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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数71件
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多くの方のレビューにある通り、上巻で辞めずに下巻まで読んでの意味が分かりました。
上巻は正直な気持ちとしては退屈でした。 最近『かがみの孤城』を読んで惹き込まれたので、著者のボリュームがあって敬遠していた過去作の本書を手に取った次第ですが、この頃の作品の構成は合いませんでした。 前半は登場人物の紹介と創作に関わる作家の卵達の物語。 何か刺激的な事が起きるわけでもなく日常ベースの展開。刺激的な要素として一応冒頭にて作品の影響による大事件が起きた事が描かれますが、この内容後に400ページ近く緩やかな物語を読むほど求心力を受けなかったのが正直な気持ちです。登場人物達の描き方も視点を変えて読む為、誰かに感情移入して深く読むこともありませんでした。一人気持ちがわかると思ったのは編集者の黒木でした。作家の卵達とは違い編集という版元に近い位置にいる彼。発言やドライな感覚がその立場としてよく伝わりました。 上巻はまったく合わずでしたが下巻の後半は確かに面白い流れでした。 波が立っていないスロウハイツに波紋が広がっていく展開は、やっときたかと思いながら楽しみました。終盤と読後感は良いものですが、それに至るまでが好みに合わず。 誰かに感情移入できなかったり展開が遅かったりという不満は『かがみの孤城』では全くない為、著者の成長前を感じる作品という印象でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ドラマと連動した企画もの作品。ネメシスシリーズとして担当話ごとに作家が変わるという試みの作品。
1作目は『屍人荘の殺人』の今村昌弘。最初にこの著者を持ってくるあたりは流石の采配だと思う。私自身、ドラマは見ていないのですが著者の作品という事で手に取った次第。 作品雰囲気はユーモア傾向。殺伐さはなし。 探偵事務所に所属する探偵と、その探偵以上に推理力がある女性のコンビによる事件簿。 ミステリとしての事件や謎解きの面白さはありますが、本格志向ではなく、あっさり小ネタ集の印象でした。 "ドラマ化と連動している"という前知識に引っ張られた感想かもしれませんが、正にドラマの脚本を意識した中身であると感じます。事件や推理の展開を描写するというより、パーティー会場や遊園地といった事件現場の施設の情景が印象に残りました。登場人物については特徴があまり感じられず、"探偵っぽい男性"や"実は天才の少女"みたいな設定で、現代作品では特徴がないというか華がないと感じました。 もし作者名を隠して読んでいたら今村昌弘作品とは気づかないと思います。ただ、本書の目的がドラマ化の為に映像や主演者に華を持たせる為の脚本物語として書かれたと捉えると、オーダー通りのものを作り上げたという印象になります。そして連作企画で複数作家によるリレー小説である事を考えると、著者の個性を主張しない塩梅で描いたとも思う為、そういう点では著者の技量が優れていると前向きにも感じました。文章もすんなりサクッと気軽に読める作品です。ただ、物語の内容評価としてはあまり印象に残らないのが正直な気持ちでした。 |
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著者の作風を変えた一冊。
著者の作品と言えば鬼畜系のグロ系。世の中そんな印象になっていましたが、本書はその要素を無くして本格ミステリの仕掛けや謎解きに重き置いた一冊となっていました。著者のイメージを変える勝負作品とも感じます。 物語は昭和の殺人鬼vs名探偵もの。 タイトルは映画『死霊のはらわた』のオマージュ。若者達が悪霊を甦らせてしまうという映画同様、本書は実在した昭和の殺人鬼の魂が現代に甦り、人に乗り移り事件を犯すというもの。津山事件や阿部定事件といった小説お馴染みの有名所を題材に、それに模した事件と悪霊が乗り移った犯人を暴き倒すという物語。 過去の事件をオリジナルな解釈と仕掛けを施したミステリとなっているのが面白い。 江戸や戦国時代などの大昔にせず、昭和の事件を取り扱っている点についても、雰囲気も然ることながらミステリとして巧く活用していたのが見事でした。持ち味であると設定付けされているグロや鬼畜がなくても本格ミステリとして面白い作品が描けると感じました。昭和の事件を模した見立て殺人の部類ですが、描き方、物語の設定が現代的で良かったです。 作品単体は良かったのですが個人的な好みの点数は少し低めで。読書前の著者本の期待値とも違い、横溝時代の古い昭和の作品を読んでいる気分にもなり、読書中は古く重めであまり楽しめなかったのが正直な所でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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堂シリーズ4作目。シリーズ全7作の内、中間にあたる本書は予め著者が構想していた転換となる作品というだけあって、驚かされる一面がありました。この先どうなっていくのだろうと、主要メンバーが固まってきた本シリーズの今後が楽しみです。
孤島を舞台に30m四方の立方体の堂で事件が発生。 堂の構造から密室ものミステリを予想していたのですが、本書は瞬間移動ものでした。一時行方不明となった人物が巨大空間の中に被害者として現れる。どうやって移動されたのか?が謎となります。館ものの大トリックとしては島田荘司っぽい壮大さで好みです。ただ、物語やその事件の背景の魅力が弱すぎて、残念な印象でした。トリックは素晴らしいです。シリーズとしての仕掛けも相まって、名作に成りそびれた勿体なさが残りました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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共有された夢の中での殺人という特殊ミステリ。
表紙が古臭いですが2020年の作品。 極秘人体実験プロジェクト・インソムニア。夢を共有するチップを頭に埋め込まれた被験者達の生活実験。今の状況は夢なのか現実なのか。夢の中で死体となった人物が、現実世界でも死んだらしい。何が起きているのか。という流れ。 読んでみると、岡嶋二人『クラインの壺』と川原礫『ソードアート・オンライン』が思い浮かぶ内容でした。おそらくこの2つが好きで著者なりにアレンジした作品かと思うほどでした。映画『パプリカ』もそうかな。虚構と現実の曖昧さ、仮想現実世界での死は現実の死となる。というニュアンスや仕掛けがそのままで、個人的にとても既視感があった内容でした。 その感性で読んでしまうと、仮想現実ではなく「夢」という設定に対しての意味に期待をしていましたが、特に意味づけを感じられなかった為、二番煎じ感が否めない作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは好みが分れそう。
あらすじは、連絡が取れない叔父の状況を確認する為、勤め先に訪れると極秘プロジェクトの任務中だった事がわかり、詳しく調べていくとこの会社は日常では触れる事がない非現実的な闇会社であった。ここで何が起きているのか?という流れ。 ミステリの傾向として、閉鎖的な村、宗教もの系統の限定的空間で条件を付与する特殊設定ミステリです。 推理の過程やサスペンスを楽しむものではなく、明かされる真相をどう感じるかが好みの別れ所。前半の会社の異常な体制、会長の存在と社員の意識、これらは丁寧に描かれておりとても惹き込まれました。舞台の状況作りはとても面白く描かれています。一方、事件が起こり状況を把握する流れは退屈でした。麻雀の話然り、何か繋がりがあったとしても、脇道に逸れる内容が多く感じてしまい無駄を感じました。 終盤の真相は確かに面白いのですが、この作品の系統は既視感を感じてしまい、驚きを得られませんでした。仕掛けは面白いけど読み物としては好みに合わず。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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北海道函館市を舞台とした本格ミステリ。潮首岬も実在する場所。
ただしトラベルミステリの様な観光紹介ではなく、この場所の環境や生活する人々の地域柄を強く感じる作品。 率直な感想として終盤までの9割ぐらいは地味で辛い読書でした。 登場人物が多くて把握し辛い。一族の親子やら兄弟姉妹やらで苗字が同じ。苗字が違う人でも職業が医者で同じ傾向。個々に奇抜な特徴がない為、初読で人物の把握が困難でした。 松尾芭蕉の俳句の見立て殺人や雪の足跡問題など本格ミステリ要素は好みですが演出なく地味。作品雰囲気としては物語終盤まで地道な聞き込み捜査が続きます。人物の把握が辛かった為、徐々に手がかりが得られていそうなんだけど、さっぱり繋がりが分らず物語に入り込めませんでした。ここまでの気分は☆3ぐらい。 ただ終盤は目が覚めるように面白かったです。 事件の真相が明らかになった所で、トリックの面白さや人間関係の絡みの構築、設定の妙を楽しみました。 90年代前後のような古い雰囲気だったのが、古き良きミステリを現代風にアレンジした良さを感じました。 なので、もう少し読書中もワクワクして先が気になるような演出や刺激となるエンタメ要素があれば良かったと思う次第。 現場の図解も真相解説時にあるなら、なんで事件発見時に提示しないのだろう。見立て現場や、足跡の場とか、図で先に提示すればアクセントとなるし読者も把握しやすかったのに。という具合でして、真相が良かっただけに、それまでの辛い読書が残念に思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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作品自体はとても圧倒的。超骨太の濃い作品でした。
終戦間際の戦争小説において、舞台が北海道であるあまり経験した事がない作品。 この本のおかげで、北海道でのアイヌや朝鮮との関係、民族問題や差別、特高警察といった知識を得る事ができました。ミステリを読んで新たな知識を得られるのはとても嬉しいです。 一方、点数について。 好みの問題なのですが、本書は社会・歴史の教科書を読んでいる気分でした。 密度も濃い作品な為、1文1文がとても大事。なので物語を楽しむ前に、内容を把握する事に集中しなければいけない読書でした。人物や場所や状況、時代背景など頭の中で構築していかないと物語に置いてけぼりになる為、読むのが辛かったです。なのでこの点数で。 それにしても著者の作品のクオリティはどれも高い。 好みはあれど、どの作品も緻密な情報と作品への昇華に圧倒されます。改めて思いました。 |
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ベースはひと夏の青春小説。そこに幽霊+プチミステリを加えた感じ。表紙買いでしたが中身は印象と違いちょっと重かったです。感動する評判を聞いていたのですが、個人的には総じて喪失感とやるせなさが纏う雰囲気でして、読後の気分は曇り空と言った所。
物語は仲良し5人組の中で一番のエースであるケイタが死んでしまった所から始まります。 残りの4人の喪失感がすさまじく、5人の人間関係の事、ケイタに言えなかった事、知りたかった事、後悔の気持ちが立ち込めています。そんな時に生前仲が良かった人にしか見えないというケイタにそっくりな幽霊が現れ、ケイタの最後の願いを叶えるべく皆で亡くなった現場となる山へ向かう流れとなります。 設定が巧いなと思った所として、幽霊は物理的なものを透かしてしまう為に電車に乗れない事。目的地へ向かうのに歩いて行く理由が出来ているのが巧いです。4人が歩いて向かう中でそれぞれの想いが独白されます。何となく恩田陸『夜のピクニック』を感じる流れです。構造は面白く読めました。 内容はよくあるような青春模様で可もなく不可もなくと言った所。後半のケイタの願いにおける真相は驚きましたがちょっと急展開過ぎるかな。そうきたか!という驚きや納得ではなく、なんか辻褄が合わないような疑問が増えてしまいモヤモヤ。世の評判通り最後は綺麗にまとまってはいますが、事実となる結果を想像するとやっぱり悲しいものではないでしょうか。ちょっと好みに合わずでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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アリバイ崩しに特化した7つの物語の短編集。
200ページ台の本なので1話辺り30ページ程度。サクサク読めます。 本書は、著者の特性と時代の隙間産業的な戦略が見事にマッチした作品というか商品に見えました。 どういう意味かと言いますと、まず著者の作品は物語よりもトリックや仕掛けが主立っている傾向にあります。30ページ代の短い短編の中には、登場人物の紹介は無し、動機や舞台背景もなし、事件と容疑者の状況説明が書かれたシンプルな問題文章。そして、隙間産業というのはアリバイもの小説が近年減っているというかほぼない状態である事。そんな市場でアリバイ崩しに特化させた作品を世に出したタイミングが巧いと思いました。 さて、個人的にアリバイもの作品は好みではありません。 時間軸における登場人物の居場所を把握したり、数分程度の時間を頭に入れて読むことを求められるので疲れるのです。一昔前の時刻表トリック含む、アリバイを扱う作品ってなんだか古臭いイメージがあるのです。 ですが本書の良い所は、アリバイものが把握しやすい短編であり、短編なので著者のトリック主体が活き、さらに探偵役は女の子となっており、ラノベ風...もとい現代風になっていて読みやすい事。ここは好感です。 …という具合でして、難を敢えて言うとトリック集です。深みを感じたり強烈な驚きを与える事はありません。解答編も推理ではなく答えを直接提示される感覚です。人によっては物足りなく感じると思います。ここらへんが好みの別れどころになります。個人的に印象に残る作品がなかったのが残念。 |
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学園ミステリ。
正直な所、これと言った特徴がなく感想が書き辛い。可もなく不可もなくという所。 主人公+男+女2の仲良し4人組が文化祭の実行補佐に命ぜられ学園の事件を解決する話。 仲良しメンバーの女の子、"鋸りり子"は元名探偵。なぜ元なのかといった名探偵を辞めた過去のエピソードや主人公との関係性が紹介されます。本作はシリーズ化を狙った1作目として登場人物達の紹介を兼ねていました。 物語の中盤を過ぎてからメインの事件が始まります。皆で事件を解決しようとする推理合戦が展開されるのが見所。最後に導き出された真実によるカタストロフィもなかなかです。 学園もの新本格ミステリとして気軽に楽しめる作品でした。ただ、何か印象付ける個性が欲しかったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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2017年のメフィスト賞受賞作。
毎年記憶を無くしてしまう女性の元に現れた謎の男性からゲームを持ち掛けられる話。 恋愛ミステリとしてのキャッチフレーズの本書。ミステリ仕掛けを多少期待するわけですが中身は終始恋愛小説でした。 正直な所、記憶喪失モノの恋愛小説としてみた時、世の中たくさんあるこの手の中で本書の特徴的な要素は見当たりませんでした。小説や映画やゲーム等で思い浮かぶ先行作品を超える点がないので、結末も予想の範囲内で収まりました。たまにある講談社系ミステリの帯コピーって、タイトルと帯とジャンルから結末が読めちゃう下手さがありますね。売る為の帯文句なのはわかりますが、読んだらそのままだったという刺激がないです。売れるかもしれないですが、読者へ印象が残りづらいので、作品の評価が上がり辛い勿体なさを感じます。 一応良いと思う点としては文章が非常に軽いライトな小説です。小説を普段読まない読者層が手に取るには丁度良いかと思います。内容も分かりやすく読みやすいのは好感でした。 余談ですが、メフィスト賞の出版が講談社ノベルスではなく講談社タイガへ移っているので若者向けへ傾向を変えているのを感じました。 |
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単行本と文庫で表紙とタイトルが変更されましたが、これにより作品の印象が大分変りました。
『死と呪いの島で、僕らは』として読むと序盤のホラーからして一転、ラストの結末への展開は若い世代向けのライトな青春小説とも感じます。 一方、『死呪の島』として読むと、呪いで閉鎖的になった島での不可解な怪奇現象に挑む、昔からなじみのあるホラー小説を感じます。 本書は6章ある構成で、各章ごとに、怪奇現象⇒プチ結末⇒新たな怪奇現象⇒プチ結末⇒・・・と続いていきます。章ごとに話の系統が変わる展開なのですが、色々なホラー小説を読んでいる気分になり、飽きさせない面白さになっています。個人的には2章目に出てくる『顔取り』が雰囲気含めて好み。漂流した首なし死体と、蘇る死者のホラー展開は、何が起きているんだ?という困惑と恐怖が楽しめました。4章ぐらいまでが好みだったのですが、終盤は全く予想外な話になっていき、ちょっと好みが逸れました。 読後に俯瞰して思う事は、1章~6章への各エピソードが、昔ながらのホラーから現代ホラーへと時代を駆け抜けて表現していると思いました。 科学が進化した現代では、呪いや超常現象的な恐ろしさを描こうとしてもホラー作品ではなく、「異世界ファンタジーもの」にされてしまう悲しさがありますが、本書は昔ながらのホラーから描いていく事と、全体を締める結末作りで一風変わった作品になっていると思いました。 そんな事を思ったので、改めて表紙とタイトルを見直すと、前半は『死呪の島』として感じる昔ながらのホラー、後半は『死と呪いの島で、僕らは』で感じる青春小説というわけで、人の好みによって本書は評価が変わるだろうなと思います。 他の方のレビューでもありますが、文章は読みやすく、いろいろ詰め込んだ物語なのに300P台でまとまっているのが凄いです。現代的な読みやすさでホラーが楽しめたという所は好みでした。終盤のなんでもアリ感はちょっと好みから外れたのでこの点数で。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「密室十二宮」完結。本作は単体では楽しめず、3~5巻を上中下巻と捉えた方が良いです。
振り返ってみれば、本格ミステリのトリックを十分に楽しめる作品でした。古典的トリックや有り得ないと思える仕掛けを、このゲーム的な世界観だからアリと思わせるバランスが良かったです。 個人的な難点は、3~5巻の発売が間延びしていたので、前後の関係や登場人物を忘れてしまった事です。せめて主要人物紹介のページは欲しい。この人誰だっけ?というのが多かったので作品に没頭し辛かったです。事件現場やトリックが豊富な所は楽しめますが、豊富過ぎてパズル・ミステリの問題集のように感じました。物語を楽しむというかトリックネタを眺める感覚でした。 3巻でアホキャラになりかけた五月雨が、本作ではちゃんと探偵として活躍していたのが良かったです。物語はどう進むのだろう。DSCナンバーもインフレしてしまっているし。。 次回作は1巻完結もので楽しめる作品だと嬉しいなと思う所です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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本格ミステリ・ディケイド掲載作品という事で読みました。
高校の屋上で見つかった教師の刺殺体。非常階段含め、屋上の出入りが行われていない空間が現場の開けた密室事件。凶器や犯人はどこへ消えたのか? コテコテ路線の謎解き作品です。年代の為か、登場人物や手がかりの出し方が非常に分かり易いので、今読むと軽くてシンプル。パズル小説に近い感覚でした。 著者のコメント曰く、本書は10代の若い世代を対象とした執筆依頼だったそうです。なるほど。そう考えると路線はとても合っています。 殺人事件があるけれど怖くない。ミステリ読み始めの中高生の層にはマッチしていると思いました。 事件の関係者は先生達で、それに巻き込まれた生徒視点という距離感が個人的に面白く感じました。 また、青空下の密室の謎は許容範囲で好みでした。手掛かりがちょっと唐突過ぎますけどね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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書店に大量に積んであり、帯コピーが「最後の一文、その意味を理解したとき、あなたは絶対涙する」という、興味がそそられる販売戦略。タイトルや印象的な表紙など戦略は成功ですね。
釣られて読みました。 読後に感じる気持ちは中々複雑で、何でこんな構成にしたのだろうという疑問でした。思い返して帯を見れば「意味を理解した時」とあるので、内容を理解しないと感動は得られないわけです。ミステリの最後のどんでん返しがあるわけではないので注意です。後味がモヤっとします。 ただ、とある仕掛けが施されているので「意味を理解した時」についての自分なりの考えをネタバレに書いておきます。 苦手で好み合わずの所は雰囲気でした。 序盤は「いじめ」を扱い重い雰囲気を作るかと思いきや、ギャグが多く含まれており明るくしているチグハグさが馴染めず。当事者や周りの状況がそんなに軽いものなかのかなと思います。重苦しいままの方が親身にのめり込めるのですが、飄々とギャグが含まれると気持ちが入らない読書です。ここは好みでしょうけど。 他、表紙の女の子の表情が一品ですね。不安とも優しさとも見える何かを秘めている表情がとてもよい。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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勉強に明け暮れていた男子高の生徒が、決まった時刻から1時間だけ世界の時間が止まる状況に遭遇。
時間停止の中、女の子と触れたいと男子心が騒ぎ、別の高校へ行ってみると動ける女の子と出会う。 まぁ、ベタな青春物語です。 SFらしさやミステリらしさは正直ありません。時間停止モノですがSF的な深い介入はなく、そういう設定として捉えます。 とにかく時間が停止した中で女の子と出会い、ひとときの青春を味わうお話でした。 初心な男女の恋愛模様は微笑ましいですし、時間停止ならではとして動物園の檻の中に入るデートなどは楽しそうだな。とか、最後の方で一応の真相があるのですが、これと言って尖った要素がないド定番の流れなので可もなく不可もなしでした。 綺麗にまとまっているので安心して読める青春物語としては良かった。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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20歳の記憶をもったまま10歳にタイムスリップ。
よくある話では人生の逆転や成功を願う話になる所、幸せだった1周目を変えたくない想いで進行する設定が斬新でした。 もともと成功して不満なんてなかった人には、タイムスリップのやり直しは苦痛でしかないですし、道を外せばカオスのように結果が変わってしまい不満が募るわけです。 本書はその主人公の不平不満のような気持ちの独白で構成された話です。もともとこの話もネットのスレッド小説なので、誰かにちょっと話を聞いてもらいたい。といった気持ちの書き込みが淡々と流れてくるようでした。ネット文章が元ですが、相変わらず読みやすく文章が好みでした。 ミステリというより恋愛や青春ものに近い本書ですが、不思議な物語を味合った感覚で楽しめました。 |
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3巻の『密室十二宮』編の続きなので、前作の読書は必要です。
なんだか物凄く駆け足の展開でトリックの問題集というかパズル小説の印象でした。3巻~5巻への繋ぎの印象でして、シリーズ物だからとはいえ事件が単品で完結しないのは個人的に残念です。 とはいえ、こういうコテコテの本格ミステリ模様で楽しめる作品は中々ないので毎回楽しみであります。作中の『枯尾花学園事件』については面白かったです。予め提示された黒の挑戦内容は、凶器:ろうそく、トリック:密室。雰囲気も合っていて短編ボリュームで終わらせるのは勿体ない作品でした。 事件以外の霧切&五月雨のストーリーについても本書では特出して進展がないので5巻に期待。もし文庫化するなら3~5巻はセットで1冊みたいな内容です。 余談ですが、著者の作品傾向として本シリーズと並行で少年検閲官シリーズが刊行されましたが、本書でのキャラクター×ファンタジー×本格のノウハウをオリジナルの少年検閲官シリーズへ取りこんで両シリーズがうまい相互作用で面白くなっている印象を受けました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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