盛りだくさんな物語でした。投げかけているテーマは社会派とも感じられますし、ミステリとしては異常犯罪の犯人の行動に驚かされたり、学園小説・児童文学的にはマドカとサファイアの物語を楽しむと言った具合。
あらすじにファンタジーとありますが、主人公の女子高生マドカと出会ったお化けのサファイア(あだ名)の存在がファンタジーなだけで、中身は現実的なお話です。
著者の読書本はこれで3冊目ですが、現実世界に不思議な設定をほんのちょこっと入れた絶妙な味があります。

街に存在する異常犯罪者のコードネーム『ドッグキラー』『インベイジョン』『ラフレシア』『グレイマン』と言った名前付けが能力が分からないボスを攻略していくようで興味が沸きます。『ドッグキラー』は文字通り盲導犬を次々と殺す犯罪者。その後の犯罪者も名前からどんな異常犯罪が街で行われているのか?それを知った時のヤバいモノに関わってしまったと感じる所が見事です。
『インベンション』の舞台背景や伏線、犯罪内容には唸りました。その後の『ラフレシア』についても舞台背景に驚きます。物語が進むごとに犯罪も凶悪になり、1話ごとに舞台背景や解決を通じて弱者のメッセージを感じたり、ボスの攻略と共に主人公とサファイアの関係が深まり成長していく。そんなゲームのような気分を受けました。
不思議な面白さでした。

▼以下、ネタバレ感想
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1/2の騎士 (講談社文庫)
初野晴1/2の騎士 についてのレビュー
No.63: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

エンプティー・チェアの感想

ディーヴァーの作品はボリュームがあって、手に取るのを躊躇してしまうのですが、やはり読むと面白いですね。
事件のテンポはスピーディーだし、緊張感あるわ、最後は驚きの真相の安定感。
シリーズとしてはこの後の作品の評判がさらに良くなる為、ひとまず順番に3作目を読書でした。話が繋がっているので順番は大事です。

本作で思う所としては、探偵役のリンカーン・ライムの凄さがない。
前作までの四肢麻痺なのに圧倒的な知力で他を圧倒する力強さの良さが今回感じられず、苦悩や挫折、弱々しさを感じました。

ストーリー進行も最後はどんでん返しがあるだろうと身構えて読んでしまった為、現在の進行に対するライムの推理が間違っている気にもなり、ライムどうしちゃったんだよ……と思う心境でした。まぁ、今作はライムより、サックスが主人公で輝いてました。

相変わらずオチが読めない真相で凄いですね。
ただ、今作はやられた!と言う一撃ではなくて、複雑で言葉がでない気持ちでした。蜂多すぎです。

▼以下、ネタバレ感想
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エンプティー・チェア〈上〉 (文春文庫)
No.62: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たちの感想

いつもの癖で話題本は敬遠してしまっていたのですが……読んでみると面白かった。

主人公は無職男性。昔おばあちゃんに酷く叱られたトラウマにより本が読めない。本を読めていたらどんな人生を歩んでいたのだろうと思う今日このごろ。おばあちゃんが亡くなり、遺品の本を売りに行く為、ビブリア古書堂に訪れる――。

キャラクター作りやその人達の役割が綺麗に繋がるな~という印象でした。
本にめちゃくちゃ詳しい女店長も魅力的で、人見知りと本を語る時のギャップが面白い。また、病院で入院中で行動不可なのに、安楽椅子探偵ばりに聞いた話から、古書のエピソードにちなんだ日常の謎を推理し解決する名推理っぷり。ミステリ要素以外にも本が読めない男性との出会いから、仕事仲間になり、会話も生まれて・・と、男女の青春物語としても綺麗に楽しめました。

太宰治や夏目漱石などの読書経験は、有名どころを国語の教科書レベルで読んだ程度だったので、この手に詳しい人はもっと楽しめる要素があるのかなと思います。まったくの射程外だったので各エピソードについては新鮮で楽しめました。

刺激的な要素はないのですが、たまには落ち着いて楽しむのも良いかも。と思える温かい綺麗な作品でした。
ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)
No.61: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官の感想

シリーズ2作目。死体発見現場の虫の生体環境を推理して真相へ近づく流れが前作に劣らず面白い。
貸倉庫で発見された身元不明の腐乱死体。手がかりが皆無で捜査は混迷する。が、現場から見つかった虫の一部から捜査が進展。昆虫学の必要性がとても感じられる点が見所です。

キャラ立ちも楽しく、岩楯刑事&学者の赤堀との関係が今後も気になりますし、新キャラの月縞も個性的で良い味が出ていて、今作では一気に成長も感じさせる物語になっている。
科学捜査で警察小説なのですが、地味ではなく、個性的でとても面白いシリーズだと思います。

前作と比べると、虫の活用具合が前半に集中していて、後半は違う物語になった所は、法医昆虫学をもっと知りたかった私としては少し物足りなさを感じました。が、着地点がまったく予想できない所は凄いので、これはこれで好み。
続編が出てほしいシリーズです。

▼以下、ネタバレ感想
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シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
No.60:
(7pt)

パインズ -美しい地獄-の感想

たまには本屋で話題本を衝動買い。帯に書いてあった『ラストは絶対予測不能』『シャマラン監督映像化』に釣られて購入です。元々は電子書籍で、米Amazonでは5星が700越えなど話題になってる模様。まぁそんなの気にせず『シャマラン監督が興味を持った』ところに自分は意識が向くわけでした。この監督の作品、何故かよく見ちゃうので。。

話は、主人公が目を覚ますと、何故ここにいるのか?と記憶をなくした状態からスタート。なんだか具合も悪いし怪我をしている気がする。そういえば交通事故にあったような記憶がする中、近くに見える街へ足を運ぶ。街の人々と主人公の会話が食い違う。何かおかしい。そして何故か街から出られない・・・。
記憶喪失の主人公で、閉ざされた街が舞台である、状況不明系のストーリーです。

主人公の話や街の人々の対応、どれが真実なのか。それともすべて虚偽なのか?定番の疑惑を考えながら読書なのですが個人的に刺激や魅惑の要素がなく退屈でした。それでも終盤に差し掛かる頃にはやっと真相がまとまっていき、あー…本当にシャマラン監督の作品にありそうで好みそうな内容だった。と思う次第でした。
なんというか、表面は好き勝手自由だとしても、必ず根底にあるのは人を思う愛があるというか、そういう作品。

他レビューが作品の中身には触れられず映画寄りな感想になるのもわかる気がします。内容はネタバレになる為避けられている。文章や表現を味わう文学作品でもない。ただ、映像になった時の姿が目に浮かびやすいからです。悪い意味では既視感がとてもある作品でありますけどね。

▼以下、ネタバレ感想
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パインズ -美しい地獄- (ハヤカワ文庫NV)
No.59: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

奇書っぽくて、自由奔放な凄い作品

読み切った。。。何だかよく判らないままも、最後は不思議なエネルギーをもらって、凄かったぜ!!とテンション上がっちゃうような作品。

文庫版1500ページ。『煙か土か食い物』のように改行がなく、ひたすら文章が襲いかかってくる。それでいて内容は、帯にある『あらゆるジャンルを越境した…』の通り、ミステリをベースにSFやら哲学やらが、ぐちゃぐちゃに絡んできて、もうわけわからない・・・。なんだけど、最後まで読めちゃう文章作りが不思議で面白い。5,6冊ぐらい読んだ気分のボリュームでした。

読書前に本書は現代の奇書みたいな話を知っていたので、その感覚を踏まえて読むと、大分昔に読んだ奇書の1つ『黒死館殺人事件』を思い出しました。あの作品は、いきなり紋章学やら医学やらおかしな推理が始まって内容が把握できなくて、さらに言葉も古いからさっぱり頭に入らず眠くなった記憶がありました。が、本書は現代語なので、ちゃんと読めて分かりながら放り投げられる感覚が得られますので、奇書っぽいものを読みたい人には昔の作品より本書を薦められます。現代の奇書と誰が言ったか分かりませんが、的を射ていると思いました。

さて、表紙に書かれている女の子が探偵ディスコなのかと思いきや、探偵は30代男性のアメリカ人でハードボイルド寄り。手に取った時と最初にページをめくった時とでギャップを食らいましたが、この後の展開のインパクトを思い返すと軽いジャブにもなっていない些細な事。迷子探しの探偵が救出した女の子の梢の中に未来の梢の魂が入りこんで序盤から魂やら未来話やらで哲学やSFが展開して、その後のパインハウスを舞台に探偵達の推理合戦が開始。密室、暗号、見立て、などミステリの定番から星座や神話やらと衒学的に話が飛んでいきます。

話の整合性やらロジックなどは真面目に考えても仕様がない状態なので、探偵達が語る話を受けるがまま脳を刺激される印象で読み進めました。
なんといいますが、話の全貌やネタバレ的な事を仮に語ったとしても、その要所要所では本書を把握する事はできない作品です。
作品に触れて、四方八方に話が発散する中に、自身がどんな所に刺激を受けるかという文学的な作品で、どう表現したらいいか分からないぐらい、作者凄い。と思う次第です。
著者の中に『好き好き大好き超愛してる。』という作品があり、いろんな設定での愛の姿がありましたが、本書もディスコが梢を想う愛が根底に敷かれているように感じましたし、全部包み込んだ外側に作者の気持ちを感じました。
ディスコ探偵水曜日〈上〉
舞城王太郎ディスコ探偵水曜日 についてのレビュー
No.58: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

クローズド・ノートの感想

ほんわかすると言うか、感動的で、よかったなぁ。と、読後しみじみする作品でした。
書籍区分はミステリですが、恋模様や不思議な事がおきる広義のミステリ。中身は恋愛小説に近いです。

登場人物達が基本みんな良い人で、恋の邪魔に感じる所もそれぞれが前向きに行動している結果なだけなので、
何が起きていても基本的に嫌な気持ちにはならず、読んでいて気持ちが良かったです。

序盤は、万年筆の話が面白く、最近はPCや携帯で文字を打つので、ペンで文字を書く機会が減ったな…とか、
作中に出てくる万年筆を調べてみたら凄いオシャレで興味が沸いたりと、楽しみながら読みました。

香恵の初々しい恋模様や、伊吹先生のノートが良きメンターとして活用され成長していく流れなど、とても心地よい作品でした。

▼以下、ネタバレ感想
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クローズド・ノート (角川文庫)
雫井脩介クローズド・ノート についてのレビュー
No.57: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

特捜部Q 檻の中の女の感想

キャラ立ちや設定がよくて事件も把握しやすい。読みやすい海外ミステリでした。

窓際族のように警察内の地下室に新設された部署へ追いやられてしまう主人公のカール。
未解決となった事件を再調査すると言った名目の部署ですが、1度は警察が組織で調べた事件であるのに、それを1人で再調査という無理難題、閑職もいい所。そんな中、アサドと名乗る1人の部下が得られるのですが、この変人がいいキャラしていて、日本の小説でよくある、警察+変人(探偵)のタッグのような感覚が馴染みやすく楽しめました。

作りが巧いのが、人物構成と同時平行して展開される、未解決事件の猟奇性。
現在→未解決事件の過去→現在→未解決事件の過去・・・
と交互に展開される話の中で、サブタイトルにある監禁された状況の緊迫感が与えられます。
緩急つけた話の構成は、最後まで読ませるリーダビリティがありました。

主人公カールの家族は?アサド何者だよ。今後の特捜部Qの活躍は?
など、シリーズの次作を期待させる内容としても十分で、面白い本に出会えました。

▼以下、ネタバレ感想
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特捜部Q ―檻の中の女― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕
No.56: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

伊藤博文邸の怪事件の感想

これは掘り出し物のミステリでした。

タイトルから歴史小説を感じさせており、2013年度の各ミステリのランキングでは圏外で、失礼ながら注目度はなかったと感じる本書。ランキングについては締め切りぎりぎりの出版だったので、10月ではなく、11月に出版していれば来年度ランキング30以内には名前が載っただろうなと感じる次第です。

完全にスルーしていたのですが、口コミでの評判の良さを知って手にとった所、なかなかの掘り出し物でした。
あらすじにある、本格推理小説の名の通りです。

期待度が低かったのに対して、この手法をこの本でやってきたのかと驚いたので、見慣れた仕掛けも使い方次第だと改めて感じた作品でした。
伊藤博文しかり、津田うめなど、実在の人物もよい塩梅に登場しており、歴史ミステリが苦手でも気にする必要なく、当時の雰囲気を味わった気持ちになる楽しい作品でした。

読み終わってから感じる人が多いと思いますが、構成が絶妙です。良かったです。


▼以下、ネタバレ感想
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伊藤博文邸の怪事件 (光文社文庫)
岡田秀文伊藤博文邸の怪事件 についてのレビュー
No.55:
(7pt)

三階に止まるの感想

世にも不思議な日常の謎。ブラックユーモアな短編集です。

最初の作品『宙の鳥籠』は、プロポーズ前の男女が二人の将来の為に解決しておきたい事があると、観覧車の中でとある出来事の話を始めます。観覧車1周の短い時間の密室の中で、男女の関係を推理・解決していく流れは、意識の中でタイムリミット、話を逸らせない緊迫感などを感じられて、コンパクトにまとまった短編ならではの良さを楽しみました。

その次の作品『転校』に至っては、全寮優等生学校で起きている、とある出来事を体験。これは1作目と雰囲気変わってブラックネタであり、全てを明かさずともラストで読者に意味が分かる黒いユーモアのさじ加減は絶妙です。個人的にベストです。

この序盤の2作品を読んで本作品の扱う物語が、「男女」、「ブラックネタ」が根底にあると感じました。
といいますか、これらは作者の過去作品から感じる要素でもあるので、作者らしさを感じます。

その他、自殺しようと現場に着いたら先客がいた『心中少女』。
家の中で殺虫剤を撒いたら化学薬品であったパニックもの&夫婦を描く『黒い方程式』。
が面白く読めました。

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三階に止まる
石持浅海三階に止まる についてのレビュー
No.54: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

解錠師の感想

分類はミステリというより青春小説。
謎や驚きがなく、言葉を発せず解錠師となった主人公の成長を描く、ティーンエイジャー向けの物語。

本書は翻訳物ですが、とても読みやすかったです。
登場人物が、主人公、彼女と、その父親。あとは犯罪者数名ぐらいで少なく、カタカナ名でも人物把握は容易です。場面も主人公の身の回りなので混乱せず物語に没頭できました。

金庫破りの師匠ゴーストが、金庫は女として扱え。金庫を無傷で開けられるお前は芸術家だ。と、金庫破りの思考や、センスある表現を愉快に描かれているのが魅力的でした。原題もロック・アーティストと言うのが良いです。
若い主人公が他の犯罪者とタッグを組んで仕事をする時も、危険な目に合わず信頼をおいてもらえるのは、確固たる技術のおかげ。口がきけない、小僧といった弱みになりそうな点も確固たる能力があれば自信を持って立ち回れる姿に、何か感じる所がありました。

どんな鍵でも開けられる。でも声を発しない少年自身の心は閉ざされたまま。
なんとなくベタなのですが、それがとても把握しやすく安心して読める要素にもなってます。

ミステリとして読むと物足りなさを感じますが、
海外文学で青春物が読みたい方へは、とてもよい作品です。

▼以下、ネタバレ感想
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解錠師〔ハヤカワ・ミステリ1854〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
スティーヴ・ハミルトン解錠師 についてのレビュー
No.53: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

未完成 (アンフィニッシュト)の感想

個性的な自衛隊ミステリ。

自衛隊ならではの視点で戦争やそこに住まう人たち、民間との関わり方を触れていき、
そこで起こった事件を、謎の魅力、方法、調査、舞台の背景を知る、といった流れをミステリの様式でまとめてます。

事件は、射撃訓練中で起きた小銃の紛失ミステリで、人が死なないミステリとして読めます。
備品管理に徹底した場において、どうやったら小銃を無くせるのか、また何でそんな事をするのか。と、自衛隊特有の思考や場の状況で事件を考えて行くのが新鮮でした。

調査班の朝香二尉と野上三曹は、さながらホームズとワトソンの関係で、野上三曹の視点で朝香二尉の飄々した行動やここぞとばかりに魅せる知性に触れる点も楽しめます。

派手さも爽快さもなく、淡々と進むのですが、その流れが自衛隊の中の人々の描き方や緊張感にマッチしていて魅力的で好みです。ミステリ要素がメインではなく、それがきっかけで、そこに集う人々の気持ちに触れる事ができる不思議な印象を得られる作風です。
2001年の作品を今読んだわけですが、尖閣問題や朝鮮との関わりなどにも触れていたりと、今の世でも考えさせられるメッセージが生きているのに驚きました。

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アンフィニッシュト (文春文庫)
古処誠二未完成 (アンフィニッシュト) についてのレビュー