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アフターダーク
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アフターダークの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.47pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全113件 81~100 5/6ページ
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どう考えても、これから始まる物語のプロローグにしか過ぎない。物語の全体構成を示してから、この作品の位置づけを示したらどうだろうか?少なくとも、あと2冊は続編が期待できるが、全部書き下ろしてから発売したらどうか?まさか、生活に困っている訳でもあるまいに。。。また、主人公役は読者自身であるとでも言いたいのだろうか?それは著者の驕りではないか。いかにも村上春樹の作品に登場しそうな浅井エリがどうなっていくかが読者の期待である。 | ||||
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夜は明けるし、希望はある。おしゃれな会話のやりとりは期待を裏切らない。けれど何だか物足りない。俯瞰的なナレーションより、一人称で語られる「僕」の物語が読みたかった。ところで、白川をジョジョのキラヨシカゲをイメージして読んだのは僕だけだろうか。荒木ヒロヒコは絶対ムラカミハルキファンだと思う。 | ||||
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2つの世界が同時進行し、あとあと話が繋がっていく。「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」と少し似た展開ですごくおもしろかった。最後数ページになって、もっと小説の世界にいたくて惜しいと思ってしまうほど。改めて、「村上春樹とは一体どんな人物なのか」と思わされ、本人に会ってみたい衝動に駆られた。村上春樹の本は、すべて、何気ない人間の日常の動作を「いとおしい」と感じさせてくれる唯一の作品であると思う。日常、欲しいものを買いあさり、すべて手に入れようとする私たちに、心が豊かであることの幸せを感じされてくれる。このアフターダークのなかで描かれている人物も描写を読む限り、とてもお洒落な若者ではない。しかしどこか、読み手を虜にさせる魅力を秘めている。ぜひぜひ一読して欲しい。 | ||||
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生きることの虚無感。そこに微かな光を差し込もうとするのにいつもその光は遮られる。いったいいつになったらこの虚無感から脱することができるのか。永い永い夜の暗闇。朝が来ることは知っているけれど、繰り返すこの夜に私はいつまで耐えられるのだろう。私がここに居るという感覚はいつも危うい。重力を感じ、自分の肉体を感じることももはや潰される恐怖でしかない。村上春樹の作品からは暗いものを一番強く感じてしまう。小説のなかの描写された現代社会と現実の現代社会のギャップは感じてしまうけれど、登場人物の根底を占める感情は変わっていないように思う。その感情が時代に合わせて少しだけ表現の仕方が変わってきているだけなのだ。その意味で村上作品の根底は変わっていない。希望のようなものは作品中に見出せなかったけれど、マリがいろんな人に出会い自分を再確認したことで、マリのこれからに希望を抱ける。 | ||||
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満を持して放たれた村上春樹の最新作。干渉せず、他者との関わりを拒絶する大都会の、とある一夜の出来事。だが、村上春樹が描くと、なぜかやさしく、そしておだやかなものに変質してしまう。それが、村上春樹の持つ強みでもあり、同時に弱みでもある。暴力を描いても、都市の持つダークサイドを描いても、なぜか「ほんわか」してしまうのだ。新宿(だとボクは思うんだけど)の裏舞台を描かせたら、馳星周にはかなわないんではないか、と言ったら、村上シンパに起こられそうだけど、こういった舞台での村上春樹作品に、あまり魅力を感じない。とは言え、こういう辛口な採点は、ボクの村上春樹に対する期待の大きさゆえ。他を圧倒する筆力は健在。あまり読書家でない人は、ぜひ一読を。 | ||||
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新しい試みに対し、評価します。ストーリーもまあまあでした。但し、私なんぞのロートルファンにとって「本当にもう鼠はいないのだ」という事がはっきりし、寂しさも感じています。「ノルウェイの森」を読み終わった時に感じた不安感は、随分時間かかかりましたが、やっとここで整理できました。「もう鼠はいなくなったのです」夏の終わりの蝉の声を聞いて、20年前の作品を思い出し、切ない気持ちになっている人も多いのではないでしょうか!村上さんには、この後もどんどん書いて欲しい。誰がなんと言おうと私が一番好きな小説家ということでは変わりないのですから。 | ||||
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好きな小説ではあるし、好きな台詞もたくさんあるんだけど、村上さんの小説って、設定が現代でリアリティがあればあるほど、内容にリアリティがなくなるのでちょっと白けてしまう箇所が多かったかな。逆に「羊~」のようなおとぎ話のような小説の方が、いつまでも自分にとってリアリティを持って心に残るんです。こういう話だったら石田衣良さんが書いてる小説の方が説得力があるように思えるのですが・・・。私は村上さんの70年代の小説はいきいきしてて好きです。それは村上さんと時代がマッチしてたからかな。 | ||||
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高校時代(15年前)から作品を愛読しているものです。正直、物足りないのは事実。でもきっといつまでも「羊~」「ノル」「ダンス」のあの夢中になった各小説の幻影を追いかけてもしょうがないかなとう気にもさせる。多分この違和感は、”こちら側”と”向こう側(深い淵)”をどれだけ読者が連れまわされるかに寄るのではないか。この作品では”渋谷””円山町””哲学堂”なり読者の記憶の現実風景になぞらされる気がする。その分現実感があるけど、物語としての構成を無意識に感じてしまう(東京在住ならね)。多分読者はそれを感じないまま、春樹ワールドに連れていって欲しいのでは(僕もそう)でも今後、、現実とあちら側の世界をよりリアルにかつ深く繋ぐ小説ができれば、この作品の評価はその一歩として(後世)評価されると思う。そういった意味では春樹ファンなら必読。「レキシントン~」とか短編じゃその深さが垣間見えるような気がするのですが。うーん好きな小説家でちょっとがっかりすると期待も混じって複雑な文章になりますね・・・ | ||||
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面白くない、短い。それが最初の感想でした。では、今はと言いますと・・・あまり変わりません。確かにあれが『村上春樹の新境地』という感じはします。しかし、『風の歌を聴け』から『ダンス・ダンス・ダンス』に繋がる物語と『ねじまき鳥クロニクル』を読んだ自分としては、完全にイマイチといってしまうような作品でした。おれはまだ小説を読み始めて1年ぐらいですが、ちょっとガッカリしてしまったな、そんな気分です。刺激と興奮を求めすぎたのかもしれない、そう思えないこともありません。でも、やはり、残念です。だからと言ってお勧めしない作品ではありません。結構面白いんだと思います。個人的なハードルを越えてくれなかった、それだけのことです。どちらかと言うと、読んでほしいです。 | ||||
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2日くらいかけて読みました。なんというか話に山場がなくて、終わり方もまだ続きがありそうで、正直わかんない事だらけでした。でも読まなくて良かったとは決して思わないし、読んで良かったと思っています。もう一度時間をあけて読み直したいけど、どうかなぁ。 | ||||
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私の中で一番好きな作家。村上春樹。今回もやはり発売と同時に購入。3時間程度で読了。感想は、これが普通の小説家の小説だったら、うん、いい小説だなぁと満足するところなのだが、村上春樹の小説となると、やはりかなり期待していたので、失望してしまった。もっと深い、ドストエフスキーのような長くて深い小説を期待していたのだが、まるで短編映画のようなサラッとした小説だった。いいように考えると、文体は変化しているので、きっと次の小説のための新しい技術を試しているんだろう。まぁ、でも、個人的な意見としては、これから購入を考えている人は、買う必要はないと思う。次の作品が出た後に、そして次の小説が面白ければ、読めばいいと思う。 | ||||
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読み終わっても体の奥にじわりと残る、あの心地よい読後感が今回の作品では微塵も感じられなかった。つまらない映画の長大な予告編を文字に起こしたみたいな作品だった。とにかく登場人物である若者たちにリアリティーのかけらも感じなかった。もちろん、そうしたリアル感のない若者の存在もある種の小説的世界には必要な場合もあるだろうけど、その小説世界に入って行けないのだからどうしようもない。一人一人が思わせぶりで、何かの予兆だけを残し、小説が終わってしまった。この話から何か教訓めいたものが引き出されるのかな。 ああ、できれば村上さんの実年齢に近い、初期の「僕」の感覚をもった主人公を中心にした物語を、もう一度読んでみたい。 しかし、こんなにつまらない話を退屈させずに最後まで読み通させる村上春樹の力量は、やはりすごいんだろうなあ。 | ||||
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明治末期ならば閉塞感に対し、島田清次郎の熱さや葛西善蔵の諦観で対処した。が現代東京は、熱くも諦観にもリアルはなく、もちろん癒しにもなく、ただ閉塞感の中で戸惑いつつも、欠点が長所でもあるそんな当たり前の性質をもつ身近な人との、ちょっとした出会いからしか閉塞感の脱出はないし、また時に脱出し、時に脱出できないしという現実を受け入れながら、魅力はないが、あった方がいいだろうといった各駅停車のようなライフスタイルを再構築している等身大の読者を多少デフォルメした社会小説。「わたしたち」という表現には、誰もが内包している、実は個にさほどのこだわりのないテレビやインターネットといったマスメディアに依存した人々の、総体的な観点と心境を感じる。そしてその犠牲者として世間価値に無意識に踊らされていた姉が価値の再生へ向けて冬眠、いや充電をし、いままでの価値観に違和感を感じつつも地道にでももちろんアヤフヤさのど真ん中で「個らしいもの」を確立していく妹たちの、孤独前提の価値観を構築している様子をタンタンと見せ、メッセージ性を隠すことで、読者は春樹の世界観に現実の自分らもいることを実感するから、かえって説得力がでている。登場人物と読者の垣根がとっばらわれた、実生活と物語が実感で調和できる位置を示唆した参加共住型小説とも言える。無機質な交換不可能性の一切ないデニーズやラブホテル。言葉と物語の希薄なセックスといった刹那的ゆえ浅い快楽に囲まれた可視的な環境までもイビツになっている現状に対し国民作家という立場から、精一杯の再生プロセスメッセージになっていると思う。しかし現代版夏目漱石だけにどうしてもマジメさが鼻につき、必死にマジメさを隠しても、本質は明治文壇の系譜的人生、自我模索小説から今回も一切はみ出ていない。つまり芸術という基準からいえば? | ||||
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読みやすい。その一言につきると思います。理解しやすい。お馬鹿なあたしは、情景がうまく想像出来なかったり、前に書いてあった事の記憶があやふやになって、途中前後して読んだりするのですが、この本に限っては、一切ありませんでした。とにかくさらりと読めます。裏を返せば、それほど話が入り組んでいないとうこと。後読感としては、自分の好きな春樹さんの短編一つよりも軽い。こう、後まで引きずる思いがなかった。他の人も書いてらっしゃいますが、かなり・・・な感じです。長編なんですよね。。。うーん。。。読者としての自分が春樹サンの物語の構造に慣れて新鮮みをかんじなくなったと言えば、そうなんですが。。。なんて言うかね、、、出題と回答を一緒に渡されちゃった感じ。。考える余地を与えてくれない。「世界の終わり~」が自分は一番好きなんですが、一緒に考えてる感があったんですよ。それがもうない気がする。「世界の終わりは~」何だか分からないけど、書かなきゃいけない事があるから、どうなるか分かんないけど書く。って感じがしたんだけど。今回は、これをこうしてこうつなげて、こう終わろうみたいなのが、読んでて分かっちゃった感じ。宿題やってないのに、答え合わせだけしてる。みたいな感じかな。。。 | ||||
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春樹さんを知っているかたなら、当然のごとく買うだろうので、説明は不用だと思います。ここでは、中高生といった若い方に一言申し上げます。 結論からいえば、アフターダークを読む前に次の二冊(村上春樹著)は読んでください。1,ノルウェイの森2,ねじまき鳥クロニクル そして、この二冊を読み終わってから、アフターダークを読んでもらえると、「ああ、この作者は新境地に挑んでいる最中なんだな」と肌で感じることができます。 特にして欲しくないのは、アフターダークだけを読んで、「なんだよ、ムラカミハルキってツマンネーよな」なんて、言うことです。 あなたが私の推薦した本をよんだら、、この作品よりも、もっとずっと引き込まれることをお約束します。 もちろん、この本も「それなりに」はおもしろいのですが、若い人が求めるものではないと、私は思います。 こんな風に考えるといいかと思います。 昔、イチローはもっと上手に打てる打法を研究していましたが、研究中は色々試していたので、以前よりもダメになってしまいました。 しかし、色々試してみて、打法が完成したら、打率が4割近くになり、ビシバシ打てるようになりました。 さらに、完成した打法だけではなくて、以前の打法でも上手に打てるようになったとさ・・ とにかく、(初めて春樹さんの本を読む方は)アフターダークを読む前に上の二冊を読むか。 あるいは、アフターダークを読んでから、図書館に行って、ノルウェイの森とねじまき鳥クロニクルを有無をいわずに借りてきてください。そして、ノルウェイの森は(できれば)夜の9時前に・・いや8時かな? 読んでください。(眠れなくて学校に遅刻すると悪いので) 以上、うだうだ言ってきましたが、「春樹さんは、こんなんじゃねーよ。もっともっとスゲーんだゼ」ということです。 ・・しつこいようですが、アフターダークだけ読んで、彼の作品を読むことを中止することは「絶対に」やめてください! | ||||
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今村上春樹さんの中にある物をできるだけ自然な形で取り出し、書き留めた感じの作品です。海辺のカフカが重厚な一枚の作品なら、こちらはスケッチ集といったような。かつて次のステップへ進むためにスプートニクの恋人を書いたように、アフターダークも新たな作品を生み出すためのステップではないでしょうか。おそらくこの何枚ものスケッチを元にして次の作品の方向を確認し、重厚な作品に繋げていってくれることでしょう。次回作に期待です。 | ||||
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村上春樹待望の新作。小説は時系列に沿って進められており、ほぼその時間の流れに沿って、ちょうど一晩かけて一気に読んだ。「神の子供たちはみな踊る」の中の「蜂蜜パイ」で、『これまでとは違った小説を書こうと思う』と語った筆者であるが、正直この小説はその変化の過程であり、これが完成系であるとは思いたくない。過去の作品にあるような、洒落た会話や比喩はところどころ見受けられ、また物語の終わりには「世界」と「個」との繋がりのようなものが感じられ、過去の村上作品で追い求められていたものが見つかったような気がして少し安心したような、安らかな気持ちになることが出来た。しかし、戯曲のような客観的な短い文体は「私たち」という一人称による視点の誘導を含めて、文体の実験としては面白い試みかと思ったが、まったく良いとは感じられなかった。筆者は簡素な表現によって読者の想像を求めたとのかも知れないが、これほどすばらしい文章を書ける筆者なのだから、筆者自身の文章をもっと味わいたかった、物足りなさが残ったという読後感が評価の理由となった。話の筋としても物語全体が収束しきっていないという印象が、筆者がそれを狙っていたのだとしても、好きになれなかった。大好きな、本当に大好きな作家なので、次回作に期待しています。 | ||||
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~暴力は、どんな無垢なものをも、それに対する強い防御と感覚をもたねば、怪我し損ね、傷つけ、奪い取ろうとしてきます。台風、地震、雷、交通事故、殺人、病気、金、もろもろのこと。子供たちがいま布団の中で、家の中で、門と壁と鍵に守られた中で、僕のささやかな力と、目に見えない者たちの守りの中で生かされていることを感じながら、明日消えてしま~~うともわからないはかない生き物である自分自身と、家族のことを思いながら、死と別れをよく心に刻み込んで、今を温かな光の心で接していきたいと、そんなふうに思いました。~ | ||||
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25年という歳月に、今更ながら驚き、村上春樹氏のデビュー作を雑誌で読んだことが遙か彼方の事になった・・・・・・と、自分の来し方を思い返したりしました。真夜中12時少し前から夜明けまで、「私たち」という言葉に自然と引っぱられて、カメラの視点で19歳のマリに関わるいろいろなことを、つぶさに見ていくことになります。何かが起こりそうな予感めいた言葉が、私を突き動かしていきました。これまでの村上氏の描き方と異なるので、多少の違和感はあったものの、作中の“視点”に忠実に読んだつもりです。マリという、少し頑なで少しコンプレックスも持っている女の子が、一夜、関わる人々がマリに少しずつ影響を与えていくさまが興味深かったです。しかし、夜明けに向けて、彼女の心を一番揺さぶったのは、「高橋」。きちんと語る事ができるところまでいってないという、姉エリのことを、マリに再考させる契機になる人物と、ぽつぽつ話をする場面は、まさに青春。近づいてくる誰かを拒否しつつ、受容しつつ、話せる部分だけを話すということ、あったっけ、とそんなことまで思い出しました。夜明け前、マリがとった行動は、明らかにこれまでの姉への見方が変化したからだろうと思わされるものでした。何かが変わる気配をみせて、夜明けが来ます。この、朝の描写が、とても美しい。夜の闇を抜けて、カメラのような視点とともに辿ってきた物語は終わるけれど、始まりの予感が残されていることにほっとしました。状況の描写の連続なのに、こちらに感情を喚起させる村上氏の力量を、楽しむことができました。 | ||||
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文章のうまさ、ストーリーテリングの見事さはいつもどおり発揮されているが、問題は、「で、何が言いたいのか」だ。読者によってさまざまな読み方ができるのがよい作品だろうとは思う。とはいえ、その作品がまず読者の心の深いところに届かなくてはならない。読者は何かを考える材料を充分に与えられただろうか。主人公はだれか、それさえも明らかではない。ひょっとして主人公は読者か。 今回の作品は実験小説と呼べるだろう。登場人物の会話以外のいわゆる地の文は、シナリオのト書きのような文体で、読者の視線を誘導する役目しか果たさない。これは、読者が小説世界に迷い込むような仕掛けだ。著者は村上ワールドへ読者を招待する一方で、なるべく寡黙であろうとしている。実験は成功しているか。読者は出口を見つけることができるだろうか。 本を読み終わり、改めて「アフターダーク」というタイトルを思い起こしたとき、心に響くものがあれば、その試みは成功したといえるのだろう。正直言って、私の心に届くものは少なかった、が、新しい何かを感じさせる作品ではあった。「人にはそれぞれの戦場があるんだ」「人間いうのは、記憶を燃料にして生きていくものやないのかな」という登場人物の言葉が心に残った。これらをキーワードに、もう一度時間を置いて読み返してみようと思う。新しい発見があることを期待して。 | ||||
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