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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数166件
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この作品は児童養護施設の子供たちに焦点を当てた作品です。
そこに暮らす子供たちの境遇は非常に厳しいものなのですが、作者は必要以上に掘り下げた描写をしていません。 なので重くない、非常に読みやすい作品となっています。 作者がもしこの作品を通じて児童養護施設の現状、問題点を提起しようとしていたのなら、それには成功していると思います。 わざわざ掘り下げた描写をし、読み手に重苦しさを強要しなくとも伝わるのです。 この点が非常に好印象でした。社会派といってもよい作品だと思います。 ミステリの方ですが、全七章で学園の七不思議が語られ謎解きがなされます。 正直各章で描かれる謎はミステリとしては弱いです。 何しろ相手は子供ですから。 「子供だなぁ」「子供だからなぁ」といった子供ならではの未熟さをトリックに用いられても困ります。 ただ、学園七不思議の最後の謎が描かれる最終章に用意されていた大掛かりな仕掛けには感心させられました。 多少強引なところもあるのですが・・・ 最後の謎が明らかにされた時「わかりやすい」伏線が各所に散りばめられていたことに気付きます。 この「わかりやすい」ってのがミソですね。 続編の方が本命であり、そのために読んだ作品でもあったわけですが、正直読んで良かったです。 楽しめました。 |
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名探偵の存在を否定し、そんな名探偵が登場する探偵小説に対し一石を投じる風刺の効いた作品です。
トレント最後の事件というタイトルですが実はトレントは初登場だったりします。 これで思い出したのが「メルカトル鮎最後の事件」 これまでのミステリの概念をぶち壊す迷探偵メルカトル鮎。 アンチミステリを打ち出す麻耶雄嵩が描く作品の背景にはこの作品の思想がはっきりと浮かんでいる気がします。 私の場合、読んだ順序が逆ですし、今頃気付いたのと言われそうですが、何かこういう気付きって嬉しい。 読書の醍醐味の一つな気がしました。 ほぼ最低点を付けてしまった麻耶さんの「翼ある闇」ですが、もっと自身の経験値を上げてから読むべき作品でしたね。 再読したい気持ちになりました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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相変わらずロジック一本槍で、動機であるとかトリックに関してはおざなりな印象ですし、そのロジックのひも解きに全く到達しない警察の描き方も少しご都合主義的かなと思いますね。
そのロジックですが、(私には)正直納得のできるものではありません。 ただ、(納得できないにしても)作者の意図は何となく読み取れるので、その思惑にわざと嵌って読み進めれば、この作品に関しては犯人の特定はある程度可能ではないかと思います。 この分かり易さが高評価の秘密なのかなとも思いますが、登場人物が余りにも多いのは、その容易さを隠蔽して意図的に複雑にしようとしたのでは・・・という穿った見方をさせてしまいますね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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一人の女性をめぐる二人の男性、二人は幼い頃からの親友であり、非常に優秀で将来を嘱望されているのだが、対女性となると共に未熟と言えます。
主要登場人物の構図がこうなので「友情を取るか恋愛を取るか」になるのかと思いきやそうではない。 こういう青い展開を「深い」とは思いたくはないですが、そこにすら至らなかったのである。 三人の人間ドラマに全く魅力を感じられませんでした。 序章での、山手線と京浜東北線における出逢いの導入は、タイトルの「パラレルワールド」をどこか連想させますし、恋愛小説が得意でない私にとってもこの先の展開に何かを予感させるものであったのですが・・・正直これは「ラブストーリー」ではないですよね。 女性が単なる「飾り物」のような浅い造形ぶりですし、作者もラブストーリーを描くつもりはなかったのかも知れませんが・・・だったらタイトルが・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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加賀恭一郎シリーズの短篇集です。
全作品通しての共通のテーマはタイトルにもある「嘘」です。 トリックを見破るというよりも、犯人がつく嘘の僅かな綻びを見逃さず加賀が看破するという流れです。 また、読み手に犯人は初めから丸わかりで、且つその犯人視点の作品が多い事を考えても、追い詰められていく犯人の心理状態の描写に重点が置かれた作品と言えます。 如何にも加賀らしい観察眼とねちっこさは、短編とは言えしっかりと表現されており、シリーズのファンにも納得の一冊だろうと思います。 ただやっぱりこのシリーズは長編で読みたいかな。感情移入できる間もなく終わってしまう。 加賀の人間味にどっぷりと浸りたいですね。 |
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【ネタバレかも!?】
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国名シリーズ第2作。
数多い登場人物から消去法により犯人を絞り込んでいくという手法で、パズラーにはたまらないフーダニット作品になっています。 犯行現場→犯人の性別→共犯/単独犯→関係者による犯行→そして・・・という無駄のない怒涛の論理展開で非常に好感度の高い推理小説。 そして今作に限って言えば、よくありがちな強引なロジック操作もありません。 しかし逆に、推理小説をよく読まれる方にとっては既視感ありありで当たり前だろと思えること、例えばこの作品で言えば「犯行現場の特定」に対して長々とページを割いており「・・・なので犯行現場はここでは有り得ないのです(ドドーン)(一同驚嘆)」なのですが、「・・・30頁くらい前から知ってるって(汗)」ってツッコミを入れたくなります。 DNA鑑定やルミノール検査が出来ない歯がゆさもありますね。 まぁそれが「古典」だとも思うので減点の対象にはできませんが・・・ この作品では警視が人間関係の軋轢の中存在感がなく、エラリーが完全に推理の主導権を握っています。 普通なら最後の最後までダンマリを決め込むはずが捜査過程で喋る、喋る。 読者への挑戦が挿入された後、事件関係者を集めての大団円があるのですが、本来なら「待ってました」のはずが、そこでの謎解きが、殆ど読者にとって既知なのです。 「さっき聞いたよ」なのです。本来最後の謎解きで生まれる「驚き」が、既に捜査の過程で明らかになった時に「驚き済み」なのです。 そこが少し残念でした。 最後の最後に・・・ってのは中々洒落た演出だと思いましたけど。 あとロジック重視で動機が後から取ってつけたような感じなのはいただけないかなぁ。 あの「粉」の正体が明らかになった時、真っ先に疑われるべき人物は明白なのに一言も触れないのも不自然ですかね。 まぁ細かいこと言ってもきりがないので・・・前作の「ローマ」よりはかなり完成度高いように思います。 |
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15年前と現在、2つの殺人事件には、大人が大事なものを守るという共通項が存在している。
で、実際はどうなったか。 誰かを犠牲にして生きている辛さ、罪を背負って生きていく辛さ。 結局は守ろうとした存在を苦しめる事になっているのが皮肉だ。 親にとって子供はいつまでたっても子供なのかも知れないが、子供はそんな大人の小賢しいごまかしにいつ迄も騙されたままでいる程幼くはないのでしょうね。 さて、 子供が苦手だという(湯川の)設定を曲げてまで、作者が描きたかったもの。 「今回のことで君が何らかの答えを出せる日まで、私は君と一緒に同じ問題を抱え、悩み続けよう。忘れないでほしい。君は一人ぼっちじゃない」 湯川にこれを言わせたかったのかな。 ここでいう「答え」こそが方程式の解って事なんだろう。ならば本作品のテーマなのだろう。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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クリスティ・ポワロシリーズの代表作の一つです。
初読でしたが映画を観ていたので犯人は既に分かっていました。 この作品は非常に登場人物が多いのですが、最初の事件発生までに非常に頁を要し、それまでの200頁余りを割いて、登場人物一人一人を非常によく描いています。 そして、乗客の中には、窃盗常習者、横領もみ消しを企む人物、 警察が追うアジテータが含まれています。 作中3名の人物が殺害されますが犯人の当初の目的はただ一人。 その目的の人物を亡きものとせんとする人物が実は乗客内にもう1名いて、未遂に終わったものの実際実行にうつしています。 この辺りがミスリードを誘い、読み手が推理に様々な方向性を見出せる様になっています。 この構成力は、クイーンやカーには無いように思いますね。さすがという内容です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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カー三作目。
これまで「皇帝の~」「緑の~」とカーらしくないといわれる作品を選択していましたので、「らしい作品」は初めてになります。 前知識としては「密室」「オカルト」があり、二階堂黎人の「人狼城の恐怖」っぽいのを想像していましたが・・・ 正直想像していたものとはかなり異なりました。 しかしカーの魅力が存分に味わえる作品とのレビューが多く、以後カーの作品を読む時は「これがカーの魅力」と言う事を前提に読んでみたいと思います。 「連続殺人事件」というタイトルは作品の内容に合っていないように思え、正直このようなありきたりなタイトルである事が勿体無い気がしています。 英語タイトルには「自殺」と明記されているわけですから・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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ガリレオシリーズの長編2作目。
「献身」の次は「救済」 両作共に、犯人のキャラがかなり突出している倒叙型で、ハウダニットを楽しむ作品。 「献身」も「救済」も意味的には「相手のために~」というどこか似た意味合いを持っています。そして主語は何れも犯人。 この作品の場合、ラストにタイトルの意味が分かる凝った作りになっていますが、これを「救済」と言っていいのか若干腑に落ちない感じはします。 また「聖女」とは「神聖な事績を成し遂げた女性」または「慈愛に満ちた女性」という意味があるようですが、これは犯人のイメージとはかなり違いますね。 でもやはり長編がいいですね。 内海、草薙が異なる方向から事件を追いますが、何れも事件解決に大活躍。 湯川以上に存在感がありました。この作品の見所の一つでもあります。この展開はやはり長編でしか読めないですね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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リーダビリティの高さはデビュー作からして健在です。
しかも「競馬(生産)界」という、興味のない人間には全く縁遠い世界を舞台としながらも、(恐らく)無知な読み手を置いてけぼりにはしていない。 主人公の女性がズブの競馬素人という設定がうまく機能しているように思います。 その一方で、競馬好きとされる人達に対しても、くどくて鬱陶しい記述にはなっていないです。 私はオグリキャップの時代からの競馬ファンでその方面には相当明るいですが全くその辺りのストレスを感じること無く読めました。 真相の方も競馬ファンなら容易に想像がつくといったモノでもありませんし、最後の二転三転も読み応えがありました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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御手洗シリーズの最初の短篇集である。
「挨拶」とあるように、このシリーズ主人公である御手洗潔のキャラ補間の役割を果たす作品といえます。 この作品を読んでいるかいないかで、このシリーズの楽しみ方の幅に差が出てくる様に思えます。 例えば、御手洗と石岡がコーヒーを飲まない理由なんかがそうですね。 即ち、御手洗シリーズファンであれば読んでおくべき作品と言えるのではないでしょうか。 4本の短篇が収録された短編集ですが、暗号あり、読者への挑戦状あり、ほろっとさせる作品もありとなかなか楽しめます。 個人的に好きなのは「数字錠」かな。 この「数字錠」の存在だけで星1つ増量。 そういうレベル。 「疾走する死者」はその大掛かりな仕掛けから最も御大らしい作品と言えますが、後の作品に似たトリックを使用した作品がありますね。 個人的に短篇集は読み応えを感じる事ができないので好きではないのですが、この4本は比較的内容が濃いです。 |
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古典部シリーズの短篇集。
過去のシリーズ作品と時系列が前後していたので最初戸惑いましたが、どうやら古典部の最初の一年間を扱っている模様。 ただ一話完結の短篇集とはいえ、この作品は過去のシリーズ3作を読み終えてから読んだ方がいいですね。 何故なら、過去3作品において十分に表現できていなかった人間関係、特に奉太郎のえるに対する気持ちの変化を上手く補完する役割を果たしていると思えるからです。 見どころはやはり前作「クドリャフカの順番」のその後の物語となる後半の3作品かな。 作品タイトルにもなっている最終話「遠まわりする雛」の、「遠まわり」そして「雛」ってのに、えるの現状と未来、それに対する彼女の思いや考え方がよく込められている気がします。 遠回しで明確な描写はないとはいえ、えるの奉太郎に対する気持ちが表面化してきているように感じました。 女性にしかできない愛情表現ですね。男性がこれやると顰蹙を買いそうです。 一方、奉太郎のえるに対する気持ちは読み手にも明確にされました。 ラストの二人のやりとり「寒くなってきたな」「いいえ。もう春です」 まだまだ二人はズレているようですが、ただ、やはりと言うか、えるが一歩先を進んでいるようですねぇ。 相変わらず推理の対象となる謎は地味であり、ミステリ的にはイマイチです。 まぁ地味な謎を長々とやられるよりは、今作のような短篇集の方がいいかな。 ただ次回作への期待は持てる終わり方でした。勿論恋愛ものとしてですが・・・ |
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