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梁山泊 さんのレビュー一覧

梁山泊さんのページへ

レビュー数236

全236件 41~60 3/12ページ

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No.196:
(5pt)

闘う君の唄をの感想

幼稚園の先生の奮闘記で、この作者にしては変化球だなぁ・・・と思っていたら、渡瀬刑事登場で、結局は「らしい」作品に。

モンスターペアレントとの戦いの話で良かったと思うんですけどね。
この作者さんの作品には時々こういう作品がありますね。
主人公の先生の出自が明らかになった時点で、先の展開が読めてしまうんですよね。
そこまでの登場人物が少なくて、悪人候補が限られてますからね。
意外性やどんでん返しが売りの作者さんですから、そっち方向へ持っていくために、結局それまでの印象を思い切り捻じ曲げてしまわなければならない。
だから読後の印象もよくないですよね。
この作品なんて、結局主人公は何も救われていない気がしますが・・・
しかし、何作か読んでいると、その意外性も容易に読めてしまいます。そうなると最早意外でも何でもない。
後半のミステリ部分に主眼を置きたいのだったら、前半にもう少し根回ししておけばいいと思いますね。

レビューで書かれている人も多いですが、年少さんにあの劇は絶対できないですよ(笑)

闘う君の唄を (朝日文庫)
中山七里闘う君の唄を についてのレビュー
No.195: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

蟻の菜園 -アントガーデン-の感想

タイトルの意味は、蟻と植物の共依存の事で、物語の最後の最後に分かります。
中心人物である二人の姉妹の事を比喩しているのだと思いますが、どこかしっくり来ません。
共生しているという感じはしなかったですね。

ある人物の過去を追って東尋坊へ、なんて、松本清張を読んでいる気にさせられます。
社会派ミステリに分類される作品だと思いますが、清張作品のようなズシッとくるような重厚感はなかったですね。
2時間モノのサスペンスドラマって感じでしょうか。どこか薄いです。
婚活詐欺とか、児童虐待とか、様々な重いテーマが盛り込まれています。
それでいて「薄い」と感じてしまったのは「構成」が原因している気がします。
何人かのレビューアーの方が言われているように動機だったりとかもそうですが、何かしっかり繋がっていないっていうか・・・うまく表現できませんが。
叙述系のトリックを疑いたくなるような趣向が途中から突然現れたりとか・・・で、オチが・・・(唖然)とか。
正直もっとシンプルでよかったのではって思います。
父親殺害だけで終わっても、十分上質のミステリとして成り立ったと思いますけどね。
姉妹に対する肩入れもかなり違うはずですよね。

蟻の菜園 ‐アントガーデン‐ (角川文庫)
柚月裕子蟻の菜園 -アントガーデン- についてのレビュー
No.194:
(5pt)
【ネタバレかも!?】 (1件の連絡あり)[]   ネタバレを表示する

槐(エンジュ)の感想

スピード感のあるアクションエンタメ小説ですが、余りにも現実離れしておりB級感は否めませんね。
中学の野外活動部が合宿をしていたキャンプ場に半グレ集団がやってきて、いきなり片っ端から殺戮を繰り返す。
そしてそこに、その半グレ集団と対立していたチャイニーズ軍団がやってきて最早ドタバタ、そして、中学生と引率の教師が、それに立ち向かう、という、バトルロワイヤル系のお話なんですが・・・


▼以下、ネタバレ感想
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槐
月村了衛槐(エンジュ) についてのレビュー
No.193:
(5pt)

セイレーンの懺悔の感想

事件を追う報道の在り方に焦点を当てた作品です。
「マスコミは憎悪の対象を追い不安や不幸を拡大再生産している」
って、間違ってはいないと思うし、少し前にはよく言われていた事だけど、今だとちょっと古いかな、と思います。
今や、知識も経験もない連中が、無責任な立場で似たようなっていうか、実際中身も何もない訳だから、似非な事をいい気になってやってますよね。
マスコミよりもまずああいう連中叩いて欲しい。

テーマの割に少し軽い、っていうか、私自身が物語に入り込めて行かなかったんでしょうね。
原因は主人公ですね。こういう女性に対して拒否反応があるみたいです。
だから、里谷が舞台から消えてからは、もうグズグズでした。
ラストの御高説なんて鳥肌モノに最悪でした。

あと最後の被害者の母親の件は必要ですかね。
作者の他の作品にも似たようなのがあったと思いますが・・・
どんでん返しの空振りは、そこまでの全てを悪い印象に変えてしまいます。

セイレーンの懺悔 (小学館文庫 な 33-1)
中山七里セイレーンの懺悔 についてのレビュー
No.192: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

カリスマの感想

新堂冬樹さんの作品をよむのは初めてでした。
全編を通じて下品な表現や描写という印象を持ったのですが、他の作品でも同様なのかの判断がつきません。
新興宗教の教祖、信者、そういったものに騙される人、騙す人を、嘲笑を込めての事だとすると理解できなくもありません。
映像化したなら安物のAVになりそうな内容です。
ここで、ここまで詳細に描写する必要ありますか、と言いたくなる程のエロ描写もあります。
ですので、扱っているテーマは比較的重い内容だと思うものの全編軽い印象を受けます。
その分読みやすい、と言うことにはなりますが・・・
物語は下巻の後半から一気に動き出します。
「誰が本当のカリスマだったのか」という事になりますが、プロットもよく練られていると思いました。
しかし、ここまでがとにかく長い。
しかも、ここまでで(というか最後まで読んでも)、何故こうも教祖に傾倒するのか、何故騙されるのか、という事は一切伝わってきません。
兎に角くどい、その割に内容が薄い。
ただただ言えるのは、登場人物全員バカって事だけです。
冗長と言わざるを得ません。
結局最後まで気持ちが入り込めなかったですね。
物語の前半を支配するバカ教祖はバカでいいとしても、もっと悪人としてしっかり描かれるべき人物がいたように思います。
そして救いようのない結末。
「バカ死すべし」って事なんですかね。

カリスマ〈上〉 (幻冬舎文庫)
新堂冬樹カリスマ についてのレビュー
No.191:
(5pt)

二進法の犬の感想

花村萬月初読。
性・愛・暴力がこの作者の3大要素らしいのですが、まさにそんな感じですね。
京大卒のエリートでありながら、どこか庶民を小馬鹿にするような面があり、社会に馴染めない、しかしプライドは高いという情けない男が主人公。
その他の主な登場人物も、ほぼほぼヤクザ、時々ヤンキーと、普通じゃないいわゆるアウトローといっていい連中ばかり。
そして、タイトルからも想像できる通り、0か1、シロかクロ、生か死の選択肢しかない世界の話。

主人公がヤクザの世界に巻き込まれていき、その軟弱さが際立ってくるように見えます。
勿論、物語の中で駆逐されていくべき人間性の男ですから当然です。
で、その対極には、ヤクザの男気みたいなのがあって、しかしながらどこか深い愛を感じる事ができて・・・なんてのがパターンだと思うのですが、この作品にはなかったように思います。
登場するヤクザも、相当にズレた人ばかりで、感情移入できる登場人物がいなかったですね。
ストーリー自体も非常に陳腐です。

そして、作者自身を主人公に投影して、作者が常日頃感じている事を、主人公の口を借りて語らせているのですが、「考え」というよりも最早「思想」と言っていい感じですかね。
難し過ぎてよく分からなかったり、失笑させられたり・・・と、どこか突き抜けていて共感できる事が少ない・・・そんな感じで文庫本にして1100頁。
まぁ、圧倒的な文章力というか、描写力というか、そういうところは、否定的な気分で読んでいても感じる事ができるので、響く人にはとことん響くのでしょうね。
で、拒絶する人からは、とことん拒絶されるという・・・そんな作品だと思います。

二進法の犬 (カッパ・ノベルス)
花村萬月二進法の犬 についてのレビュー
No.190:
(6pt)

彼女が死んだ夜の感想

匠千暁シリーズ。時系列的には最初の作品になるらしい。

叙述トリックの一種なんでしょうけどね。
一瞬「十角館の殺人」が頭をよぎったりもしたのですが、全然違うわ。
「十角館の殺人」は、犯人が分かってしまうという意味で映像化は無理だと思うのですが、この作品の場合は、犯人が分かってしまう以前に笑ってしまうでしょう。
酒ばっかり飲んでるのはその予防線なのだろうか。

私は「解体諸因」を既読。
短編集であるその中の1作品にこのシリーズが含まれていたらしいのだが、全く記憶がない(汗)
こういうノリのシリーズなら仕方ないのですが、これって推理じゃなくて妄想でしかないよね。
妄想なら妄想でも構わないのですが、それ以前に、この犯行を成り立たせるための肝心な部分が「有り得ない」ので、何故高評価なのか首を傾げざるを得ない。

彼女が死んだ夜 (幻冬舎文庫)
西澤保彦彼女が死んだ夜 についてのレビュー
No.189:
(6pt)

ヒポクラテスの憂鬱の感想

ヒポクラテスシリーズの2作目。
大学の法医学教室を舞台に、異常死をネット上で告発する「コレクター」なる謎の人物を共通項にする連作短編集です。
各章のタイトルが某氏の某シリーズを連想させますが、物理学ではなく法医学です。
作者得意のどんでん返しも健在、とはいうものの、最初の彼が「コレクター」だと思って読んでた人はいないでしょ(笑)
あと、恋愛要素を盛り込んだりと、テレビドラマ化を意識したような軽さが気になりますね。
本来そういった分野ではないように思うのですが・・・
それが原因でメッセージ性が薄れてしまっているように思います。

ヒポクラテスの憂鬱 (祥伝社文庫)
中山七里ヒポクラテスの憂鬱 についてのレビュー
No.188: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

鍵の掛かった男の感想

火村シリーズの長編。
相変わらず地味ですが、このシリーズの中では読み応えのある作品かと。
不審な死を遂げた男、それが自殺か他殺か、だけでなく、そもそもこの謎多き鍵の掛かった男が何者なのかというところから始まります。
火村の登場は後半になってからで、有栖が集めた伏線を火村が回収していくという珍しいパターンですがバランスはいい感じ。
男の謎が徐々に明らかになっていくところまではいいのですが、肝心の事件の部分になると、パズルのピースに無理がある点がいくつかあるように思いますね。
ロジック一辺倒の作家さんですからねぇ。
そこが決まらないと評価は微妙になってしまいますね。
動機も気持ちよくないですね。物語前半の雰囲気に合わないです。
有栖曰く「螺旋階段を登るように」真実に近づいていくという地味ながらもどこか雰囲気のあった前半から、その足場が崩れてガタガタになった後半って感じでしょうか。

鍵の掛かった男 (幻冬舎文庫)
有栖川有栖鍵の掛かった男 についてのレビュー
No.187:
(4pt)

アポロンの嘲笑の感想

東日本大震災と福島第一原発事故をテーマにした作品。
作品を読んでいて、作者が、福島第一原発事故に強い憤りを感じている事を想像するのは容易いです。
しかし、それがどうしてこんな表現になるのかな。
記憶に新しい事故ですし、読み手もそれなりに知識を持っているんです。
安全だと偽り、一部の地域に負担を押し付けてきて、震災で破綻してもなお保身と嘘を続けている。
みんな知ってるんですよね。
それを、またしても得意のアクション活劇&英雄譚にしてしまうんですね。
扱いづらい内容なのかも知れないですが、厚顔無恥な巨悪に対する告発こそが作家の使命ではないのかな。
テーマにするなら、それなりの内容にしてくれないと・・・

タイトルは洒落てると思いますけどね。

アポロンの嘲笑 (集英社文庫(日本))
中山七里アポロンの嘲笑 についてのレビュー
No.186:
(4pt)

月光のスティグマの感想

阪神大震災、震災孤児、援交、殺人、東日本大震災ときて最後は海外テロ。
不幸の玉手箱やー。
双子の姉妹と同級生で幼馴染の少年が主人公。
双子の姉妹の一方が震災で死亡。
震災孤児となった少女と少年は離れ離れになって、大人になって再会。
そして、そんな二人が代議士秘書と地検検事って・・・
「大映ドラマ」かよ、って思った私は、やっぱりおっさんなのだろうか。
伊藤かずえと松村雄基って事でOK?
そもそも一卵性双生児っていうと、物語を読みながらも色々考えたりするものですが、結局何だったんだよ、って終わり方ですし、ホント「大映ドラマ」なんですよね。
「大映ドラマ」が好きな方はどうぞ。

この作者の別の作品とリンクしているって言う話ですけど、たとえそこの面白味があるのだとしても、この作品の評価が変わるとは思えないです。

月光のスティグマ (新潮文庫)
中山七里月光のスティグマ についてのレビュー
No.185:
(5pt)

虚貌の感想

幼少期に一家惨殺され、一人生き残った少年の復讐劇と、その事件を追う余命僅かな刑事を描いた物語。
もう1つのテーマが「顔」で、事件で顔に大火傷の跡を残した少年以外にも、醜顔恐怖症に陥ったアイドル、顔に痣を持つ刑事が登場し、顔に何らかのコンプレックスを抱える人間の闇が描かれます。
「虚なる貌」という事で、仮面の下に隠し持つもう1つの顔・・・的な展開を期待出来ると思いましたし、実際しましたが、蓋を開けてみると、その期待は裏切られただけでなく、ツッコミどころ満載の作品でした。
復讐劇ならストレートでそれでよかろうに、犯人を隠蔽せんとしたあの真相は最早反則技以外のナニモノでもなく、そこまで許すと何でもアリになってしまう。
また、ラストで誰も幸せになるわけでもなく、「人間、顔ではなく性格」を思いっきり否定した感じのまま終わっており、正直首を傾げてしまった。
犯人に与えられたラストシーンも正直「寒い」し、そもそも最初の一家惨殺事件の真相を見抜けない警察などありえない。

虚貌〈上〉 (幻冬舎文庫)
雫井脩介虚貌 についてのレビュー
No.184:
(5pt)
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あぶない叔父さんの感想

タイトルからして普通の作品じゃないだろうなと思っていましたが・・・。
「さよなら神様」でクセになっちゃったのかなぁ・・・
「さよなら神様」「化石少女」と同様の、一風変わった連作短編集になります。

寺の次男坊である高校生の優斗と、寺の離れに住んでいる「なんでも屋」を営む(?)叔父さんの物語です。
「事件の真相を明らかにする、本来探偵役が担う役どころ」と「犯人」が同一人物であるというのが、この作品に施されている趣向ですかね。
要するに、叔父さんが犯人で、叔父さん自身が優斗にネタバラシをするという展開。
叔父さんの話の信憑性はさておき、毎度毎度、「叔父さんは優しいなぁ」「叔父さんは運が悪かったね」と、優斗には「いい話」として腹落ちするというオチ。
そして、事件の真相といえば、到底トリックと呼べる代物ではなく、偶然の産物がもたらした結果として明らかにされるので、正直脱力。
最初は「麻耶らしいな」とか思っていても、これが続くと、さすがに失笑。
麻耶雄嵩をよく知らない人には、はっきり壁本じゃないかな。

あぶない叔父さん (新潮文庫)
麻耶雄嵩あぶない叔父さん についてのレビュー
No.183:
(6pt)

化石少女の感想

連作短編集のような構成になっている学園ミステリ。
ですが、そこは麻耶雄嵩。
これを敷居が高いとは言いたくないですが、麻耶未読者にもはっきり分かりやすい「変な作品」です。
というのも、探偵役の推理が何の検証もされなく否定され、読み手に結末が明かされることなく章が終了するからです。

化石オタクの赤点女・神舞まりあが探偵役、事情あってまりあのおつきあいをしている秀才(?)・桑原彰がワトソン役。
ワトソンが一枚上手に見える設定であり、探偵まりあの推理は、毎回毎回ことごとくワトソン彰に却下されます。
それもそのはず、まりあの推理は、敵対する「生徒会メンバの誰かが犯人」が前提で、そこを起点に無理矢理こじつけていくという推理で、説得力などあるわけなく、読み手にも、まともに推理しているようには思えない、そんな印象を与えています。
まず犯人を決めて、それが成立するように推理を組み立てるというまりあの推理は、作者の「神様シリーズ」と似たパターンになりますかね。
探偵役とワトソン役との関係に一石を投じるのは、この作者が以前から試みている事です。
なので、この消化不良になりかねない章立ても、麻耶作品を何作か読んでいる読み手、特に「さよなら神様」を既読の読み手には、先の展開も比較的容易に予想できたんじゃないかなと思いますね。

化石少女 (徳間文庫 ま)
麻耶雄嵩化石少女 についてのレビュー
No.182:
(5pt)

子どもの王様の感想

講談社の「ミステリーランド」シリーズ。
団地に住む母子家庭の2家族が物語の中心。
大人から見ると、当然恵まれているとは言えない環境なのだが、子どもたちにとっては、そんな団地が自分たちの世界なのである。
そして、この世界には大人の男がほとんど登場しない。
大人の女は数多く登場するのもかかわらずだ。そしてその多くは好意的に描かれている。
唯一登場する大人の男が「子どもの王様」
王様ではあるが、自分たちの平和を乱す悪しき存在として描かれている。
子どもたちの頭の中では、我々おっさんは眼中にすらないっていうか寧ろ邪魔者でしかないのかって感じてしまったのですが・・・

そして、子どもたちが大好きな、作品内に登場する戦隊モノがワーグナーのパルジファルが元ネタ。
主人公の少年が「聖なる愚者」って事でしょうか。

「かつて子どもだったあなたと少年少女のための――」がコンセプトになっているこのシリーズ。
麻耶雄嵩の作品もそうでしたが、意外と深くて面白いですね。

子どもの王様 (講談社文庫)
殊能将之子どもの王様 についてのレビュー
No.181:
(5pt)

大癋見警部の事件簿 リターンズ 大癋見vs.芸術探偵の感想

一部の好き者にしか評価されなかったであろう前作のまさかの続編。
しかも、前作はミステリのお約束に対する、鋭いツッコミでもあり、それなりに意義もあったのでしょうが、まさかの続編であるこの作品は一転、殆どが脱力系ギャグに。
作者にとって造詣の深い絵画・音楽までをも、(作者のシリーズ作品のエースである)芸術探偵・神泉寺瞬一郎まで引っ張り出してきた上にこき下ろしています。
破壊力抜群のバカミス警部と薀蓄探偵との掛け合いは、当然ながら、対決などという立派なものではなく、ズレにズレまくっていて、「クスッ」と笑えますが、それ以上のものでは有り得ないです。

大癋見警部の事件簿 リターンズ: 大癋見vs.芸術探偵 (光文社文庫 ふ 26-2)
No.180: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

写楽 閉じた国の幻の感想

正体不明(らしい)絵師東洲斎写楽が誰かという真相に御大が挑んだ作品。間違いなく力作でしょう。分厚いし。
御手洗シリーズなどとはテイストもまるで違いますが、御大らしいスケールの大きさは感じる事ができました。
御大がデビュー当時からアイデアとして持っていたらしいですね。
だとしたら、満を持して・・・のはずですが、正直中途半端な気がします。
この評価の高さには若干違和感を感じてしまいます。

写楽の謎を追求した、というか自説を展開しただけで、これはミステリではありませんね。
そういう趣向の作品であるのなら、資料とかは用意して欲しかったです。
こういった芸術作品を取り扱った作品はこれまで何冊も読んでいますが、普通写真の掲載くらいするでしょう。
ですので、不親切なのは勿論、説得力もないですし、そもそも読み手に分からせようという気がないのかな、と。
ミステリ仕立てにした方が面白かった気がします。

また多くの方が指摘していますが、私も同じです。
まさか終わり? ってのが、700頁もの本を読み終えた時点での率直な感想。
回転ドア事故の裁判はどうなった?
ヒステリックな妻と資産家の義父は何処行った?
っていうか、そもそも子供が死ぬ意味あったのか?
結局あの(日本人離れした顔立ちの)教授は何者?
本は出版されたの? で、どうなったの?
主人公の置かれた状況や、その周りの人物造形に、事件や事故の臭いをプンプンさせるようなサイドストーリーをバラ撒いておきながら、完全に置き去りのまま終わってますよね。
発端となった肉筆画についても、あの程度の扱いでは弱くないですかねぇ。
読んでいる間はそれなりに楽しめたのですが、読み終わった瞬間「ウソでしょ?」な作品でした。
あとがきには「長くなりすぎて端折った」って言い訳していますが、明らかに端折る箇所を間違えてますよね。

回答編の役割を果たしていると思われる「江戸編」も、私が関西人だからなのか、あの江戸弁が・・・

写楽 閉じた国の幻
島田荘司写楽 閉じた国の幻 についてのレビュー
No.179:
(6pt)

キマイラの新しい城の感想

名探偵石動戯作の人生に同情せざるを得なくなりますね。
もう汚名返上の場を与えられることは叶わないのですね。
シリーズを通して、名探偵に対するアンチテーゼを展開してきたこのシリーズですが、クライマックスの謎解きシーンは、探偵役はとしては禁じ手で、ひどい役どころだったなぁと苦笑いせずにはおれません。

設定にしても、「黒い仏」ほどの破壊力はない(当たり前ですが(笑))ものの、この作品も中世の騎士の亡霊が主役というプチ破壊力を秘めております。
その中世の騎士の名前はエドガー・ランペール。
江戸川乱歩を容易に想像させる名前であり、その騎士さんが、現代人からすると素っ頓狂な訳の分からん事を連発。
乱歩を笑っているのか、乱歩の時代はよかったという揶揄なのか、私には計り知れますが、作品全体を通して、ミステリというより、エドガーと現代人が織りなすコメディの比重が大きくて、作者が何を表現したかったのかイマイチよく分かりませんでした。

肝心の密室トリックも脱力もので、ミスディレクションになっていると思われている「◯◯口」も、そもそもミスディレクションとして成り立っているのかすら甚だ疑問です。
捜査関係者の誰も気付かないなんて有り得ないですよね。

キマイラの新しい城 (講談社文庫)
殊能将之キマイラの新しい城 についてのレビュー
No.178:
(6pt)

陽気なギャングは三つ数えろの感想

陽気なギャングシリーズ3作目。
安定した面白さ・・・と言いたいところだが、これまでの2作と比較すると、はっきり微妙だろう。
というのも、今作は銀行強盗というよりも悪者退治。
敵は、ゴシップ記者となるのですが、その火尻っていう記者が、相当にゲスの極みな描かれ方。
本来であれば、そんな悪を、4人が軽くいなすって感じになるはずが、どこかドタバタしていて、どこかこのシリーズらしくないよに感じてしまった。
人間嘘発見器、話術の達人、スリの名人、正確な体内時計を持つ運転の達人という4人の個性も活かされていないように思いました。
最後の収束のさせ方も、面白味がないというか、どこか投げやりな気がしましたね。

陽気なギャングは三つ数えろ (祥伝社文庫)
伊坂幸太郎陽気なギャングは三つ数えろ についてのレビュー
No.177: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

どこかでベートーヴェンの感想

岬洋介シリーズ最新刊で、彼の高校時代のエピソードが描かれます。
ドビュッシー、ラフマニノフ、ショパンときてベートーヴェン。
岬が抱える障害を考えると満を持してのベートーヴェンなはずで読む前から期待大でしたが、続編ありきのあくまで助走という感じで終わってしまった。
なるほど、既に「もう一度ベートーヴェン」という続編が用意されているらしい。
続編が楽しみになる終わり方と言っていいかも知れませんね。
ただ、この作品単独の評価はイマイチと言う事でいいでしょう。

ピアノの才能はもとより、何もかもを達観しているかのように冷静であるものの、何かを感じ取る洞察力、そしてその後の行動力は学生時代から健在。
予想通りクラス内で浮きまくる岬。
音楽科は普通科とでは在籍している生徒の質のようなものが違う事は何となく理解していたものの、それにしてもあの嫉妬は醜い。
小学生レベルの言動に呆れるばかりで、音楽科卒の人間に対する印象が変わりそう。

どこかでベートーヴェン (宝島社文庫)
中山七里どこかでベートーヴェン についてのレビュー