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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数52件
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ヴァン・ダインのデビュー作
期待していたのですが正直いまいちでした。 主人公である探偵役のヴァンス、検事、警察、そして語り手であるヴァン・ダイン。 ヴァンス以外の人物が、事件の解決に向けて何かひとつでも有意義な発言や行動をしただろうか。 語り手であるヴァン・ダインが本来ワトソン役であるべきと思うのだが、この作品における彼の存在感のなさは半端ない。 ワトソン役を演じているのがどう見ても検事マーカムなのだから、当然警察はそれ以下の無能集団として描かれざるをえない。 哀れなりヒース。 まさにヴァンスの無双状態であり、しかも事件当日現場を見た時点で犯人が分かっていたというのだからなんともはや・・・ 拳銃の弾の入射角から犯人の身長を特定する事すらできない警察。何とバカにされたことか。 探偵役の常人離れした推理力を表現するのによくあるパターンとはいえここまできたらやり過ぎだろう。 しかもヴァンスの芸術に関する知識のひけらかしが相当に鬱陶しいのだ。 しかも推理と全く関係のない内容まで相当に含まれている。 おかげでリーダビリティまでが最悪なのである。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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島田御大の作品はこれまで数多く読んできましたが、その中で最低の評価をしたのが「眩暈」
この作品はその「眩暈」と同じプロット。 汚染障害者の書いた妄想レベルの手記が、記憶障害者の書いたファンタジーな童話に置き換わっただけである。 要するに、冒頭で(どう回収するつもりなのかと思わせる)大風呂敷を広げ、それを論理的に推理していくという流れ。 確かに論理的といえるのだろうが、そのやり方は強引にねじ伏せるという表現がぴったり。 どう考えても御手洗の推理が「唯一無二」なものとはとても思えないのだ。 しかしそれを「当然」というように断言してしまう。 普通の読み手には追従を許さないようなある意味特殊な分野に対するスーパー薀蓄披露により、推理に対して「正当性」という鎧を被せているだけな気がする。 御手洗補正がかかっているだけで、よくよく考えれば説得力がないと言えないだろうか。 その割にその推理は、無理矢理辻褄を合わせているだけでこじんまりしているのだ。 御大の本来の持ち味といえば大技物理トリックではなかったのか。 これも島田荘司らしい作品といえばそうなのかもしれないが、私が作者に期待する作品ではないなぁ。 それにしてもこの作者のページ数の多い分厚い作品は冗長な部分が多過ぎないか。 |
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謎の占い師の予言から始まる辺りにミステリらしい展開を予感できます。
しかし、序盤で主人公の婚約者が亡くなるものの、単なる事故死として物語は進行し、その状態のままラスト近くまで進みます。 全くミステリらしさを感じる事ができぬまま終盤、偶然主人公と知り合うことになった例の芸術探偵により殺人事件として掘り起こされるという、読み手には不意打ちとも言えるような展開。 これを構成の妙として高評価するレビューも見られますが、余りにも唐突ですし、物語の流れとしてもどこかおかしな気がしました。 「えっ?!」「忘れてました」「遅いよ」「いまさら・・・でも残りページが・・・」「おいおい、推理自体ももイマイチでは・・・」 正直ミステリとして評価するのは難しいです。 また、「ニーベルングの指輪」というオペラを下敷きにした作品のようですが、確かにオペラの知識がないと読めないかといわれるとそうではないでしょう。 ただ、作者の芸術探偵シリーズにおいて、予備知識があるか否かで変わってくる作品としてはこの作品がダントツな気がします。 私はというと、オペラに対してはド素人もいいところなため、正直作者が登場人物の口を借りて演出論を訴えているだけにしか思えず中盤の中だるみ感は半端無かったです。 多くのレビュアの方が評する感動のクライマックスについても、頭の中で音楽を響かせながら読むことの出来ない私には・・・そこまでは・・・ というより、主人公に感情移入できないような序盤の設定は意図的なのでしょうか? 下敷きにされた作品を知らないが故の無知と思われても仕方ないのですが、不義理を続けてきた主人公の突然の心変わりなど、展開的に理解できない部分が多いです。 また、クライマックスに向けての伏線を伏線として読み取ることが出来るかは原典を知っているかにかかっているのではないでしょうか。 作者の主眼は演出論にあって、ミステリ的な部分は後から取ってつけたような印象を受けました。 これから読まれる方は、予め簡単にでも予備知識を入れておかれた方がよいように思います。 |
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プロローグが衝撃的な?信濃譲ニが命をかけて謎解きに挑む?シリーズの3作目。
「信濃譲ニ?誰?」では話しにならないので、これまでのシリーズ作品を読み終えていないとだめですね。 これまでの2作品は、ワトソン役市之瀬の視点でしたが、今作品は信濃譲二の視点で語られます。 これが最大の違いであり、(作品の最大のからくりに対する)最大のヒントだったのかもしれません。 市之瀬の視点による信濃はとにかく超人的でブッとんだ人物であったはずなのに、信濃本人による彼自身の人物像はいたって普通。 信濃が出ずっぱりな割に面白味が半減しているのでは、と思いながら読んでいましたが・・・最後はやっぱりねって感じでした。 関係を持った女性を都合のいい理由で真っ先に容疑から外している時点で気付きますよね。 それにしても、こんな格好悪い形でシリーズを終えなきゃならなかったのか? ▼以下、ネタバレ感想 |
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作家アリスシリーズの第一作。
ドタバタ冒険活劇となりがちな学生アリスシリーズと比べると大人のミステリという感じがしますが、その分相当に地味です。 派手な演出もなくロジックのみで読者に挑むという作者の姿勢はある意味立派、王道という感じ。 ただ、余程新鮮で面白みのあるトリックを持ってこないと、読者を驚かせるには至らないでしょうね。 個人的に叙述トリック作品が好きだという訳ではないのですが、やっぱり今読むと若干物足りなさを感じますね。 タイトルにある46番目の密室は結局謎のままですよね。 作品内で披露される密室殺人は特に目新しい感じはないですし、火村、アリスによる密室談義が繰り広げられる訳でもないですし、タイトルに惹かれたのであれば肩透かしを喰らうかも知れませんね。 |
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「硝子のハンマー」コンビが活躍する短編集。
「硝子のハンマー」「鍵のかかった部屋」と感想は同じで高評価とはなりません。 防災コンサルタントと弁護士のコンビってのは面白いと思うのですが、期待するコンビネーションを発揮してくれていません。 ドラマ化された作品。私は見ていないのですが、青砥のキャラは映像化を意識してのものなのかなぁ。どうもしっくり来ないです。 弁護士である意味があるのでしょうか? このシリーズは、近代の高度化したセキュリティ技術に対抗する密室看破を描いたものが多く、密室トリックというより泥棒ノウハウといった方が良い題材が多く、私のイメージする密室ものとは何かが違う気がしています。 まぁ榎本が泥棒?だから仕方ないのかも知れませんが・・・ そういう作品だと思って読んだら読めなくはないのかもしれない。 ただそれが(デフォルトのハードルをかなり高く設定してある)貴志祐介である必要はないように感じています。 このままでは、シリーズ化する程の魅力を感じないですねぇ。 |
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防災コンサルタント榎本、弁護士青砥コンビの密室犯罪を題材にした中・短篇集です。
気楽に読める作品ですので、読者にとっていい暇潰しになるとは思うのですが、作者にとってもこのシリーズは暇潰しなのでは・・・と感じてしまう、そんなシリーズです。 「黒い家」や「青い炎」と同じ作者の作品にはとても思えません。 完全に密室トリックが主眼となっており人間ドラマが描かれていないのです。 犯人は物語の前半で早々に明らかにされます。フーダニット要素は完全にゼロです。 それどころか、犯人が密室を作るに至った経緯や心理状態などもしっかり描けておらず、トリック解明に躍起な印象です。 そのトリックに関してもマニアック過ぎて、「凄い」ではなく「へぇ、そんな事が出来るんだ・・・で?」止まりです。 密室トリックモノが好きな読者にとっても面白い内容ではないのではないでしょうか。 青砥さんの存在意義もイマイチ不明で、完全にお笑いキャラになっています。 ギャグ作品と割り切る事ができれば楽しく読めるのかもしれませんが、やはりこの作者には「黒い家」や「青い炎」のような作品を期待してしまうので・・・ |
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警察の戦隊もの。
作者を伏せて読んだら、我孫子さんの作品とはまず思えまい。 最早「悪ノリ」だろう。 キャラ設定の面白味だけで成り立っている作品ですが、この作品だけでは一人一人の個性が発揮できているとは言えません。 「悪ノリ」は結構ですが、取り敢えず続編を出さなければ中途半端なままで意味が無いですね。 余り読みたいとは思わないのですが・・・ 解決する事件も「警視庁」というより「公園前派出所」と言った方がしっくりきます。 もう少し謎解き要素を入れてもいいのではと感じます。 |
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短篇集ですが、各編同士の結び付きは(登場人物が一部被ってはいますが)まるで無い、独立した4編のお話です。
言葉遊びという点では、伊坂幸太郎らしさは健在でしだが、やはり短編という事で、いたるところにばら撒いた伏線を一気に回収というお得意の芸当が出来ていません。 伏線を仕込むだけの空間自体が狭すぎて、出来ていないというより出来ないと言った方がよさそうです。 同じ短篇集でも「死神の精度」は、主人公が共通で、各編を跨いだ伏線が楽しめましたからね。 弱点発見かなぁ。 その分、他作品とのリンクはふんだんに貼られています。 そういう気付きは嬉しいのですが、まず本編ありきで付加価値のようなものだと思っているので・・・ 印象に残ったのは「サクリファイス」 伊坂さんらしくないというか、三津田信三っぽい と感じただけですが・・・ 無理して1冊にまとめて出す必要のなかった作品だと思いました。 特に表題の「フィッシュストーリー」は1本の長編作品として読みたかったですね。 |
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周りよりも早く大人になってしまったせいで浮いてしまうという。
登校拒否に陥った中学生の女の子が、おばあちゃんとの「魔女修行」により、固く閉ざされた心を開放していくっていう物語です。 男の子は大人になったもん勝ち的な印象があるのですが、女の子は難しいですね。 「魔女修行」といっても、存在意義というか役割をしっかり与えてやる事であったり、くつろぎの時間、生活のリズムをしっかり持つ事であったりと、まぁ生きていく力を与えるという修行です。 まさにジブリアニメの世界観です。 大人が読むと、正直物足りなさを感じてしまうのではないかと思いますけど、子供には薦めたくなる作品ですね。 |
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乃南アサさん初読。
文庫本巻末の「解説」を読むと、「男社会で差別的な扱いを受けながらも頑張る女性」を描いた作品という事になるのでしょうか。 読中はそこまで「反女性蔑視的」ニュアンスは感じなかったのですが、もし「解説」にあるような意図が作者にあるのなら、正直「浅い」と思いました。 この程度のハラスメントなら、男同士の関係、警察組織でなくともでも当然のように存在しますし、ましてや、彼女は男以上の活躍の場を与えられている訳です。 何故その役目を獲得できたのかという十分な描写もありませんし、説得力がないというか・・・ 単に男社会で男勝りの活躍をする(しかも何故そのような活躍ができるのかという苦労や努力、また能力的裏付けに乏しい)女性の格好良さを描いた陳腐な作品に読めてしまいます。 「姫川玲子」の苦悩の方がまだリアリテイがありますよ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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中編を1本含む短篇集という事で、ある程度は仕方のない事だと思うが、
やはり、舞台となる閉鎖された村や家に受け継がれる言い伝え等、事件の背景となるものであるとか、歪な人間関係を描き切れていない様に思う。 このシリーズの場合、非現実的とすら思える事象を現実的な解釈に結びつけ回収する訳で、そこに強引だったり、腑に落ちない点が多くなるのもある程度やむを得ない。 そんな足りない部分を補って余りあるのが、作品が織りなす禍々しい雰囲気だと思っているので、やはりこのシリーズは舞台設定こそが命。 翼をもぎ取られた・・・という印象が拭えない。 なら表題作の中編は、それなりに読めるのかというと決してそうではなかった。 その約3分の1を要して、「こっくりさん」と「密室の分類」に纏わる蘊蓄が語られる。 「こっくりさん」はまだいいとして、三津田氏の作品で長々と「密室講義」は読みたくなかったなぁ。 冗長感が半端なかったが、それ以上に違和感ありありだった。 また、短編3作では見られなかった、言耶の一人ツッコミ一人ボケ推理がまた・・・これは中長編でのお約束なのだろうか。 思うのだが、全部自分で推理して否定してまた推理して・・・だから彼の推理には、テンポがない、切れがないのではないだろうか。 名探偵でない事は自覚しているようだが・・・ シリーズを通してワトソン役に抜擢させても違和感のない登場人物が何人かいるのに何故配置しないのだろう。 不思議でならない。 |
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