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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数130件
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科学捜査もの。推協賞にノミネートされていたので手に取りました。
元科学捜査研究所にいた風変わりな鑑定人が探偵役。確かな技術力をもって弁護士や判事から依頼を受けて事件の真相を暴くというもの。作風はリアルで硬派なので扱う事件も重苦しい部類です。ただ読み辛いという事はないです。 でてくる単語が専門用語寄りなので、理系や科学捜査ものが好きな方向けの作品です。 1話目『遺された痕』 読者を掴む1話目で扱う事件は性犯罪です。最初にこの事件を配置しているあたりで本書は軽いミステリではなくて硬派な作品なのだなと気を引き締めた次第。本書は楽しく読む作品ではなく事件を真摯に科学を通して見つめる作品だと雰囲気を感じ取りました。 2話目『愚者の炎』 ベトナム人技能実習生による放火事件。これは社会派ミステリ模様でした。1話目2話目と読み進めるとフィクションの小説というより現実の事件の捜査模様を体験するような感覚を得た次第。 3話目『死人に訊け』 少し気を抜いたエピソードがあり緊張感が解れるラストが面白い。鑑定人土門誠の技術ではなく人としてどういう人なのかちょっとだけ感じられた内容。 4話目『風化した夜』 それまで匂わせていた過去のエピソードが繋がる物語となっています。 作品の雰囲気は重苦しく真面目な内容。全体を通して感じる事は、真実は人間のアナログ的な感情で左右される事無く科学的な証拠に基づいてきちんと導きだす事。そして隠さず暴く事という正義を感じました。数年前のミステリで真実を暴く事で不幸になる場合があるという探偵の悩み問題がありましたが、それに対する真摯の想いを感じた作品でした。 |
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要素盛り沢山な所が面白くもあり、複雑に感じる所でもありというのが率直な感想でした。
情報量が多いというか詰め込み過ぎというか、読書が夢中になり辛かった為かもしれません。とはいえ面白い作品でした。 作品傾向は青春SFミステリー。 主人公は過去視。ヒロインは未来視。猫の瞳を通じてその二人が出会い、主人公が遭遇した銃殺事件を調査していくという流れ。事件はミステリパート。 2人の恋愛模様はパソコン画面でのリモート会話のような過去と未来で猫の瞳を通して接続される設定であり、今風の遠距離恋愛の物語を感じました。時間軸と猫の組み合わせなどSFの小ネタを感じる所が豊富。ミステリの小ネタも盛り沢山です。キャラクターの良さを描いた演劇部の活動内容も面白く読めました。 ただもどかしいのはどれも話のメインになるような設定のエピソードを300P台の本書に詰め込んでいる為か把握し辛い。密度が凄いとポジティブに捉える事もできますが読書のリズムと情報量が合わないと感じました。話が急展開になったり、感情移入する前に結果がでてきてしまったりと、凄い面白い事をしているのに味わい辛かったです。これは著者が好きな設定や展開をとにかく盛り込んだようにも感じて必然性が感じられなかったのも要因です。特に第四幕からは大事な魅せ所なのに驚きや感動を味わう間もなく次々と進めているような駆け足を感じます。間や演出があればもっと読者の心を掴めそうなのにと勿体なさを感じました。 一方、序盤の学園エピソードは惹きこまれます。キャラの濃い阿望先輩登場や演劇のエチュードは惹きこまれました。序盤は丁寧に描かれている為か学園箇所面白かったです。 表紙やヒロインも可愛くて絵柄や意味深なタイトルも好み。あと文章中で登場人物にすべてルビがふってあるのは読み易くて良かったです。この人なんて読むんだっけ?という煩わしさがありません。最初の登場シーンだけルビを振るのではなく、全ページで人物名のルビがあるので物凄く読み易い作りは好感です。最近の電撃文庫はこういうフォーマットにしたのかな。 と、良い所もそうではない所もいっぱい感じた作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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良い意味で個性的な作品でした。
あまり味わった事がない雰囲気で楽しかったです。表紙の雰囲気も新鮮。 まず特徴的な要素は全員既に死んでいる事。 何らかの事件に巻き込まれた者達が記憶を失った状態で天国屋敷に集ったシチュエーションです。 自分は誰なのか。何故殺されたのか。集まった人々の中に犯人はいるのか。というミステリーなのですが、本書は事件の殺伐さを描くのではなく、集まった者同士の交流をコミカルに描かれているのが印象的でした。既に死んでしまっているからか死の恐怖はありません。一緒に捜査して悩んだり、食事したり、息抜きに遊んだり、という和やかな雰囲気なので気軽に楽しめる読書でした。 新潮ミステリー大賞の候補作品ですが、この賞の候補作品が出版される事は珍しいです。そのまま埋もれさせてしまうのは勿体ないという気持ちを感じた次第でした。 ミステリーではありますが謎解きに期待するものではなく、ミステリー要素を用いた1つの映画やドラマ作品を体験するぐらいの気持ちで手に取ると楽しめると思います。読後感も良い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルと表紙の雰囲気に釣られて手に取りました。
『仕掛け』『島』というミステリ好きが好む直球タイトルです。既刊本に『館島』がありますが関連性は特にないので本書から楽しめます。 奇妙な館。孤島。プロローグで描かれる非現実な不思議な現象。新本格時代の要素がたっぷりのミステリは好感でした。 そこに著者の持ち味となるユーモアが加えられた作品です。ただこのユーモアについては好みに合いませんでした。 好みのお話ですが、ミステリはある程度のドキドキ・ハラハラや恐怖というか不安な雰囲気があってこそ解決時において開放感が得られ、読後スッキリとした味付けになると思うのです。本書の場合は雰囲気を和ませるボケやギャグが多く事件の緊張感がないので、なんというか場を眺めているような読書感覚でした。タイトルに掲げる通り仕掛けある物語ですが、その仕掛けが明かされた時も驚きではなくそうなんだ程度の感触しか得られなかった次第。完全に好みのお話で恐縮です。 いや、ちゃんと補足すると仕掛けは壮大かつ奇想なもので良かったのです。ギャグやユーモアも単体で見るとキャラが笑えて面白いのです。ただこの2つを組み合わせた本書のユーモアとミステリにおいてはそれぞれの良さが打ち消してしまい、ごちゃごちゃになってしまっているような印象でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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民間宇宙旅行が実現した近未来。
宇宙ホテルにて発見された無重力での首吊り状態の死体。 あらすじのキャッチが魅力的なので手に取りました。 まず正直な感想として、SFミステリーとして期待して手に取りましたがミステリーとしてはあまり面白くありませんでした。謎の説明不足や順序立てされた解説ではない為、おそらく突然の科学知識の紹介を読んだような気分になるのではないでしょうか。扱われている科学知識についてはそんなに難しいものではない所が選ばれているのは良いのですが、伏線なく突然出てくるような印象な為、「そうだったのか!」という驚きではなく「そうなんだ。」という感想。 登場人物表や舞台の見取り図も欲しかったです。状況がイメージし辛い読書でして、ミステリーとしては楽しめなかった次第。 ただ人情ものといいますか、登場人物の過去のエピソードを語り合う所は良かったですし、何故こんな事件を起こしたのかという思想的な話は納得できました。最後のセリフも〇。 なんとなく前作の『老虎残夢』の時も感じたのですが、謎や仕掛けのミステリより、キャラクター達の会話や物語の全体像が面白いなと感じました。 |
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記憶喪失ものの恋愛小説。
この手の組み合わせは昔から多くありますが、好みなのでついつい手に取ってしまう次第。 本書の特徴は“パズル病”という病。勉強や趣味で好きな事がジグソーパズルのピースのように剥がれ落ちて記憶を失っていく症状。 あらすじや帯にある通りキャッチフレーズとなる「私、先輩のことが世界で一番……嫌いです!」という妙な導入が面白い。好きなものを忘れる奇病。だから嫌いな先輩を頼るという可笑しさ。ライトノベル作品としての掴みはバッチリでした。 今風の作品として面白く、会話の砕け方やボケなどクスッとさせられましたし、イラストもオタク臭くなく丁度良くいい感じです。ラノベ好きな読者層には好感に映る要素が豊富でした。ミステリ好きの読者としては何がどういう風な結末を迎えるか予想できてしまう構成かと。気軽にサクッと読めるという意味では良かったです。 欲をいうと終盤はもっと丁寧に描いて欲しかったです。中盤以降は話が駆け足なのが気になりました。全てが良い方向でどんどん繋がるので、話が繋がるというより、描きたいシーンだけ並べましたというブツ切り感をとても感じてしまった次第。 話や真相は面白かったので、もう少し丁寧かつ話に惹きこまれる展開や演出があればもっと感動しただろうなと思います。最終章の4章は特にそうで、大事な話や展開が30ページだけで描くのは急過ぎです。商品として300ページ以内に収めたと思われますが、これにより味わい感動する間がなく終わってしまったのが勿体なく感じました。綺麗に終わる物語としては良かったです。 |
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大雨の中、バス事故で避難した先の廃墟にて発生する怪死事件。
スプラッターホラー映画のように惨殺されていく乗客たち。何が起きているのか理解不能のまま恋人を助けたいと渇望する主人公の身に起きたのはバス事故前を基点としたループ現象だった。 本書は怪異が存在するという事が前提状況にあるホラーミステリーのシリーズ4作目。 今作は怪異+SFお馴染みのループ現象という事で冒頭からのワクワク感が良かったです。バッドエンドを繰り返す序盤のテンポも〇。ループ現象での絶望の先でシリーズお馴染みの那々木悠志郎が登場と、気持ちがあがる展開が良かったです。 中盤は怪異説明の伏線なのか仏像の蘊蓄が多く語られるのですが、それも楽しく読ました。仏像話はとても参考になります。 さて、中盤までは凄く楽しかったのですが後半はちょっと低迷。 怪異や物語の真相はよく考えられており、読み終わってみればシリーズの中では一番凝った造りだと思われました。 ただ、個人的な気持ちとしてもどかしいのは伏線から論理的に探偵役が真相を導くのではなくて、なんというか突然の解説のように全部説明されてしまう事。ミステリで萎える展開の一つに犯人が全部解説するというのがありますがそんな感覚。色々と面白くなるはずの終盤が残念だった印象でした。勿体ない気持ちで終わりました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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2021年度のメフィスト賞受賞作。メフィスト賞らしく変わった趣向の作品で楽しめました。
高額なアルバイトの内容はスマホにインストールしたスイッチを押しても押さなくても毎日1万円が手に入り、1カ月後にはさらに100万円が支給されるというもの。誰かがスイッチを押したら報酬がなくなるわけではない。ただしスイッチを押すとある家族が破滅するという内容。"悪意"の存在についての実験です。 あらすじがデスゲームのような内容だったので興味を引かれて手に取りましたが、中盤からは違った物語が展開された印象でした。世の中の多くのレビューの声にある通り、心理学から善悪や宗教に関する考え方が作品内に色濃くでてきます。個人的には思っていた作品と違うイメージでしたが本書の個性として面白く読めました。読み易い文章であり、考え方や説明が理解しやすかったのも好感でした。 メフィスト賞らしい広義のミステリーの物語として味わいました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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多くの人に知られている赤ずきんを主人公&探偵役としたシリーズ2作目(著者の童話シリーズとしては4作目)。シリーズ順序は関係ないので本作から読んでも大丈夫です。
皆の知っているキャラクターを用いる事で読者を得やすくなっている作りを感じました。 今回扱われる題材は『白雪姫』『ハーメルンの笛吹き男』『三匹の子豚』。そしてタイトルにある『赤ずきん』『ピノキオ』。これらのキャラクターを混ぜ込んで作られた著者流の童話となります。個人的にはミステリというより大人向けに再構築されたオリジナル童話という印象でした。 木でできた人形の右腕を拾った事から始まり、赤ずきんはピノキオの部品探しをする先々で各童話の世界に入りそこで事件に遭遇するという流れです。 元の童話とは全然違う話でありキャラクターも多く出てくる為か、話がわかりやすそうで分り辛いという変な気持ちの読書でした。キャラクターは分かるけど、キャラがどこで何をしているのか情景が浮かび辛い物語だったのが正直な気持ちです。各物語の事件概要が把握し辛いのですが、結末側は読み易く描かれているので何が起きていたのかが後でわかるという読後感でした。 良かった点として各物語は前作よりもちゃんと童話をモチーフとした仕掛けがあるミステリーとなっていたのが好感でした。ただ童話の世界なので魔法のような現象で何でもありな世界になっていて、ミステリとしてはルール説明不足な気がするのが難点に感じました。 話の構造として『ハーメルンの最終審判』が好み。物語の背景や各人の行動の意味が明かされる物語として面白かったです。 |
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特殊設定もの作品で薔薇の表紙に惹かれて手に取りました。
あらすじや帯に記されているのですが、"ミステリ"ではなく"ミステリー"と書かれており、これはあえて表記していると感じる読後感。謎解きものではなく、個人的に感じたジャンルはSFの医療小説です。 物語は「オスロ昏睡病」と呼ばれる難病にかかると昏睡状態になり記憶を失ってしまうという病気がある世界。ただ本書は冒頭で既にその病気の解決策が見つかっていて、その治療の副作用として身体に薔薇のような腫瘍が生まれるという設定。その腫瘍を持った人々が次々に襲われるという事件が起き、それの調査からミステリーが始まります。 まずこの世界の設定を序盤で読み易く展開されるのが良かったです。どういうルールが適用されているのか説明が巧いので苦なく読み進められました。著者は物語の説明がとても巧いです。複雑な世界を分かりやすく伝えていると感じる所が多々ありました。 先程医療小説と挙げた理由は、事件の謎よりも腫瘍を基点とした物語をメインに感じた為です。腫瘍の謎もありますが、治療方法や腫瘍を持った人々の交流など、空想要素を取り除けば身近にないめずらしい病気の医療物語の印象です。薔薇や腫瘍などの設定がミステリとして必須アイテムというわけではなく物語の表現や演出寄りに感じた次第。 SFの医療小説+青春ものの物語として手に取ると良いと思います。 著者の作品は初めてだったのですが、読みやすく物語の世界が独特で気になる為、他の作品も手に取って見ようと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『いけない2』が話題なので1作目を予備知識なしで手に取りました。
普通のミステリとは違う為、これは少しどういう本か予め知ったうえで手に取るとよいです。 ネタバレなしであらすじの範囲で説明しますと、各短編の最後の1ページに写真があり、その写真を見ると真相が推理できるという仕掛け本です。注意点としては写真を見れば全てが理解できてあっと驚くような快感が得られるわけではなく、あくまで【最後に推理のヒントが得られる】作り。最後の得られたヒントを元に、もう一度読み直しながらセリフや状況を分析して真相を自分で解き明かす構造です。ひと昔前のゲームブックを思い出しました。 個人的な難点は、最後にヒントが得られる構成の為に初読では叙述トリック作品のように何かが隠された物語の描き方で内容の把握が難しく、かつ読みづらく感じたのが本音です。 本書は自分で推理をしたい&問題を解きたいという人にオススメな本。 真相は分からずモヤモヤする人には不向きです。この点を踏まえて手に取ると良いでしょう。 物語の雰囲気は初期の頃の道尾秀介の作風で、ちょっと暗く嫌な気持ちにさせられました。真相がわかっても気持ちが晴れるわけではなく、むしろ気分はどんよりと沈むような気持です。 真相がわかないとモヤモヤする為、何度か本を読みなおしました。2章がスッキリしませんが最終章および1,3章はこういう話だなと理解できたような読後感です。個人的には手に取る気持ちの準備不足とタイミングが悪かったのもありますが、謎も物語もスッキリしない気持ちが少し好みに合わずでした。 著者作品をみると『いけない2』や『N』のような、本として意味がある事や読者を楽しませる仕掛けを考えた作品でしてとても好感でした。自分で謎を解きたくなったら『いけない2』を手に取って見ようと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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メフィスト賞受賞作。コンビニを舞台としたミステリ。
先に2作目の『謎を買うならコンビニで』を読んでからの読書でした。その感覚だと2作目は大分読み易く物語も把握しやすくなっていたという印象でして、1作目の本書は物語が"複雑"という表現ではなく"粗削り"で書きたい事が雑然している印象でした。ただ良い所は沢山あり、本書はコンビニを舞台としてコンビニで働く者を主題とした本書ならではの個性的な作品で好感です。 著者自身が高校生からずっとコンビニ店員である実体験が活かされております。店員からの視点、バイト仲間、お客さん、起こり得る事件の範囲、レジやらお金の扱いなど、これらを活用したミステリであるのは面白く読めました。ただちょっと把握し辛いのは難かもしれません。 個人的にはミステリよりもコンビニ店員である事の感情の描き方が印象的でした。著者の想いが噴出しているのかもしれませんが、社会との距離、フリーター&バイトである事の後ろめたさと言った負の感情がリアルに感じました。いわゆる青春小説として同じ年代の仲間との交流や恋愛などの物語を学園で行わず、バイト先のコンビニを舞台で描いている様は、学園や社会人を遠い存在の憧れ(?)の様な距離で一線が引かれており、でも体験したい、自分もそうなりたいという感情によって本書の物語が生み出されているように感じました。 ネタバレではなく関係ない要素なのでここで書きますが、6章辺りの人を信じられない主人公の疑心暗鬼の様子も中二病やこじらせ系と言えばそれまでですが、でもそんな単純な言葉ではおさまらず、表向きでは他人との距離感を放ち、でも内面では仲間を信じたい気持ちもあるという反発する感情が描かれていたのが印象的。ミステリよりこの感情を溢す様が強く心に残る作品でした。 |
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やり直しがきかない裁判とタイムリープを組み合わせた異色作。
"タイムリープ"を扱う作品の印象から軽めの法廷作品かと思って手に取ったのですが、中身はどっぷりと法律を扱う社会派小説でした。 予想と違う本でしたが読み辛さはなく、日常で馴染みのない法律について確かな知識を物語を通して学べて為になったというのが読後にまず思った感想です。 有罪判決のあとに冤罪の可能性がでてもやりなおす事ができない日本の法。裁判官という仕事の特性。普段馴染みのない法曹の話がリアルに描かれており楽しめました。事件内容や捜査模様、推理の流れといった小説の展開がミステリとも警察小説とも違ってリアルな法律にそっているのが特徴的。これは著者の持ち味だと感じます。 著者のデビュー作『法廷遊戯』より読み易く楽しめたのが好感。中身の法律を主軸にした話展開は同じなのですが、登場する人物の心情が多く描かれているので法律知識だけではなく物語としてちゃんと楽しめました。 "タイムリープ"という言葉に目が行きますが、読んだ感覚としてはアドベンチャーゲームでした。 1つの物語を違う選択肢から眺めて手がかりとなる情報を得て最後にトゥルーエンドへ向かう。ゲーム系と違うのは中身がリアルな法律と事件を扱う事。小説の構造はライトで事件内容が重い。これは悪い印象ではなく、今後もこうした形で難しいと感じる法律のイメージを物語を通して払拭し学べるならいいなと思いました。 |
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近未来警察小説。
警察小説によくある組織や立場の対立など描かれているのは前提とし、そこに近未来というフィクションを織り交ぜる事で、警察が雇う傭兵という新たな対立要素、搭乗兵器によるロボットアクションなどが新鮮に映った作品でした。 ハヤカワ・ミステリワールドに属する推理小説のシリーズに含まれる作品であったので、本書の設定ならではのミステリ的な仕掛けを期待してしまった所があり、そこは期待と違いました。推理小説というより新たな警察小説というニュアンスが正しく、その系統が好きな方はとても楽しめる作品です。 第一章の事件開始の導入はパニック感やスピード感があり抜群に面白かったです。中盤以降は雰囲気が変わり、人間模様、組織、事件の捜査、などがどっしりとした歩みで展開され、少し好みとは違いました。 シリーズを見越した作品であるので、本書単体だけですべてが丸く収まり解決するという事はありませんでした。各キャラクターの過去や組織の物語に謎を秘めたまま終わる為、悪い意味ではスッキリせず、良い意味では続巻が楽しみになる作りは好みの別れ所です。 個人的に重厚な作品で内容は好きなのですが、時間をかけて読み終わってもスッキリしない点が多いのは楽しかったよりも疲労を感じてしまい、続巻を手に取るのを躊躇してしまう気持ちが残りました。 |
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ミステリ・フロンティアに属する作品ですが、ミステリというよりファンタジーを用いた青春小説でした。
物語は社会人となった主人公が、駅のホームで高校時代の同級生の女性を目撃する所から始まります。 ただし違和感がある所は、その女性は高校生の姿のままである事。他人の空似、見た目が若い、姉妹、というわけではなく、言葉通り18歳の高校生のままという事。本作品はこの状況を現実的な解釈を用いるのではなく、こういう世界であるとファンタジーな事象を日常の1コマのように捉えているのが面白いです。 ミステリとして見るなら「何故彼女は18歳の高校生のまま変わらないのだろうか?」という謎を起点とした物語となります。 ただ読書して感じた事は、ミステリを描いたのではなく"年齢"に着目したテーマや想いが主要である事。年齢という呪縛。同世代や異なる世代のずれ、年齢と共に忘れてしまった思いなどを強く感じました。 印象的な一文は「年齢というものは、その人間の性格よりも、能力よりも、本質よりもずっと手前に陣取っている憎いやつだ。」というもの。社会人となった主人公の悩み同様に、年功序列、能力社会といった社会的なテーマを感じた一幕でした。 当時のままの同級生という設定からくる物語は、姿だけでなく高校生の頃の想いを思い出させます。大人へのあこがれや希望、やりたい事の夢、そういった光に対して現実の闇を対比させて考えさせるテーマ性を帯びている為、本作品を読む読者の年代によって響く所が異なるのではないかと感じました。 一昔前ならタイムトラベルもの作品で同様なテーマが描かれそうですが、今の時代に合わせた内容や不思議な世界の描き方は現代的な作品となっていました。この描き方は著者の持ち味で面白いなと思います。 |
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虚実混交による怪談ミステリ。
著者が小説新潮から怪談小説の執筆依頼を受けた所から物語が始まります。 新潮社がある神楽坂。そこから始まる怪談物語。 短編集の構造で、それぞれの短編は実際に2016年から『小説新潮』に掲載された短編たち。時系列や各人達の関り方が活用されており、現実と虚構を曖昧にしているのが面白い。 いつから企画構成が練られていたのかはわからないですが、実際の日常と共に怪奇に遭遇していく話の展開は面白く、巧い企画の作品だと思いました。 当時、著者のTwitterにて怪奇に悩む投稿があるなど演出が凝っています。 それぞれの物語は非現実的な怪談を扱ってはいるものの、起きている事象を論理的に解釈すると、怪奇とはいえどういった部類の怪奇現象なのかが導かれる為、その展開はミステリを感じました。謎と結末が怪談要素というのも良かったです。 これって本当の話?あの人やこの現象はどうなるの?といった一昔前のオカルト体験が楽しめます。ホラーにしてはサクサク読めるのも好感でした。 |
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あらすじ通り2度読み系の恋愛小説でした。
"宝石病"という体内に結晶を溜め込んでしまう難病を患った女の子の、残された時間の青春物語です。 恋がしたい女の子の恋愛小説を起点としますが、読んだ印象としては自己犠牲や相手を想う気持ちを表した作品だと感じました。 難病ものなので何となく結末は予感させつつも、あらすじには"ハッピーエンド"と書かれているので、どのような結末になるか楽しみでした。読者の期待する結末と沿うかどうかが好みの別れ所になるかと思われます。 個人的には期待するものとは違った作品でした。ただもう一度読む楽しみがある本ではあるので、ライトミステリとしての面白さは備わっています。そこに惹かれる人もいると思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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青春ミステリ模様が現代的で面白かったです。
まず、主人公である女子高生のピップは性格も行動力もよく読者の視点となる探偵役として読んでいて気持ちがよかったです。犯罪にぐいぐい足を突っ込む行動力は危なさで不安になりますが、物語の主人公としてはアリかと思う。携帯の履歴、SNSのフォロワー、パソコンの操作など、時代に合わせた捜査力は中々ナイス。コツコツ地道に自身の考えを読者に提示していくので謎解き小説として楽しめる構造になっていました。 ただ、個人的な心境として期待し過ぎてしまったのと、内容が好みではなかったのが正直な気持ち。読書が長く感じました。 驚きの真相や派手な仕掛けがあるタイプではなく、ティーンエイジャー視点での犯罪と捜査模様が展開される作品です。2022年度のミステリ各誌にランクインしていたのもあり余計な期待を抱いてしまっていました。 謎解きミステリとして街で起きた過去の事件が明かされる様子はスッキリするのですが、一方、明かされた事により人間関係の闇や若者の社会的犯罪を見せられるのはあまり気持ちよくないもの。 学生を読者ターゲットとしてその年代の犯罪と解決が描かれているので、そういう意図の作品としてはアリ。そんな感想でした。 |
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ミステリ愛に溢れた作品でした。
まず世界の設定が発明もので良かった。 それは『密室の不解証明は、現場の不在証明と同等の価値がある』という判例が起きた世界。どんなに怪しい犯人でもアリバイがあれば無罪になるのと同様に、密室の謎が解けなければその人には犯行が不可能であるとし無罪となる世界線。この設定が発明ものです。この設定のおかげで密室を作る理由を考えなくてよく、密室殺人が多発する理由にもなります。 ミステリ小説において密室ネタは出し尽くされ古臭いものと扱われますが、あえてそこに脚光を浴びせた意欲作だと感じます。 舞台は雪の山荘、クローズドサークル内での連続殺人。現場にはトランプや見立てやらで古き良きミステリの雰囲気を味わえます。登場人物達の雰囲気は個人的に好きなゲーム『かまいたちの夜』の印象でして、怪しい面々と砕けた会話は良い意味でライト。陰鬱さはなく連続殺人でもサクサク進行します。 そんな好みの雰囲気であるコテコテのミステリだったのですが、好みにそぐわなかった点として、あえての悪い言い方で恐縮ですが、トリックの問題集になってしまっている事。それぞれの事件に関連性もなくバラバラな印象だった点もよりそう感じてしまった次第。 他本と比較するのもアレですが、トリックを連撃しながらも問題集にならず名を残しているミステリは、それ+αの要素があります。ホラーやエログロなどで感情への刺激を加算するものや、キャラクター性を強めるもの、社会派と組み合わせて考えさせたりなどなど。本書は密室トリックを主体としながらそれだけで勝負しているのは好感でもあるのですが、最後の最後まで出し惜しみした仕掛けのインパクトが非常に弱いものだったので(演出力なのかもしれませんが)、肩透かしを食らってしまった気分でした。なので物語になっているような印象はなくトリックの問題集に感じた次第でした。 終盤より途中のドミノに囲まれた密室は面白かったです。トリックがというよりその状況のシチュエーションが新鮮でした。ミステリ読者程その他で使われた内容を考察する作品は読み慣れてしまっているので、こういう内容の方が面白く映るのではないかな。 というわけで、密室トリックというミステリ要素についてはあまり印象的ではなかったのですが、ミステリに対する著者の想いやミステリ好きだと感じさせる要素要素の数々は好きなので、デビュー作後の2作目でどうなるか期待です。 あとタイトルと表紙がとてもミステリ好きに刺さるので、これは編集者がナイスだなと思いました。特徴的なので書店も売りやすそう。商品として巧いと思った。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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高校生の日常におけるちょっとした一コマの出来事をミステリ仕立てにした短編集です。
表題『早朝始発の殺風景』は、始発の電車で遭遇した普段あまり話さない同級生との一コマ。 『メロンソーダ・ファクトリー』はファミリーレストランでクラスメイトと学園祭準備の打合せでの一コマ。 『夢の国には観覧車がない』は部員達と遊園地に遊びに来たときの一コマ。 という具合で高校生活の日常の1場面を切り抜いてそこで起こる日常の謎を扱います。 これといった印象強い派手な要素はないのですが、高校生活における空気感や友人達の微妙な距離感が見事に描かれており雰囲気を楽しむ事ができました。テーマが揃った短編が集まっている為、短編集として整った作品であると感じます。 個人的には『夢の国には観覧車がない』が好み。 人物配置、場所、状況、何故そうしたか、全てに無駄なく高校生活の日常としても合っていて良かったです。 エピローグも巧く作品全体をまとめており、各人達のその後が見えてなんだか嬉しいサービスに感じました。 |
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