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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数221件
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シリーズ2作目は『ポセイドン・アドベンチャー』のオマージュ作品となる豪華客船を舞台としたパニック小説。
1作目未読でも本書単体で楽しめます。相変わらずの面白さでありました。 ただ期待し過ぎてしまったからなのか、1作目が素晴らしかったからなのか、やっている事は前作と同じような展開な為に新しい刺激があまり感じられなかったのが正直な気持ちです。 登場人物達の役割、悪い人、現場に詳しい人、男女、年配の方、といった配役の設計が前回と似ています。船長や国会議員の上の存在が原因となる事故模様。テンプレート感が良い意味では安心して楽しめるのですが、悪い意味では同じものを読んだ感覚となってしまう次第。 事故原因となった船長や議員についても、私欲や自己保身による理不尽な内容なので読んでいて気分が悪かったです。前作の『炎の塔』では経営者側のバックグラウンドや役割がちゃんと描かれていたので、それぞれがちゃんと仕事をしている上での事故という多少の納得があったのですが、今作はそれが感じられなかったので理不尽な気持ちになる読書となった次第。ただこれは著者あとがきにある海難事故における事例が示す通り理不尽なものをあえて描いているのかもしれません。 台風接近の海洋事故の脱出もので主人公は消防士。という条件で本書が描かれたのは中々凄いなと感じました。消防士が主人公なら敵は炎となりますが、台風で大雨のシチュエーションな訳で火事の見せ所が描き辛いのです。そんなわけで船内の救護活動や迷路のような脱出劇、炎が生まれる小道具など、作り方の面白さの方が目に留まりました。定期的に船の中で起きている物語だと忘れさせないように、船内が傾いている状況が描かれたり、群像劇として外の台風や海洋の様子を描いたりなど、小説家の巧さを感じます。 前作からの期待値が高すぎてしまった故の感想となってしまいましたが面白さは確かです。三部作ということで次巻も楽しみです。 |
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いじめ、サイコパス、自殺教唆を用いながらの歪んた恋を描いた作品。
MW文庫なので読者ターゲットは中高生。ここの世代にとても刺さりそうな作品だと感じました。 そして本書の面白い所は、深読み系の作品である事。考察が好きな人は尚良し。 読書後に実はこういう話だったのではないか?と深読みさせるように作られています。その為、読んだ人同士で感想を言い合ったり、中高生なら学校で友達に紹介し合うでしょうし、SNSでそれぞれの解釈や感想が広がる面白さを感じました。 この手が好きだったとしても、扱う内容がいじめや自殺なのでその内容の陰鬱さで好みが分れる事でしょう。私自身もこの点は好みではないです。深読みしてまで読み返したくなる内容ではないのが難点。ただ作品作りとしては面白く、所々ハッとさせられるセリフなど著者の想いが感じられるのも良かったです。 どう解釈したかはネタバレで。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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白骨死体と共に埋められていた600万もの価値がある将棋の名駒。何故埋められたのか。白骨死体は誰なのか。将棋の駒を手がかりに事件の行方を追う。という始まり。
とても惹きこまれた読書で一気読みでした。 ただ正直な気持ちとして、終盤に関しては物足りなさで終わった読後感でした。 あらすじにある何故高価な駒が死体と共に埋められたのかという謎は終盤まで明されず、途中何度か読者に考えさせる演出がある為、そこにすごい仕掛けでもあるのかなと期待をさせるのですが、そういうものではなかったので物足りなく感じた次第。 とはいえ重厚な人間ドラマとしてはとても堪能しました。将棋の事がわからないでも本書は大丈夫です。 またあえて変わった視点で本書の構造を見ると、将棋の駒が主人公であり、駒(美術品)を取り巻く人や歴史を読者に感じさせる美術ミステリ模様をも感じました。 点数の好みとしては、重苦しく悲劇で嫌な気持ちになる事が多かった為この点数で。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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剣持麗子シリーズ2作目。
本書からでも問題ないですが、面白さは前作同様なので1作目から読書推奨です。 主人公は新キャラの美馬玉子。前作の主人公の剣持麗子は同じ事務所の先輩の立ち位置でした。 タイトルにある倒産をテーマとした事件。 転職の度に元いた会社が倒産する経理の女性が存在しており、何か不正行為が行われているのではないかという始まり。倒産の連続から『連続殺(法人)事件』と表現したり、リストラを『首切り事件』と表したりと経営話の中で表現するセンスが面白い。ミステリーを装っていますが、本書から受ける印象は弁護士のお仕事小説。キャラクターも魅力的であり、ドラマを見ているような面白さでした。 新キャラ美馬玉子の視点にする事で弁護士の依頼の調査を何も分からない読者に近づけているのが巧いなと思いました。前作の剣持麗子は完璧で最強過ぎて読者が置いてけぼりになっていましたが今回はそんなことありません。さらに剣持麗子が本当に困った時の頼れる先輩として描かれており、異なる表現で魅力を伝えているのが凄いと感じます。 弁護士事務所の人々や世の中の背後に存在する悪意など、シリーズものとしての魅力が増やされた一冊でした。今後も楽しみです。 |
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学園ラブコメ×本格ミステリ。
2巻目が2022年度の本格ミステリベスト10で紹介されていたのがきっかけで興味が沸きました。まずは1巻目の本書を読書。 見た目や雰囲気から読書前はライトノベル特有のキャラものかなと感じていたのですが、本書はしっかりと推理と謎解きのミステリでした。 本書の特徴は事件の犯人が先にわかってしまう事。ただし何故そうなのか過程がわからないという系統のミステリです。 この系統のジャンル名がわからないので他作品で補足しますと、麻耶雄嵩『神様ゲーム』や森川智喜『スノーホワイト』を感じる内容でした。決定事項となる解答が先にあり、何故そうなのかを推理する構造です。 表紙の女の子、明神凛音は学園内のトラブルの犯人が解ってしまう能力者。人に説明ができず理解してもらえない彼女。そこに弁護士志望の男子生徒が彼女を理解し学園内のトラブルを解決していくという流れ。 まずミステリとして面白い所は答えを見つける流れではなく、彼女が無意識化でどのように推理したのかを推測する構造。神様の啓示のように突然答えを知るのではなく、彼女が無意識化で拾っている情報を元に推理が行われている為、彼女がどんな行動をしていたのか、そしてそこで何を見たのかが推理の手がかりとなるわけです。一風変わった推理模様が楽しめました。 学園ものとしては読書していて気持ちが良い雰囲気が良かったです。陰鬱な事件模様はありません。読んでいて学園青春模様が楽しめました。男子生徒のまっすぐな志が好感。弁護士は依頼人を信じ代弁するという想いがよく描かれており、ヒロインとの関り方がミステリとしてもラブコメとしてもよい距離感で好みでした。表紙絵や挿絵もラブコメとしてのヒロインが印象的に引き立ってて好みです。 まずは1巻目という事でこの先の物語に期待です。 |
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昆虫に絡めたミステリの連作短編集。
個人的に昆虫に馴染みがなかったので食指が動かなかったのですが、推理作家協会賞と本格ミステリ大賞を受賞した作品である事から興味を持って手に取りました。 シリーズ2作目である事を読後に知りましたが、本書から読んで問題ありません。 それぞれの短編はどれもハズレがなく面白い物語。派手なミステリではなく、昆虫の生態や特性と人間模様が巧く絡められた内容であり、驚きではなく巧いなぁと染み渡るような上質なミステリの作りを感じた次第。 さらに短編の配置が巧く、物語を読み進むにつれて探偵役の魞沢泉の人間味が感じられるのがよかったです。最初はとぼけている弱弱しいというか印象に残らないようなキャラだったのが、徐々に最終話に行くにつれて内面に宿している想いを感じられるようになりました。 昆虫に興味がなくても楽しめる、非常に質の高い文学的なミステリでした。 |
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内容は好みとは違いますが作品として凄く面白かったです。
無関係に見える2つの事件の物語。先の展開が気になって止め時が見つからない読書でした。あらすじにある通りなのでネタバレではないと補足しつつ説明しますが、ミステリー小説のお約束の展開として終盤に2つの物語が繋がるのは明らかなわけです。ただどう繋がるのかが小説の見せ所なわけですが、本書はかなり高水準で複雑で絡まった物語を綺麗に回収して繋がる作品でした。 ミステリーの構成としてはとても素晴らしく、トリックやどんでん返し等の一発ネタの作品ではなく、コツコツ小さい情報が積み重なった先に見える真相を体験できる作品。感触としては警察小説で捜査を進めてやっと事件が解決した(話が見えた)。という安堵感を得るような構成です。 2つの物語で感じた印象は、毒親や狂気の家族模様。フィクションとはいえ、ちょっと思考回路が合わず嫌悪感を抱くようなあまり関わりたくないと感じる人たちの物語でイヤミス傾向です。読んでいて嫌な気分になる事が多かったのですが、そう思わせる文章は凄いなという視点で楽しみました。そういう意味で内容は好みとは違うのですが、事件がどういう結末を迎えるのか?先が気になる読書として面白かった次第です。 |
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"監禁"というストレートなワードがタイトルに入っているので、著者のダーク寄り作品かと思いながら手に取りました。実は『監禁探偵』という作品は漫画版⇒映画版⇒小説版という過程を得ており、2013年初という事で10年も前の作品なのですね。2022年10月の文庫化で認識した次第でした。
序盤は犯罪者が別の犯罪に巻き込まれるというシチュエーション。 扱う内容がゲスいので合わない人が多く感じると思う展開でした。正直な気持ちとして第一話の中盤までは監禁や少女を扱い下品な事を書いているだけの浅い作品かなと疑っていた次第。が、事件の真相が見えてくる頃にはそれらを活用したミステリである事が分りました。第一話、第二話と進む毎に本書の印象が変わりました。 読後の本書のイメージはミステリにおけるパズル小説。扱われる犯罪やシチュエーションがパズルのピースのように散らばっており、話を読み進めて行く事で物語の構造が見えてくるという作品。 内容主点で見ると現実的には違和感があったりで好き嫌い分かれそうです。ただ話の作り方に着目すると巧く考えられておりその視点が好きな方には好まれると思います。作品を魅力的に引き立てるアカネというキャラクターも謎めいていて良かったです。 尺的に映画向けかなと思っていたら読後に既に映画化している事を知った次第で納得。面白い物語でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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突然の過去の恋人からのメッセージ。2人のメールのやり取りだけで進行する書簡体小説です。
この仕組みの小説は文学的な技術以外に読者へ与える情報量を小出しにする事で生まれる面白さが狙いとなります。本書はその狙いが巧みに行われている為、出版社が本書をミステリーというジャンルではないと言いつつもミステリー小説の2度読み系の娯楽を兼ね備えた作品であると感じました。SNSで話題になっているのも納得です。 文庫版で170ページ台と短く490円という価格設定。気軽にサクッと多くの方に読まれ口コミで広がる狙いを感じるなど、娯楽小説としての作りが色々と巧いと思います。 読書中の気持ちとしては、なんか内容が気持ち悪いなという気持ち。男側の内容が粘着で女側もよく答えるなぁというやり取り。SNSメッセージで長文……など。他にも昔の恋人同士のやりとりにしては、会話内容がローカル会話ではなく第三者の読者に向けて説明調になっていると感じた次第。現実のやり取りには見え辛いのが本音ですが小説だからこういうものかと思いながら読み進めました。 最後まで読むとそういう気持ちもなるほどなと納得。個人的な読後感は、やられた!ではなく、なるほど巧いなぁという気持ち。いろいろな設定が巧く考えられている技巧的な作品。面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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スピード感あるクライムサスペンス。
まず面白いのは冒頭からの急展開。少女の目の前で母親が殺し屋に襲われるシーンから始まります。読者はこの主人公の少女と共に何が起きたのか状況が不明で逃げる事から始まります。いきなりの展開でこの本のジャンルがホラーなのかアクション何なのか混乱しつつも、物語に引っ張られて読み進められた読書でした。 そして大きく2つの視点が交互に描かれるのですが、1つ目は上記の少女の視点。もう1つはこの犯罪を企てている(と思われる)犯罪者側の視点。何者か不明。だけどなんか狂っているヤバい奴ら。半グレ達の視点です。 逃亡する側、追う側の視点を交互に描く犯罪小説。倫理観の無い半グレの暴力含む結構ハードな内容なのでそれが苦手な人は合わないのでご注意を。 読み進めていくと物語の方向が様変わりし意外な所へ着地する内容でした。ミステリーとしてそういう物語だったのかと繋がりを楽しむこともできました。そしてこれは犯罪を描きながら、家族や愛情を描かれていると感じた次第。ちょっと表現が悪くて恐縮ですがB級映画で当たりを見つけたような面白さを感じた作品でした。 |
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タイムループが発生する特殊設定ミステリー。
タイムループものとして特徴的な要素は主人公だけがループする話ではなく集団でループに巻き込まれる点です。巻き戻しを認識できる薬を飲んだメンバー達がループの事象を認識し、何がどういう理由で発生しているのか皆で解決していくようなお話。 読書前は報酬に釣られたデスゲーム的な殺伐とした話を予感していましたが、そうではなく登場人物達は仲間として協力して問題解決へ向けて動いている雰囲気。前向きな気持ちが良かったです。 読後感としてはミステリーというよりSFに近い印象。それでいて主人公とヒロインの恋愛模様も加わった物語としてよい展開。印象としては前述の雰囲気ですが、ちゃんとタイムリープ要素を活用したミステリーともなっており、総じて面白く読めた物語でした。 あと登場するオバちゃんがめちゃめちゃ良いキャラ。作品内の雰囲気を明るくし、難しい話をオバちゃんに分かるように優しく説明されるという補助がナイス。面白かったです。 |
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著者のタイトルに釣られて手に取りました。
まず手に取る読者層は『イニシエーション・ラブ』『セカンド・ラブ』といった流れを期待して手に取ると思います。本書は7つの短編集となっており、どの作品も仕掛けが施された作品となっており楽しめました。 短編集としての作品の並びが良かったです。 冒頭は日本推理作家協会賞候補となった短編『夫の余命』。まずはこの作品で本書の期待に応えてきました。 続いて『同級生』は著者の他の本を知っているとこれ系できたかという思いと、これもアリな作品集なのね。と思い当たる事でしょう。中盤の『なんて素敵な握手会』は4ページのショートで、サクッと仕掛けを楽しめて気分転換になった作品で巧いです。そこから頭を使う作品を配置していき、最後は書下ろしの『数学科の女』。 個人的にはこの最後の『数学科の女』が本を手に取った時の期待に沿っていて好みでした。 作品並びの始まりと終わりが良かった構成なので読後感は満足で本書を閉じる事ができました。 『数学科の女』について。好みではあったのですが、似たような真相の純愛を用いたミステリを他で知っていた為、結末が読めてしまったのとそれを超えるものではなかった為、印象が薄かったのが正直な気持ち。ただ短編として最小限の設定で構築されておりイヤミスとして楽しめた作品でした。 タイトル『ハートフル・ラブ』の名づけが巧く、それで統一された作品集として良かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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シリーズ3作目。本作も面白かったです。
シリーズの特徴は怪異が存在する事を前提とし、何が、何故起きるのか?をミステリ模様で展開されるのが面白いシリーズ。 本作の怪異は『崩れ顔の女』という、顔を見たら失明し死に至る怪異。一般に有名な『口裂け女』に近いイメージを設定して読書が怪異を想像しやすくしている点がよく、非現実的なオカルトものなのに読み易かったのが好感です。 シリーズ3作目にして、共通キャラクターである那々木悠志郎の最初の事件が舞台。 シリーズものとして大事な過去編を扱った物語。作品の良し悪しでシリーズの今後が決まるとも言われそうな設定ですが、見事に面白い物語が描かれており個人的に満足でした。単純に過去の回想を描くのではなく、作中作を用いて描かれる過去は、作品内の読み手と読者がシンクロして徐々に怪異に飲まれつつ、また明かされていく展開。これはオカルトとミステリの見事な融合だと思いました。 シリーズものとして、怪異だけでなく登場人物の那々木悠志郎と他キャラクターの人物設定に深みが増しています。 過去エピソードで登場したあのキャラは今後の作品に登場するのかなと、そういう楽しみも増えました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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2014年度の日本推理作家協会賞受賞作品ということで手に取りました。読んでみた所、"推理作家協会賞"の推理ものとしてではなく"エンターテイメント"としての面白い物語としての受賞を感じました。
時代は江戸。金色様という謎の存在(ロボット)。相手の殺意が読める男。手で触るだけで殺せる女。不思議な設定が織りなす壮大な物語。 普段なじみがない小説でして、面白く読めたのですが何がどう面白いかが伝えづらく、異世界の物語に呑み込まれたという感覚でした。知らない世界を体験したような読書。 江戸時代にいるロボット、不思議な能力者達、そこに生きる者それぞれの物語が交差して繋がる様。派手さはなくて、なんとなく表紙の雰囲気にあるどんよりと灰色の物語。"金色機械"という文字も金にせず白文字なのが良い。物語中も金色様だけが何故か色を持ったような存在を感じました。 日本推理作家協会賞ということで、ミステリを期待すると違う作品。物語としては不思議な体験で面白かったです。 |
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新装版が出たので改めて読書。
1957年の江戸川乱歩賞受賞作。本作が最初の公募作品の受賞作となります。 日本の推理小説の歴史における転換期となった作品とも言われており、本書が世に出るまでの探偵小説は陰惨で暗い作風が多く読者が少数だったのが、本書の柔らかい文体と兄妹の探偵役を描く様が大衆にヒットして探偵小説のブームを築いたとされています。 ブームとなった背景には著者の境遇も少なからず影響していると感じます。それは幼い頃から病気で寝たきり状態、学校教育は受けられず兄から勉強を教わり外の世界を読書で身に着けた事です。最初は本名で児童文学を書きそれから本書の推理小説が生まれました。本書が生まれた時も寝たきり状態でしたが、本書のヒットにより手術が受けらえるようになり、さらに歩けるようになったというエピソードもあります。 この背景をここで書いたのは、知っていると本書の印象が変わったからです。 実は自分が大分昔に本書を読んでいるのですがあまり良い印象に残っていませんでした。著者の事を知り改めて再読すると、作品内の二木兄妹のモデルが著者自身であり優しく頼れる兄の存在や、病院が舞台、児童文学のような柔らかい文章、海外黄金期におけるエラリークイーンやアガサクリスティのような事件の謎とトリックと解明の仕方などなど、本書の見え方が大きく変わりました。 本書単体の物語だけ見るとさすがに70年前の作品なので文章やミステリの仕掛けに古さを感じてしまいますが、上記のような著者と日本の推理小説の背景を感じるという意味では外せない一読の価値がある作品でした。 |
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第75回日本推理作家協会賞の『時計屋探偵と二律背反のアリバイ』を含む短編集。
『アリバイ崩し承りますシリーズ』の2作目ですが、本作から読んでも問題ありません。前作同様に物語は"容疑者が特定できているがアリバイがある為に逮捕できない謎"を探偵役に相談するというアリバイ×安楽椅子探偵の短編集です。 個人的に著者の作品は物語よりもパズル的な謎解きに主立った印象を持っているのですが、本作も変わらずその傾向でした。大きく何か心に響く内容がないのが正直な所。その為、謎解きの問題が面白いかどうかが決め手となる次第。本短編集には5作品の短編があります。その中では推理作家協会賞を受賞した『時計屋探偵と二律背反のアリバイ』と『時計屋探偵と多すぎる証人のアリバイ』の2作品が楽しめました。 『時計屋探偵と多すぎる証人のアリバイ』は500人が参加するパーティで目撃情報がある中でのアリバイもの。 『時計屋探偵と二律背反のアリバイ』は2か所離れた所で起きた事件の容疑者がどちらも同じ。両方の犯人である事はありえないのだが。という変化球的な謎です。 どちらも謎解きのミステリとして楽しめました。 アリバイ崩しのミステリなので似たような仕掛けに感じるのが物足りなさを感じましたが、『二律背反のアリバイ』の方は一歩秀でて巧い仕掛けがあり受賞に納得の短編作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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第75回日本推理作家協会賞の『スケーターズ・ワルツ』を含む短編集。
短編集とはいえバラバラの内容ではなく、タイトル"五つの季節"が示す通り、主人公の高校時代、大学時代、社会人という具合でその時々での謎の物語を描いた作品です。ミステリとして派手さがあるものではないのですが、成長していく中での主人公の心情や人との接し方、探偵として謎を解く苦悩などが味わい深く描かれており印象的でした。受賞作品である『スケーターズ・ワルツ』も然ることながら個人的には『解錠の音が』がかなりお気に入り。 『解錠の音が』は防犯に絡めたミステリであり現実的な犯行の手口を物語にした作品。ミステリに興味がない一般読者もこの物語は防犯の意味で一読した方がよいような日常の謎が一品でした。他の作品も総じて面白かったです。 |
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本格ミステリ作家を集めた館を舞台にした雪の山荘クローズド・サークル作品。
本書は久々のシリーズもの以外での長編作品。シリーズ固有の設定に縛られずに、自由に好きなミステリを書いたと感じる要素満載で良かったです。 特に登場人物達によるミステリを描く考え方が楽しく読めました。 例えば日向寺というキャラ。濫造な作品を量産しているが結果として読者が好み、売れて、出版社の売り上げに繋がるというのは商品として大事な要素。横暴な態度なキャラですが締め切りがあるので執筆の為部屋に戻るなど真面目な一面も印象的。 対象には黒巻というキャラ。偽本格ミステリを許せず本物をもとめ分厚い本を描き、誰が買うんだと言われてしまう。これらは商品と作品の考え方の違いで物作りにおいて見られる意見の違い。などなど今の時代で本格ミステリを描く事の意味などを述べているのが面白い。 密室、見立て、館もの、etc...ミステリ要素が満載なので、ミステリ初心者にとって本書は贅沢に感じる作品。一方読み慣れている方には定番を行う事による毒気も楽しめる作品。あえてやる事の意味やテーマを感じる面白さがありました。 著者の作品を多く読んでいる程、ニヤリとする場面が多いと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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コンビニエンスストアを舞台としたミステリ。
サクッと気軽に日常の謎でも読もうかなと手に取ったのですが、読んでみると謎やテーマがしっかりとした本格寄りのミステリでした。 物語はコンビニのトイレで起きた店員の不審死をアルバイトとして潜入調査をしていく流れ。 大筋の謎を置きつつ、アルバイトとして働く中で生まれた小規模の謎を短編集のように散りばめられているので飽きる事無く楽しめました。ミステリに用いられる謎の要素はコンビニ特有のもの。レジなどの設備。店員と客。クレーム問題など。コンビニの舞台裏が豊富に描かれており、テーマが一貫してコンビニに合わせているのが新鮮でした。 ミステリの中では変化球的な作品で、館もの・限られた登場人物のシチュエーションをコンビニ(見取り図付き)・店員と客で表現しているのが面白い。雰囲気はミステリの館内で推理しているのを感じます。それでいてちゃんと今いる場所はコンビニなんだと読者に再認識させる為に会話文で時折「いらっしゃいませ~」と入るのも巧いと思いました。 少し難点として感じた事は、文章力なのか説明不足なのか情景や展開が読みにくかったです。ミステリの謎やテーマ性、青春ミステリ模様、主人公の成長とラストの結末まで内容はとても面白い。コンビニに特化した物語を描く気持ちはとても感じるので、今後は惹きこまれる文章に期待。 表紙について。 コンビニ愛に溢れる作品ですが、主人公が行儀悪くレジ棚に座って足を載せているのはどうなのかなと思いました。作品内では店員の真面目な姿を描いたり、クレーム問題の社会的テーマを描いている中で、この表紙は"コンビニ探偵"の印象でキザっぽく描いてしまっていてミスマッチに感じました。 コンビニエンスストアの要素に特化させたミステリというのは新鮮で、不満点以上に面白さが勝りました。 シリーズものとして期待できる終わり方なので、続編希望です。 |
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