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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数106件
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作者の王道パターンである舞台を銀行とする勧善懲悪モノの連作短編集。
結果は分かってるんだけど、やっぱりそれなりには面白いです。 ただこれでハズレ無しと言っちゃっていいのか・・・ 半沢直樹シリーズよりも前に発表された作品だが、先に半沢直樹シリーズを読んでしまっていると、やはり全然物足りない。 半沢シリーズにはなかった殺人事件まで発生します。しかも3件。 それだけたちの悪い悪党という事になるはずですが、そのあたりの描写が何とも中途半端、そのせいでラストもスカっと感が殆ど無い。 この手の企業小説に登場する悪党に期待するのは、知的犯罪とか立場を利用した卑怯な手口、恐ろしいやつではなくズルいやつであって、人殺しまでは期待しない。 殺人が発生するとなると警察の介入は不可避で、そうなってくると別物の作品になってしまう。 主人公が元エリートの庶務行員。 横山秀夫の警察小説でも中心地とは外れたポジションの人物が主人公である作品が多いですが、そのポジションならではの活躍をしています。 この作品は、主人公が庶務行員である意味がまるでない気がしました。 その辺りも、1つの物語としてのまとまりの無さというかおさまりの悪さというか深みのなさにつながっている気がします。 |
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タイトルの意味は、蟻と植物の共依存の事で、物語の最後の最後に分かります。
中心人物である二人の姉妹の事を比喩しているのだと思いますが、どこかしっくり来ません。 共生しているという感じはしなかったですね。 ある人物の過去を追って東尋坊へ、なんて、松本清張を読んでいる気にさせられます。 社会派ミステリに分類される作品だと思いますが、清張作品のようなズシッとくるような重厚感はなかったですね。 2時間モノのサスペンスドラマって感じでしょうか。どこか薄いです。 婚活詐欺とか、児童虐待とか、様々な重いテーマが盛り込まれています。 それでいて「薄い」と感じてしまったのは「構成」が原因している気がします。 何人かのレビューアーの方が言われているように動機だったりとかもそうですが、何かしっかり繋がっていないっていうか・・・うまく表現できませんが。 叙述系のトリックを疑いたくなるような趣向が途中から突然現れたりとか・・・で、オチが・・・(唖然)とか。 正直もっとシンプルでよかったのではって思います。 父親殺害だけで終わっても、十分上質のミステリとして成り立ったと思いますけどね。 姉妹に対する肩入れもかなり違うはずですよね。 |
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匠千暁シリーズ。時系列的には最初の作品になるらしい。
叙述トリックの一種なんでしょうけどね。 一瞬「十角館の殺人」が頭をよぎったりもしたのですが、全然違うわ。 「十角館の殺人」は、犯人が分かってしまうという意味で映像化は無理だと思うのですが、この作品の場合は、犯人が分かってしまう以前に笑ってしまうでしょう。 酒ばっかり飲んでるのはその予防線なのだろうか。 私は「解体諸因」を既読。 短編集であるその中の1作品にこのシリーズが含まれていたらしいのだが、全く記憶がない(汗) こういうノリのシリーズなら仕方ないのですが、これって推理じゃなくて妄想でしかないよね。 妄想なら妄想でも構わないのですが、それ以前に、この犯行を成り立たせるための肝心な部分が「有り得ない」ので、何故高評価なのか首を傾げざるを得ない。 |
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ヒポクラテスシリーズの2作目。
大学の法医学教室を舞台に、異常死をネット上で告発する「コレクター」なる謎の人物を共通項にする連作短編集です。 各章のタイトルが某氏の某シリーズを連想させますが、物理学ではなく法医学です。 作者得意のどんでん返しも健在、とはいうものの、最初の彼が「コレクター」だと思って読んでた人はいないでしょ(笑) あと、恋愛要素を盛り込んだりと、テレビドラマ化を意識したような軽さが気になりますね。 本来そういった分野ではないように思うのですが・・・ それが原因でメッセージ性が薄れてしまっているように思います。 |
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火村シリーズの長編。
相変わらず地味ですが、このシリーズの中では読み応えのある作品かと。 不審な死を遂げた男、それが自殺か他殺か、だけでなく、そもそもこの謎多き鍵の掛かった男が何者なのかというところから始まります。 火村の登場は後半になってからで、有栖が集めた伏線を火村が回収していくという珍しいパターンですがバランスはいい感じ。 男の謎が徐々に明らかになっていくところまではいいのですが、肝心の事件の部分になると、パズルのピースに無理がある点がいくつかあるように思いますね。 ロジック一辺倒の作家さんですからねぇ。 そこが決まらないと評価は微妙になってしまいますね。 動機も気持ちよくないですね。物語前半の雰囲気に合わないです。 有栖曰く「螺旋階段を登るように」真実に近づいていくという地味ながらもどこか雰囲気のあった前半から、その足場が崩れてガタガタになった後半って感じでしょうか。 |
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連作短編集のような構成になっている学園ミステリ。
ですが、そこは麻耶雄嵩。 これを敷居が高いとは言いたくないですが、麻耶未読者にもはっきり分かりやすい「変な作品」です。 というのも、探偵役の推理が何の検証もされなく否定され、読み手に結末が明かされることなく章が終了するからです。 化石オタクの赤点女・神舞まりあが探偵役、事情あってまりあのおつきあいをしている秀才(?)・桑原彰がワトソン役。 ワトソンが一枚上手に見える設定であり、探偵まりあの推理は、毎回毎回ことごとくワトソン彰に却下されます。 それもそのはず、まりあの推理は、敵対する「生徒会メンバの誰かが犯人」が前提で、そこを起点に無理矢理こじつけていくという推理で、説得力などあるわけなく、読み手にも、まともに推理しているようには思えない、そんな印象を与えています。 まず犯人を決めて、それが成立するように推理を組み立てるというまりあの推理は、作者の「神様シリーズ」と似たパターンになりますかね。 探偵役とワトソン役との関係に一石を投じるのは、この作者が以前から試みている事です。 なので、この消化不良になりかねない章立ても、麻耶作品を何作か読んでいる読み手、特に「さよなら神様」を既読の読み手には、先の展開も比較的容易に予想できたんじゃないかなと思いますね。 |
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名探偵石動戯作の人生に同情せざるを得なくなりますね。
もう汚名返上の場を与えられることは叶わないのですね。 シリーズを通して、名探偵に対するアンチテーゼを展開してきたこのシリーズですが、クライマックスの謎解きシーンは、探偵役はとしては禁じ手で、ひどい役どころだったなぁと苦笑いせずにはおれません。 設定にしても、「黒い仏」ほどの破壊力はない(当たり前ですが(笑))ものの、この作品も中世の騎士の亡霊が主役というプチ破壊力を秘めております。 その中世の騎士の名前はエドガー・ランペール。 江戸川乱歩を容易に想像させる名前であり、その騎士さんが、現代人からすると素っ頓狂な訳の分からん事を連発。 乱歩を笑っているのか、乱歩の時代はよかったという揶揄なのか、私には計り知れますが、作品全体を通して、ミステリというより、エドガーと現代人が織りなすコメディの比重が大きくて、作者が何を表現したかったのかイマイチよく分かりませんでした。 肝心の密室トリックも脱力もので、ミスディレクションになっていると思われている「◯◯口」も、そもそもミスディレクションとして成り立っているのかすら甚だ疑問です。 捜査関係者の誰も気付かないなんて有り得ないですよね。 |
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陽気なギャングシリーズ3作目。
安定した面白さ・・・と言いたいところだが、これまでの2作と比較すると、はっきり微妙だろう。 というのも、今作は銀行強盗というよりも悪者退治。 敵は、ゴシップ記者となるのですが、その火尻っていう記者が、相当にゲスの極みな描かれ方。 本来であれば、そんな悪を、4人が軽くいなすって感じになるはずが、どこかドタバタしていて、どこかこのシリーズらしくないよに感じてしまった。 人間嘘発見器、話術の達人、スリの名人、正確な体内時計を持つ運転の達人という4人の個性も活かされていないように思いました。 最後の収束のさせ方も、面白味がないというか、どこか投げやりな気がしましたね。 |
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岬洋介シリーズ最新刊で、彼の高校時代のエピソードが描かれます。
ドビュッシー、ラフマニノフ、ショパンときてベートーヴェン。 岬が抱える障害を考えると満を持してのベートーヴェンなはずで読む前から期待大でしたが、続編ありきのあくまで助走という感じで終わってしまった。 なるほど、既に「もう一度ベートーヴェン」という続編が用意されているらしい。 続編が楽しみになる終わり方と言っていいかも知れませんね。 ただ、この作品単独の評価はイマイチと言う事でいいでしょう。 ピアノの才能はもとより、何もかもを達観しているかのように冷静であるものの、何かを感じ取る洞察力、そしてその後の行動力は学生時代から健在。 予想通りクラス内で浮きまくる岬。 音楽科は普通科とでは在籍している生徒の質のようなものが違う事は何となく理解していたものの、それにしてもあの嫉妬は醜い。 小学生レベルの言動に呆れるばかりで、音楽科卒の人間に対する印象が変わりそう。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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アンチミステリの問題作で、賛否両論の激しい作品だという前知識を持った状態で読み始めました。
「後期クイーン問題」を意識させるような、そういう類の作品なのだろう、というある程度の先入観を持っていましたが、そんな先入観など遥かに突き抜ける空前絶後の展開に絶句してしまいました。 作者は明らかに、ミステリ好きの間ですら、相当の物議を醸すであろう事を見越して描いてますよね。 これ一応、名探偵・石動戯作っていうシリーズものなんですけどね。 アントニオの設定はどうすんのさ(笑) 私はシリーズ3作目の「鏡の中は日曜日」を先に読んでいるわけですが、取り敢えず人類は滅亡しなかったという事で・・・ 夢求が勝ったんですね(笑) やったね!!夢求(呆笑) 本格ミステリの定義の1つである「手掛かりを全て作中に示す」事が作中でどのように保証されるかを問題にしたプロット。 で、扱われるのはアリバイトリックで、クロフツへのリスペクト。 前作「美濃牛」は横溝正史でしたね。 作者がやりたかったであろう事は何となく理解できます。 その表現の方法が独特というかもはや異常なんですけどね。 で、その「何となく分かる」が、この作品を読む事の出来る(或いは楽しむことが出来る、或いは壁に投げつけないで読み切れる)下限ではないでしょうか。 今後この本を読まれる方が「何じゃこりゃ!」になりませんように、お祈り申し上げます。 この作家さんの新作を拝めないってのは悲しいなぁ。 |
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芸術探偵シリーズのスピンオフ作品となる短編集。
本格ミステリのお約束や定番となっているガジェットを暴走すれすれのラインで茶化しまくっています。 一見脱力もののバカミスに見えて、相当にマニアックで玄人好みの作品ですね。 そこでクスッと笑えるか笑えないか、ある程度読み手のスキルも要求されるかと思います。 単なるギャグで終わらせることなく、しっかり尻は拭けている、破綻させずに収束させる事ができているところは好感が持てます。 ただ、これまでに読んだ、この手のいわゆるアンチミステリといわれる作品と比較して目新しいとか「鋭い!!」といったものはなかったですかね。 キャラ設定で目先を変えている・・・だけかな。 っていうか、この警部さん、こんなキャラでしたっけ。 |
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高校を舞台とした学園の謎モノです。
連作短編の体を取っていて、細かな謎を毎回解決していきながらも、その裏には、自殺した少女の幽霊の謎というテーマが全編を通してあります。 変わっているのは主人公の女性がマジシャンという事でしょうか。 クラスメイトであるその女性に一目惚れした男性をワトソン役として、マジックのテクニックを使いながら事件を解決していきます。 山田奈緒子と上田次郎の学園の謎シリーズという感じでしょうか。(ウソです。かなり違います) 米澤穂信さんの古典部シリーズの男女を入れ換えた感じですかね。 この手の作品の場合、ワトソン役の男性が間抜けで鈍感でというパターンが多いですが、この作品も例に漏れずというか拍車をかけたようにダメダメです。 一方主人公の女性の方も、高校生マジシャンという時点で変わり者で、手先は器用だけど人間関係がダメダメ。 正直両名ともに感情移入できるタイプではなかった。特に女性の方。 千反田えるや山田奈緒子のような魅力がなく、ただただ疲れる女という印象。 またマジシャンという設定を活かせていないようにも思える。 騙す側、騙される側の心理というか、そういうところをもっと突いてくると思っていたのですが・・・ この題材なら、もう少し面白いミステリに仕上げられたのではないかなと思います。 なのでミステリというよりかなりライトノベル寄り、つまりは自分の好みからは外れる方向へベクトルが向いてしまったって感じです。 |
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日常のちょっとした謎をテーマにした作品。
そういう意味で、米澤穂信さんの古典部シリーズに似た作品といえるのだが、この作品の場合、謎の向こうには「人間というのも捨てたもんじゃないでしょう」的なものが潜んでいますかね。 そういう意味では、古典部シリーズと比較すると「大人版」という感じがします。 主人公は女子大生なのですが、純情潔白で文学好き、そして落語好きという、少し変わった・・・というと言いすぎかもしれないがちょっと珍しいタイプ。 おかげで青春小説という感じもしませんね。同級生と一緒にいてもどこか冷めているというか、体温を感じないというか・・・ 正直苦手なタイプだったかもしれないですね。 ミステリ的な驚きは感じられないですかね。そういうところを狙った作品ではないのかもしれませんが・・・ 大衆文学より寧ろ純文学に近いかもと感じました。 ミステリ読みには評価が難しい作品ですね。 |
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「私たち、お父さんのこと何も知らない」
仕事で家をあける父親と子供との繋がりは、子供が歳を取っていくにつれ、会話もいつの間にか減り、希薄になっていく。 そんな今や平均的とも言える家庭で「父親が殺害される」という悲劇が起きる。 それでもやはり父は父。 父が何を考え、何を想い・・・てな事が徐々に明らかになっていき・・・という物語。 そして、加賀恭一郎シリーズと言えば下町人情モノという印象。 そして帯は声高らかに「加賀シリーズ最高傑作」とうたっている。 読了しての率直な感想は「最高傑作? んなわけない」だ。 食材がしっかり調理されていたら最高傑作になっていたかもしれません。 私は調理に失敗したんじゃないの? と思えて仕方ありません。 味付けではありません。調理そのものです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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第1回「日本ラブストーリー大賞」受賞作品。
う~む、少女マンガのような、正直有り得ない展開だと思うのですが・・・ 更に、何人かのレビュアーの方が触れているように、私も登場人物に感情移入できませんでした。 カフーというのは現地の言葉で果報の事らしい。 「果報は寝て待て」という諺があるが、それにしても主人公の奥手さにはイライラしっぱなしだった。 目の前に起こっている状況は、普通に考えて有り得ない状況だと言うのに、その状況に対して何のツッコミもない。 かと思えば、物語後半、よく調べもせずに幸を追い返してしまった時には、読んでいてクラクラしそうになった。 「奥手で可愛い」なんていう域を超越している。 友人の俊一の取った行動は、冗談と受け取ることは出来ず最早イジメなのだが、この歳になってこのような低俗なイジメを受けてしまう、それを面白がられてしまうというのは、イジメを受ける側にも問題はあると再認識させられた。 何もかも自業自得じゃないか、と幸せなって欲しいという思いも徐々に薄れていってしまうのでした。 一方、幸はどうかと言えば、このヒロインの一体どこが魅力的だったのだろうか。 何故主人公がこの女性に惹かれたのか、イマイチよくわからないのだ。 当然、何故彼女が主人公に惹かれるのかも全くの謎である。 女性受けはいいのかもしれないですね。 ただ、ヒロインをもう少し魅力的に描けば、作品の印象も少し変わったのかもしれない。 |
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刑事である新田は相手の仮面を暴くのが仕事、ホテルマンである山岸は相手の仮面を守るのが仕事。
こんな二人がコンビを組んで連続殺人事件に挑むお話。 前作を読んだ時から面白い設定だと思っていました。 さぁ続編が来たか、と思っていたら、二人が出会う前の話。 二人の絡みが全くない無いってのは少々肩透かしを喰らった感じ。 二人のキャラについては前作でも十分に描かれていたと思っていて、私の印象は二人共に「ドS」 今作で新たな発見というのはなかったですが、まだ駆け出しの身分とは言え十分に「ドS」の資質を垣間見せていたように思います。 準備は整ったという感じでしょうか。 二人の再会を楽しみにしておきたいと思います。 |
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「外れは少ないが当たりも少ない」
東野さんの作品に対する個人的な評価であるが、「秘密」や「白夜行」を求めてまたしても手にとってしまうのだ。 この作品に関しても、かなり世間評価とのズレがあるようです。 テーマは「植物」 作者得意の「理系」ミステリであり、この作品を描くために相当の取材をして・・・というのは伺えます。 作者のこの手の作品は、(誰も知らない)「科学的事実」が作品の中心にある事が多いです。 そこから、様々に散りばめられた伏線に繋がるのですが、知らないので気づきようがないのです。 事件解決のきっかけが、「へぇーそうなんですか」な事実から始まるので、要するに推理しようがないのです。 作者の「科学」をテーマにした作品を、みなどこか薄っぺらく奥行きがないと感じてしまうのはそういう理由からではないかと・・・ だから収束の心地よさを得ることが出来ないんですね。 更にこの作品は、テーマが地味すぎるせいか、ラストのも盛り上がりもいまいち。 そもそも「負の遺産」と言う程、大袈裟に扱われなければならない秘密なのだろうか。 面白くなかった訳ではないのですが、期待値高い分、辛めになっちゃいますかね。 |
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密室をテーマにした5編の連作?短編集です。
密室殺人が起こると、「密室蒐集家」を名乗る探偵役が、何処からともなく現れて、瞬時に解決して、いつの間にか消えているというパターンです。 麻耶雄嵩の「貴族探偵」シリーズに少し似た感じですが、この作品は正直「パズル」ですかね。(貴族探偵は単なる「パズル」ではない) 短編なので仕方ないのですが「贅肉」がありません。 即ち、文字として描かれた情報の殆どがロジックの一部になっている感じです。 当然登場人物も少ないのですが、パターンとして「最も犯人らしからぬ人」を犯人として仕立てる傾向があります。 なので、相当に「強引」になってしまっています。 「偶然」にも頼りすぎで、ご都合主義的と言われても仕方ないですかね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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作者の作品は「私が殺した少女」に続いて2作目。
独特な気障な比喩というか言い回しというか、はハードボイルドそのものですが別段鼻につく訳でもない。 酒と女と暴力と・・・といった描写も少なく、どっぷりハードボイルドという感じでもなさそう。 登場人物が多く、その関係性がややこしい割に造形が浅く印象に残らない。 この手の作品は、探偵が孤軍奮闘するものであるが、それにしても魅力的な脇役すら登場しないために奥行きのない薄っぺらい作品になっている気がする。 ひきこもりの青年など、登場人物欄にはしっかり名前が明記されている割に「これだけかい?」という感じである。 更に、銃撃事件、誘拐事件、身代金事件と次から次へと色々なことが起こる。 結局は、警察官殺害事件と三日男爵関連の事件という2つの全く異なる事件が起こり、それが交差する点に探偵がいるという構図。 複雑、悪く言えばごちゃごちゃであり、結局最後の最後まで1点に焦点が合わないまま終わってしまった。 「私が殺した少女」は最後ビシっと決まったんですが、この作品はどこか発散したまま終わってしまった。 そんな気がします。 |
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音道貴子シリーズは「凍える牙」を既読なので2作目になります。
「凍える牙」の「動」な音道とは真逆の「静」な音道、といっても監禁される身分で身動きがとれない訳ですが・・・ この作品の音道はヒーローではない気がしました。寧ろ汚れ役と言っていい。 窮地に陥った時の人間の本音を主人公であり警察官である音道の口に語らせています。 正直格好良くないだけでなく、「音道ってこんな奴?」なのである。 そもそも元はと言えば彼女の軽率な行動が原因。 彼女の刑事としての今後のキャリアに大きなペナルティがあっても不思議ではない失態な気がします。 これが原因で、やはり最前線に女刑事を送り込むのは・・・となりかねないのでは。 このシリーズが、男社会の中に生きる女性の強さを描きたいものだとするなら・・・なんて感じながら読んでいました。 一人の女性としてはよく頑張った、耐えたという事になろうが、一人の女「刑事」としてはこれは合格なのだろうか。 もう1つ、犯人側に魅力がないという事があります。 行き当たりばったりで無計画または無知過ぎます。 音道の失態には、こんな間抜けな犯人達にというおまけまで付きますね。 |
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