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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数166件
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これまで読んだこの作者の骨太作品とはかなり趣が異なっていて、この作品はかなりライトで気楽に読める感じです。
主人公の元女弁護士とその助手が依頼を受けてトラブルを解決するといったもの。 一見勧善懲悪モノのようにも感じますが、実は主人公の元女弁護士も「白」って感じではないですね。 というのも、主人公より、実際謎を解決しているのは殆どが助手の貴山。 どことなく麻耶雄嵩の貴族探偵っぽいかな。 その助手も決して「白」じゃないのですが・・・ 短編なので、頭脳戦が展開されている割には浅く感じてしまうんですけどね。 主人公の二人のキャラが濃いし、シリーズ化するんでしょうね。 |
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二人ほど人が死ぬんですが、体裁としてはコージーミステリそのもの。
軽いですが、軽く読みには登場人物が多すぎますかね。 とはいえ、クセの強い住人たちで覚えやすいと言えます。 コージーミステリですので、探偵や警察が介入する事はなく、住人たちの噂話を元に読み手に推理させるって感じですが、中盤辺りまではどいつもこいつも怪しいって感じで容疑者が絞れるどころか発散していきました。 どう収束させるのか少し心配になりましたが、奇人変人の住人達が少しずつ絡まりあい、ピースを埋めていき完成という辺りは流石ですね。 奇抜ではないし、若干突飛すぎる気もしますが・・・ で、やはり主眼は人間の醜さとか悪意とかで、この作者さんらしい作品といえるのではないでしょうか。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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役者が総理大臣の替え玉にという相当無茶な設定。
普通に考えると、そもそもまともにこなせる訳もなく、総理大臣の職務を舐めるなよである。 また、バレないなんて有り得ないのだが、まさかバレないまま終わるなんて予想だにしていなかった。 この辺りに引っ掛かる人にはこの作品はダメだろう。 どう考えてもフォクションなんだし、フィクションと割り切って読み進めれば面白いと思いますよ。 逆にシリアスに書き切ったのは凄いと言えるのではないでしょうか。 |
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「最後の証人」で弁護士として登場した主人公佐方の検事時代の話を中心に描いた連作短編集。
佐方シリーズ3作目となります。 2本目の「業をおろす」は、前作の5本目「本懐を知る」の続編となっています。 作者の配慮はあるものの、やはり順番通りに読むべきでしょう。 ただ、ここまで謎を明らかにする必要なかったのでは。 要するに、「本懐を知る」で終わらせておいた方がよかったと思ったって事です。 今作は、前作に比べて案件が小粒。 どんな小さな案件だろうが、妥協せず何事にも屈せず正義を貫く佐方、という事なのだろうが、前作以上を期待して読んだ側からしたら幾分肩透かし感はある。 また、前作でしっかり描かれていた「相手に真実を吐かせようと思ったら、人間として向き合うべきでしょう」の部分が今作では希薄。 単独なら比較的高い評価が出来る作品ですが、前作を読んでいると「あれ?」になっちゃうかな。 まぁ前作が凄すぎたって事ですね。 |
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交通事故で片足を切断、選手生命を奪われた、オリンピックを目指す女性アスリートが再起をかける物語。
と思いきや、事故の加害者が主人公の幼馴染、そして事故直後に殺害されるという意外な展開。 ここに犬飼が登場した時には驚いただけでなく、これは一筋縄ではいかない事件なんだなと、またどういう方向に進むのかと。 と思いきや、加害者の弁護人がなんと御子柴。 待望の犬飼VS御子柴であり、前のめりにもなりそうなもんだが、前述の再起を目指す女性アスリートと掛け合わせると、残念ながら、この先の展開とまではいかないまでも結末だけは読めてしまった。 そこに行き着くまでの過程として、(大御所二人の登場もあり)ミステリ要素の介入を期待してしまったが、残念ながら・・・と言わざるをえない。 二人の初顔合わせといったところか。 らしさを発揮したのはやはり御子柴の方で、今後の作品での犬飼の反撃に期待したい。 登場人物のリンクが多い中山作品。 御子柴に一矢報いるとすれば、犬飼だとは思うものの、犬飼では御子柴を倒すには至らないかなぁ・・・やはり対御子柴の最終兵器は岬洋介か。 物語はと言うと・・・主人公の脳みそが筋肉過ぎて、好きになれなかったなぁ・・・ |
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最近マイブームの柚月裕子さんの処女作。
障害者施設の闇を描いた骨太な作品です。 失語症であったり、知的障害だったり、抵抗、反抗の表現が出来づらい弱者に対する性暴行がテーマ。 読んでいてちょっと辛いところがありますね。 「聖者の行進」を思い出してしまった。 声に色彩を感じ嘘を見破る共感覚を持つ人物を登場させています。 読み手には誰が悪人なのかすぐに分かってしまい、それにより今後の展開が見え見えになってしまったりするのですが、最初の最初から嘘しか語らない悪人どもの糞っぷりが強調されてましたかね。効果的だったとは思いますが、一方で読んでいての驚きがないんですよね。 読み手を驚かせるタイプの作品ではない、と言われればそれまでなんですが、感動させてくれる作品でもなかったですしね。 また、主人公の臨床心理士の言動がやたら軽率なのが気になりました。 歳相応の落ち着きが欲しかったですね。 他のレビュアーの方も述べていますが、私もあのシーンのあの描写は不要だと思いました。 作品の中で浮いています。 っていうか、主人公のような女性には興味を示さないっていう設定じゃなかったっけ? |
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安楽椅子探偵ものの5話連作短編集。
タイトルや表紙の装丁から日常の謎的なものを想像していましたが、そこは元裁判官の静おばあちゃん、本格ミステリとまではいかないまでも、扱われる題材は殺人事件であったり、冤罪事件だったり、中には少し重めの内容のものもあります。 葛城刑事と孫である円が解決する事件の裏で暗躍する安楽椅子探偵静いったところでしょうか。 葛城と円のサイドストーリもほんのりいい感じ。 ラストの真相は、作者お得意のどんでん返しのつもりなのでしょうか。 まぁご愛嬌かな、とも思いますが、これって、続編はないって事なのかな。 シリーズもの向きだとは思ったのですが・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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高校の同窓会。
高校生という多感な時期のスクールカーストに、卒業から何年経っても支配されていたりする。 出世、結婚、出産・・・。そこに、妬み、嫉妬が絡んでくるのは必然なのかも。 下位だったものは逆転人生にほくそ笑み、上位だったものが居心地悪くなったり・・・ そんな事、決して表に出さないけど自然と上から目線。 他人との関係性の中にしか自分の価値を示せない生き方は哀れだともわかっているけれども、一つの拠り所にしてしまっている自分がいるのね。 そんなこんなで年々参加者が減っていく。 「忙しい」なんてのは不参加の理由にはならないんだろうね。一日しかも数時間という時間を捻出できないやつなんていないだろうから。 自分にも身に覚えがあるけれども、それを文字にしてしまうと、というか、辻村深月が文字にするとかなりエグいなぁ。 そんなこの作者らしい物語以外にも、これもこの作者らしい、読み手を混乱させる工夫が施されていたりして油断できない作品ですね。 私の場合、最終章「トリを飾るのがお前なの? ん!?」って感じでした。 「何か変な感じがするな」とは思ってましたけど、登場人物たちに毒されて麻痺してましたかね。 |
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宮部みゆきさんの「火車」っぽい作品だなと思いながら読んでいました。
この名作と比較してもどうしようもない訳ですが、途中まではいい線いってたように思います。 最終章でフルボッコKO負けって感じですかね。台無し感満載でした。 巧みな話術と悪魔的な魅力で相手を虜にしてきた稀代の悪女が、「こいつただのバカじゃん」に一気に格下げ。 無理矢理作者得意のどんでん返しに持っていこうとしたから、って気がしてるんですけどね。 それにしても、FPなんて、今や主婦が片手間でも取れる資格なのに・・・ 「FPの資格を持っています(キリッ」って言われてもなぁ。 そんなので騙される人いねーよ。 男と女の騙され方の違いは面白かったかな。 女は最後まで他人を頼るのね。で、手を差し伸べられると同性であってもコロッと。 一方、男は美人に弱いと。 男の方がバカっぽいけど、どっちもどっちですよね。 |
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自分の作品である「連続殺人鬼カエル男」を自分の作品の中で映画化、その制作現場を描くという中々に面白い作品。
中盤のあのバイオレンスシーンは映像化したらさぞかし盛り上がる事でしょう(笑) 様々な困難に立ち向かいながらも、映画制作に懸ける心意気や熱さ、そしてそこに主人公の成長を描きますが、殺人事件まで起こしてしまうのは正直やり過ぎかと。 普通ならその時点でお蔵入りだろう。しかもクランクアップ後の犯人発覚。 読み手である私の、チームに対する、思い入れも固まった状況。 救済策があるのかと思いきや切り捨て代役とは・・・ 世に出す事が、そんなに大事なのかと・・・ ミステリの部分は、あっさりしていて軽く、重きを置かれているとも思えず、それなら正直不要だった。 憲法第三九条をめぐる人権団体との攻防を最大の障害とした方がよっぽどこの作者らしかったと思うのですが。 |
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自身が提案したアイデアが採用され、新規事業開発、そしてその夢を実現させる女性の話。
舞台は沖縄~南大東島という事で、作者の「カフーを待ちわびて」同様、どこかのんびりした雰囲気があるので、「ビジネス」という臭いはイマイチ。 そこがいいのかも知れませんが・・・ 主人公からは、正直、新規事業開発をリーダーとなって引っ張るような行動力を感じる事はできなかったのですが、好感度の高い女性ですので感情移入はしやすいかも知れません。 実話を元にしたという事ですが、作者にサラリーマン経験がないためでしょうか、「そんな甘いもんじゃないですよ」と言いたくなる。 苦難が余り描かれていないのだ。余りにもトントン拍子に行き過ぎ。 実物の主人公さんは実際間違いなくもっともっと苦労しているはずだ。 意図的に端折ったのか取材不足なのかの判断は出来ませんが、個人的には後者な気がしてます。 まぁその分、読む側も何のストレスもなく気持ちいいまま読み終えることが出来るのですが・・・ |
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伊坂の作品にしては、「らしい」けど「意味不明」でもないし、わかりやすいとは思うので、伊坂入門書として最適な気がします。
と言って、伊坂の代表作の1つとなるような作品ではないように思います。 車の視点で語られる、つまり「車同士が話をする事ができる」設定の物語。 「空いたボンネットが塞がらない」などの言葉遊びやお得意の面白い比喩が炸裂しています。 そして、例によって、伊坂作品らしい悪人が登場して、主人公家族(主「車」公ではない)が窮地に陥ります。 車たちは会話できる事がが全てで、実際「話」以外に何もしないんですね。 人知れず大活躍ってのを期待していたのですが、というか当然そういう展開だろうと思っていたんですが・・・ そこが残念というか、「何故?」っていう感じでした。 エピローグが良かったですね。 個人的には伊坂作品らしくないほっこりした終わり方だと思ったんですけどね。 |
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高校生の娘をひき逃げ事故でなくして以来、全てを失ってきた初老の男、と万引き犯の少女。
将来を嘱望され会社役員候補と目されていた状態からの転落人生。 本来であれば、住んでいる世界が違いすぎて交わる事など有り得ない(救いようのないような)少女との出逢い。 それでもその男は、やはり高人格であり、そんな少女相手なら、何もかもを達観した落ち着きと余裕を持った接し方になるのは当然だったろう。 そんな二人が、全く想定外~~想定できる範囲内だったが、小説のラストとして選択されないだろうと考えていた~~のラストを向かえては、こちらとしてもどうも読後感が悪い。 これを「世界が反転」という表現はおかしいだろう。 どん底に叩き落しただけではないか。 まぁ、それまで徹底的に読み手が感情移入出来るような描き方をしておいて・・・ってとこは、やはり上手いのか。やられたって事なのだろうか。 「葉桜」とは別の意味でかなり印象に残る作品になってしまった。 |
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【ネタバレかも!?】
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平成のエラリークイーンと呼ばれる作者だけあって、主人公の探偵に、徹底的に論理的に推理させる訳ですが、個人的に凄く気に入っているシリーズであります。
1つの「物」に着目して、そこを起点にして、推理を展開するというお決まりのパターンですが、今回はダイイングメッセージという決定的な物証がありながら、それを脇に追いやっての・・・ですから、これまでのシリーズの1つ上を行った、という点で好印象。 また、「図書館の殺人」において、凶器が本、ダイイングメッセージも本、そして事件の重要な要素としても本が絡んでくる、なんていう小洒落たところは、3作目にして格段に・・・という、これも好印象。 しかし、 「動機が弱い」っていうレビューが散見されますね。 「弱い」というより「不自然」と言った方がいいでしょうか。 この手の論理づくめで犯人を突き詰めていくタイプの作品の場合、まずはWHOでWHYは後付でも(ある程度)いいのではないかとは思うのです。 前作「水族館の殺人」でもこれは感じていました。 ただ、今作はちょっと突飛過ぎますかね。 意外な真相で無理矢理読み手を驚かそうとしなくてもいいと思いますけどね。 また、ロジック重視の作品にありがちな、主観による他の選択肢の軽視も、ちょっと目立ちましたかね。 髪が長い、視力が弱いなんてのは納得できるんですけど、「髪に血が付いたのでトイレで処理する(のは当たり前)」なんてのも正直どうなんでしょうか。 何かサイドストーリーの方もどんどん膨らんでいきますね。 必要かな? |
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マティス、ドガ、セザンヌ、モネ、4人の画家にまつわる短編集。
本人ではなく身近な女性の視点で描かれる画家の物語です。 巻末に「本作は史実に基づいたフィクションです」とあるようにフィクションには間違いないのだろうが、作者が原田マハである事を考えると、当然彼女にしか描けない作品だと思うし、彼女が描いた作品だからこそ信憑性が高いのではと思ってしまうし、さて一体どこまでがフィクションなのか、非常に興味深い。 「楽園のカンヴァス」と比べると、少し前知識があった方が楽しめる作品かも知れませんね。 絵画鑑賞の際には、その画家の生きた時代や生き様を知っていた方が・・・というのなら、この作品はまさに「読む美術館」と言うところだろう。 当然の事だが、名画と言われる作品の一つ一つに、それぞれのエピソードがあるのだな、と再認識させられます。 |
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日本三大奇書のひとつと言われている作品ですが、当初想像していたほど難解な作品ではなかったと思います。
と言って、作者の意図しているところが全て読み取れたとは思っていませんが・・・ ただ、読み終えて何となく感じるのは、「純粋にミステリ的要素を楽しみたい人には向かない」だろうと言う事でしょうかね。 何せ、元祖アンチミステリーですから。 氷沼家で起こる連続(密室)殺人事件に対して、ド素人達が名探偵よろしく思い思いに自分の推理を披露します。 関係者の知り合いでもあり、身近で陰惨な事件が起こっているにもかかわらず、まだ起こってもいない事件を予想したりと、どこか無責任で不謹慎にすら感じます。 薔薇、宝石、シャンソン、五色不動尊などなど、何れも「色」をキーにして推理に絡めてきますが、兎に角読んでいて疲れる「ド薀蓄」のオンパレード。 また、古典ミステリを参照して推理を展開する事が多いのですが、引き合いに出される作品がちょっと古い。 「これメジャーなの?」ってのも多々です。 更に、洞爺丸沈没、精神病院火災など実際に起こった事件の被害者として氷沼家の人間を登場させたりもします。 こういう推理ネタには事欠かない状況の中、推理合戦が繰り広げられ、素人探偵の推理が乱立しますが、当然否定されない限りは可能性として残り、(読み手としては)消し去る訳にはいかないのです。 完膚なきまでに否定されたと思っていたら、忽然と復活してくる推理もあったりして、素人の無責任な推理によって、伏線ばかりが最早回収不能なほどに溢れかえり、いくら章が進んでも事件解決への進展が見られず、読んでいて、今何がどうなっているのか分からなくなってきます。 で、最終章。 回収されることもなく謎のまま終わってしまう伏線も多数。 「素人が勝手に面白おかしく推理しただけやないか。そんなん知るか」という作者の天の声が聞こえてきそう。 そして、最後の真犯人の独白こそが、この作品がアンチミステリーの元祖と言われる所以でもあり、この作品の全てなのかな、と解釈しています。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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阪神淡路大震災があったその日に、神戸から約700km離れたN県警で発生した話である。
保身と野心。 タイトルの「震度0」が示す通り、N県警で起こっている事は、県民にとっては誰も気付かないような実際どうでもいい話なのである。 それにしても、この作者の描く警察小説に登場していた「警察官」たちは一体何処に行ってしまったのか? 同じ日本で大変なことが起こっている大震災の最中、県警幹部達が、自身の保身に身勝手なままに奔走する。 警察幹部夫人達まで、くっだらない見栄の張り合いで、読み手の失笑を買っていること間違い無しだ。 作者はこの作品で警察の何を描きたかったのか、という事になるが・・・。 「現場の刑事は立派で格好いいけど、彼らの上司である幹部連中はバカばっかりです」って事だろう。 ある意味、「挑戦」的な作品といえるのではないでしょうか。 |
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外れのない横山秀夫の短編集4作品。
表題作の「陰の季節」を除く3作は、「私はこうして警察の出世競争から脱落しました」というお話。 つまり警察の人事に特化した異色の短編集であり、そこに暗躍するのは当然人事部であり、そしてD県警シリーズという事になれば、警務課のエース・二渡となる。 ロクヨンにも登場し、主人公と同期の出世頭で、何やらコソコソと・・・のあの人である。 表題作を除けば、表立っては登場しないのですが、市原悦子の如くしっかり見ているのだ。「二渡は見た」なのだ。 一方、表題作は、天下り人事に手を焼く二渡視点の物語になります。 それとなく彼の人柄、人間性が分かる貴重な作品になっているように思います。 D県警シリーズはこれで読破した事になりましたが、1作目を最後に読んでしまいました。 これから読まれる方には、ロクヨン読むなら同じD県警シリーズの中でも、せめてこの作品だけは先に読んでおいた方がいいかと。 面白かったですが、つい最近「第三の時効」を読んでますからね。比較しちゃうと・・・ ロクヨン同様、「第三の時効」よりも先に読んでおいた方がいいですよ。かすんじゃう。 |
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湊かなえさんの作品は「告白」「夜行観覧車」に続いて3作目。
何れもが、事件の関係者が取材を受けて一人語りするというパターンの小説でした。 正直読み始めて「またこれか」と思ったのですが、この作品は、これまでの2作品とは違うかな。 登場人物の証言から「人間の闇の部分」を浮き彫りにした「告白」あたりと比較すると、この作品の場合は、脚色されたり盛られたりと、如何に不確かな情報が多いかという点に重きをおいているように感じました。 その分「告白」と比べると軽いのですが、女性証言者の、嫉妬からくるイメージの捏造なんかは聞いていてゾッとしますね。 女性って必要以上に周りの目を気にするいきものなんですね。そう言われてみれば自分の周りにもいるような気がしますよ。怖いです。 男性の証言にはそういうところないですものね。 この作品で特徴的なのは、この事件の事を書いた週刊誌の記事のページや、SNSのタイムライン画面が、かなりのページを割いて挿入されている事です。 関係者に取材をした記者が書いた記事であり、記者本人のSNSページである事は明白です。 最初は「何だこれ」だったのですが、読んでみると、各章の関係者の証言と一致していない内容が含まれている事が分かります。 発信する側の表現が曖昧過ぎて、これでは受け取る側が間違って解釈するかも知れないじゃないか、な話ではないのです。 部数を伸ばすため、SNSで目立つための捏造や誇張。 これを表現するのに非常に効果的な手法だったと言えますね。 で、またしても後味が悪い小説となるわけですが・・・ 実際にこういう事があるのだとしたら怖いですね。まぁあるんでしょうね。 |
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シリーズ物のようだが、この作者さんは初読。
文章は軽快でテンポがあり非常に読みやすいのですが、最初から最後までどこかドタバタしています。 舞台は大阪。 無論関西弁が飛び交うことになるのですが、大阪人の私が聞いても(読んでも)どこか仰々しい。 いくら大阪人でも、このシチュエーションでこんな(ウケ狙いの)台詞は吐きませんよ、がやたらと多い。 こういうコメディタッチなところは、作者の意図的なものと思いますが、観覧車ジャックという派手な事件を扱った作品であるのに、おかげでサスペンス的な緊迫感がゼロですね。 まぁシリアスに描いて、あのラストだと正直転けますが・・・ 絶対に成功しない・・・ですよね。 登場人物が多く、それぞれに物語を持っていますが、そんなバラバラなストーリーが一つに繋がっていきます。 この作品の評価が高いのはここだと思います。実際評価されているレビュアーが多いですね。 分からないではないですが、個人的には「少し分かりやすすぎる」かなと。 |
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