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アフターダーク
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アフターダークの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.47pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全256件 101~120 6/13ページ
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近年は読書ブームだ。日本もそれなりに本を読むようになって久しい。 それはグローバル経済や資本主義社会による、競争や優劣や傾きのある風潮の中で個人が生き抜くために『考えること』を求めるようなった表れと言えるだろう。 とくれば、『この世界の謎』その本質について考えようとするのはこの現代人の感覚にとっては自然なことと言えるだろう。 純文学ブームが再燃する中、村上春樹はこのことについてずっと考え続けてきた作家であるということから、そうした新しい読者「突き詰めた思考」をしようとする現代人たちにとって春樹のその文学の姿勢については賛否両論キレイに(良い悪いの意味ではない)あることだろうと思う。 「春樹は絶望が足りない」「踏み込んでるくせに世界のことよりアイツは結局自分の人生が大事」「文体や内容がわかりやすぎて逆に資本主義や民主主義の風潮の悪性を伸ばす結果にもなっているのではないか」 確かにそれはもっともな『正論』だ。 だが春樹ほどここまで心の内面的なことや、抽象的な視覚的・聴覚的感覚(これが実は『世界の謎』にとってもっとも重要なことのひとつなのである)を万人に違和感なく、また自然的な(例の)不快感や苛立ちなく、しかもエンターテイメントとして読ませられる作家はいない。 片山恭一などの春樹チルドレン的な文体を思わせる作家は山ほどいるが、春樹の域には遠く達していないのを経験を重ねれば重ねるほどに気づくだろう。 もちろん足りない点もあるだろうがそこを勘違いしてうかつに春樹をボロクソに調子に乗って批判してはいけない。 春樹は保守的な部分を徹底したからこそ、現段階において、だれもが環境的になしえない『世界への働きかけ』ができ、またその知名度と影響力の端により、それによって我々もまた『世界の謎』や『人間を幸福にするためには』を考え、発言の許容が許される部分があるのである。 自分の正義や誠実さだけを突き詰める前に「保守的」「保身」をなめてはいけない、それは意外にその人たちだけの問題ではなくもっと深いのだ。(また、彼はちゃんと世論を考えてここにきておおきく転向してきているので『やり方』としては至極正しいとおもう) 『アフターダーク』は『世界の謎』を考えてある程度のレベルまで突き詰めきった現代を生きる人になら、その一見わけのわからない表現がなにをあらわしているかをなんとなくはある程度感じられるものだろう。 ある程度春樹の『ねじまき鳥』や『羊』などを読んでから読むのをおすすめしたい。 | ||||
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この話は日付けの変わるほんの少し前から夜が明け朝の活動が始まるまでの話だ。 本来、ほとんどの人が寝ている時間帯。 でも、この本の中にはほんの一角の数限られた人の人生が隙間なく書かれている。それは真昼に起こることと代わりのないように。 本来眠っている間の出来事だけれど、その間の出来事は、昼間のそれより鮮明で自分もそこにいるような実感があちこちにあった。 そして、最後の方に出てくるコンビニに置き去りにされた携帯電話から出てくる中国人の言葉が、妙に緊迫感があって、生きることに背中を押しているような感じでした。 とても面白い、充実した本でした。 | ||||
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普通、人間には“眠り”と“死”はあるが、その中間の“休眠”とでも言うべき状態は存在しない。この小説は“休眠(=長い「眠り」もしくは短い「死」)”という概念を導入することで、「死」と「生」について、より意識的に考えさせてくれる小説だ。自ら休眠状態に入った、あるいは入らざるをえなかった姉エリの思い出を語る、妹マリと姉の友人高橋の会話は、故人を偲ぶ通夜の席の会話を想い起こさせる。通夜の席は、そこに本人が居ないにもかかわらず(だからこそ)、本人の存在を強く感じさせる場だ。日常は、通夜の席ほど、その人のことを深く考えることはない。そして、そのことによって、この世における存在感の希薄を感じてしまう人も数多く存在しているのだ。姉エリの人生は、周りからは一見とてもうまくいっているように見えていたが果たしてどうだったのだろうか?人は、他人の記憶の中にこそ生きているのだとしたら、姉エリの人生は、うまくいっていないどころか、続けることさえ難しかったのだ。姉の休眠を目の当たりにして不眠状態となってしまった妹マリは必死で姉との過去の記憶を手繰り寄せようとする。 この小説が単純に読めないのは、姉エリが休眠状態に入ってしまった原因をエリ自身だけには求められないこと、そして、休眠状態に入ってしまったのが今回は“たまたま”エリだったのであり、おはちが回ってくる可能性は誰にでもある、という点だ。小説は、午前0時からたった7時間の、どこにでもありそうな都会の夜の風景を描いている。でも、そこには人を呑み込んでしまう深い裂け目、暗黒の入り口、不可抗力の闇が存在していることを、著者は客観的に切り取って我々に提示してくれる。闇の存在は深く大きいが、小説が夜明けで終わっていることは救いだろう。 | ||||
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先ほど読み終わった。 作者のテーマ(私が勝手にそう思っている)というものが、一貫してこの作品でも貫かれている。それは自者と他者、内界と下界との行き来とその断絶である。テーマとは・・ある地点における「きっかけ」からいつしか取り返しのつかない距離まで離れてしまうことへの恐怖、とでも言うのだろうか。 ファンタスティックでありながらフワフワ感はなく、構成的にも技術的にも非常にしっかりしている。他のレビュワーさんも書いているが、特筆すべきは中立的な「視点」が物語の推進者のような役割として、文章中に組み込まれていることだ。この「視点」が主体的な動きをすることにより、見事な情景描写の効果があり、このような観念的な世界をよくここまで分かりやすく立体的に表現できるものだと感心した。 また、日本語の美しさは深く印象に残った。淡々とした情景描写にこそ、日本語の美しさの真価が発揮されるのだろうか。 | ||||
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村上春樹さんの小説は、今のところはずれがありません。 本当にすばらしい作家さんです。ノーベル文学賞受賞してほしいくらいです。 本作は、村上作品の中でも奇異だとされています。 一人称「僕」が出てこないということは珍しいことですが、 本作も間違いなく誰にも真似のできない村上作品の味がします。 色々な登場人物が出てきますが、どの人も魅力的です。 私が本作で一番好きなキャラクターは、高橋です。 彼は、頭のよい大学生で、バンドもやっていて、人並み以上の演奏ができて、その上話題が豊富で自分の言葉で会話をすることができる人で、とてもいいやつなんです。 そして、顔には傷があって、耳がちぎれています。 外見は、ともかくとして、彼のような人生に憧れます。 彼との出会いが、本書からの大きな収穫でした。 | ||||
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私は村上春樹さんの昔の作品をある程度読んでからこの作品を読ませて頂いたのですが、この作品からは過去の作品の雰囲気とは違った印象を受けました。けれどそれが今までと違った種類だとしてもこの作品自体とても素晴らしいものであると思いましたし、文章も比較的読みやすく、また時間で区切られているなどの面白さがあり、一気に読んでしまいたくなるような作品だと思います。嫌いな方もいらっしゃるかもしれませんが、個人的にはとても好きな作品の1つです。高校の友達に是非薦めたいと思いました。 | ||||
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本著はとにかく議論のつきない本である。ゲーム化をすることを前提に作品を独自に解釈していくというHPの企画があったが、その時も「村上春樹という名前が無ければ、購入したかどうか疑問だ」と言わせた。最高傑作という人もいれば、駄作という人も居る。ただ、後の前述のHP企画においては前発言者はやはり何か惹きつけるといった印象を語っている。実際本書は捉えどころがない。私は最初の印象が戯曲に近いという感じだった。脚本のようである。今回の作品は東京の都市の一部分の一つの時間を切り出した。これは抽象的な意味ではなく、本書の構成が時間区切りである。場面もよく切り替わるが、この切り替わり方も独特で映画でたまに使われる編集の方法ともまた一風変わった方針である。この本は同じ時間を本とすごすつもりで、つまり深夜の始まりから夜明けまでじっくりと読んでみることができる人にすすめたい。忙しい人や、プロットや構成や意図がしっかりした本を好む人間には難しいところが多い。ところで私は本書で一番感じたのは著者の新しい切り口である。今まで"村上春樹調"と呼ばれるなにかが同質にどの本にも存在していた。今回は、それらをすべて踏まえて何かが始まったような新しさを感じることが出来た。 | ||||
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たった1晩の出来事を、得意の作風で現実と不思議世界のはざまを漂わせている作品です。 | ||||
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この作品には「ねじまき鳥クロニクル」をアウトラインとして書かれている箇所はいくつも見つかる。文學界にて、村上春樹がインタビューで答えているように、「ねじまき鳥クロニクル」や「国境の南、太陽の西」中に見られる、共通点も含んでいると本人もコメントしていた。その中で、人称における新しい試みも行った点も、非常に興味深い。氏曰く、彼の作品は大まかに3つに分けられるということで、短編・短めの長編・大作と呼ばれる長編、「アフターダーク」は、それによると 短めの長編 であるらしい。そのように見ると、この本は村上氏得意のトリックを読み解くよりも、彼の今までの作品における観念などの共通項を読み取り、そのアウトラインを探るくらいが調度いいのかもしれない。「アフターダーク」と「ねじまき鳥クロニクル」は、是非合わせて読んで頂きたいと思う。それによって、両方の作品の意図なども立ち上がるとともに、「アフターダーク」を読んで物足りなさを感じた人も、きっと、ねじまき鳥を読めば深く思考し、モヤモヤしていたものも、読み解けると思う。おすすめの読み方としては、深夜から明け方にかけて、一人でこっそり読むのがいいと思う。ある一晩に起きた出来事を、一晩かけて読むのも一興であると思う。 | ||||
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一夜の人間模様を描いた村上春樹の新作長編。 静かでいて、静謐な文体は健在であり、登場人物達の造詣もこい。 そして、新たな視点を入れ、さらに奥深い面もある。 視点の解釈は人それぞれだ。 | ||||
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・普段何気ない人間の仕草,空気感,風景や心理描写が秀逸だった。語られないモノたちが村上さんに文字で表現されることによって秩序を与えられ現実世界に姿を現す・・・そういった印象を受けました ・現代の東京の若者を主人公にしつつ,あいかわらず十八番のjazzが隠し味として巧みに挟まれており、フィクションでありながらノンフィクションのようなモチーフが感じられます. ・物語は曖昧のまま終結を迎えます.いわば読者が自由に解釈できる空間を用意してくれていますので,「その後」に関して自由に解釈できるでしょう。 そっと胸にしまっておきたいような大切な一冊となりました,ということです. | ||||
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村上春樹さんの著作を読んだのはこれで3作目。最初に『海辺のカフカ』を読んで、物語の吸引力にはまりました。その後に読んだ著作も中々でした(^〇^)/だから、今回も期待しながら読んだのですが、結果は微妙・・・・いまいち話の真意がつかめませんでした。ある都会の一夜が明けるまでの話。都会の中でうごめく私達の生とは、死とは?普段の生活からは気づくことのない人の心の中を夜を通して描いているのだと、勝手に解釈した。だから、面白いのかといわれると、そうだともそうでもないとも言えない。一つ言えることは、決定的な言い方はしていない。要するに、話の頂点がなく平坦なのだ。一定のリズムで話が進むので、読後の感触は静かだ。静かさを望む方には、よい一冊だろうと思う。 | ||||
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なぜかというと。これまでの村上ワールドを期待して読んでしまった読者は???の世界なのであります。では、私の考えはと云いますと、ノルウェーの森を最初に読んだ時に感じたものを思い出していたという事です。それまでの著者の作風を裏切るような感のあるこのお話に着いていけなかった。けど何回も読み進むうちにこれはなくてはならないという確信を抱いた。アフターダークは怠けもの読者の横っ面をひっぱたくだろう。わかる、わからないは別問題。村上はここにも存在しているではないか? | ||||
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村上春樹としては、標準的な作品じゃないですか? なんか、無理に今風に背伸びしてるのかよって、感もありますけど、やっぱり、村上さんの文章はいいですよね。 | ||||
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うまいなぁ、の一言です。私たちの世界とは違うところに存在する何かによって語られ話が進みます。その不思議で捕らえがたいものの不気味さが、場面をリアルに想像できるストーリーと合っています。いるかわからないけど、いるだろう何かの存在と、それに気付かずそれぞれを生きる登場人物達のつくるながれにすっかり引き込まれてしまいました。 | ||||
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アフターダークについては否定的な意見が多いようですが、私は割りと肯定的な立場でいます。海辺のカフカに続いて出されたのも私には良かった。ただアフターダークを読み進むごとに苦しくなったことを覚えています。割愛しますが、それは私の個人的な経験が絡んでいるのかもしれません。だから、あの小説は簡単に言ってしまうと読み手次第なのではないのでしょうか。村上春樹氏はあくまでソフトを作って、それを読むということで利用するのは読者の勝手です。とにかく私にとっては素晴らしい一冊です。一読者として満足できたから、私にとっては素晴らしい小説なのです。シンプルにそれだけ。 | ||||
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この作品において注目する点は二つ。第一にバイアスを取り除いて捉える目。これはあくまでもメタファーをクリアに使うための前提である。いわゆる神の目。第二にメタファーが境界を越えて、複合的な世界を作り、経験するための道具になっているということ。この物語は「ユリシーズ」に似て、一夜というかなり短い時間幅で進行している。しかしこの一夜の世界はメタファーによって高次元の他の世界をも説明できるだけでなく、様々な世界との複雑な関わりをも説明できる。彼はメタファーを異次元への乗り物として考えているのではないか。 | ||||
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村上春樹さんの作品を読むだびに難解な表現や、象徴的な言葉が出てくるのが常で時々「う~む」と考えさせられることもありましたが、この作品は意外といってはなんですが、音楽を聴くように滞りなく流れていく作品でした。読みながら、主人公のマリを宮崎あおい、その姉エリを楠城華子、そして高橋をオダギリジョーとして映像化して読み進めていました。まるで映画を見ているようで仕事帰りの読書時間が楽しかったです。 | ||||
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私は電車に乗るたびに、様々な人を観察して、1人ひとりの乗客にはそれぞれの人生があり、それぞれの家族や友人があり、そして、様々な人生を生きているのだという不思議な感覚に襲われることがあります。アフターダークを読み終わった時、世の中にはやはりいろんな人がいて、いろんなところで交わったり、離れたりして生きているんだといううまく説明がつかない確信を得ることができたような気分になりました。春樹さんはいつものように、こちらの世界とあちらの世界で私を楽しませてくれましたが、今回の作品はこれまでの典型を少しはみ出した感があり、その点が嬉しくもあり、困惑した原因でもあるという、これまた曖昧な後味を残して下さいました。いずれにせよ、春樹さんの「二つの世界」が好きな私にとっては楽しめた作品であったことは言うまでありません。もう一度読むと、また違った印象を受けるはずなので、2度目も存分に楽しみたいと思います。 | ||||
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一つのシステムの全体とは、複数の細部の連なりである。この単純な命題を、小説において、あるいは、小説として示すのは案外難しい。本作は精緻な文体で細部を描くことによって、都市という一つのシステムの全体のありようを巧妙に暗示することに成功した佳作であると言えよう。 | ||||
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